2024年12月21日(土)千葉・幕張メッセ イベントホール『ABEMA presents RISE WORLD SERIES 2024 FINAL』で行われる「GLORY RISE FEATHER WEIGHT GRAND PRIX」。
GLORYとRISEのトップ8選手が-65kg世界最強の座と10万ドルの賞金を目指し、ワンデートーナメントで争う。トーナメント1回戦でGLORY世界フェザー級王者ペットパノムルンとの大一番を迎える白鳥大珠(TEAM TEPPEN)と、通算4度の年間世界王者、全日本選手権4連覇など数々の戦績を残し、今年現役を引退した空手選手・植草歩の対談が主催者を通じて届いた。(聞き手:布施鋼治)
自分がオリンピックまでに足りなかった事(植草)
――今回は空手の世界でレジェンドと言われている、植草歩さんをお招きして白鳥大珠選手との対談を行います。キーワードは『世界』という事で行いたいと思います。よろしくお願いします。
白鳥 よろしくお願いします。
植草 よろしくお願いします。
――お二人の共通のキーワードとして“空手”というものがあります。白鳥選手は少年時代に極真空手をやっていて、植草さんはついこの間まで伝統派空手の第一線で活躍されていました。お二人は空手をやっていて良かったと思いますか?
白鳥 僕はそうですね、6歳からの極真空手が始まりですけど、それが格闘技の原点であってそれがなかったら全く今のスタイルもなかったかもしれないし、もしかしたら今格闘技をやっていないかもしれないので、6歳から空手をやってきた事が今に繋がっているなと思います。自分の大事な人生の分岐点というか、空手を始めた事で今があるなと思っています。
――植草さんも空手抜きの人生は考えられないという風に思いますか?
植草 自分はスタートが遅かったんですけど、空手をやったから性格が変わったというか。別に内気ではないけどポジティブではないみたいな。明るいし人とも喋るしコミュニケーションもできるけど、ここぞという場面で絶対に勝ちたいとか、獲りたいものを獲るために最後までやり続けるとか、そういった部分が空手を通してだったりチャンピオンという立場になった事によって、変われた部分があるなと思います。
――白鳥選手も空手を始めて、性格的にポジティブになったり変わったりした部分はありましたか?
白鳥 元々性格的に落ち込んで病むようなタイプではないんですけど、ポジティブにはなりますね。今はキックをやっていますけど、小さい子に勧めるとしたら空手から格闘技に入るのってすごく良いなと思います。武道なので礼儀作法はもちろんですけど、心技体の全てを育ててくれる場であると思います。
――植草さんもついこの間まで現役でしたけど、いまだに空手着に袖を通すと気持ちが“ビシッ”となったりしますか?
植草 なるかもしれないです(笑)。今は指導者としてやっているので、生徒たちの前ではちゃんと凛とした姿でいなければと思っています。帯を締めるという動作が結局気を締めるとか、女の子だったら髪を結うじゃないですか。そういったものが一つ心を締める瞬間なのかなとか、この髪をゆるっとしたまま指導はしないから、そういう部分でオンオフが切り替えられる“道着を着る”というスイッチがあって良いのかなと思います。
――白鳥選手も空手家時代は、道着を着たら気持ちが締まる事はありましたか?
白鳥 僕は中学2年生までしかやってなかったんですけど、元々いた道場が極真で、それを離れて独立した道場だったんです。実家の近くに道場があるので、少し前にポスターを届けるのと挨拶も兼ねて僕の師匠である成嶋(竜=極真会館第12・16回全日本ウェイト制空手道選手権軽量級優勝)先生の所に久しぶりに行ったんですよ。そしたら「いつでも遊びにおいでよ」って道着をプレゼントしてくれて、今新しいのがあるんです。今年2回くらい道場に行っているんですけど、久々に道着を着たりすると、気が引き締まるというか原点に帰れますね」
――今ちょうど極真という話が出ましたが、植草さんがやっているのは伝統派じゃないですか。でも今は日体大柏高校の男子部員に極真空手をやっていた方もいらっしゃるんですよね?
