10月13日(日)、東京・両国国技館で開催される『ONE:CENTURY PART I』で、アギラン・タニ(マレーシア)と対戦する岡見勇信(日本/EXFIGHT)が個別インタビューに応じた。
2019年5月大会からONEに参戦した元UFCの岡見は初戦でキャムラン・アバソフに2R TKO負け、8月大会でジェームス・ナカシマに判定負けでONE2連敗中。2カ月強のインターバルでの日本大会出場となる。対するタニは6月に上海大会で秋山成勲とのタフファイトを判定で競り勝ち、MMA戦績を9勝3敗としている。
タニを1R リアネイキドチョークで下しているアバソフ、そして12勝無敗のナカシマと、ここまで強豪と連戦している岡見にとって、またも厳しい相手が用意されたが、ONEウェルター級(※83.9kg)戦線で生き残ることができるか。
「僕の格闘技人生で3連敗は初めてなので考えることは多々ありますし、苦しいです」
――アギラン・タニの印象から聞かせてください。
「秋山さんとの試合で初めて見ました。打・投・極のいずれも動きがよく、気持ちも強くてスタミナもあって、こんないい選手がいるんだなって思いました。体格的にはぽっちゃりしていますが、動きが柔らかくて猫のような動きをするなと感じましたね」
――その秋山選手との試合を見て、今回の試合のヒントは見つかりましたか?
「僕と秋山さんではファイトスタイルが違いますし、特にあの試合で何か…というのはなかったです。ただ、3Rしっかり戦ったことで全体像は見えました。アギラン・タニのいい部分も苦手な部分も見れたので、アギラン・タニをイメージしやすくなりましたね。凄くいい選手だなって感じます。ONEが育てた選手だなって思いますね」
――2019年5月大会からONEに参戦し、初戦でキャムラン・アバソフ(2R TKO負け)、8月大会でジェームス・ナカシマ(判定負け)、そして2カ月強のインターバルでのアギラン・タニ戦と、正直キツいマッチメイクだとは思いませんか?
「ナカシマとやる前から日本大会は視野に入れていて、ナカシマに勝って日本大会に出たいとの想いがあったんです。でも負けてしまったので、ここは一旦いろいろと考えて休憩を挟もうと思っていたんですよ。
僕的にはいろいろな想いがあったので、これは一度考えないといけないなって。日が経つにつれて、あの試合で終わるわけにはいかない、“もう一度出し切るんだ、やり切るんだ、岡見勇信を見せるんだ”っていう想いは心のどこかにあったんですが、とりあえず一度休憩しようと思って。
ナカシマ戦が終わった後に『日本大会で試合が組まれる可能性もありますが、できますか?』と聞かれて考えましたけれど、自分の生まれ育った国で試合が出来るのも何かの縁・タイミングですし、これを断れば次の試合がいつになるか分からない、来年自分がどうなっているのかも分からないなどいろいろと考えた結果、“やろう”と。
対戦相手に関しては、日本でやっている時もUFCでやっている時も強い人としかやりたくない。その想いは変わってないです。ナカシマの時も凄くいい選手を当ててくれて、自分の力及ばずで勝てなくて。でも、負けながら成長することもできていると思っています。僕の格闘技人生で3連敗は初めてなので考えることは多々ありますし、苦しいです。けれども点で考えず線で考えて、日本大会のためにそれがあったと考え直し、日本大会で負けて得た成長を見せるとの想いでオファーを受けました」
――では強敵との3連戦は自分としては臨むところだと?
「もちろんです。強い弱いは戦ってみないと分からないことですが、代理人の方にはこの選手と戦ってみたいとの要望は伝えるんです。その選手はそのステージで勝っている選手であり、負けている選手を自分から要望することは決してない。自分が勝つことで自信や評価を得られる相手でないと意味がないと思っていますし、自分の経歴的にも悠長にやっている場合ではないですし。ひとつひとつが勝負でその先のことは正直見えないキャリアでもありますから。戦う相手は全てを懸けられる相手だと思っています。
その中でアギラン・タニは、日本大会でやるのであれば真っ先に名前が浮かんだ選手ですね。自分の方からも代理人の方にはアギラン・タニとやれるのであればやりたいと伝えました。実力がしっかりあって秋山さんに勝ったわけですし、ONEで育っている選手なのでやりがいがあります。周りから心配されているのは凄く感じるんですが(笑)、そんな風な想いをさせている自分が申し訳ないですし、悔しいです。
でも周りにそういう想いをさせてしまっているのは、自分の実力不足。ここ最近の試合でそうさせてしまっているんだな、と感じます。それを払しょくするには試合でしかないですし、試合で自分が内容と結果を残さなければ周りの評価は変わらないと思うので。自分が自分のことを一番分かっているつもりですけれど、結果は出ていませんからね。
周りとも相談して、前回セコンドに就いていただいた磯野さんからも『まだできる。まだ本来の実力を出し切れていない。やるべきだ』と試合が終わった直後から言ってくれていて。そういう言葉を聞きながら、自分も練習していて改めてもう一度、皆さんに心配させないように次の試合は攻め込みたいなと思いました」
――言い方は悪いですが、元UFCファイターを踏み台にしてこの選手を売り出そうとしている意図的なものを感じることはありませんか?
