MMA
レポート

【UFC】風間敏臣が三角絞め狙うもエライジャ・スミスのスラムで失神KO負け、ミドル級でヘルナンデスがドリッゼに何もさせずに一本勝ちでUFC8連勝、バンタム級でエルセグがオズボーンに辛勝、ルシンドが17歳差ヒルに判定勝ち。マツモトが判定勝ちでMMA17勝1敗に、フェルナンデスがストリアレンコ下しUFC3連勝

2025/08/10 05:08
 2025年8月9日(日本時間10日)米国ラスベガスのUFC APEXにて『UFC Fight Night: Dolidze vs. Hernandez』(UFC Fight Pass/U-NEXT配信)が開催された。  バンタム級では、風間敏臣(日本)が、エライジャ・スミス(米国)と対戦。前週の中村倫也、平良達郎のフィニッシュ勝利に続く、UFC日本人選手の「8月決戦」の3人目。翌週の8月17日には朝倉海、22日に鶴屋怜の試合も控えている中、風間はバック狙いから下になり、三角絞めをスラムで切り返されてKO負けを喫した。 【メインカード】 ▼ミドル級 5分5R〇アンソニー・ヘルナンデス(米国)15勝2敗(UFC9勝2敗)※UFC8連勝[4R 2分45秒 リアネイキドチョーク]×ロマン・ドリッゼ(ジョージア)15勝4敗(UFC9勝4敗)  1R、ともにオーソドックス構え。インカーフのヘルナンデスに、ドリッゼはロールして足狙いを見せる。付き合わないヘルナンデス。右カーフのドリッゼ。ヘルナンデスは右を振って、右カーフ。ドリッゼも右カーフを返す。右のダブルで笑いながら詰めるヘルナンデス。  そこに組んで両差しのドリッゼはケージに押し込むとヒザ。ヘルナンデスは右を突いて突き放すと、右カーフ。さらに左ハイから前に出てボディロックテイクダウン! しかしドリッゼは足関越狙いから立ち上がり。  右から左の返しに繋ぐヘルナンデス。押し込み離れ際にヒジ。右カーフ! 一瞬、動きが止まったドリッゼにダブルレッグテイクダウン。ドリッゼの足狙いには立ち上がり、スタンドに戻して左ミドルを当ててホーン。ヘルナンデスのラウンドに。  2R、右カーフを当てるヘルナンデスにの右に後退するドリッゼ。崩れても足関節狙いでヘルナンデスを離す。右を当ててボディロックテイクダウンのヘルナンデスはパウンドも、ドリッゼの潜りには体を離してスタンド勝負。  右カーフから崩してボディロックテイクダウンのヘルナンデス。パウンドにドリッゼは足を手繰りに行くと、離れるヘルナンデス。  スタンドでワンツーの右をヒットさせるヘルナンデス。さらに右に背中を向けたドリッゼを崩してサイドバックから叩くヘルナンデス。ドリッゼの潜りにギロチンチョークを狙い、極まらないとみるやトップを保持したままパウンドもホーン。  3R、ヘルナンデスの左右の圧力に崩れるドリッゼ、サイドバックから正対すると離れるヘルナンデス。ワンツーの右を被弾し、組みをがぶられるドリッゼ。ヘルナンデスは首を抱えて足をかけて絞めを狙うが、すぐにサイドバックに移行し、ヒザをボディに突く。首を狙いつつ、固執せずに放して削るヘルナンデス。  サイドバックからヒジを突くと、崩れたドリッゼの正対に離れるヘルナンデス。ワンツーのヘルナンデスに引き込むドリッゼ。付き合わないヘルナンデスはスタンド勝負。右を突いて脇を上げたドリッゼにスタンドの肩固めの体勢から大外刈テイクダウン! パウンドもホーン。ここまで全ラウンド、ヘルナンデスが圧倒。  4R、強烈な右カーフを当てるヘルナンデス。さらに右カーフ! 右ストレートからヒジを打つと崩れるドリッゼ。ヘルナンデスはサイドバックからパウンド。ドリッゼが前転して正対すると徹底して離れる。  スタンドでヒジを突くヘルナンデスにドリッゼは後退。背中を見せたドリッゼにヒザを突き、片ヒザ立ちとなったドリッゼの首を背後から巻いて立ったままリアネイキドチョークで引きずりタップを奪った。ヘルナンデスはUFC8連勝。ドリッゼは連勝3でストップ。  試合後、ヘルナンデスは「俺は最後の試合で肋骨を骨折して出場したのに判定に持ち込まれたんだ。今回は勝つためにやるべきことをやっただけさ。パンチとレスリング、柔術で全てを見せつけたかったんだ。タイトル挑戦権が欲しい。そのためには何をやればいいんだ?   