2025年7月20日(日)、沖縄コンベンションセンター展示棟にて、XBP株式会社主催のプロ柔術『EDGE Prologue(エッジプロローグ)』が開催された。 同日夜には『Ultimate Shooting』が開催されており、昼のプロ柔術、夜の打撃MMAと連続でケージにて試合が行われている。
「EDGE Prologue」は、「EDGE BJJ PRO CHAMPIONSHIP」の初回イベントで初大会はプレマッチとして厳選された3試合が行われた。ルールは、世界中の柔術大会で最も採用されているIBJJF(国際ブラジリアン柔術連盟)ルールを採用。前日計量、試合時間が6分、ケージで開催(※今回のみ)という部分のみIBJJFルールとは異なる。
「EDGE(エッジ)」は、選手たちの精神的な成長と変化を象徴する以下の4つのキーワードで構成されているという。
・Engage ― 向き合う。 未知の相手や自分自身と真正面から向き合う覚悟。・Discipline ― 自律する。 日々の鍛錬と内なる秩序を重んじる姿勢。・Grow ― 成長する。 勝ち負けを超え、柔術を通して進化し続けること。・Emerge ― 立ち現れる。 その闘いの先に、新たな自分として現れる瞬間
「“観る”だけではない、“感じる”柔術。EDGEは、競技としてのブラジリアン柔術に新たな光を当て、選手の存在とその生き様を物語として紡ぎ出す、新時代の格闘エンターテインメント」と謳う。
大会前にIBJJFルールのポイントシステムの説明が行われ、実演を、XBP格闘技プロデューサーの佐伯麻衣子、EDGEスペシャルサポーターガリットチュウ福島善成。解説をJIU-JITSU NAVI編集長新明佑介が務めた(text by JIU-JITSU NAVI, Photo by XBP)。
▼第3試合 男子黒帯ルースター級(-57.50kg) 6分×山本博斗(IGLOO)[ 0分20秒 ストレートフットロック]〇ウエノ・チアゴ(ALMA FIGHT GYM HOMIES GIFU)
高校時代から数々の大会で決勝を争い、これまでに8度の対戦歴を持つ両者。普段はプライベートで遊ぶという仲の良きライバルが数年ぶりに真剣勝負の場で再び顔を合わせた。これまでの対戦成績では、山本がわずかにリードしていた。
試合は、チアゴがフェイントから素早く山本の襟をつかみ、ガードプルでボトムへ移行。すかさずデラヒーバフックを作ると、そこから一気にフットロックを仕掛ける。
トップの山本は襟を握りながら必死にディフェンスを試みるも、チアゴは上半身を大きく反らせながら足を絞り上げ、強烈な圧力でわずか20秒という電光石火の一本勝ちを収めた。
友情とライバル心が交錯する一戦は、チアゴの圧巻の一本で幕を下ろした。
試合後、チアゴは「博斗さんと久しぶりで、今までやってきて負けた数が多かったんで、今回しっかり極めて勝ったのがとても嬉しいです」と語った。
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▼第2試合 男子黒帯ライトフェザー級(-64.00kg) 6分 〇野村優眞(PATO STUDIO)[レフェリー判定] ポイント0-0、アドバンテージ1-1、ペナルティ2-2×諸澤陽斗(オーバーリミット札幌)
ライバル決着戦。かつて青帯時代に対戦し、野村が勝利。さらに半年前のJBJJF全日本ブラジリアン柔術選手権では、諸澤がアドバンテージ差でリベンジを果たしていた。今回は、1勝1敗で迎えた因縁の決着戦。輝かしい戦績を重ねてきた野村と、茶帯全日本王者として頭角を現す諸澤。注目の一戦となった。
試合序盤、両者はダブルガードの体勢で牽制し合い、20秒ほどで両者にペナルティが与えられる。再開後も再びダブルガード。諸澤は袖を引いてデラヒーバフックを作り、主導権を握る。野村は全身を伸ばしてキックで距離を作り、引きつけに耐える。
