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【UFC】2連敗から再起を目指す“ヴォルク”アレクサンダー・ヴォルカノフスキー「ベルトを獲って、これから出てくる若手を片っ端から迎え撃って“アクティブに防衛戦をこなす王者”としての姿をみんなに見せたい」

2025/04/12 22:04
 2025年4月12日(日本時間13日朝7時)、米国フロリダ州マイアミのカセヤ・センターにて『UFC 314: Volkanovski vs. Lopes』(U-NEXT配信)が開催される。  同大会のメインイベントでは、イリア・トプリアが返上したベルトを、2連敗中の前王者アレクサンダー・ヴォルカノフスキー(豪州)と、UFC5連勝中のディエゴ・ロペス(ブラジル)が争う「フェザー級王座決定戦」が組まれた。 ▼UFC世界フェザー級選手権試合 5分5Rアレクサンダー・ヴォルカノフスキー(豪州)26勝4敗(UFC13勝3敗)145lbs/65.77kgディエゴ・ロペス(ブラジル)26勝6敗(UFC5勝1敗)※UFC5連勝中 145lbs/65.77kg  前日計量では両選手ともに145lbs(65.77kg)のジャストでパス。  ヴォルカノフスキーは2024年2月に6度目の防衛戦でイリア・トプリアに敗れ王座から陥落して以来の試合。一昨年の2月には、階級上のイスラム・マカチェフのライト級王座に挑戦して敗れたが、マカチェフを追い込む場面も見せた。その後、暫定王者のヤイール・ロドリゲスを3R TKOに下して王座統一。10月に欠場したシャーウス・オリヴェイラの代わりに緊急参戦してマカチェフと再戦もKO負け。その4カ月後にトプリアに敗れ、フェザー級で初黒星を喫した。 「フェザー級以下では35歳以上の選手が王座戦で勝てない」というジンクスとも戦う36歳の“ヴォルク”はメディアに「こんなに長く休養した後での復帰戦は初めてだし、連敗でKO負けを続けて、しかもタイトルマッチとなればプレッシャーも相当なもんだ。でも“これまで十分やってきた”なんて思ってない。俺はまだまだ成し遂げたいことがあるし、そのリスタートがこのイベントで始まる。みんなが“もう無理だろ”って思うような状況を乗り越えることがでる。俺はそれを証明するつもりだよ」と言い、豪州MMAがまだ今ほど盛んではなかった頃から支えてくれた妻への思いも語った。 妻は『やるなら徹底的にやりなよ』って背中を押してくれた。そのおかげで今の俺がある ──最近はいろんな“ヴォルク”(※ヴォルカノフスキーの愛称)が登場していますよね。“オールド・マン・ヴォルク”“ビルダー・ヴォルク”そして今度は“音楽プロデューサー・ヴォルク”と呼ばれているそうですが、あの動画はどういう経緯で作ったんでしょうか? 歌っていたのはあなた自身の声なんですか? 「いや、残念ながらあれは俺の声じゃないんだ。本当はちょっと歌ってみせたかったんだけどね(笑)。いつも“ちょっとした茶番”みたいな動画で遊ぶんだけど、今回もスポーツベットの連中がいい仕事してくれたんだよ。あれで歌のネタをちょっと触れられたら面白いなと思って“セカンドハンド・セレナーデ”を取り入れようって話になってさ。とにかく楽しんでやった感じだな」 ──ライト級で戦ったイスラム・マカチェフ戦、その4カ月後のイリア・トプリアとのフェザー級王座戦、この2連敗明けで長期休養後ということもあり、“もう負けてほしくない”という空気を、ファンからより強く感じるのですが、そうした雰囲気をどう受け止めていますか。 「そうだな、俺はもともとアンダードッグ扱いが大好きなんだ。“あいつは勝てない”って言われるのをモチベーションにするタイプだけど、今回はちょっと違う状況なんだよ。歳(36歳)のことも言われるし、連敗でKO負けして長く休んでたし、それを理由に“もう厳しいんじゃないか”って声もあるのは分かる。でも、そいつらを覆すのが俺の仕事だし、それをやってやるのが今回の目標ってわけだ。