試合のために死ぬほど頑張った。コーチの指示通りに頑張った。毎日限界まで自分を追い込んだ。子供の頃からずっとやってる。俺が知ってるのは暴力と戦争だけだ。タイトルマッチのチャンスをくれれば、次のチャンピオンになることを約束する。 (打撃について)ただ、キックボクサーとして始めたことを証明したかっただけだ。コーチはグラップリングを磨く必要があると。そうすればキックボクシングを見せられるから。ワールドベストのレスラーたちがレスリングの仕方を教えてくれた。俺は全力で取り組んでるんだ。 (なぜ彼を床を引きずり回す必要があった?)この場所で殺されるべき奴だ。(来週はミドル級チャンピオンシップがかかってる。世界ランキング9位の選手を倒した。8連勝中だ。どれだけ頑張れば、人々は認めてくれる?)トップ5にランクインさせろ。ダナたちは、俺のマッチメイキングで素晴らしい仕事をしている。タイトルを獲得できることを証明したい。もしタイトルが混乱していても、挑戦者の座を得るためなら構わない。ベルトが欲しい。何かが欲しい。世界一の選手であることを証明したい」と語った。 [nextpage] ▼バンタム級 5分3R〇スティーブ・エルセグ(豪州)13勝4敗(UFC4勝3敗)[判定3-0] ※29-28×3×オデー・ オズボーン(米国)13勝9敗(UFC5勝7敗)  フライ級10位のスティーブ・エルセグが出場。当初の対戦相手のパク・ヒャンソンが、平良達郎と急遽対戦したため、ランク外のオデー・オズボーンとバンタム級で対戦する。  MMA11連勝から、王者アレシャンドレ・ パントージャ、カイ・カラフランス、ブランドン・モレノとトップ戦線を相手に3連敗。気づきを得た“アストロボーイ”は、パクとは構えも体躯も異なるオズボーンといかに戦うか。  1R、サウスポー構えのオズボーンが中央に立ち、左右ロー。オーソでケージ背にしたエルセグ。オズボーンの左がかすめる。右ストレートを首もとに突くエルセグ。オズボーンは右関節蹴り。ワンツーで入るエルセグにオズボーンの左がとらえる。  右関節蹴りを放つオズボーン。エルセグはシングルレッグ狙いから組むが、突き放すエルセグ。左フックも、その打ち終わりに右を当てたオズボーン! 崩れたエルセグはシングルレッグもそこにパウンドのオズボーン。組むエルセグを押し倒すが、そこでバックに。  ここで落ち着きを取り戻すことができたエルセグは正対して立ち上がり、さらに崩してバックへ。オズボーンが正対し立ち上がったところでホーン。オズボーンのラウンドに。  2R、左ミドルから入るオズボーン。さらに右関節蹴り。エルセグは左ジャブで入るが、そこに左ストレートが長いオズボーン。シングルレッグで掴んだエルセグだが、ケージ背に凌ぐオズボーン。四つでヒザ蹴りのエルセグ。両差しのオズボーンが体を入れ替え、左ヒザ。再び体を入れ替えたエルセグに離れるオズボーン。  ワンツーの右がかすめたエルセグ。オズボーンは左インロー。エルセグは右ハイをかすめた。左ハイを見せたオズボーン。かわすエルセグに、オズボーンは左前蹴り。エルセグはシングルレッグも右で小手で上げるオズボーン。背中につかせずに離れる。  右の飛び込みを当てるエルセグはニータップも切るオズボーン。オズボーンの入りに右をかぶせるエルセグ。拮抗したラウンドもオズボーンが獲ったか。  3R、関節蹴りのオズボーンに蹴り足を取りに行くエルセグ。右前蹴りを腹に。エルセグは右を振って圧力をかけてダブルレッグテイクダウン! オズボーンの立ち際にエルセグはバック狙い。背中を着いたオズボーンを右枕でハーフからパス、ボディトライアングルからシングルハンドでリアネイキドチョークへ。凌いだオズボーンは足を解いて立ち上がりへ。ここもがぶったエルセグがトップに。再度バックからリアネイキドチョーク狙いも背中をついて防いだオズボーン。エルセグがマウントから2発パウンドもホーン。  判定は3-0(29-28×3)でエルセグが勝利。「1Rは落としたけど2、3Rは獲っていたと思っていた」と語ると、1Rのピンチについて「右を打たれたときよりシングルレッグで打たれた時の方が痛かったと思う。頭の中は自分に向けて“お前は本当にタフだな、みんなが倒れるような状況でも”って考えてた。