2025年6月27日(金)東京・後楽園ホール『Krush.177』にて、Krush初のオープンフィンガーグローブマッチが7試合行われる。
Krush-OFGスーパー・バンタム級3分3R延長1Rで対戦する、岩尾力(POWER OF DREAM)と鈴木太尊(クボジム)のインタビューが主催者を通じて届いた。
岩尾は2014年7月にK-1 JAPAN GROUPに参戦すると、亀本勇翔、西京春馬に勝利したが2015年5月に朝久泰央に敗れた。その試合を最後にWINDY SUPER FIGHT、蹴拳、Bigbangなどの他団体に出場。バイク事故で大怪我を負い、2022年8月のKrushで約4年半ぶりの復帰を果たすと4連勝(3KO)の快進撃を続けていたが、2024年9月に鬼山桃太朗に判定負け。2025年2月、河野直次郎をKOして再起を果たした。武居由樹が「マジの天才」と評価する。戦績は16勝(9KO)4敗1分。
対戦する鈴木はジュニア出身で、2018年11月にプロデビュー。谷山ジム小田原道場所属で『Bigbang』を主戦場としていた。Krushには2度参戦し、2024年4月に坂本寿希、2025年4月に遥心にいずれも敗れている。戦績は6勝8敗4分。
岩尾「「KOで決まるのは確かだと思うけど…」
──5月28日のカード発表会見で、対戦相手の鈴木太尊選手と顔を合わせて、どう思いましたか?
「何か、ガチガチに緊張してましたね。声も震えてる感じだったので、『ちゃんと戦えるのかな?』と心配になりました」
──鈴木選手本人は記者会見そのものに緊張したらしいですけどね。岩尾選手自身は、この対戦をどう受け止めていますか?
「相手は自分で決められるわけでもないし、戦績とかは関係なく、一人一人組まれた相手を倒していって自分の価値を上げていくしかないですからね。下馬評的にはみんな自分の方が上と思っているかもしれないですけど、僕は今回受けてくれた鈴木選手には本当に感謝していますし、組まれた相手なので油断せずにしっかり確実に倒すというのが今回のテーマだと思っています」
──鈴木選手について、ここに気をつけようという部分は?
「そういうものは特になくて、今回はいくつか自分の中でテーマがあるんですよね。練習でやっているボクシングだったりという技術がどれだけ試合の中で試せるかというのもその一つなので、『こういうのをもらったら危ないな』とかは全くないですね。それは鈴木選手だからとかではないんですけど」
──そのテーマの中で、オープンフィンガーグローブ(OFG)というのはどれぐらい関係していますか?
「OFGに関しては、もらう怖さとかは全くなくて、逆に当たれば確実に倒せるので、当てるポイントとかタイミングとかを練習してきました。自分がどれだけ的確に当てて倒せるかという練習はたくさんしてきたので、そこに注目してほしいですね」
──通常のボクシンググローブと、一番違いを感じるのはどの部分ですか?
「やっぱり、自分の拳も痛めちゃうってところですね。そこが心配です。練習でも当たる感覚とかはけっこう掴めているので。小っちゃいので、打ち方とかは少しこだわって練習してきました」
──通常のグローブでも、試合で拳をケガしていましたよね。
「そうなんですよね。今回の試合で勝ってすぐに次のステージに行きたいので、ケガせずに勝ちたいですから」
──Krushでの復帰戦から、もうすぐ3年が経ちます。自分では、この3年間についてはどう感じていますか?
「復帰して3試合(22年8月~23年7月、いずれも1RKO勝利)は全然手応えがなかったんですけど、5戦目の鬼山桃太朗戦(24年9月)で負けちゃって。確実に勝てるはずだった相手にああいう負け方をしちゃうというのは、自分の中ですごく悔しかったのも確かなんですけど、あそこで一回負けたということを自分の中ではすごくプラスに捉えているんですね。あの負けは、自分の中ではよかった負けなんです。あそこからいろいろとスタイルを変えて、それが次にまたKO勝利できた(2月、河野直次郎戦)ことにつながったなと思います。今は格闘技が楽しいです」
──そうなんですね。
「楽しいですね。自信もありますし、今は格闘技が一番楽しい時期ですね」
──このキャリアでそんなに楽しめているというのはいいですね。
「そうですね。16歳の時とかは好きなことしながら格闘技をやってて、チャランポランな時期もあったんですけど、今は家族もできて、守るものができてからは子供たちが一番自分の試合を楽しみにしてくれているので。だから早く家にベルトを持って帰りたいです。子供たちにも言われているので」
──お子さんはおいくつなんですか?