いつもなら“ナメてんじゃねえぞ”みたいな怒りもあるんだけど、今回は“まあ言われても仕方ないよな”って納得してる面もある。でも結局、やることは一緒。自分とファンの前で“まだまだ俺はイケる”って証明したいって気持ちは変わらないよ」 ──先日、練習を終えたときの写真を拝見しましたが、ものすごく絞れていましたね。農場で家族と過ごす時間も長かったと思いますが、本格的にキャンプへ戻ったとき、 “俺はやっぱり戦闘モードにもなれるんだ”と再認識する瞬間はありましたか。 「めちゃくちゃ良かったよ。農場で過ごしてるあいだは、正直“スイッチ、切り替えられるかな”って不安もあったから、早い段階で本格的なキャンプをスタートしたんだ。それが大成功だった。俺はいつも練習で追い込みまくるタイプだけど、今回は16週間みっちりやったうえで、食事制限も徹底して、アルコールも一滴も飲まなかったし、チートミールも封印した。トレーニングのハードさはいつも限界近くまでやってるから、もう上積みのしようがないんだけど、今回はリカバリーや栄養管理をより厳密にやった感じかな。その結果、体脂肪率はこれまでで一番低いと思う。普段から上半身ハダカで過ごせるくらい仕上がってるよ(笑)。自分でも誇らしいね」 ──髪を剃ったのも、何か気分転換のように見えますが……もしディエゴ・ ロペスのような髪型しか選べないとしたら、また髪を伸ばします? 「いや、もうこのスタイルで行くよ(笑)。トルコとかに植毛ツアーに行く手もあるかもしれないけど、これが今の俺のルックだからね。気に入ってるし、このままでいいさ」 ──『UFCカウントダウン』で、イリア・ トプリアに敗れた試合を振り返っているとき、“ディフェンスで変な反応をしちまった”と言っていました。実際、オクタゴンの中でどんな感覚だったんでしょうか。 「“変な反応”って言葉が正しいかは分からないけど、あの試合では“もっと攻撃に出よう、打てるとこあるぞ”って自分に言い聞かせてたのに、身体が動かなかったんだ。最初にKO負けしたあとでの一戦だったから、どこか慎重になりすぎてたのかもしれない。試合前に“自信が無くなるんじゃないか”って言われても“そんなわけねえだろ”って思ってたけど、実際やってみると、いつもと違った動きになってた。それでも途中まではラウンドを取れてたという声もあるけど、イリアのような強いやつが相手なら、パターン化した動きは見抜かれるし、一瞬のスキを突かれる。あれは完全に俺のミスだ。彼の実力も認めるけど、自分に対して腹立たしい気持ちが大きいね」 ──今回、王者イリア・トプリアではなく、ディエゴ・ ロペス(フェザー級3位)との対戦になりました。復帰戦はイリアとの再戦を想定していましたか? 「正直、最初はイリアとの再戦になると思ってたよ。あいつともフェイスオフしてたしね。でも代わりにディエゴ・ ロペスとの空位になったベルトを懸けた試合になった。まあ俺としては、これもまた“若くて勢いあるやつ”が相手っていう点では悪くない。新世代は俺をもう老人扱いしてるみたいだから、“まだまだやれる”ってのを証明するにはピッタリだと思う。王者のイリアともう一度やるのは、またの機会ってことだな。いまはみんなが“ヴォルカノフスキーは衰えた”とか言ってるのを、期待の新星相手にひっくり返してみせるのが楽しみで仕方ない」 ──ディエゴ・ロペスについてですが、彼はモフサル・ イヴロイエフ(4位)との対戦を急に受けたり、ダン・イゲ(15位)戦を数時間前のオファーで受けたり、『UFC 303』のときは急遽アブダビに飛んでバックアップをしたりと、常に“いつでも受けてやる”という姿勢でやってきました。それは、あなたの昔のキャリアにも通じるところがあると思うんですが、どう見ていますか? 「そうだな。ああいう“いつでもやる”っていう姿勢は素晴らしい。リスクはあるかもしれないけど、大きなチャンスを掴むためには必要なことだと思う。常に備えてベストのコンディションを保っているからこそ、チャンスが巡ってきたときにサッと動けるわけだよな。