自分のタフさを示したかったんだ」と振り返り、「レスリングがゲームプランだった?」と問われ、「100パーセントそうだ。彼は非常に爆発的で、彼を少し疲弊させれば、スピードを奪うだけで済むと思ったが、正直言って簡単だと思っていた」とグラップリング勝負はプラン通りと語った。 [nextpage] ▼女子ストロー級 5分3R〇ヤスミン・ルシンド(ブラジル)18勝6敗(UFC5勝2敗)[判定3-0] ※30-27×2, 29-28×アンジェラ・ヒル(米国)18勝15敗(UFC13勝15敗)  1R、右で差して組んで崩して脇を潜ったルシンドがバッククリンチから引き込みも、足をかけさせずに立つヒルが正対、崩したルシンドにがぶりはヒル。頭を抜いたルシンドの入りにシングルレッグを仕掛ける。  足を抜くルシンド。ワンツースリーの左を当てる。左ミドルのルシンドに左フックを返すヒル。バックエルボーも。ガードしたルシンドに右ヒジを打ち込むヒル。ルシンドは声を出しながら左右フック、さらに右カーフ。  左で差して組んだヒルに、体を入れ替えたルシンド。右ストレートのヒルにルシンドはボディロック&小外がけテイクダウンでホーン。ルシンドのラウンドに。  2R、右オーバーハンドから左のヒルをかわしたルシンドに、右の後ろ蹴りのヒル。前に出て来たルシンドの組みに飛びついてのギロチンチョーク! 着地しがぶるも首を抜いたルシンドが左右で前に。そこに縦ヒジを狙うヒル。ルシンドの左右フックをブロッキングのヒル。組んで押し込むが離れるルシンド。  ルシンドのワンツーに組むヒル。突き放すルシンドはバックスピオンキックを腹に。掴んだヒルだが足を浮くルシンドは右を振って組んでバッククリンチ。崩してテイクダウン。バックから右手を首にかけたところでホーン。ルシンドのラウンドに。  3R、ワンツースリーのルシンド。ヒルも左の蹴りで応戦し、カウンター狙い。シングルレッグテイクダウンもすぐに立つルシンド。ヒルは右から左、バックフィストも、それをかわして組んだルシンドがボディロックテイクダウン! サイドを奪うとハーフからヒジ。背中を着かされたヒル。ルシンドは左で脇差しパス狙い。エビするヒルに押さえ込みながら細かいパウンドのルシンド。肩固め狙い。最後はケージまで押し込み鉄槌を落としてバック狙いホーン。  判定は30-27×2、29-28の3-0でルシンドが勝利。3月のアマンダ・レモス戦の判定負けから再起を果たした。17歳差対決で競り負けた40歳のヒルは連勝ならず。  勝者は「私は完全な戦士。アンクル・ミックやアンクル・ダナが私に与える相手なら、誰であろうと準備はできている。この部門のチャンピオンになります。物事が動き出すために必要なことを。だから、ミック、ダナ、このライン(女子ストロー級トップ戦線)を動かしてくれ。いつでも、どこでも準備ができている。私はチャンピオンになる」と語った。 [nextpage] ▼フェザー級 5分3R〇アンドレ・フィリ(米国)25勝12敗(UFC13勝11敗)[判定2-1] ※29-28, 28-29, 30-27×クリスチャン・ロドリゲス(米国)12勝4敗(UFC5勝4敗)  1R、オーソから回転速いワンツーのロドリゲス。サウスポー構えのフィリの打ち返しに組んだロドリゲスだが、突き放すフィリはオーソに。ロドリゲスの飛び込みに左フックを当てたフィリウはスイッチして右の蹴りを腹に当てると、ロドリゲスが後退。詰めるフィリ。ロドリゲスの右の打ち返しに、オーソから右を当てる。  右オーバーハンドを強振するも空振りのロドリゲス。フィリは右ミドルもその蹴り足を掴んだロドリゲスがテイクダウン。インサイドからパウンドしてゴング。フィリのラウンドに。  2R、ワンツーの右を突くフィリ。ヘルナンデスは右を突いてそのままシングルレッグも崩せず。離れて右ハイ。右カーフを返すフィリ。左ジャブを突き、ヘルナンデスの左に右をかぶせる。右ミドルハイで上体を上げさせて左右から組んだヘルナンデスだが、突き放すフィリ。  ワンツースリーの連打のヘルナンデス。さばくフィリは右カーフ。さらに左ジャブを上下に突き、フェルナンデスを中に入らせない。フェルナンデスの入りにカウンターのダブルレッグも、ここは切るフェルナンデス。