「一番上が5歳、次が3歳、下が7カ月です。上2人はいろいろ分かってきているので、そろそろPOWER OF DREAMに入門の時期ですね」
──そうですか!
「僕の影響で、家でも毎日グローブ着けてます(笑)。自分も幼稚園の頃から空手をやってて、それは父がやってたからなんですよね。自分も親の影響でそうやって育ってきたので、子供たちも自分を見て、自然とそういう環境になってましたね」
──楽しみですね。
「そうですね。僕がしっかり勝たないと、カッコいい親父でいられないので。そういう面でも、モチベーションも違いますね。僕には格闘技しかないですし」
──今はチャンピオンへの道がハッキリ見えていると思うんですが、その中でOFGでの試合はどういう位置付けですか?
「自分もK-1だけに止まらず、いろんなところで戦っていきたいので、OFGは経験としてムダじゃないなと思いますね。MMAをやるつもりはないですけど、今はいろんなところが盛り上がっているので。自分はK-1が好きだし、やめたりとかは考えてないですけど、どんな話が来てもいいように準備しとくのは悪くないかなと」
──今回、最終的にはどう勝ちたいですか?
「KOで決まるのは確かだと思うんですけど、油断せず確実に、いい勝ち方をしたいですね。会場が盛り上がる試合をしたいです」
──では最後に、改めて今回の試合へ向けての“決意”を教えていただけますか?
「Krushでは初のOFGですが、その中でも一番注目されているのは自分だと思うので、しっかり皆さんの期待に応えられるような試合をして、しっかりベルトにつなげたいと思います」
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鈴木太尊「ギャンブルの強さには自信あるっす」
──5月28日に岩尾力選手と同席したカード発表会見がありましたが、あの時、ガッチガチに緊張してましたよね?
「ハハハ! 緊張してました(笑)」
──ですよね。あんなにガチガチになっている人を、久々に見たという感じでした(笑)。
「そうですよね。あんまりしゃべるのが得意じゃなくて、ああなっちゃいました。会見自体も、一度だけ他団体で出たことはあるんですけど、ほぼ初めてみたいな感じで」
──では、岩尾戦だからということではなく、会見自体の緊張だったということですか。
「そうですね、会見だから緊張してました。ただ、自分は岩尾選手のことを『怖い』とよく言っているので、それも重なっちゃった感じになって、そういう見え方になってたかもしれないですけど」
──なってたと思いますね(笑)。今回、岩尾選手が「出場予定」と発表されていて、あとから対戦相手として鈴木選手が決まりました。オファーを受けた時はどう思いましたか?
「連絡が来たのが、バイト中だったんですよ。3回ぐらい携帯が鳴ったので、ちょっとだけ見たんですね。そしたらジムの久保賢司代表からで『ヤバい相手からのオファー来たよ』というところだけは分かって、『誰だろう?』とメッチャ気になってたんですけど、細かいことは終わってから見ようと思って。それでバイトが終わってから見てみたら岩尾選手ということで。『うわ、マジか!』とは思ったんですけど、すぐに『やりたいです』と返しました」
──オファーを受けることには躊躇はなかった?
「そうですね。やっぱり格闘技だから、強いヤツとやれたら面白いじゃないですか。しかも岩尾選手って昔から知ってる選手で名前もあるし、そんな選手とできるのか! と思ってワクワクして受けました。まあ、今となってはちょっと後悔してるんですけど(笑)」
──そうですか(笑)。では、試合への気持ちとしては「チャレンジ」という感じですか?
「というよりは『ギャンブル』ですね」
──ギャンブル!