植草 毎年1人だけなぜか入ってきて、極真育成学校みたいになっていて(笑)。今年3年生の男の子が去年の千葉県選手権で優勝して、間合いも違うしポイントの取り方も違うのにその中で勝てたのはすごいなと思いました。それを自分がインスタにあげたらちょっとバズって、極真の方が喜んでくれたり。逆に可能性というか、極真の子が高校から伝統派の高校空手をするのって、部活動で「みんなで青春をしたい」じゃないですけど部活として何かするっていうのはやっぱりプロにはないから、そこで礼儀作法も極真とはまた違うし、上下関係を学ぶとか学校の部活動としての活動をしたいっていうので来てくれて、彼が千葉で1番になって。
今年は極真の世界チャンピオンだった子が来て、来年に最低でも千葉県で1番にしてあげられたらなと思っています。高校を卒業したら総合格闘技の道に行きたいと言っているので、そこで3年間のブランクが空いちゃうかもしれないんですけど、月1くらいで極真の道場に行ってるんですよね。私は筋トレとかラントレもさせますし、当てる突き方も教えたりするので、伝統派空手ってポイントなので見せ方とかも教えているので、若いうちに色んなことを吸収することによってその子が柔軟になったり、また次の別のステージに行った時にそっちでもチャンピオンになれたら彼にとっても良いのかなと思って指導しています」
――白鳥さん、日体大柏高校の空手部に行って「MMAも良いけど、キックも良いよ」ってスカウトするのはどうですか?(笑)
白鳥 自分がですか(笑)。でもすごいですよね。極真で世界チャンピオンからやって伝統派空手にシフトチェンジするのは。正直似たようで全くの別競技というか、間合いが違いすぎるじゃないですか。僕がキックに転向して練習して、慣れるのに相当時間がかかりましたからね。
植草 やっぱり極真とキックって、素人の自分からしたら間合いも近いしすごく似ているんですよ。顔に当てる当てないはありますけど、ロ―キックの部分だったりとかお腹を当てる部分は似ているなと思います。
白鳥 そうですね。やっぱり顔面への対処っていうのが全然ダメで、そこが1番てこずったんですよ。
植草 生徒の子も顔に来た攻撃に対して無反応ですね。自分たちからしたら体をいなすと言うか、手を添えたりしたいのに、極真の子ってそのまま顔で当たりに行くので「受けろよ、手添えろよ」って言うんですけど、当たり前が違うから仕方ないですよね(笑)
――逆に植草さんは現役を引退された時に、プロのキックの世界からスカウトされたと聞きました。
植草 お話はありましたけど年齢も年齢だし、オリンピックまではずっと厳しくキツい事もしてきたので、また1からあんなにキツいことやりたくないなと思いました。
白鳥 オリンピック期間とか大会前ってどういう生活になるんですか?
植草 空手ってどちらかというと学生スポーツだったので、授業が終わってから空手ってなるから午前中にフィジカルとかラントレをして夕方に空手の練習をしていました。あとテクニック種目なので練習が長いんですね。
――どれくらいの時間練習していたんですか?
植草 空手は正直3時間から4時間で、フィジカルも3時間やっていたんですけど、体重を増やしながら筋肉を増やすトレーニングをしていたので、筋肥大させるためにハイウェイトでのトレーニングもしていました。その分太ってはいけないから有酸素をしてフィジカルをしてアジリティなどで心拍数を強くして、ご飯を食べてレスト(休憩)して空手という感じでした。空手を午前と午後で5時間ずつやった日もあって。すごい繊細というか、綺麗に見せる動きとか蹴りもそうですし、そこに柔軟性も必要なので長くなってしまいますね。良くないって分かっているけど長くなっちゃうんですよね。
――キックボクシングとは対照的ですね。
白鳥 自分も20代前半とか10代の頃は3,4時間とか練習していたんですけど、今は2時間以上はやらないですね。
植草 でもそれが良いと思う。若い時は体も作らなければいけないしそこにまだスキルも足りないから、どうしても高校生って長くても仕方ないじゃんって思うんですけど、ここまで来たらプロだし、ある程度のスキルもテクニックもあるってなった時に、研ぎ澄ましていくというか質を上げていく方になるから、自分がオリンピックまでに足りなかった事ってここだなって思うんですよ。休むことも大事だし、オンオフのリカバリーも大事だし、ただやれば良いとか練習しないと心が満たされなかったから、常に毎日「空手しんどい」っていう状況じゃないと満足できなかったんです。そうなると練習の質も落ちるし、競技としての中身も落ちていくなと今は思うので、白鳥選手の考えはすごく合っていると思います。
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20代ラストの今が1番良い時期(白鳥)
――今回白鳥選手は12月21日に日本を背負って日本代表として戦う立場ですけど、そのプレッシャーは感じていますか?