ホーン。フィリのラウンドに。  3R、シングルレッグでケージまでドライブして右を差してかち上げて崩そうとする。差し上げるフィリに離れ際に左右をまとめるフェルナンデスは跳びヒザも。ブロッキングのフィリはフェルナンデスの入りにダブルレッグテイクダウン! 立つヘルナンデスをバックから持ち上げテイクダウン。立つフェルナンデス。  スタンドで左ジャブのフィリに、ロドリゲスは右ハイ。ブロッキングのフィルに後ろ廻し蹴りも大きい。その打ち終わりにフィリはダブルレッグテイクダウン!立つフェルナンデスに離れ際にヒジを突く。右ミドルハイから組もうとするフィリにバックフィストを狙うロドリゲス。ホーン。  判定は2-1(29-28, 28-29, 30-27)に割れ、フィリが勝利。試合後、フィリは「クリスチャン・ロドリゲス、本当にタフなやつだ。ここに来るのは本当に楽しいよ。話したくないんだけど、髪の生え際が少し目立ってるんだ(笑)。でも、35歳になったばかりだ。今や父親になったんだ。だから、若い連中と混ざってやるのは光栄だよ。ありがとう。俺の子供があそこに。ボーナスをもらえたら、わかるだろ? (ジャブは)それがゲームプランだったけど、正直、もっとうまく実行できたと思う。少しだけやった。あそこで君が『そんな風に戦わなくてもいい』と言ってるのを聞いたけど、そうすべきじゃなかったし、必要なかった。でも第一に、俺は楽しんでいるし、第二に彼は前に出てきて乱闘を仕掛けてくるのが上手いから(こうなった)。全てがゲームプランから外れる可能性があったけど。素晴らしいコーチとチームメイトに恵まれてる。ダニー・カスティーロ、コーチ・フロイド、コディ・スティール。彼らは素晴らしいコーチでファイターで、なぜか奇跡的に毎日、俺を我慢してコーチしてくれている。だから感謝してる」と語った。 [nextpage] ▼バンタム級 5分3R〇ジェアン・マツモト(ブラジル)17勝1敗(UFC3勝1敗)[判定2-1] ※29-28×2, 28-29×マイルズ・ ジョーンズ(米国)15勝4敗(UFC6勝4敗)   1R、サウスポー構えからマツモトは左ミドル。オーソのジョーンズはマツモトの左ミドルのウch着終わりに左右もさばくマツモトが右ロー。ジョーンズは右オーバーハンド。マツモトの打ち返しにダブルレッグテイクダウン。  ケージまで這って背中を金網に立てるマツモト。ジョーンズは横に崩すが、マツモトは左足が下のままギロチンチョークへ。ジョーンズの圧力が緩んだところで外して立ち上がる。  スイッチしながら左右の蹴りのマツモト。ジョーンズの左オーバーハンドにオーソに変えてジャブから右ミドル。さらに跳びヒザ。それをかわして押し込むジョーンズだが、突き放したマツモトは右を突いてシングルレッグへ。差し上げるジョーンズは離れ際にヒジを狙う。マツモトは右ミドルを突いてホーン。拮抗したラウンドもジョーンズか。  2R、左から右オーバーハンドのジョーンズ。さらに右のダブルで前に。マツモトは左の蹴り。ジョーンズは右から左の逆ワンツー。詰めるマツモトに体を入れ替え、ヒジを打って離れる。  ジャブ&ローのマツモトは左ハイも。そこに右を狙うジョーンズだが、マツモトは右ミドルハイ。さらに肩口にハイキックも。ワンツーから右ハイに繋ぐマツモト。ヒザ蹴りで前に。そこにダブルレッグテイクダウンのジョーンズだが、ギロチンのプレッシャーで上を取り返すマツモト。  蹴りでペースを奪い返いマツモト。頭を下げて打ってくるジョーンズにマツモトは右ハイ。ワンツーから右跳びヒザで前に。体を入れ替えて離れるジョーンズ。左ハイはブロッキングも後退。ここも拮抗したラウンドも、蹴りのマツモトが取り返したか。  3R、オーソから右カーフを効かせたマツモト。ジョーンズは右のダブルも手打ちに。左インローのジョーンズ。マツモトはワンツーから右の蹴りに繋ぐ。さらに右カーフ。ジョーンズは大きな右の連打も、足が出ずに前のめりに。ワンツーから右ミドルを当てるマツモト。さらに右から左。ジョーンズの右フックに、右カーフを当てたマツモト! さらに左ミドル、右カーフにジョーンズの動きが止まる。  右カーフを突くマツモトは右ハイも。