「ぶっちゃけ実力差はあるし、試合が近づいた今もそれを埋められたとは思ってないんですよ。ただ、負けるつもりはないんで。今回はギャンブルだと思って、やろうかなと思っています。自分、普段ギャンブルはやらないんですけどね」
──自分はギャンブルが強い方だと思いますか?
「強いですね。周りの友達はパチンコとか競馬とか好きなヤツが多くて、けっこうやってるんですね。1年に1~2回ぐらい、付き合いで自分もやることがあるんですけど、そこで負けたことがなくて。毎回勝ってるっすね。なので、ギャンブルの強さには自信あるっす。あとは当日の自分に任せようかなと」
──改めて、岩尾選手のどこに一番強さを感じますか?
「俺は、全てが強いと思ってますね。スピードもパワーもテクニックもあって、パンチも蹴りもできるし、本当に強いと思います」
──その中で、「穴」は見つけていますか?
「どうすかね?(笑)自分を出せれば……これもギャンブルっぽくなっちゃうかもしれないですけど、勝つ気ではいるんで。ただ、バカみたいに突っ込もうとかは考えてなくて、ある程度の作戦はあるっちゃあります。でもやっぱり実力差はあるので、それが通じるかはやってみなきゃ分からないですよね。最後は気持ちの勝負になっちゃうなというのはありますね」
──その作戦は、久保賢司代表と作っているんですか?
「そうですね、久保代表とジムの仲間と一緒に。あとは自分が練習している中で、『これはいけるんじゃないか』と思っていることはあります」
──では、その作戦が遂行できれば、勝利への道はあるはず?
「いや、それを覆してくる実力を持った相手なので、だから本当に気持ちだと思ってますね」
──久保代表からは、試合について何か言われていることはありますか?
「このジムに移籍してから半年で、今回が2戦目になるんですけど、相手に対してどうというよりは、今、俺が持っているんだけどまだ出せていない武器を磨いてくれているというか。それを引き出してくれている感じですね。いい環境で練習させてもらっているので、強くなっているという手応えはあるんですけど、この前の試合(4月大会、vs遥心)は負けちゃって。でもまだ気持ちは折れてないので」
──今の練習環境は、どんなところによさを感じていますか?
「代表の賢司さん、ボクシングでもムエタイでもチャンピオンになっているポンサワンさん、久保優太さんもいますし、チームメイトもいろんな団体に出ている選手が集まっているジムで、いろんなスタイルがいるので、いい環境だなと思います」
──選手によっては、相手のことをものすごく強いとイメージしておく場合もあるといいます。そうすると試合の時に「思ったより強くない」と思えると。
「自分もいつもそういう考え方で、相手のことはメチャメチャ強いと想定していて、やっぱり当日は『こんなもんか』と思ってます。試合までは想像して怖くなって、眠れなくなることとかもあるんですけど、今回はいつもとちょっと違う感情なんですよね。『怖い、怖い』とずーっと言い続けてきたからか分かんないんですけど、今はちょっと楽しみになってきました」
──一周回った?
「そうかもしれないです(笑)。今も若干怖さはあるんですけど、楽しみみたいな変な感情もありますね」
──岩尾選手はすごいKOも目立ちますが、昨年は鬼山桃太朗選手にダウンを食らって判定負けした試合もありました。また、一昨年暮れの内田晶戦では捕まえきれずに判定までいきました。そのあたりは参考にはなりますか?
「参考になる部分はあるんですけど、鬼山選手や内田選手とはスタイルも違うので、同じことをやればいいというわけではないので」
──自分が勝つイメージは作っていますか?
「もちろん!(笑)」
──やっぱり最後は気持ちですか。
「そうですね、気持ちです。あと、6月27日は母親の誕生日なんですよ。会場に応援にも来てくれるので、勝ってリング上からお祝いの言葉を言いたいですよね。そこはモチベーションになっています」
──では最後に、改めて今回の試合に向けての“決意”を教えていただけますか?
「実力差はあるし、それが最初の会見から埋まったとも思ってないし、むしろさらに差をつけられているとも思うんですけど、やっぱり自分は負ける気が一切しないので、気持ちで全部ひっくり返してやろうと思っています」