2025年7月12日(日本時間13日朝7時~)米国テネシー州ナッシュビルのブリジストン・アリーナにて、『UFC Fight Night: Lewis vs. Teixeira』(U-NEXT配信)が開催されている。
メインのヘビー級で、UFC史上最多KO記録保持者のデリック・ルイス(米国)と、UFC2戦目ながらMMA8戦8勝(7KO・1一本勝ち)の全フィニッシュ勝利中のタリソン・テイシェイラ(米国)が対戦する同大会。 コメインのウェルター級ではベテランとなった“ワンダーボーイ”ことスティーブン・トンプソン(米国)が、2連勝中のボンフィム兄弟の弟・ガブリエル・ボンフィム(ブラジル・27歳)と対戦する。
▼ウェルター級 5分3Rスティーブン・トンプソン(米国)17勝8敗(UFC12勝8敗)170.5lbs/77.34kgガブリエル・ボンフィム(ブラジル)17勝1敗(UFC4勝1敗)171lbs/77.56kg
(C)Zuffa LLC/UFC
UFC最年長42歳のトンプソンは、元タイトル挑戦者。打っても打たれない巧みな打撃で、22年12月にケビン・ホランドにTKO勝ちで2連敗から再起も、23年12月にウズベキスタンのシャフカト・ラフモノフに2Rリアネイキドチョークで一本負け。24年10月の前戦では、ウェルター転向後4連勝中のホアキン・バックリーを相手に1、2Rを優勢に進めるも、3Rに逆転のTKO負け。今回は約2年半ぶりのノーランカーとの対戦となる。
対するガブリエル・ボンフィムは、同じUFCファイターの兄イスマエルの実弟。ボクシングベースで、17勝のうち3KO・13一本勝ちのフィニッシャー。LFAでの2連勝を経て、DWCSに出場し、ヴォンフルーチョークで一本勝ちでUFCと契約。UFCでは4勝1敗。UFC2連勝後、23年11月にニコラス・ダルビーに2R 逆転KO負けで初黒星も、24年7月にアンジュ・ルーサに判定勝ちで再起を遂げた。25年2月の前戦ではケイオス・ウィリアムスに2R ダースチョークで一本勝ちしている。27歳。
U-NEXTから届いた両者の会見での一問一答を紹介したい。
「新しい世代には『勝ちたいなら、自分に勝ってみろ』と思ってる」
(C)Zuffa LLC/UFC
──トンプソン選手、多くの記者が集まっています。
「本当、すごい人数ですね。ちょっとびっくりしてます。いい意味で(笑)」
──今回の試合の対戦相手のガブリエル・ボンフィム選手は連勝を重ねている良い選手ですが、トンプソン選手のこれまでの対戦相手と比べるとレベルが違うようにも感じます。
「そうですね……自分が今の位置に来られたのは、ジェイク・エレンバーガー、ジョニー・ヘンドリックス、ローリー・マクドナルドといった選手たちが、当時まだランキングが低かった自分にチャンスをくれたからです。
最近は、ランキングを守りたがる選手が多いけど、自分はそういう若手にチャンスをあげたいタイプなんです。ビセンテ・ルーケ、ジェフ・ニール、ケビン・ホランドともやりましたし、それが自分のモチベーションにもなってる。プレッシャーにもなるけど、いい刺激になってます」
──ガブリエル・ボンフィム選手が「自分はトンプソン選手の試合を観て育った」と話していました。それについてどう感じましたか?
「最高ですね、ほんとに。自分の地元には自分の動きを見てる子どもたちが600人くらいいるんです。そういう子たちに見られてるだけでも光栄なのに、UFC選手の中にも『影響を受けた』っていう選手がいるのは、本当に嬉しい……でも同時に“歳を取ったなあ”って感じもしますけど(笑)。でもやっぱり、嬉しいですよね」
──今回、オッズでは大きなアンダードッグとされています。気にされてますか?