ジョーンズは走り込んでのダブルレッグテイクダウン。金網背に立つマツモトの足をバッククリンチから足払いで崩すが、抜けた松本が右の蹴りを突いてホーン。マツモトのラウンドに。  判定は2-1(29-28×2, 28-29)でマツモトが接戦を勝利。試合後、「UFCだ。これが世界一だ。でも、僕はこれをするために生まれたんだ。ダナ・ホワイト。ブラジルでのUFCのチャンスを。準備はできている。思い出してほしい。僕はコンプリートファイターだと伝えたいだけだ。ロブ・フォントとの試合を7日で受けた。ロブ・フォントがリオに来るなら、もう一度戦いたい」と微妙な判定で敗れた試合のリベンジ戦を望んだ。 ジェアン・マツモト「僕には日本人の血が流れてる、サムライの血だ」 ──日系3世のジェアン・マツモト選手はブラジル生まれなのですか。 「そう、父方の祖父がブラジルに移住して、ブラジル人の祖母と結婚して父が生まれた。僕の母さんと父さんは日本で出会って、働いてたんだ。でも、ブラジルにいる祖父が病気になってしまって、父さんと妊娠中の母さんはブラジルに戻ったんだよ。で、僕が生まれた。だから……僕は“日本で作られて、ブラジルで生まれた”って感じかな(笑)」 ──日本で生まれていた可能性もあったのですね。ご兄弟やご家族の中に格闘技の経験者はいますか? 「いや、僕は一人っ子で、格闘技を始めたきっかけは、父さんだね。父さんが格闘技が大好きで、僕が6歳のときにムエタイに連れていってくれた。それからずっと続けてるんだ」 ──お父様もムエタイをやっていたのですか? 「実は父さんもムエタイをやってたんだ。でも日本で働いていた時期に一度止めていたみたい。それで、僕が生まれてブラジルに戻ってきてから、また一緒にトレーニングを始めたんだ。ムエタイを始めたのが7歳のときで、10歳で父さんから勧められて柔術も始めたんだ。父さんは、今でも僕のトレーナーの一人なんだよ」 ──マツモト選手が首相撲ヒザが得意な理由が分かりました。試合のときにお父様がセコンドにつかれることも? 「ブラジルでの試合では、いつも父さんがセコンドに入ってくれてる。ずっと俺の側にいてくれたんだ。でもアメリカでは、ビザの問題で一緒に行くのが難しくて……。それが俺の夢のひとつなんだ、いつかアメリカでも父さんにセコンドについてもらうことが」 ──あなたの試合を見ると、バックボーンにはないレスリング技術、特に奥足のアンクルピックがとても巧みです。 「そう言ってもらえて嬉しいよ。UFCに入ってからは、もっとオールラウンドな選手になるために全力を尽くしてきたんだ。それまでは、ムエタイや柔術がメインだったけど、今ではレスリングのトレーニングも本格的に取り入れてる。実は、キューバ出身のレスリングコーチが俺のトレーニングをサポートしてくれてるんだ。彼はサンパウロにある『セスィ(SESI)』っていう公的な教育機関でレスリングのクラスを教えてるんだ。週に2回くらい、俺のために特別に指導に来てくれてる。俺のキャリアのために自分で投資して雇ってる、すごく信頼してる先生だよ。その成果が今のスタイルに出てるんじゃないかな。今の俺はコンプリートファイター"になってきてると思う」 ──前回の試合は短期のオファーでキャッチウェイトでしたが、かなり僅差の試合でした。特に1Rは、どちらに判定が転んでもおかしくなかったと思います。あの試合についてどう感じましたか? 「確かに、あの試合は急遽決まった短期のオファーで、しかもキャッチウェイトだった。でも、俺はあの試合を何度も見返して、自分では勝ったと思ってる。多くの人も俺が勝ったって言ってくれてる。結果がどうあれ、俺にとってはすごく大きな意味のある試合だったし、終わった後には前よりも大きく成長できたと思ってる。俺を支えてくれた人たちにとっても、あれは“勝利”だったと感じてるよ」 ──次の対戦相手、マイルズ・ジョーンズ選手についてどうとらえていますか。彼はレスリングベースのストライカーで強いオーバーハンドを持っています。 「もちろん、UFCの中にいる選手だから、彼の実力は十分にあるし、リスペクトしてる。でも、彼の試合を見ると、最初は打撃の展開を好むけど、ダメージを受け始めるとそこから変わってくるタイプに見えるんだ。