2025年3月29日(日本時間30日)メキシコ・メキシコシティのArena CDMXにて『UFC Fight Night: Moreno vs. Erceg』(U-NEXT配信)が開催される。
そのメインイベントにて、フライ級2位のブランドン・モレノ(メキシコ・22勝8敗2分)と、フライ級8位のスティーブ・エルセグ(豪州・12勝3敗)が対戦する。
王者が誕生し、UFC PIが新設されるなど、MMAが大きく成長しているメキシコで、ホームのモレノと対戦するエルセグは、2戦前のパントージャ、前戦のカラフランスとの戦いを通じて、王者の強さ、自身の課題を語り、モレノ戦のポイントを間合いだと語った。そして同じパントージャと戦った朝倉海を高く評価した。
僕は常に自分のタフさを証明したい。だから、世界で最も強い選手たちと戦いたいんだ(エルセグ)
──パントージャ戦以来のアウェーでの試合になりますが心境は?
「いや、むしろ楽しんでるよ。他国で戦うのは、ただの“無料旅行”みたいなものさ。ただ、そのためには世界の反対側で戦う相手を倒す必要があるけどね(笑)。2万人のメキシコ人とこの空気を共有するのが楽しみだ。彼らは僕に敵対し、叫ぶだろう。それを聞くたびに僕は感動を覚える。エネルギーを感じるんだ。正直なところ、ホームにいようと他の場所にいようと、プレッシャーは僕に影響する部分じゃない。ケージの扉が閉まれば、それはすべて無くなる。僕とブランドンだけだ」
──たしかに。今週末の試合に向けて、どこでキャンプを行ってきたのですか。
「ここ、メキシコシティで4週間トレーニングしたんだ。高地に慣れるためにも現地のUFC PIで練習して、最初は階段を上ったり下りたりするときは正直、高度にやられたよ。あれが一番ひどかったけど、ここに来てもう十分長いから、体力もあるし、十分慣れたと思う。メキシコのUFC PIにはアカデミークラスというのがあってUFCを目指しているアスリートたちがいる。彼らとスパーリングを重ねたよ。みんな僕と同じくらいの階級で、すごく才能のある選手たちだった。とてもいいキャンプになったね」
──メキシコに新設されたUFC PIにご自身でも練習相手を連れてきたりしたのでしょうか。
「すでに現地にプロの選手たちがいるから、僕はトレーニングパートナー1人とコーチ2人を連れて行ったんだ。でも、現地の選手たちともたくさん練習できたから問題ない。一番多く練習したのはディエゴ・モンソ、ニーニョといった選手。それにデイヴィッド・ウィルキスのWilkes MMAでは、ショーン・ガウチ(※2024年5月のHEX Fightで中務修良に1R TKO勝ち)、ボクサーのリッチ・ロケットらとも練習してきたよ」
──直近2試合はあなたにとってキャリア初の連敗でした。アレッシャンドリ・パントージャとは5Rフルに戦い抜いて判定負け。2024年8月の前戦ではカイ・カラフランスに初回TKO負けでした。フライ級上位戦線たちとの試合で得た学びについて聞かせてください。
「今、僕は世界のトップレベルの選手たちと戦っているからね。ほんの少しのミスでも敗北につながる。だから、細かい技術的な修正を徹底的に行ったよ。パントージャ戦ではボディロックのディフェンスを重点的に強化したし、カイ・カラフランス戦では打撃のディフェンス、特に後ろにまっすぐ下がる癖を修正するようにした」
──たしかにカイ・カラフランス戦では前半は良いペースでプレッシャーをかけていましたが、あなたがスウェイバックが上手いがゆえに、カラフランスのオーバーハンドを被弾してしまいましたよね。その点についてどう考えていますか?
「試合の序盤はすごく調子が良かったんだ。自分の距離をすぐにつかめたし、あまり急ぎすぎないように意識してた。でも、正直なところ、前からずっと分かっていたことなんだけど、まっすぐ下がって避けるディフェンスは危険なんだよね。ただ、これまではそれで上手くいってた。でも、悪い癖はなかなか直らない。だから今回は徹底的に修正した。後ろに下がるときにしっかり角度をつけるように練習したよ」
──さて、今回はフライ級2位のブランドン・モレノとの試合になります。8位のエルセグ選手にとって、この試合が決まった率直な感想を。
「エモーショナルだよ。本当に。ブレンダンのような途方もない闘牛士と対戦できるなんて。このチャンスをとても楽しみにしていたよ」
──今回の試合に向けて、トレーニング方法や環境に何か変更を加えましたか?