「正直、最初はそうなのかなって感じましたけれどね(笑)。でも戦いなので、どんな意図を持っていようが勝てばストーリーは変わっていくし、負けたらそうなるでしょうし。だからどんな意図があろうと戦うのは自分で、結果が出るのは相手あってのものですし、関係ないですよ。
それに今は踏み台にもならない状況になっているので(苦笑)。僕は過去のことにぶら下がって生きているわけでもないですし、今の自分が自分の歴史の中で一番強いとの想いがあるからこそ試合ができるのであって。過去の自分の方が強いと思っているのであれば、試合はできないですよね。
確かにいろいろと考えますよ。弱くなっているのかなとか、ダメージが溜まっているのも間違いないことですし。ただ、まだできることはある、何かを変えれば今の状態を変えられるとの想いがあるから戦えるのであって。主催者がどう思っていようが自分の実力だけで変えられる世界なので、関係ないですね」
――最近の試合では、得意の四つの展開に持ち込めずテイクダウンが難しくなっている原因はあるんですか?
「うーん…器用貧乏になってしまっているというか。これだけ格闘技を長くやっていると、練習でできることが増えてきてしまうんですよね。やれることが増えますし、時間もあるからいろいろと考えてしまうこともあります。これが正解なんじゃないか、とか。それでいろいろなことに手を出してしまうんです。モチベーションの維持という部分でも新しいことにチャレンジするのは成長につながります。
それでUFCのクンチェンコ戦からアバソフ戦、ナカシマ戦といろいろなことにチャレンジをしているんですけれど。ひとつ言えることはその3試合共に、打撃を避けていたなっていうのがあります。それは決して打撃が嫌だから逃げていたわけではなく、打撃を置いておいても勝てる戦略というのをやっていたので。それもひとつ共通している大きなポイントなのではないかな、と思っています。
打撃を軸にして四つやタックルをしなければ、相手も怯まないですし、恐怖感を与えられない。格闘技は相手にダメージを与える、恐怖心を与えるというところを掴めればリズムを自分の方へ持ってこられるので。そこをテクニックで全部やろうとしてしまっていたな、というのがここ3戦はありました。自分の中でその想いを叩き直して、やはり格闘技というのはそこが重要なポイントで避けて通れないと改めて思いましたね。だから次は打撃もどんどんぶつけていきますし、もちろん組み技もぶつけていきます。そういう意味でアギラン・タニには“真っ向勝負”。テーマは“真っ向勝負”だと決めて、戦略はあまり深く考えずにその場その場で相手を見て決めていこうかなと思っています」
――お話を聞いていると、凄いポジティブですね。
「ポジティブじゃないとやっていられないですよ(笑)。そりゃあ落ち込みますよ、人生初の3連敗ですから。勝っている時って、深く考えずに何気なく勝っているんですよね。試合が終わったら勝ってた、みたいな。勝つことが普通な時期もあったんですが、今は勝ち方が分からなくなった時期でもあると思います。
でもこうやって日本大会のオファーが来て試合ができるってことは求められているってことですし、ある意味そこは幸せだと。3連敗している人間にオファーをしてくれるわけですから。ONEの100回記念大会でもありますし、そういった場にオファーをしていただいてチャンスをくれるのは、ファイターとして人として本当に恵まれているなと思います。
応援してくれる方も来ますから、勝って強い姿を見せないといけないなと。見せられると思うからこそ試合はするわけで。もちろん結果が出ることは怖いですが、自分を信じてやるしかないと思っています。3連敗している自分はもちろん分かっていますが、払しょくする自信は持っているので、どうか皆さんあまり悲観せずに見届けて頂けたらな、と思います」