2025年3月29日(土)東京・両国国技館『RISE ELDORADO 2025』にて、-52kg契約3分3R延長1Rでクマンドーイ・ペッティンディーアカデミー(タイ/ペッティンディーアカデミー)と対戦するRISEフライ級王者・那須川龍心(TEAM TEPPEN)。
今回の相手クマンドーイは、2020年大晦日の『RIZIN.26』で那須川天心に判定で敗れるも思い切りのよいパンチと重いミドルキックで場内を沸かせた。過去にはロッタン・ジットムアンノンにも勝利している。これまでオムノーイスタジアム認定フライ級王座、WBCムエタイ世界スーパーバンタム級王座、True4Uスーパーフライ級王座、ラジャダムナンスタジアム認定同級王座&バンタム級王座を獲得。2023年の「RISE WORLD SERIES 2023 -54kg Tournament」では志朗らを破り決勝へ進出している。
文字通り、過去最強の敵を前に、龍心は兄・天心がジェーソン・モロニー戦の前に発言したのと同じ「革命の狼煙を上げる」との言葉を口にした。天心はモロニーに勝利したが、龍心はクマンドーイを破り兄弟で狼煙を上げることが出来るか。
9分間、那須川龍心を体現するために
――まずは高校卒業おめでとうございます。卒業した気分というのはいかがですか?
「元々通信制だったので、そんなに変わらないっていうか、何かこんなもんなのかっていう感じです」
――卒業までは、小中学校のときの友達に勉強等、助けられたみたいですね。
「そうですね。本当に小中からの友達が助けてくれました。それがなかったら卒業できなかったです(笑)」
――高校1年のときに3年後の自分ということで、「高校生のうちにRISEチャンピオン、日本一になる」と書いて、それが有言実行できたと聞きましたが、それに関してはいかがですか。
「卒業式のときにその封筒を渡されて、書いた覚えが本当に記憶から消えていたんですけど、それを見たら本当に書いてあったので、すごいな俺って、自分を褒めたかったですね。そこの気持ちを1回も曲げたことがなかったので、ぶれないことって大切なんだなっていうのを改めて思いました」
――ぶれない心でチャンピオンになるっていうことを有言実行して、今回、過去最大の難敵を迎えることになったわけですが。
「いや強いですよね。試合観るたびに強いなと思いますし、過去最強というか、すごいきつい試合にはなると想定してます。それに耐えるためにきつい練習もしますし、そこに向けての、3分3ラウンド9分間、那須川龍心を体現するために、良い状態を作っている段階です」
――TEPPENの那須川代表からはどんなアドバイスを受けてますか。
「とまらずに蹴りを受け続けるなって言われてます。天心にもそこは言われました」
――兄の天心選手からは他に何を言われていますか。
「とりあえず『蹴り硬てーよ』って言われました。あと、初速が早いと言われました。そこだけ気をつければあとは見えるからとは言っていたので、そこだけ気をつけながらって感じです」
――もう既に勝つ、倒すイメージはできてますか?
「そうですね。本当に自信があって、倒すイメージもできていますし、どちらのイメージもできていますね。自分がやられるパターンと自分が倒すパターンと、本当にいろんなことを想定して毎日練習しています」
――ところで、龍心選手はサウスポーでも戦うことはできるんですか?
「サウスポーは練習中に遊びで軽くやったことがあるぐらいです」
――志朗選手がクマンドーイはサウスポーが苦手だということを指摘していましたが、それを聞いてサウスポーで戦うということは考えましたか。
「サウスポーで攻めることはできるんですけど、ディフェンスはなかなか難しくて。でも、そういう攻めパターンもあるかもしれないですね」
――クマンドーイの特徴である、大振りだけど速く振ってくるパンチに対する対策みたいなのは何かしていますか?
「それもしていますし、試合を見ると結構まっすぐのパンチとかも打っているので、そこだけにフォーカスしすぎずに、パンチに気をつけるぐらいの感覚でやっています」
――ちなみにパンチと蹴りだったら、どちらの方がより注意していますか。
「蹴りですね。どれくらい硬くて速いのかっていうのもそうですし、パンチが速い選手は今まで戦ってきた中ですごくたくさんいるので、そこの対処はできますけど、あそこまで蹴りが速くて強い選手はやったことがないので、そこにどう対応できるか自分が面食らうのか食らわないのかというのは楽しみです」
――イメージとしてはステップワークで、クマンドーイの蹴りをひらりひらりとかわしてみたいな感じですか。
「それもありますし、近い距離で戦ってもいいなとも思いますし、本当そこだけにフォーカスしてはいないです。いろんな想定をして、いきなり入ってみたり、外してみたりとか、いろんなパターンを持っています」
――髪色の金がすごく強くなっている感じがしますが、高校を卒業したからというのがあるんでしょうか?
「いや、通信制はもともと髪を染めてもOKなので、追い込みの週にちょっと一発気合入れとこうかなっていう感じで、金髪にしました」
――大会当日もその髪色で臨むってことですか。
「色は変えます」
――それは秘密?