白鳥 誰もが出られるわけではないですし、日本人から選ばれたのは2人しかいませんし、俺だってそこに行きたいと言う選手も沢山いると思うので、その選手の分も背負って日本代表として戦いたいと思っています。しかも世界各国の選手が集まっているので、プレッシャーは必要最低限自分でも感じています。ただ僕はチャレンジャーでもあって自分の挑戦だし、特にプレッシャーでダメになるタイプではないので、のびのびやりたいなっていう気持ちはあります。
――植草さんも東京オリンピックの時に、日本代表というのはものすごいプレッシャーがあったんじゃないですか。
植草 やばかったです。苦しかったなと思うし…。でもアマチュアスポーツとプロスポーツの日本代表というのは中身も違うし。動画とかも見させていただいたんですけど、白鳥選手は注目を力にできる人だと思うんですよ。
白鳥 そうっすね(笑)。注目された方がいいですね。
植草 自分もそうだったから、注目されていたら「見ておけよ」って気持ちで自分に酔うじゃないですけど、それが自信にもなるし過信にもなっていいと思うんです。じゃないと格闘技って、コートの中に行ったらいくらサポーターが沢山いても最後は自分で自分を信じて自分が相手と戦わなければいけないので、それをできたから自分も世界一にも日本一にもなれたと思います。きっとそれができる方だと思うので注目を力にできると信じて、ポジティブだしナルシストじゃないとね。
――今ナルシストという言葉が出ましたけどどうですか?
白鳥 色々見抜かれてましたね(笑)。
植草 対談が決まって、それで本当に格闘技とかのプロフェッショナルな競技にすごく疎くて、従兄弟がやっているから従兄弟の方も知っているけど、いまいちまだ分かっていない部分も沢山あって。そこは自分がアスリートだったから自分にしか興味がなくて自分のものが大好きっていう感じなんです。だから知らないとなと思って調べてみた時に、やっぱり注目が力になっているのが分かりました。それが結局自分自身の糧にもなるし評価にも繋がるし、絶対プロフェッショナルなスポーツでは大事ですよね。
――先ほど植草さんから、自信と過信のバランスって話もありましたけど、それはコントロールできていますか?
白鳥 練習を重ねていってどんどん自信は増していくんですけど、まだどうしても自分の中で不安要素って沢山あるんですよね。だけど当日に自信100パーセントで臨むのも違うなと思っていて。やっぱりある程度の不安材料は常に持っておいた方がいいと思っているので、バランス的にはすごくちょうど良いですね。――植草さんは東京オリンピックの時に、日本武道館の舞台に上がる時はどういう風に心を整えたんですか?
植草 東京オリンピックの時は自分でも「もうダメだな、精神的にも崩れてたな」って思うんですけど、それ以外の全日本選手権の連覇がかかった大会だったり、世界選手権の場だと人の目を感じるしカメラが自分だけを追っていることも感じるので、「あ、私ってやっぱり注目されているんだな」って思う事が自信にもなりました。あとは元々の性格がネガティブで慎重で分析もすごくするので、それを念入りにして毎回それを継続して勝つ事ができました。
東京オリンピックの時はこれが最初で最後って思っているからこそ、より念入りに全てをやり過ぎてしまって自信が無くなってしまって、ただの不安要素ばかりを埋める練習とか、得意な部分を伸ばせたのかとか、そういう部分がすごく足りなかったなと反省していて、良いも悪いも知っているから伝えられたらいいよなと思います。調子に乗るのもすごく大切だし、でも自分でそこに乗り過ぎたらダメだし。自分でも不安材料があるからこそ競技に活きているっていうのも話していて感じるので、たぶん自分でコントロールがきちんとできているから、チャンピオンになって調子に乗ったその後が大切かなって思います。
白鳥 僕もRISEに出始めたのが22歳くらいで、いろんな経験をしてきたと思います。波があったり、トップを取ってそこで調子に乗って落ちていってとか。けど今29歳になるんですけど、すごく今が1番良い時期かなと思っています。色々知れてメンタル面や練習の仕方だったり、試合に向けた過程とかもそうなんですけど、全ての経験が活きていて20代ラストの今が1番良い時期だと感じています。
――今“20代ラストの”という話がありましたが、植草さんはついこの間20代ラストだったんですよね。