「基本的にはこれまでと同じジム、Wilkes MMAでトレーニングしてる。でも、大きく二つ変えたことがある。一つは栄養管理を改善したこと。おかげでトレーニング中のエネルギーが増えて、よりハードに追い込めるようになった。そしてもうひとつは、スパーリングを増やしたこと。特に軽めのスパーリングを多く取り入れて、実戦形式のトレーニングを増やした。僕は競争的な環境で一番成長できるタイプだからね」
──なるほど、いつもより実戦的でハードな環境でモレノ戦に備えてきたのですね。そのモレノは2月にロイバルに敗れてからの9カ月ぶりの復帰戦で、6連勝中のアミル・アルバジにほぼフルマーク(49-46、50-45、50-45)の完勝でした。あの試合をどう見ましたか。
「すごくキレがあったよね。特にボクシングの技術が向上していたと思う。姿勢を低くして、ヘッドムーブメントもうまく使っていた。メキシコはボクシングの歴史がある場所だ。でも、僕には彼のボクシングに対抗する技術があるし、彼の得意なスタイルから外させる自信もある」
──あの頭をガードの中に入れて圧力をかけてくるモレノのボクシングは、あなたの懐の深いスタイルとの相性はいかがですか。
「中間距離で戦うと危険だね。彼はヘッドムーブメントが上手くて、懐に入り込んでくるのが得意だから。でも、僕が適切な距離をキープして、彼に自分のスペースへ入らせるようにすれば有利に戦えると思ってる」
──その打撃からの組みはディフェンスも含め固く、グラウンドはロイバルと競り合う強さがあります。エルセグ選手のレスリング・柔術スキルと比較してどう感じますか?
「モレノはグラップラーとしても素晴らしい。だから、速いペースのMMAを期待している。そういう展開になると思う。テンポが速い、つまりノンストップだ。そして寝技においては、彼の最も得意なのはバックポジションだよね。そこでは彼の方が上かもしれない。でも、全体的な柔術スキルでは僕の方が優れていると思う」
──バックを取らせないことだと。互いにスクランブルも強いので、パントージャ戦をこえたあなたの組みがモレノ相手にどうなるか、注目しています。ところで、このフライ級は最近、日本の選手たちも参戦しています。朝倉海選手は、あなたも対戦したパントージャと対戦し、2Rにリアネイキドチョークで敗れました。ニューカマーのあの試合をどう見ました。
「試合後アサクラは色々な批判も受けていたと思う。だけど個人的には正直、彼はすごく良い動きをしてたと思うよ。でも、僕は戦ったことがあるから分かるけど、パントージャは打たれ強さが異常なんだ。アサクラはかなり強いパンチを持ってるのに、それを当てても前に出るパントージャが全く効いていなかったのが印象的だったね。それで少しリズムを崩されたのかもしれない。彼の今後の試合を結構楽しみにしているんだ」
──あのパントージャの圧力がそれを可能にしたのだと。朝倉選手は、今回のあなたとモレノとの試合結果が、彼の今後のマッチアップに影響を与えるかもしれないと言っていましたが、朝倉が上がってきたら将来的に彼との試合に興味はありますか?
「もちろん。僕は世界のトップと戦いたいし、カイもRIZINの王者だった選手だからね。将来的に戦う機会があればぜひやりたいよ」
──そのときは、あなたはもっと上位にいるかもしれません。今回のモレノ戦をご自身にとってどういう意味を持つ試合ととらえていますか。
「僕は常に自分のタフさを証明したいんだ。だから、世界で最も強い選手たちと戦いたい。何十年後かに自分のキャリアを振り返ったときに、“俺は本当にすごい選手たちと戦ってきたんだ”って誇れるような戦歴を残したいね」
──常に強さを求めて戦ってきたと。エルセグ選手もベルトを巻いたEternal MMAには、いま日本人選手たちも参戦して、ベルトを巻いた選手もいます。そのうち伊藤空也選手はROAD TO UFC参戦を決めました。
「いまフライ級(谷口武)とバンタム級(伊藤空也)で日本人選手がベルトを巻いているよね。日本の選手たちがEternalに参戦してくれてとても刺激的だよ。この階級に新たな活気が加わったと思っているし、彼らのUFCへの挑戦も楽しみだ」
──ファンにメッセージをお願いします。
「日本のファンの皆さん、いつも応援ありがとう。今回、モレノとの5Rの戦いで、終始フィニッシュを狙うよ。最高の試合を見せるから楽しみにしててくれ!」