僕がしっかりダメージを与えられれば、流れを変えることができると思ってるよ」 ──日本のファンにメッセージを。 「日本は僕の人生の中でも、いつか絶対に行ってみたい場所のひとつだよ。格闘技を愛する国だし、僕自身、日本に対して深い思い入れがあるんだ。ちなみに、サンパウロに『リベルダージ(Liberdade)』っていう、日本の文化が色濃く残ってる地区があるんだ。父さんと僕は、そこに年に1、2回は行って、少しでも日本文化に触れるようにしてるんだよ。  僕がオクタゴンに持ち込むのは、常に全力の戦いだよ。観てる人にとっても熱くなれるような試合をしたい。それが僕のスタイルなんだ。父さんがよく言うんだけど、『お前の血には日本人の血が流れてる、サムライの血だ』って。僕もそれを誇りに思ってる。人を敬い、いつも落ち着いていられるのは日本人の血が流れているからだと思っている。日本のファンのみんな、応援ありがとう。そして、みんなに神の祝福がありますように!」 [nextpage] ▼ミドル級 5分3R〇クリスチャン・リロイ・ダンカン(英国)12勝2敗(UFC5勝2敗)[1R 3分53秒 TKO] ※左スピニングバックエルボー→パンチラッシュ×エリク・アンダース(米国)17勝9敗(UFC9勝9敗) [nextpage] 【プレリミナリー】 ▼ライトヘビー級 5分3R〇ジュリアス・ ウォーカー(米国)7勝1敗(UFC1勝1敗)[判定3-0] ※30-26, 30-27×2×ハファエル・セフケイラ(ブラジル)11勝3敗(UFC0勝3敗) [nextpage] ▼バンタム級 5分3R ※選手名からインタビュー〇エライジャ・スミス(米国)9勝1敗(UFC2勝0敗)[1R 4分10秒 KO] ※スラム×風間敏臣(日本)11勝5敗(UFC1勝3敗)  風間は、2021年の『ROAD TO UFC』で中村倫也と決勝を争い、準優勝でUFCと契約。23年8月のUFCデビュー戦は、ギャレット・アームフィールドに1R TKO負けも、24年8月のハラランボス・グリゴリオウに2R、逆転の三角絞めでオクタゴン初勝利を掴んでいる。Me, Weに移籍して初の試合。28歳。  レスリングベースのスミスはMMA8勝1敗。2024年9月の『Contender Series 2024: Week 6』で欠場選手の代役として緊急出場。豪州XFC王者で当時無敗のアーロン・タウ(※RTU205でリオ・ティルトに1R KO勝ち)にアナコンダチョークを仕掛け、オーソからの右を当てるなどタフな試合を制して判定勝ち。  25年2月の前戦では、RIZINで元谷友貴に判定勝ちしているヴィンス・モラレスと対戦し、モラレスのダースやペルヴィアン・ネクタイ、終了間際のRNCを凌ぎ、ジャブ&ロー、右アッパーを効かせて判定勝ち。2012年、17年の『TUF』に出場した父・ギルバート・スミスが果たせなかったUFC初勝利を挙げている。MMA8勝のうち4KO・1一本勝ちをマークする22歳。  風間は、前戦序盤は相手にスタンドの間合いを作らせず、組みでコントロール。しかし、後半でスタンドで頭の位置が同じところを狙われ、3Rに左フックでダウン。ボトムでヒジを被弾しながらも三角絞めでタップを奪ったが、今回のスミスは身長・リーチともに風間より5cm長く、その打撃の回転力は『Fury FC 92』でのジョシュ・ウォルカー戦でも証明済み。さらにグラップラーのモラレスの首狙いを防ぐなど、これまで一本負けはない。  同時にレスリングベースの強いダブルレッグの組みのプレッシャーを軸にすることで、その際でモラレスに切り返され、リアネイキドチョークを狙われるなど、寝技で危うさも残る。風間は前回は立ち技の間合いを作らせず戦ったが、今回はスタンドで被弾せずに、自身も打撃を入れて組むことができるか。  風間のセコンドは中田大貴、良太郎、兄の風間大五郎。エライジャのセコンドには父ギルバート・スミスがつく。  1R、ともにオーソドックス構え。グローブタッチは無し。跳びヒザのスミスに風間は、テイクダウンからそのままニアマウント、背中を見せて立とうとするスミスのバックにつくが足をフックできず。前に落としたスミスはパウンド、ヒジ!  風間はディープハーフからスイープ狙い。