植草 しかもちょうどその時がオリンピックの時期でした。自分で29歳まで空手をやるなんて思ってもいなかったので、今のスポーツ科学の中ではやれるなって思うし、酸いも甘いも知って屈辱も知って、その中での集大成になれて30歳を迎えたら、より一皮むけた卓越したものができるんじゃないかなと思います。私自身も30歳を超えてから競技との向き合い方が変わって、今までは「トップになりたい」とか「チャンピオンになりたい」とか「チャンピオンで居続けたい」だったものが、オリンピックじゃなくなったからもっと外の世界を知りたいと思って、海外で指導や合同練習をしたりしたんですよ。
その時に「4,5時間練習していたのはありえないよ」って他の選手たちから言われました。オリンピックでメダルを獲った子たちは1日2時間しか練習しない、みたいな。朝は1時間、午後2時間って感じで、私がやってきた事は間違っていたんじゃないかなと思ったしすごく屈辱を感じました。それを自分は30歳を超えてから知ったけど白鳥選手は30歳を超える前から知っているからこれからきっと良くなると思います。自分ももっと早く知るべきだったかなとか思うんですけど、今知ったから意味があると感じていて、オリンピックで負けたからそういうことをしたんだろうし、成功して私が指導をしていたとしたら「4,5時間やって、それだけ筋トレも空手も色んなことは、頑張ったら頑張っただけ成果が出る」っていう伝え方にはなってしまったかなと思います。負けて良かったとは思わないけど、負けたからこそこう思える感情がありますね。
――白鳥選手もここ1番っていう時に悲しい思いをした事が何度かあったと思います。そこから再び立ち上がって、這い上がって今があると思うのですが、そこのメンタル面はどうだったんですか?
白鳥 東京ドーム(THE MATCH 2022)で KOされた時は、自分の中で1番落ちたんですけど、1回練習も全くせず格闘技から離れて何もしない期間があって…。だけど「これから自分はどうしていくんだ?」って思った時に、自分の中にある目標がブレていなかったんですよね。その自分が描いている未来像に自分が届いているのかとか、色々考えた時にまだ全然届いていなくて。「そんなので挫けていて良いのか」って思った時に、動き出さなければなという思いがあったので、何回かここ1番で落としてしまうのを繰り返しましたけど、その目標がブレずにあるから今もこうやってずっと続けられていると思っています。もちろん周りが応援してくれてサポートしてくれて、その期待に応えなければいけないっていう思いは常にあるんですけど、やっぱり自分が自分自身のためにやっている部分もあるので、そこだけはブレずに今までやって来れていて、そこが諦めずに続けられている1番の理由かなと思います。
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ピークを持ってくる“ピーキング”っていうのが大事(植草)
――植草さんもそういった中でキャリアを積んできたと思いますが、今の時代で複雑なのはやはりSNSで自分のことを色々と書かれる事だと思います。そこはどういう風に対処してきたんですか?
植草 あー、自分そこは図太くて(笑)。例えば筋トレの動画をあげたら「お前筋トレばっかりしてるから負けんだよ」って書かれても「お前何も知らねえだろ?」って思うんで。あとは髪の毛染めたりネイルしたっていうのが見えた時に「そんな事してるから負けんだよ。ネイルしてる暇があるなら練習しろ」って書かれても「ネイルなんて1,2時間あったらできるし、何を考えているんだお前は」って思うんです。だからやってはいないんですけど、そういうのにも全部“いいね”して「ざまあ」って思えるくらいの気持ちでいます(笑)。「植草落ちてきたな」とか言われても「あなたに何が分かるの?」って思えるから、自分はそういうところが図太いなって感じます。
自分はきゃりーぱみゅぱみゅに似てるって言われて売り出されたので、それも「私似てねえし」って思うけど、それを表で言う言わないって絶対違うし、勝手に言っておけよって私は思えます。でもやっぱり(プロは)興行スポーツじゃないですか。自分たちはアマチュアスポーツなので、なんとか選手権で勝つことが大切になってくるので、ピークを持っていきやすいんです。“プレミアリーグ”っていうランキングの試合があるんですけど、そこでの勝敗って年に5,6回大会があるので、3大会優勝したら素晴らしいなと思うので、それぐらいに考えているんですけど。やっぱり世界選手権やアジア選手権、日本選手権で優勝したらいいので、そこに自分の心を持っていけばいいから、そこでの勝敗にも一喜一憂しなかったっていうのはあります。だけどプロの場合は毎大会で勝つことが評価になってすごく大切になってくるから、そこの標準のピークを持ってくる“ピーキング”っていうのが大事ですよね。
白鳥 そういう時はありますね。