「いや、まったく気にしてないです。そういう数字は昔から見ないようにしてきたので。自分が土曜日にやるべきことは分かってるし、長年この競技に関わってきた経験もある。それに、自分はいまUFCで最年長(42歳)の選手なんですよ。それもある意味クールですよね」
──対戦相手のガブリエル・ボンフィム選手の印象を。
「ガブリエル・ボンフィムは危険な選手で、特にダースチョークが強いです。あの絞めはまるで体を真っ二つにされそうな感じです(笑)。でもそのために万全の準備をしてきました。ローリー・マクドナルドも来てくれたし、ロレンツ・ラーキンとも良いキャンプができたので、準備は完璧です」
──ちょっと早い質問かもしれませんが……理想の引退試合を考えることはありますか。
「うーん、引退試合で誰と戦いたいかっていうよりも、“どこでやりたいか”っていうのはあります。ホワイトハウスで試合できたら最高ですよね(笑)。今みんな言ってますけど、マクレガーも『オクタゴンに戻ってホワイトハウスでやる』って言ってたし、自分もその場にいたいと思ってます。でもまあ、今はこの試合に集中してますし、契約もあと2試合残ってるので、それをしっかりやり遂げたいです」
──イスラム・マカチェフ選手がウェルター級に来たとして、仮にトンプソン選手がJDM(ジャック・デラ・マダレナ)に勝った場合、次は誰と戦うべきだと思いますか?
「タイトル戦ですよ、間違いなく。正直、トップ5にいる選手たちは怒ってるんじゃないですか? イスラムがウェルターに上がってきて、すぐチャンスをもらえるなんて納得いかないと思う。本来なら、もっとふさわしい選手がいるはずだし、自分だったら、“あと1、2試合やって、まだチャンピオンだったら階級を上げよう”って考えますね。イスラムにとっても、これは厳しいマッチアップだと思いますよ。JDMはテイクダウンディフェンスが強いし、体も大きい。自分がミドル級でクリス・ワイドマンとやるようなもんで、相手がデカすぎる。そんなのやらないですよ、自分なら。
JDMがベラル・ムハンマドからベルトを取ったわけですけど、ベラルもイスラムに似たスタイルですからね。でもベラルはレスリングを出しきれなかった。JDMのテイクダウンディフェンスはほんとに素晴らしかった。フィジカルも強くて、パンチも重い。イスラムにとっては、かなり危険な相手ですね」
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昔と違うのは、今は誰もがオールラウンダーになってること
(C)Zuffa LLC/UFC
──名前の下に「ナイスガイ」って書かれてたんですが、実際に入ってきたときに「ヒゲかっこいいね」って言ってくださって(笑)。あなたは、UFC史上いちばん“いい人”と言われてますけど、オクタゴンの中ではまるで別人のように戦う。これって切り替えてるんですか? それともバランスとして両方ある感じですか?
「うーん、スイッチって言えるのかどうか……。自分はもう27年この格闘技の世界にいて、何をしなきゃいけないかは分かってるんです。オクタゴンに入ったらビジネスですから。もちろん中には、ジェフ・ニールの足をうっかり踏んで倒れちゃったときみたいに、“いや、それは正当じゃないな”って思って“立つ”って言ったこともあるんですよ。でも、ケビン・ホランドに初回で思いっきりもらったときは…そのときはスイッチ入りましたね(笑)。
だからまあ……はい、やっぱりスイッチ入りますね。頭の中には“ここまで一緒に準備してくれた仲間たち”のこともありますし、背負ってるものもありますし。だから、やるべきことをやる、それだけです」──27年格闘技をやってきて、最年長のUFCファイターとなった今、トレーニングキャンプに対する考え方はどう変わりましたか?