UFCもそういう姿勢を評価すると思うし、実際、彼はそこで結果を出し続けて、今回の大きな舞台にたどり着いた。どんな相手でも、どこへでも行くっていうメンタルは俺もリスペクトしてるよ」 ──ブラジルのジョゼ・アルド(バンタム級11位)を倒して挑戦権を得て、ヤイール・ ロドリゲス(フェザー級5位)というメキシコを代表するファイターとも戦いました。今回はブラジルとメキシコの“ハーフ”のように両国から支持されているディエゴとの対戦ですが、両国のファンからの反応はいかがでしょう? 「特に敵視されるとかはないね。向こうも俺のことをリスペクトしてくれてるし、俺も同じく彼をリスペクトしてる。今回の試合を楽しみにしてるファンが多い印象だし、お互い人気があるからこそ、変な悪意とかは全然感じないよ」 ──パトリシオ・“ピットブル”・フレイレと“100万ドルを賭ける”みたいな話を数年前にしていたと思うんですが、最近どこかで顔を合わせましたか? 「うん、表向きにはいろいろ言ってても、実際は裏で会ったら握手して挨拶するような仲だよ。もし彼が今回すごい試合を見せて、その先で俺と対戦するチャンスを得るなら、それはそれで面白いと思う。ただ、“賭け金がどう”とか言うよりは、自分の試合で強さを見せて次へ進めばいいんじゃないかと。ヤイール・ ロドリゲスもピットブルも俺は好きだからね。どっちが勝っても面白いし、もしピットブルが勝つなら、その先に俺との試合があるかもしれない。まあ、どっちにしろ楽しみだよ」 ──あなたは36歳を迎えて、しかも2連敗をしてのタイトルマッチ。そういう状況でベルトを奪取した例はほとんどないそうで、数値的にも厳しいと言われてますが、それらを乗り越えて勝ったら、キャリアで最大の達成になると思いますか。 「そうなるだろうね。今回、俺にとって間違いなく“キャリア最大の試合”なんだよ。こんなに長く休養した後での復帰戦は初めてだし、連敗でKO負けを続けて、しかもタイトルマッチとなれば、プレッシャーも相当なもんだ。でも“これまで十分やってきた”なんて思ってない。俺はまだまだ成し遂げたいことがあるし、そのリスタートがこのイベントで始まる。みんなが“もう無理だろ”って思うような状況を乗り越えるのが、一番ドラマチックだろ? 映画とか本になるような展開をリアルにやってのけるんだ。俺はそれを証明するつもりだよ」 ──それと昨夜、アーロン・ピコのUFC契約が報じられました。フェザー級にまた新たな有力株が加わりそうですが、彼についてはどう見ていますか? 「名前は聞いたことあるし、ハイライト映像もいくつか見たよ。結構な評判らしいね。今、フェザー級には無敗のまま上がってきてる選手もいるし、有望株が本当に多い。そういう意味で“いい時期にベルトを持てる”って自負もある。俺が今回ベルトを獲ったら、これから出てくる若手を片っ端から迎え撃って“アクティブに防衛戦をこなす王者”としての姿をみんなに見せたいんだ」 ──イリア・トプリアがベルトを返上してライト級に行くと聞いたときは驚きましたか? 彼がフェザー級王座をあっさり手放すのは意外だったのではないでしょうか? 「正直、ライト級へ行きたいって話は聞いてたし、俺も『そういう道を考えてるのか』くらいには思ってた。ただ、まさかあそこまであっさりベルトを返上するとはね。普通なら階級を上げても、しばらく王座をキープしようとするかもしれないけど、彼はそこを綺麗に手放した。これはリスペクトに値するよ。実は俺も、彼との再戦をすごく望んでいて、去年の10月とか12月あたりで試合を組めないかなと思ってたんだ。『イリアが長引かせるなら、その間に暫定王座戦でもやるか』って考えてたくらい。だから彼がライト級に行くこと自体は驚きじゃないけど、ベルトをスパッと返上するのは意外だったけどね。  まあ、彼には彼のプランがあるだろうし、今はライト級に集中したいんだろう。俺はまたフェザー級でアクティブに王座を守っていきたいし、もし彼がライト級で勝ち進んでベルトを手に入れるなら、同じ王者同士として再戦するって展開もあり得るじゃないか。