植草 それと減量があってパンプアップしたくてもできない時期もあるし、そこがプロとアマチュアの違いで感情のコントロールも難しいのかなと思う反面、自分で抑える事もできるんですよね。自分はそれができなかったので、大会がコンスタントに続くので世界選手権の連覇がかかって負けた時は、この世の終わりくらいの勢いで落ち込みました。負けることが自分は生きている価値がないと思ってしまった人間だったので、だから当時はガラスのハートだったのかなと思います。先ほど白鳥選手が「競技から離れた」と仰っていましたけど、自分も怖くて離れられて1週間でそれ以上は離れられなかったです。スキルが落ちることもそうだし、間合い感とか筋力や体力が落ちることの全てが怖くて、ちゃんと競技から離れることができなかったので、そこも弱さなのかなと自分は思います。
――休むことが弱さに繋がっちゃうと考えていたんですね。
植草 そう思っていました。でも休むことも大事じゃないですか。30歳過ぎてからでも全然競技を続けられますよね? だからここからまた脂が乗ってくるじゃないですけど、もっと違う白鳥君になると思うので、そうなるためにも上手く自分でコントロールするのと、周りに良いスタッフがいる中で頑張ってもらえたらなと思います。
――白鳥選手は負けて落ち込む事はあると思いますけど、今の話のようにメンタルが完全に崩れてしまうという事はありますか?
白鳥 負けた時は試合が終わって数日は何をしても楽しくないし、生きている実感がないというか『ぼーっ』としちゃう期間が数日あるんですけど、だから色々と考えちゃうじゃないですか。「あの時あれをしてこれをしてれば」って。そうやってすごく考え込むともっと落ちていってしまうので、僕は1回離れたんですよ。もう2ヶ月くらいジムにも行かなかったですし何もしなかったです。友達と遊んだりしていて、練習の復帰も何も考えていなくて、そしたら自分の中でリフレッシュできていました。
それで練習を再開したのがジムのみんなで1週間くらい行ったタイだったんですけど、他の選手は合宿って感じでやっている中、自分は遊び感覚で練習してタイを満喫しながらやっていたら「あ、やっぱり楽しいな」って思えるようになってきて。ミット打ちしかしていないし、すぐ疲れちゃうけど「やっぱりこれだな。楽しいな」って思うようになって、そこから練習を再開してその後のYA-MAN戦に至るんですけど。あの時も8月にタイに行ったので準備期間も2ヶ月間しかなかったんですけど、自分の中でメンタルの切り替えになる事がないと、もしかしたらそこで辞めちゃってる可能性もあったのかなとか思ったりもしますし、だから“嫌だな”って思ったら1回自分は離れるんですよね。その時は2ヶ月近くだったんですけど、1ヶ月にしろ数週間にしろ1回考えない時期を置いたりしますね。
植草 それができることは強いですね。私は休む勇気がなかったので。今思うと近道のように見えて遠回りした方が、ちゃんと目標達成とか到着したいところにも行けたりするし、モチベーションが乗らなかったらいくら良いトレーニングをしても中身が伴わないんだろうなと思います。1,2ヶ月休むっていうのはすごく遠回りをしているように見えるけど、その時間で人生経験もするだろうし良いレストにもなるだろうし、考える時間っていうのがたかが1週間では無理なんだろうなって今は思います。
――そう思えていることを、今は日体大柏高校の空手部の皆さんに伝えたり教える事ができているわけですね。
植草 できてるのかな…。でも練習多いと思うんだよな(笑)。その時のストイックな自分が残っているから、超記憶を作ってあげきれないというか。空手の良い所でもあり悪い所でもあるんですけど、大会が多いんですよ。この12月末はオープン大会なんですけど2大会あって、高校生は場数を踏むべきだと思うし、緊張感だったり他県の選手と試合するのとかもすごく大切な事なので、そう思い込んでしまうんですよね。だからそこも自分のダメな部分だなとか思ってしまうんですよね。
白鳥 でもそれが将来活きてくるんじゃないですか。自分も高校生の時は何時間も行ってましたから、それがあって今になって効率が悪いなとか思う事はあるんですけど。だからこそ当時はがむしゃらにやる時期も大切で、自分はそういう時期があったからこそ色々分かる部分があるので、絶対必要だと思います。
植草 そう言ってもらえると嬉しいです。
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試合の日を想定した模擬練習をしたら良いと思います(植草)
――植草さんはそういう中で大会に出られて、1日に何試合もしていたじゃないですか。その1日に何試合もするという“勝ち抜くコツ”はありましたか?
