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インタビュー

【UFC】U-23優勝、UFC4連勝中のボー・ニッカル「タイガー・ナイトウのことは知っている」「米満達弘、堀口恭司、中村倫也らをリスペクトしている」「結果よりも『全力を出し切ること』に集中」

2025/05/03 22:05
 2025年5月3日(日本時間4日朝8時~)米国アイオワ州デモインのウェルズ・ファーゴ・アリーナにて『UFC Fight Night: Sandhagen vs. Figueiredo』(U-NEXT配信)が開催される。 ▼ミドル級 5分3Rライニアー・デ・リダー(オランダ)19勝2敗(UFC2勝0敗)13位 185.5lbs/84.14kgボー・ニッカル(米国)7勝0敗(UFC4勝0敗)※UFC4連勝中 185.5lbs/84.14kg  コメインでは、元ONE二階級制覇王者のライニアー・デ・リダーと、NCAAディビジョン1優勝、オールアメリカン4度、U-23レスリング世界選手権92kg級優勝で、現在UFC4連勝中のボー・ニッカルが対戦するミドル級の注目カードが組まれた。  本誌初登場のニッカルにインタビューした。 僕はペンシルベニア州立大学の代表だけど、同時にレスリングの代表でもある ──ボー・ニッカル選手、ファイトウィークに入って調子はいかがですか。 「元気だよ、調子もいい」 ──今回の試合に向けたキャンプは、アメリカン・トップチームでどんな環境でトレーニングをしましたか。 「いろんな選手とトレーニングしているよ。特に一緒にやったのはローマン・フェラルド、ジョニー・エブレン、アントニオ・カルロス・ジュニール(※5月1日のPFLライトヘビー級トーナメントで勝利し、準決勝進出)とも時間を過ごしたかな。あとはコーチのチアゴ・アウベスやマイク・ブラウンともみっちりやった。すごくレベルの高い選手たちと一緒に練習できて、すごく良かったよ」 ──エブレンも高校、大学レスリング出身でしたね。NCAAといえば、今回ニッカル選手のNCAA時代の試合をいくつか見返しました。2018年のマイルズ・マーティン戦では、相手のシングルレッグテイクダウンをブリッジから首を抱えてリバーサルして、フロントギロチンのようにピンしての逆転勝利で、ものすごい歓声が沸いていました。カレッジレスリングのあのファンがいる米国で、なぜUFCでさえもグラウンドでときにブーイングが出るのだろう、と不思議に思いました。レスリングとMMAで観客の反応が違うことについて、どう感じていますか。 「そうだね、確かに違うよね。観客の数や熱量は似てるんだけど、レスリングファンってすごく知識があるし、自分でも競技をやってた人も多い。長く観てる人も多いしね。一方で、MMAファンの中には競技を見始めたばかりの人もたくさんいるから、まだ理解が浅い部分もあると思う。  でもこうして、レスリングについて聞いてくれる。だから日本の文化ってすごく好きなんだ。日本のファンは選手をリスペクトしてくれて、MMAのあらゆる側面をちゃんと評価してくれるからね。もし機会があれば、日本で試合をしてみたいって本気で思ってるよ」 ──それはこちらもぜひ、生でニッカル選手の試合を観てみたいものです。ところであなたは、数々のアイオワのレスラーたちと対戦してきたわけですが、今回のUFCでの観客の反応はどうなると考えますか。 「分からないけど、当初、この試合について考えたとき、過去にアイオワ州のレスラーを何人も倒してきた僕のことをあまり好きではない人も多いだろうと思っていたんだ。でも、デモインにいて食料品を買いに行ったり、一般の人たちと一緒に歩いているだけで、本当にいい反応をたくさんもらっている。もしかしたら、大学では僕の大ファンではなかったかもしれない人達と交流し、それがレスリングコミュニティと自分が密着しているように感じるんだ。僕はペンシルベニア州立大学の代表だけど、同時にレスリングの代表でもあり、それをMMAで行うことが本当に幸せだ。だから、僕はたくさんの愛とサポートを感じているよ」 ──今年のペンシルベニア州立大学の結果をどう表現しますか?(※2025年3月の全米学生(NCAA)選手権でペンシルベニア州立大が2位のネブラスカ大(117点)を大きく引き離す177点をマークし、4年連続13度目の優勝を果たした)。 