2025年3月23日(日)さいたまスーパーアリーナにて開催された『ONE 172: TAKERU vs. RODTANG』で、大会当日に中止が発表されたONEフェザー級(70.3kg)キックボクシング3分3R、マラット・グレゴリアン(アルメニア)vs.海人(TEAM F.O.D)。
試合中止に至った経緯について海人陣営の主張、グレゴリアンの主張、試合後のチャトリ・シットヨートンCEOの発言やその後の謝罪など混乱が続いているが、27日(木)にONE Championshipが新たな声明を出した。
『ONE 172』大会における計量およびハイドレーションテストの手順に関する質問が多く寄せられたため、『ONE 172』における当団体の手順について時系列とともに詳細を説明するとし、以下の内容が記された。
本誌は、既報通り、大会当日朝の「本計量」を現場で取材している。(【追記】読み上げられた計量数値に関して記録するのは、ほか全団体と同様でどの団体もスケールの数字が電光表示されるわけではない)。規定時間内に計量をミスしたグレゴリアンについて、ONE側は、これまでの大会同様、下記手順通りに進めているが、再計量およびハイドレーションテストについて、計量をクリアした海人陣営とより密なコミュニケーションがあれば、試合は実現していたと思われる。また海人陣営も、計量会場に待機していたものの、再計量のために突如ガウン姿で現れたグレゴリアンを確認することができなかった。
海人自身もグレゴリアンも対戦を望んだ、今回の大一番。体重超過の選手を相手に試合を受けることにリスクはあるが、海人は超過体重の大小ではなく、今回の経緯に不信感を覚え、試合を受けなかった。
こうした本計量をメディアに公開するメジャー団体は限られるため、今後もONEには扉が開かれた競技チームとして、選手・関係者、メアィアに、試合に向かうプロセスを明らかにしてもらいたい。
ONEの計量およびハイドレーションテストのシステム(※27日 20時にONEがリリースした訂正文)
ONE では、各大会の24〜48時間前に公式計量とハイドレーションテストを実施しています。計量とハイドレーションテストは、メディアや選手のその関係者が経過を確認できるオープンな環境で行われています。
選手はまず、尿比重1.0250以下の尿サンプルをハイドレーションテストのために提出し、その後に体重計に乗ることが求められます。選手がハイドレーションテストに合格できない場合、試合は実施できません。ただし、ハイドレーションテストに合格しなかった選手も、暫定的な体重チェックのために体重計に乗ることは許可されています。
この計量とハイドレーションテストのシステムは、過度な脱水による減量を抑制するために、ONE が約10年間にわたって採用しているものです。
キャッチウェイト試合の過去の例
選手が3時間の検査時間内にハイドレーションテストに合格できない、または体重が規定内に収まらない場合でも、検査時間外に基準値を下回る尿サンプルを提出し、キャッチウェイト試合の交渉を行うことが許可されています。
ONEでは、3時間の検査時間内にハイドレーションテストに合格できなかったものの、その後にハイドレーションテストに合格し、キャッチウェイト試合の交渉が成立した例が複数あります。例としては、ロッタン対スーパーレック(ONE Friday Fights 34)や平田樹対リン・ホーチン(ONE on Prime Video 10)などがあります。
今回の大会(ONE 172)では、スーパーレック選手、スリヤンレック選手、そして小川健晴選手がマラット・グレゴリアン選手と同じプロセスを経て、対戦相手がキャッチウェイト試合に同意したため、試合は実施されました。
海人対グレゴリアンの一連の経緯について
3月22日に行われた公式計量において、マラット・グレゴリアン選手は以下の経過をたどりました:
午前10時から午後1時までの3時間の公式計量期間中、グレゴリアン選手は医療スタッフの監督下で2回、ハイドレーションテストを試みましたが、サンプルに必要な量の尿を提出することができませんでした。
公式計量終了15分前、ONEのスタッフは未だ合格していない選手に計量会場に来るよう最終呼びかけを行いました。グレゴリアン選手は3時間の検査時間終了直前に会場に戻りましたが、それでもサンプルを提出することができませんでした。
公式計量期間終了後、他大会時も行なっているようにONEの競技チームは合格していない選手の名前を発表し、未合格の選手にはキャッチウェイト試合の交渉のために追加時間を与えて尿サンプルを提出することが許可されると発表しました。この発表はONEのYouTubeチャンネルでもライブ配信されました。ONEの日本人スタッフは電話で海人選手のマネジメントであるSHOOT BOXING協会のスタッフにこの状況を伝えました。
午後1時45分頃、グレゴリアン選手は現地の医療スタッフの監督の下でサンプルに必要な量の尿を提出し(尿比重1.0244)、体重チェックの結果、フェザー級の制限体重155ポンドを0.75ポンド(約340グラム)オーバーしていました。これはONEのYouTubeではライブ配信されませんでしたが、競技ディレクターのリック・オーティ氏を含む複数のONEスタッフ、マラット・グレゴリアンのコーチらが立ち会い、U-NEXT、ゴング格闘技、バンコクポストのメディア関係者が会場内で取材をしていました。(※27日 20時に訂正)
この結果を受け、ONEの競技チームスタッフは翻訳機を使用して会場で海人選手のコーチに対面で状況を説明し、コーチはチームと相談すると回答しました。ONEの日本人スタッフもSHOOT BOXING協会のスタッフにグレゴリアン選手の計量結果を伝え、海人選手が155.75ポンドでのキャッチウェイト試合に同意した場合、グレゴリアン選手のファイトマネーの20%が最低没収額として海人選手に支払われることを説明しました。また、海人選手のチームはキャッチウェイトの試合を受け入れる際に、グレゴリアン選手のファイトマネーのより高い割合を交渉するオプションも与えられました。
午後5時にさいたまスーパーアリーナで行われたONE 172の公開計量およびフェイスオフ終了時、複数のONEのスタッフ(日本人スタッフを含む)がシュートボクシング協会のスタッフに対し、キャッチウェイトになった場合の体重戻し制限の基準値などを含む詳細な説明を対面で行いました。
ONEはすべての選手に同じルールを適用し、公正で透明性のある大会運営を行っています。この声明がこの事例の正確な理解につながることを願い、今後も一貫したルールと最高レベルの誠実性、透明性、医療・安全基準をもって大会を運営してまいります。
━━━━━━━
上記が、ONEが発表したリリース全文だ。ただ、海人側が問題としている「制限時間内にハイドレーションテストをクリアしないと失格と聞いていた」という部分と、「グレゴリアンの規定時間外計量時、日本の医療従事者が計量会場から退席していた」の2点についての明確な回答がされておらず(※最後のハイドレーションテストに日本の医療従事者が立ち合っていることは確認済)、海人およびSB関係者には伝えられているのかは不明のため、引き続き取材中だ。