植草 白鳥選手の場合は1試合してから次の試合が結構時間が空くんですよね。
白鳥 僕らって基本1試合しかしないんですよ。今回のトーナメントは8人制のトーナメントで1日最大3試合やるんですけど、1試合は3分3ラウンドでやります。勝ち上がったら間は2時間とかあるんじゃないですかね。
植草 自分たちはそんなに空かなくて、5分とかでした。3分の試合をするんですけど正直5分くらいかかるんですよ。それで自分はチャンピオンだったので1番下なんです。日本では1番上なんですけど海外では1番下にされて、勝ち上がった人と自分が戦うって感じだったので、自分のレストって5分しかないんですよ。そうなると頭が回らなくなってきたりあくびが出てきたりして、あくびが出ると酸欠とか糖不足を意味するので、1試合終わったらゼリーを全部飲んだりして補給しながら戦っていました。当てる競技に比べたら消耗は少ないと思うんですけど、全てリカバリーするのは難しいと思うのですが、頭の疲れなどのリカバリーをすることは心がけています。毎回毎回次に対戦する選手のウィークポイントと得意な部分を見極めて、得意な部分では取らせずに弱点の部分はチャンスなので畳み込むという事をずっとしてきました。自分たちは8点勝負なんですけど、私のスタイルって8-0で勝つ事はないんですよ。心理戦で駆け引きをするのが好きなので、1-0でも2-0でも地味に常に勝ち続けるというのを続けたので、日本でも海外でも勝ち続ける事ができたと思います。なので、食事の部分と後は対戦相手の分析ですね。
白鳥 こういう1日に何試合もするっていうのがあまりないんですよね。僕もプロになってから1日に最大2試合した事があるんですけど、その時の経験で言うと1回戦を勝ち上がった時の疲労感はあまりなかったんですよ。それで決勝までの時間がその時は5時間くらいあったんですけど、1回アドレナリンが一気に上がったものが一気に引っ込んで、すごく体の疲労感が出て重くなっちゃって。決勝まで体のだるさが取れなくて、1回寝ようかなって思ってたくらいでした。
植草 自分は寝たことあります。今はリーグ戦なんですけど、リーグの中で1位通過したらトーナメントになるので、それまでの間が2時間くらい空くんですけど寝ますね。本当は良くないと思うけど、海外の選手とかも普通に寝てますね。ホテルに帰ってしまう人とかもいるので、そこは自分よりも図太いなと思いました。自分も寝ますけど、起きたら1時間くらいウォーミングアップして体を作って入っていくんですけど、それの模擬練習をしたら良いと思います。
白鳥 模擬練習?
植草 例えば、1回戦目を戦い終えて、次に勝ち上がってくる選手のイメージをして休みます。またそれを繰り返して3試合で優勝するようなイメージをするんです。自分は5試合で優勝だったら決勝戦までのイメージをして、朝の入りから入場シーンから全て1度イメージ通りに1日動いてみるんです。東京オリンピック前もそれをやりましたね。
――それをやっておくと安心ですよね。
植草 本番同様のプレッシャー感とかを全て同じようには作れないんですけど、疲労感を感じ取れたりします。当時はトレーナーもいたし栄養士やメンタルコーチもいたので、感情やどんな感じだったのかも全て自分のレポートに書いて全て伝えていました。ふくらはぎがすごく張った感じがあったら、それは足捌きが足りないのか体のリカバリーができていないのかなど、ケアするほどトレーナーさんにも伝えます。今回の大会で1発勝負だと、いつもの大会で1勝するのとは中身が違うからしんどいと思うし、そういう事ができると良いのかなと思いました。
――沢山ヒントを頂きましたね。
白鳥 1DAYっていう、3試合するっていう事を想像できていない部分がありますね。空手をやっていた時は子供の頃だったので、1日何試合とかやることもありましたけど、その当時とは全く違うと思いますし、未知の領域って感じがしますね。
植草 やってみたら良いんじゃないかな。そしたらセコンドの方も理解すると思いますし、スパーリング相手だけフレッシュな選手を3人用意しておいて、似た感じの状況を作るのが良いと思います。この前自分も生徒にやらせたんですよ。新1年生で初めての公式戦で千葉選手権だったから、その時に模擬で朝から夕方まで、個人から団体まで全部やったんですよ。それが「すごく疲れた」って言う子もいたり、補食が足りていなかった子もいたり、スタミナが足りていなかった子もいたり。自分では「こんなの余裕だろ」って思うことも彼らにとってはすごくキツイものになるから、自分では分からない子供たちの意見が聞けるのでやっておいて良かったですね。
――確かにシミュレーションは大事ですね。あとは“補食”と言うものが新鮮ですね。
植草 え、摂らないんですか?