「ペンシルベニア州立大学のレスリング・プログラム、そしてカエル・サンダーソン監督が成し遂げたことは、かなり信じられないことだよ。僕は5年間、そのプログラムの一部だったことに感謝しているし、今でもそのトレーニングやワークアウトを続けている。だから僕は、アスリートとしてその内側と外側を一歩引いて見ることができる。これは素晴らしいことだ。特別な人たちの集まりのなかで、それを本当に前進させ、新たなレベルに持っていくことができたことに対して、とてつもない量の感謝が必要だと感じているよ」 ──そのペンステートのレスリング部のことでひとつ聞きたいことがありまして……。昔、“タイガー・ナイトウ”と呼ばれた日本人がキャプテンを務めたことをニッカル選手はご存知ですか? 「うん、もちろん知ってるよ!」 ──! その名前はどこで知ったのですか? 「僕、レスリングの歴史が大好きで、スポーツの研究が趣味みたいなもんだから。過去の偉大な選手たちはいろいろ調べて学んでるよ。ナイトウ選手は、オリンピックメダリストだよね?」 ──まさしく。今から100年前の1924年パリ・オリンピックで日本レスリング界初のメダルを獲得した、その内藤克俊選手がペンシルベニア州立大学でキャプテンを務めたと記録にはあります。 「アジア人に対していまのような理解が無かった時代にペンステートでキャプテンに選ばれたのだから、とても信頼されて実力もあったのだと思うよ。その後の日本人選手たちにも道を切り拓いたのだと思うよ」 ──はい。その後、大石八郎、高田裕司、佐藤満氏、そして米満達弘コーチがコーチ留学していますよね。 「米満とは一緒に練習したし、すごくいいパートナーだったよ。教えるのも上手で尊敬してる。そして小野正之助(男子フリースタイル61kg級世界王者)、彼はこれからペンステートでレスリングをするんだけど、僕も一緒に練習したし、試合のセコンドもした。若いのに本当に才能があって、将来が楽しみだよ!」 ──ニッカル選手はレスリングを通じても、日本人選手とも交流があるのですね。ところで、カレッジでのフォークスタイルレスリングとオリンピックレスリングでは、フォークスタイルの方がMMAに近いと聞きます。その理由をニッカル選手はどう考えますか。 「そうだね、一番の違いはテイクダウンの後だと思う。フォークスタイルではテイクダウン後に逃げるか、相手を押さえ続けないといけない。審判が止めたりはしないからね。その押さえ込み方もクラッチし続けるオリンピックスタイルとは異なる。逆にオリンピックスタイルでは、10~15秒くらいでブレイクで立たされる。だからオリンピックではテイクダウンの得点が大事なんだけど、フォークスタイルではグラウンドの攻防もすごく重要になる。そこがMMAに似てると思うよ」 ──テイクダウン後にいかにコントロールしながら殴るか、あるいは立ち上がるかというMMAに通じるものがあると。一方で、その攻防をしなくてもいいのがMMAです。前回のポール・クレイグ戦でニッカル選手は、スタンド主体の戦いでした。それは事前のゲームプラン通りだったのですか? 「うん、それが僕のプランだった。僕は打撃にも自信があったし、相手は寝技が強い選手だった。僕は自分の強みを活かしたかったんだ」 [nextpage] 堀口恭司は、MMA選手としてすごく強くなっているんだ ──クレイグ戦の経験は、同じく寝技師である今回のライニアー・デ・リダー選手との試合に向けてもいいシミュレーションになったのでは? 「間違いなくいい経験になったよ。僕にとって初めて判定までもつれた試合だったし、15分間戦ったことで自信もついた。学びも多かったね」 ──今週末の対戦相手のデリダー選手はONEでも活躍したタフな対戦相手です。 「デリダーを見ていると、柔術の話も当然出てくると思う。彼は何度も何度もサブミッションでフィニッシュしている。グラウンドでとてもクリエイティブだ。、ハイレベルなスキルを持っている。彼は柔道の黒帯も持っているから、クリンチのアドバンテージとして投げ技も使うことができる。そして、彼の打撃を見ると、本当にいいジャブを持っていて、左ストレートはかなり強い。グラウンドでもクリンチでも、足技でも。だから、僕はそれを利用しようと思っている。チームと僕のゲームプランでは、それができると感じている。だから、ベルからベルへ、気合を入れて戦うのが楽しみだよ」 ──ファイトキャンプ中に、これまでとは異なることもしましたか? 