「秘密にしておきます。そんなに派手にする予定もないですけど。何にしようかなって、そのときの気分で決めます」
――今着ている「なんとかなるさTシャツ」でもあるように、天心選手も楽天的な考え方を結構していますが、兄弟で考え方に通じるものはあるんですか。
「あるんじゃないですかね。自分があんまり考えすぎない性格なので、そんな溜め込まないっていうか、これを楽天的って言うのかもしれないですけど、本当に何も考えてないです」
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那須川家っていうだけでアンチがいる
――クマンドーイ選手が相手ということで、結構考え出したら切りがないというか、不安な気持ちとかも芽生えてくるとは思うんですけど。
「もちろん練習中の自分の納得いく動きができなかったり、試合前って調子の良い悪いは波があるので、困ったときは周りにいるチームを頼ってっていう感じですね。そうすれば良い答えが返ってきたり、何か突破口をこじ開けるような言葉をもらえたりするのでそこはチームを頼っています」
――ちょっと迷いとか不安な部分が出てきたら、自分の中で解決しようというよりは、すぐ助言を求めるという感じですか。
「そうですね。試合前どうしても自分の悪いところばかりに目を向ける癖があるんです。自分はそこがいいところでもあり、悪いところでもあるんですけど、そこにばかり目をやっていたらきりがないので、チームを頼ったら本当にいろんな気づきをもらえるのでありがたいです」
――クマンドーイ戦に向かう中で、自分で思ったこととか、印象に残っている周り方からのアドバイスはありましたか。
「ボクシングトレーナーがいるんですけど、もっと自信持っていいんだよって言われて、確かにそうだよなっていうのは思いました」
――それだけ龍心選手の技術が高いっていうことですかね。
「自分では、高いとは思ってはないですけど、自分のことを低く考えすぎているというか、もっと自信もっていいんじゃないと言われました。そうしたら結構いい感じに動けてきたり、調子が上がってきました」
――今大会はRISE ELDORADOがONEの大会とRIZINの大会に挟まれた日程になっていますが、その中でPPVを払ってRISE ELDORADOを見るべき理由があれば教えてください。
「自分が出ることで価値を生み出さないといけないと思いますし、自分にとって過去最強の相手で、みんなそれぞれ思いを持って戦っているので。僕はそういう思いを、天心の真似ですけど、日記として毎日投稿しています。そういうところでもっと見たいなと思わせられるように、価値を高められるようにしています」
――高校を卒業して格闘技一本でやっていくということですよね。改めてプロの格闘家として生計を立てていくというところで、どのようにに今考えていますか?
「来年ぐらいから一人暮らしをしようとは思っていて、そしたら本格的に自分1人ですべてやらないといけなくなります。高校生でプロになったときから俺は格闘家だっていう自覚を持ってきたので、それが今の結果に繋がっていますね」
――荒汐部屋で出稽古していましたね。もちろん両国国技館でやるっていうのもあると思いますが、一緒に稽古してちゃんこ鍋を囲って、何か聞いたこととか話したことはありますか?
「常に首が痛い話を聞きました(笑)。そういうのは当たり前で、ちょっと通ずるところはありますよね。格闘家は怪我をしてるのが当たり前だし、怪我をしていない選手は少ないんじゃないかなぐらいのレベルです。そういうところでは、逆に案外通ずるものがあるんだっていうのを感じました」
――革命を起こすとおっしゃっていましたが、自分の中で具体的にこういうことを起こしたいんだということはありますか?
「今回勝つことによってっていうのはあります。僕はRISEの中で年齢も低い方ですし、そういう選手が引っ張って行く方が未来を開けると思います。今はRISE選手の中で目立っている選手がいないので、逆に言えばチャンスがあると思っていて、RISEを引っ張っていくポジションを奪い合っている状況だと思っています。今回派手なわかりやすい勝ち方ができれば今後の道も開けてくると思いますし、俺が引っ張っていくっていう、そこのストーリーを含めて、今回で革命を起こすんじゃなくて、革命の狼煙ですよ。本当に。このストーリーを見せていきたいです」
――本家・狼煙を上げたご本人の試合もご覧になっていると思うんですけど、感じたこととかってありますか。
「兄弟としてはああいう試合はやってほしくないですよ。ひやひやしっぱなしで心臓に悪かったです。傍から見たらすごい面白い試合だと思いますけど」
――ずっとそうだと思うんですけど、天心選手は常にアンチを受けながら、それでも戦ってる。あの姿はどういうふうにご覧になっていますか。
「それをカッケーとは思わないですけど、それが普通なので。もうそれが当たり前の環境で育ってきちゃってるんで、那須川家っていうだけでやっぱアンチがいるわけじゃないですか。だからもうそういうことは慣れています。人目に付くことをやっている以上アンチに負けてられないなっていうのもあります。むしろSNSに来てくれたほうが自分はありがたいなって思います。ありがとうございますって感じですね」
――試合で黙らせてやるって感じですか?
「そうですね。そういうのもありますし、天心って何をしても叩かれるじゃないですか。なんかいいなと思いますけど。そういう餌をまいていきたいです」
――最後にファンへのメッセージを。
「3月29日、両国国技館で、過去最強の相手と戦うんですけど、自分の中でも最大の試練だと思ってるので、そこを乗り越えてこそのチャンピオンだと思いますし、乗り越えてこその革命だと思っているので、この瞬間をぜひ皆さん見てください」