さらに下から足を手繰って足関節に! ヒザ上に深く入るが、スミスはケージを一瞬掴んでバランスを保ち、ケージに手を当てて倒れることを防御。  50/50からサドルを組んでマトリックスで股下に通して崩した風間は内ヒールフック! ヒザを曲げたスミスはパウンドを入れて足を抜いてトップに。風間はハーフからフックガードに変えてチョイバース、腕十字へ。ここもヒジを曲げてパウンドするスミス。四つで抱きつく風間は三角絞めへ! 足を組みかけるが、それをリフトし高く持ち上げたスミスは、風間のアゴを固定してスラム!  風間が失神し、スミスのパウンドにレフェリーが間に入った。  正座して待ち、風間が椅子に座ると拍手したスミス。試合後のダニエル・コーミエーのケージの中でのインタビューでは、「まず何よりも、私はただ、対戦相手の無事を祈りたいだけです。彼が安全に帰宅できることを願っています。でも、最初から最後まで、私はグラウンドで相手についていける能力があることを知っていました。そして、ここに出てきて、これらのハイレベルなレスラーやグラップラーと渡り合えることを示したかった。私は今でも、彼らと同じくらい優秀です」と最初に風間を気遣い、そしてグラウンドでの自信を見せた。  続けてコーミエーから「これまでクイントン・ランペイジやジェラルド・ハリスがこのようなスラムを見せたが、これほど破壊的なものは見たことがない」と問われ、「正しくスラムを決めなければならないと分かっていた。彼が三角絞めを仕掛けた瞬間、良い三角絞めだと分かりました。それが彼の最後の試合で勝った方法です。あの状況に陥ったことは嫌ですが、強さとパワーで立ち向かうと確信していました。ボーナスを獲得するか、その話題に名を連ねたいと考えていました。だから、そのスラムがボーナスに食い込むことを願っている。 (22歳でエライジャ・スミスの限界は?)神のみぞ知る。どれだけ高くなるか。空は限界ではない。望む限り、銀河の果てまで行ける。集中し、強く、賢く戦い、怪我をしないようにすれば」と語った。  危険な姿勢でマットに叩きつけられた風間だが、試合後、病院へ直行しCTスキャンを受けた結果、異常無しと診断されたことが、実況で報告されている。 [nextpage] ▼女子バンタム級 5分3R〇ジョセリン・エドワーズ(パナマ)16勝6敗(UFC7勝4敗)※UFC3連勝[1R 2分24秒 TKO] ※左右フック→パウンド×プリシラ・カショエイラ(ブラジル)13勝7敗(UFC5勝7敗)  1R、ともにオーソドックス構え。エドワーズがダブルレッグも切るカショエイラは右で前に。カショエイラの指がエドワーズの左目に入りアイポークで中断。再開。  前に出るカショエイラの左右に左を打ち返すエドワーズだが、構わず前に出るカショエイラ。被弾しながらも圧力をかけるカショエイラに、エドワーズは左フックを当てる。  それでも前に出るカショエイラに、エドワーズは回転速く左フックをテンプルに、さらに右フックをアゴに打ち抜き、ダウンを奪うと、パウンド。レフェリーが間に入った。エドワーズはUFC3連勝。  試合後、エドワーズは「気分は最高で、あなたに言った通り、私の番です。プロの戦士のような人が周囲にいてくれて感謝しています。そして、本当に一生懸命働いてきた。これが結果です。 (カショエイラが被弾しても前に出ることに)全く驚かなかった。なぜなら、今週コーチたちが私を指導し、彼女を徹底的に研究したから。彼女は戦士の精神を持っている。常に攻撃的で、前へ前へと押し進むタイプだから。顎を上げて防御するスタイルなので、その隙を突いた。最初の攻撃は大きな一撃だったけど、もう一発入れて仕事を終わらせようと思いました。  シウバ、私はここにいる。あなたがいつ戻ってくるかは分からないが、私はここにいる。あなたが準備ができたら、私はここにいる。聞いて、私は自分を証明した。つまり、私は最強を倒せるし、最強と戦えることを証明した。私はここにいるし、準備はできている」と語った。 [nextpage] ▼ウェルター級 5分3R〇ウロシュ・メディチ(セルビア)11勝3敗(UFC5勝3敗)[1R 1分03秒 KO] ※左ストレート×ギルバート・ウルビナ(米国)7勝4敗(UFC1勝3敗)   1R、サウスポー構えのメディチにオーソのウルビナが右ストレート! 