「気持ちは今も変わってないです。でも、練習の仕方はかなり変わりましたね。15歳でキックボクシングの試合に出た頃なんて、何本練習しても疲れ知らずで、ずっとフレッシュでいられたんです。でも今は、自分の体の声をちゃんと聞かないといけない。練習よりもリカバリーに時間をかける。フィジカルセラピー、マッサージ、アイスバス……とにかく“”怪我せずにファイトウィークをむかえる”っていうのが今の目標です。前回、バックリー戦では首を痛めて左半身が効かなくなって、スパーできなかったんですよ。重りも右は110ポンド上げられてたのに、左は40ポンドすら持ち上げられなくて。だから今回は、信頼できる仲間たちと、ちゃんとケアしながらやってきました」
──年齢についての質問もありましたが、どう感じてますか? 特に今も速さを感じることはありますか?
「いやー、正直、自分は年齢のことあまり考えないんですよね。気持ちは25歳の頃と変わってないし、回復は遅くなったけど、スピードもキレもまだまだいける。バックリー戦でも調子は良かったんです。ただ、一発もらっただけで。ただ、昔と違うのは、今は誰もがオールラウンダーになってることですね。昔はスペシャリストが多かった。アンデウソン・シウバは打撃、デミアン・マイアは柔術、みたいに。今は、誰もが全部できる。ローリー・マクドナルドが“全局面強い”って言われてた時代から、今はそれが当たり前になってる。自分もまだ進化し続けてるし、新しい世代とやることで、それを実感しています。でも彼らには“勝ちたいなら、自分に勝て”と思ってます。それだけの価値がある相手になりたいんですよ、自分は」
(C)Zuffa LLC/UFC
──ほかのスポーツと違って格闘技は個人競技ですが、それでも“後進にバトンを渡す”意識はありますか?
「もちろんありますよ。オクタゴンの中でも外でも、それはできます。自分は良いファイターとしてだけじゃなく、良い人間だったと思われたいんです。たとえば今回、ガブリエル・ボンフィムに負けたら、それは彼がちゃんと勝ち取った結果だと思うし、それを讃えたい。でも同時に、自分自身を試すチャンスでもあるんですよね。タイトルは今すぐ手が届くところにはないかもしれないけど、常に心の中にはあります。でも一番大事なのは、“自分がどこまで強くなれるか”。そのためにキャンプを積んで、若手と戦って、自分のスキルやメンタルを磨いていく。それが今の自分の挑戦です。そして、その挑戦の中で、彼らに“今の自分”をぶつけることが、自分なりのバトンの渡し方だと思ってます」
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ガブリエル・ボンフィム「俺がMMAを始めた頃には、もうすでに彼はレジェンドだった」
(C)Zuffa LLC/UFC
──今回はあなたにとって大きな試合になります。レジェンドとの対戦ですが、どのような気持ちですか?
「正直言って、すごく嬉しいし、誇りに思ってる。ブラジルを代表して“ワンダーボーイ”っていうレジェンドと戦えるなんて、光栄なことだよ」
──対戦相手であるワンダーボーイについては、どう思いますか? 彼はこの階級の生きる伝説と言われています。
「俺がMMAを始めた頃には、もうすでに彼はレジェンドだった。そんな選手と今こうしてオクタゴンで向き合えることが信じられないくらいで、本当にすごい気持ちだよ」
──もしこの試合に勝てば、ランキング入りは確実だと思います。タイトル挑戦までには、あと何勝必要だと考えていますか。
「トップファイターに2勝できれば、タイトル戦線に十分手が届くと思ってる。ワンダーボーイとの試合は、その第一歩だよ」──あなたの階級にイスラム・マカチェフがやってきました。彼がウェルター級で成功する可能性はあると思いますか?
「正直、簡単じゃないと思う。ジャック・デラ・マダレナとか最初の相手としてはそこまで難しくないかもしれないけど、トップ5の壁は厚い。かなり厳しい戦いになるはずだ」
──かつての自分が今の状況を見たらどう感じると思いますか?