そうなったら最高に盛り上がるし、そのときには俺も何度か防衛してるだろうから、さらにビッグマッチになると思ってるよ」 ──先日公開されたミュージックビデオ風の短編についてですが、こういう形で楽しむことは、今のキャリアにおいてどれくらい重要だと思いますか? 「めっちゃ大事だよ。実は演じるのって結構好きなんだ。今回はスポーツベットが絡んでくれて、彼らは本当に面白い動画を作ってくれるから、俺もノリノリで楽しんだ。格闘家としては、どうしても日々の練習や試合に集中しがちだし、俺自身もこれまではわりと“ルーティンをこなす”って感じだったんだけど、最近になって本当の自分をもっと出せるようになってきたと思う。ファイトウィークでも“UFCファイター アレクサンダー・ヴォルカノフスキー”じゃなくて、“素の俺”としてインタビューに答えてる感覚があるんだ。今までは大勝しても、『ああ、良かった』ってホッとして、すぐ次へ進んじゃってたけど、これからはもっとしっかりその瞬間を味わいたい。それこそベルトを持ち帰って、家族やチームと心から喜び合って、その喜びを存分に満喫する時間を作ろうと思ってる」 ──ちなみに、あの短編動画で何かお気に入りのキャラクターはありましたか? カート・コバーン風や、アイアン・メイデン風のなど、いろいろあったようですが……。 「カントリーシンガーのスタイルかな。今は農場暮らしだし、カウボーイハットも板についてきたから(笑)。ちょっと似合ってただろ?」 ──奥様のエマさんとは約20年一緒にいらっしゃるそうですが、ラグビー時代から今のMMAキャリアに至るまで、彼女はどんなアドバイスをくれましたか? また、その内容は変化してきましたか? 「彼女は最初からずっと応援してくれてたよ。俺が格闘技を始めたころなんて、オーストラリアではまだMMAがそんなにメジャーじゃなかったから、周りも『何やってんの?』みたいな空気だったんだよね。家族や友達も、『早く普通の仕事につかないの?』とかさ。でもエマは常に『あなたならできる』って言ってくれてた。一時期は俺が“夢を追う側”で、彼女が仕事を続けて家計を支えてくれたりもしたんだ。俺はコンクリート工のバイトをしながら試合に出て、それでもやっぱり経済的には苦しくて。だけど、エマは一切文句を言わなかったし、むしろ『やるなら徹底的にやりなよ』って背中を押してくれた。そのおかげで今の俺があると思ってる。それだけに、今はもうちょっと“感謝の気持ちを形にして返したい”って思うんだ。試合に勝ってもすぐ次の目標に意識が行っちゃって、あんまり喜びを共有できてなかったから、これからはもっと一緒に楽しみたいね」 ──オーストラリアのMMAは今どんどん盛り上がっていて、あなたがタイトルを獲れば“オージー初の現役王者”誕生ですし、ジャック・デラ・マダレナ(ウェルター級5位)などの有望選手も続々出てきています。どうしてオーストラリアは人口規模の割に、こんなに格闘技で成功者を出せるのでしょうか? 「それがオージーの本質ってことなんじゃないかな。なんか俺たちって常に“期待以上”を叩き出したがる国民性があるのかも。マジでオーストラリアのMMAは盛り上がってるし、ジャック・デラも近々ビッグマッチが控えてる。俺がベルト獲得して、そのあと彼も何かしらでタイトル戦に絡むようなことになったら最高だろう。実は彼とも一緒にキャンプでスパーをやって、すごく勉強になった。お互いに刺激し合ってる感があって、今後ますます良い結果を出せるんじゃないかな。近いうちにオーストラリア人王者がふたり誕生したってニュースが流れるかもしれないぞ!」 ──最後に、歌ネタで盛り上がってますが、もし勝利者インタビューの場で“タイソン・フューリー”みたいに歌い出す可能性はありますか? 「どうだろうな。気分次第かもしれないし、そういう流れになるかも。何を歌おうか? 誰かアイデアある? たとえば“Land Down Under”あたり? どうなることやらな(笑)」
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