しかし、展開の膠着を見たレフェリーは再び両者にペナルティ、アドバンテージもそれぞれに与える。中央からスタンドでの再開となり、諸澤は襟を持ちながらシッティングガードへ。野村はトップを選択し、上下が分かれる形となった。
諸澤は袖グリップを活かしたスパイダー、デラヒーバ、レッグラッソーと多彩なガードワークを展開し、スイープを狙う。野村は両袖をつかまれたままでも強引にパスガードを試みるが、諸澤は肩に足をかけ三角絞めの気配を見せるなど、鋭いカウンターで対応。決定的な突破は許さない。
しかし残り2分、野村が片袖の解除に成功すると、ここから怒涛の連続パスガードを仕掛ける。諸澤は片袖を残し、足と肩でバランスを取りながら巧みに防御。パスを許さぬまま時間が進んでいった。
ポイントは0-0、アドバンテージ1-1、ペナルティ2-2と完全に拮抗した展開の末、勝敗はレフェリー判定へ。手を挙げられたのは、最後まで攻め続けた野村。わずかな差をものにし、ライバル対決を制した。
勝利した野村は、「ギリギリの試合になるかとなんとなく予想していたので、とりあえず勝てて良かったです」と安堵の表情を浮かべた。
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▼第1試合 女子茶帯フェザー級(-58.50kg) 6分 〇へナータ・ハルミ(Infight Japan)[3分26秒 ハーフネルソンチョーク]×ソル・バン(MOON BJJ)
日系ブラジリアンのヘナータ・ハルミと、韓国のソル・バンによる注目の女子国際戦。両者はともに、6月19日-22日に開催されたIBJJFアジア柔術選手権に出場しており、悔しい結果に終わった鬱憤を晴らすかのように、この一戦に強い想いをぶつけた。
試合は、ヘナータがファーストコンタクトで襟をつかんでガードプル。序盤は襟を引いてプレッシャーをかけ、ソル・バンはこれに耐える形で試合が進行する。立ち上がろうとするソル・バンに対して、ヘナータはデラヒーバフックやクローズドガードを巧みに駆使し、上下のポジションを入れ替える展開に持ち込む。ケージ際に迫ったため試合は一時中断となり、この一連の動きでヘナータにアドバンテージが一つ加算された。
中央からの再開後は、両者がダブルガードの体勢に。先に起き上がったヘナータがさらにアドバンテージを得る。対するソル・バンは、キックスパイダーガードを用いてスイープを仕掛けるが、ヘナータはバランスを保ちながら腕を解除し、すかさずパスガードを狙う。ここでもアドバンテージを加え、着実にポイントを積み重ねていく。
さらに、トップポジションからガブりの体勢に入ったヘナータは、一気にバックへと移行し4ポイントを獲得。ソル・バンも懸命にマットを蹴って登りながらディフェンスを試みたが、ヘナータはしっかりとコントロールを維持し、横を向かせてダブルカラーチョークへ。そこからハーフネルソンチョークへと連携を見せ、3分26秒、一本勝ちを決めた。失意のアジア選手権から一転、ヘナータが見事な一本勝ちで再起を果たす結果となった。
インタビュアーは、ワールドマスター柔術選手権2023優勝、ヨーロッパ柔術選手権2025優勝という輝かしい実績のある”EDGEスペシャルサポーター”お笑い芸人ガリットチュウの福島善成。
福島から勝因を問われたヘナータ・ハルミは、「自分の流れを作るのが目標だったので、計画通り全部進めて良かったです。お父さん、ありがとう」とセコンドのヘナート・シウバNFIGHT JAPAN代表にハートマーク。続けて、「今日、初めて柔術を見る方もいるかと思いますが、見て頂いた機会として、また柔術を始めてもらえたら嬉しいので、お気軽に近くの道場に足を運んでみてください」と笑顔で語った。