尻餅を着いてダウンしたメディチは蹴り上げからすぐに立つと、詰めるウルビナは左ミドル。  かわしたメディチは距離を取り、左ミドルを返すと、ウルビナはワンツーで前に。さらに右ミドルをかすめる。  右ミドルのウルビナに、メディチはワンツーの左ストレートを突く。ウルビナもワンツーからクリンチボクシングに。そこに首相撲ヒザはメディチ! 詰めて来たウルビナにメディチは左ストレート! ウルビナが後方にダウン! メディチが逆転のKO勝ち。 [nextpage] ▼女子フライ級 5分3R〇ガブリエラ・フェルナンデス(ブラジル)11勝3敗(UFC3勝2敗)[判定3-0] ※30-27, 29-28×2×ユリア・ストリアレンコ(リトアニア)11勝9敗(UFC2勝7敗)  1R、オーソのストリアレンコに、サウスポー構えのフェルナンデス。左ローを放つストリアレンコが圧力をかけて右ハイも。ガードするフェルナンデスに、オーソから左ローも。フェルナンデスの左の打ち終わりにシングルレッグのストリアレンコだが、かわすフェルナンデス。  右ジャブ、左ハイでけん制のフェルナンデスだが、詰めるストリアレンコが左差しで組む。突き放すフェルナンデスが中央に。左ミドルを突く。さらにストリアレンコの右に左ミドルを合わせる。さらに左ミドルに後退したストリアレンコ。前に出るフェルナンデスは左ボディストレート。さらに左を突き、左ミドルを当てたところでホーン。フェルナンデスのラウンドに。  2R、中央に出るストリアレンコ。ダブルレッグから小外を合わせて崩しに行くが、差し上げるフェルナンデスは右ジャブ、左ミドルハイ。左目尻から出血のストリアレンコ。フェルナンデスの蹴りを手で払いに行く。  ワンツーの左はかわしたストリアレンコだが、フェルナンデスは左のミドルハイ。ガードするストリアレンコは右を伸ばすが、かわすフェルナンデスは左の蹴り。さらに左ミドルハイでストリアレンコの右腕を突く。  シングルレッグから胴に組むストリアレンコ。左で差して右で小手巻きのフェルナンデスが突き放す。ここまで4度のテイクダウンをすべて切ったフェルナンデスは左インローから左ハイ! 上下に打ち分けるフェルナンデスに右手で辛うじてガードするストリアレンコ。ここもフェルナンデスのラウンドに。  3R、勢いよく中央に出るストリアレンコは左ジャブを連打でケージに詰まらせるが、右にサークリングのフェルナンデスは右ジャブ。上体を立ててストリアレンコのジャブを見切ってステップする。回って突くフェルナンデス。ストリアレンコの右の飛び込みをかわす。右ハイを打ったストリアレンコ。フェルナンデスの左の蹴りを掴んで両差しで押し込むが、ここも差し上げたフェルナンデス!  右のジャブでストリアレンコの左目尻を再び出血させる。右回りのフェルナンデス。ストリアレンコは右縦ヒジで前に。さらに右ミドルも。回るフェルナンデスは左ハイ。かすめたストリアレンコだが右ミドルをヒット。さらに左の蹴りは掴んだフェルナンデス。足を抜くストリアレンコに、フェルナンデスが左の蹴りを突いてホーン。ストリアレンコのラウンドだが、決定打に欠ける。  判定は3-0(30-27, 29-28×2)で、ストリアレンコの組みを切って左の打撃で制したフェルナンデスがUFC3連勝をマークした。 [nextpage] ▼ライトヘビー級 5分3R〇エリック・マッコニコ(米国)10勝3敗(UFC1勝1敗)[判定2-1] ※29-28×2, 27-30×コーディ・ブランデージ(米国)11勝8敗(UFC5勝7敗)※1Rにマッコニコが左でダウン奪う
全文を読む

MAGAZINE

ゴング格闘技 NO.341
2025年12月21日発売
大晦日決戦に臨むシェイドゥラエフと朝倉未来ほか「特集◎大晦日を読む」では、5大タイトルマッチのインタビューと川尻達也らが試合解説。UFC平良達郎、40周年記念・水垣偉弥インタビューも
ブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリアブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリア

関連するイベント