「ワンダーボーイの試合を見て育ったんだ。いま夢が現実になったって感じだな。まさか自分がワンダーボーイと戦う日が来るなんて、昔の俺なら想像もしてなかった。本当に感謝してる。UFCがこのチャンスをくれたことにもね」
──2戦前にニコラス・ダルビーに敗北を喫しましたが、そこからどのような学びを得て、今2連勝につなげているのでしょうか?
「あの負けは、俺にとって必要な経験だった。戦う男として、人間としての成熟をくれた試合だったと思う。そこからたくさんのことを見直すきっかけになったし、すごく成長できた」
──今回のキャンプでは、これまでと比べて自信につながったポイントはありますか?
「俺たちのチームは毎回、進化を目指して準備してる。教えてくれる人たちがいつも言うんだ、『常に良くなろうとすることが大事だ』って。今回のキャンプでも、それを意識して積み重ねてきたよ」
──その「常に進化しようとする姿勢」は、どうやって維持しているのですか?
「メンタルが一番大事だと思ってる。これは格闘技だけじゃなくて、人生全体にも通じることだ。俺のコーチたちは、いつも全方位的に成長させようとしてくれる。そのおかげで、毎回進化できてるんだと思う」
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『UFC Fight Night: Lewis vs. Teixeira』全カード
2025年7月12日(日本時間13日)米国テネシー州ナッシュビル ブリジストン・アリーナ
▼ヘビー級 5分3Rデリック・ルイス(米国)28勝12敗(UFC19勝10敗)タリソン・テイシェイラ(ブラジル)8勝0敗(UFC1勝0敗)
▼ウェルター級 5分3Rスティーブン・トンプソン(米国)17勝8敗(UFC12勝8敗)ガブリエル・ボンフィム(ブラジル)17勝1敗(UFC4勝1敗)
▼フェザー級 5分3Rカルヴィン・ケイター(米国)23勝9敗(UFC7勝7敗)スティーブ・ガルシア(米国)17勝5敗(UFC6勝2敗)※UFC5連勝5KO
▼フェザー級 5分3Rネイト・ランドウェア(米国)18勝6敗(UFC5勝4敗)モルガン・シャリエール(フランス)20勝11敗(UFC2勝2敗)
▼ヘビー級 5分3Rヴィトー・ペトリーノ(ブラジル)11勝2敗(UFC4勝2敗)オースティン・レーン(米国)13勝6敗(UFC1勝3敗)
▼ライトヘビー級 5分3Rジュニア・タファ(豪州)6勝3敗(UFC2勝3敗)トゥコ・トコス(英国)10勝5敗(UFC0勝2敗)
【プレリム】
▼ウェルター級 5分3Rクリス・カーティス(米国)31勝12敗(UFC5勝4敗)マックス・グリフィン(米国)20勝11敗(UFC8勝9敗)
▼ウェルター級 5分3Rジェイク・マシューズ(豪州)21勝7敗(UFC14勝7敗)チディ・エンジョクアニ(米国)25勝10敗(UFC5勝3敗)※UFC3連勝中
▼女子フライ級 5分3Rローレン・マーフィー(米国)16勝6敗(UFC8勝6敗)エドゥアルダ・モウラ(ブラジル)11勝1敗(UFC2勝1敗)
▼ヘビー級 5分3Rケネディ・ンゼチュク(ナイジェリア)14勝5敗(UFC8勝5敗)※UFC2連勝2KOヴァルテル・ウォルケル(ブラジル)13勝1敗(UFC2勝1敗)
▼ライト級 5分3Rミッチ・ラミレス(米国)8勝2敗(UFC0勝1敗)マイク・デイビス(米国)11勝3敗(UFC4勝2敗)
▼女子ストロー級 5分3Rファティマ・クライン(米国)7勝1敗(UFC1勝1敗)メリッサ・マルティネス(メキシコ)8勝1敗(UFC1勝1敗)