「そうだね、今回のキャンプでは少しバルクアップした。体重を少し増やしたんだ。デリダーは大きな男だ。彼は205ポンド(ライトヘビー級)と265ポンド(ヘビー級)で戦ってきたからデカい男だと見ている。でも僕は自分のゲームをすべての分野で成長し、向上し続けること。打撃を向上させ、柔術を向上させる。そして、レスリングをもっと上達させることができると信じている。僕はこのスポーツが大好きだし、楽しいんだ。1日の中で一番好きなのはトレーニングに行くこと。僕はそれを楽しんでいるよ」 ──ONEでも極め技としていた、彼の得意技であるトライアングルチョークも確認していますか。 「あの独特な横三角絞めだね。もちろん。僕は試合映像をよく観て研究してるし、彼の試合も何度も観たよ。素晴らしいサブミッションだね」 ──デリダーとの試合に向け、あなたのレスリングからのグラップリングはディフェンスも含め、強化されたのでしょうか。 「グラップリングでグラウンドに行く準備はできている。それは僕が興奮することだと思う。テキサス州オースティンでの最後のトレーニングキャンプで、ゴードン・ライアン、アイザック・ミシェル、ジョン・カルロ・ボドニ、ジェイソン・ノルフ、ゲイリー・トノンらとジムで過ごせたんだ。これは本当にありがたかった。だからもしグラウンドになったら準備はできているよ。それは僕にとって楽しい挑戦になると思う」 ──あなたの前戦での左オーバーハンドは特に印象的でした。ご自身のストライキングとレスリングの組み合わせについて、どう捉えていますか? 「僕はレスリングをベースにして攻撃を組み立てるスタイルなんだ。純粋なストライカーとしてはまだ経験が浅いから、レスリングでフェイントをかけて、そこから打撃につなげる。オーバーハンドも、テイクダウンに行くように見せてからパンチを打つとすごく効果的なんだ。レスラーとしてのイメージや、相手のテイクダウンへの警戒心を利用してるって感じかな」 ──その動きを逆に使っているのが、同じATTの堀口恭司選手ですね。サイズ差があるので一緒に練習されることはさすがに無いでしょうけど。 「実はキョージとは何度か練習したことがあるんだよ。体格差はあるけど、それでも練習になるくらい彼は本当にすごい選手さ。めちゃくちゃ強いし、競技者として尊敬してる。UFCに戻ってきたのも本当に嬉しいし、彼こそ世界最高レベルの選手だと思うよ」 ──その堀口選手の打撃について、以前とは異なってきているという指摘があります。 「KOのことかい? MMAって全部の技術をやらないといけないから、どれかに集中すると他が少し落ちるってことはあると思う。でも全体的にMMAの選手として彼はすごく強くなっているんだ。レスリングも柔術もレベルアップしている。テイクダウンをすることと打撃を打ち込む距離は異なるから、それを融合させるために進化しているんだと思う。それは僕のテイクダウンで打撃を当てることと似ている」 ──さきほど米満、小野正之助選手らとの交流の話がありましたが、ATTには他にも日本人選手がいますね。 「レスリングでは、中村倫也だね。レスリングが本当にすごくて、どんどんMMAファイターとして進化してる。日本の選手たちを本当にリスペクトしてるよ」 ──ミドル級13位のデリダー選手との試合は、ランキング入りするためにも重要な試合となりそうです。どのような試合になると考えていますか。 「僕はいつも『全力を出し切ること』に集中してるんだ。結果よりも、全力でやったかどうかが大事。もちろん今回は大事な試合だから、すごくハードに準備したし、ジムでもたくさん時間を使った。100%出し切れば、結果がどうであっても満足できると思ってる」 ──「全力でやったかどうか」というのは、見方によっては厳しい目標ですね。納得できたかどうかという。そんなニッカル選手の試合に注目しています。日本のファンにメッセージをお願いします。 「日本のファンの皆さん、応援、本当にありがとうございます。日本に行くのは僕の夢の一つで、いつか本当に試合をしたいし、試合じゃなくても、出来れば1カ月、2カ月ぐらい滞在して練習したり、美味しい和牛を食べたりしたいと思ってる。いつか必ず行きたいので、待っていてください! そして今週末の試合、ぜひU-NEXTで観てくださいね」
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