――何かしら摂りますけど、白鳥選手はRIZINのトーナメントに出場した時はどうでしたか?
白鳥 どうだったけな…(笑)。
植草 体重戻せるのは何パーセントって決まってるんですか?
白鳥 それは決まってないので問題ないです。
植草 これから歳が上がっていくから、食事に気をつけたほうが良いと思います。気づいてくると思うんですけど、疲れが取れなかったりするんですよ。年齢が上がると「反射が遅れる」とか「筋力が衰える」って皆んな言うんですけどそこは感じなかったし、疲労が抜けないですよね。
白鳥 疲労感は今でちょっと感じ始めていますね。
植草 自分も競技をしていて、1週間普通にできていたのが難しくなって、月曜日をオフにしていたのが木曜日もオフにしないと身体がもたないとか。そういう風になってくると思います。
――キャリアの晩年は疲れをどう対処されていたんですか?
植草 少しプラセボかなと思うんですけど、私は「このトレーナーに見てもらったら怪我もストレスも疲労も全部抜ける」って思っている人を常にそばに置いていました。後は世界選手権が5日間ずっと試合があって、しかも初日に個人でファイナルまで決めるんですよ。次に団体戦で個人の決勝、団体の決勝みたいな感じになってくるので、最終日は全身筋肉痛みたいな感じで力みもあるし、食事も気をつけていましたし、朝に何を食べるとか補食で何を食べるとか、睡眠もすごく大切にしていました。本当にガサツな人間だったので、電気をつけたまま寝るとか全然してしまっていましたし、当時は他の選手と部屋が一緒だったので、「歩先輩どうせ消さないから」って気を使って電気を消してくれたりしていましたね(笑)。寝すぎにも注意していて、寝るだけ寝れてしまうから自分の睡眠時間のベストを見つけていくってことをしていました。自分は8時間睡眠が良かったので、8時間寝たら朝起きてご飯をちゃんと食べて、その後ケアしてもらってちょっと歩いて試合に向かうとか。そういう自分の体のリズムが上手くいくようにとか、疲れている中でも勝ち続けられる体を作っていくという事を意識していました。
――勉強になりますね。
白鳥 やっぱりトップアスリートってそうなんだろうなって思いました。この間魔裟斗さんと対談したんですけど、同じような事を言っていたのでやっぱりそうなんだろうなって思いました。
――厳しいところをきちんとやらないといけないって事ですね。
白鳥 そういうところですね。
植草 今までは若くてフレッシュで「イェーイ!」みたいな感じで勝てたと思うんですよ。自分が世界チャンピオンになった時がそうだったんですけど。でもそれ以降継続して勝ち続けるって分析もされるし、そうなった時にどれだけ自分がプロフェッショナルになれるかっていうのが大事で、“孤高を目指そう”っていう事を自分のチームとしてやっていたので、お菓子を食べていたり朝ごはんを食べないで怒られたりとかもありました。
――白鳥選手はそういった事は流石にないですか?
白鳥 その辺は全部自己管理ですね。減量のスケジュールとかも全部自分でやっていますし、今のほとんどの選手がそんな感じだと思います。
植草 料理とかも自分ですか?
白鳥 全部自分です。毎試合色々自分で調べたりして、毎回減量があるのでその時に体感したことを覚えて「こんな感じだったら体重が落ちる。動きも落とさずに練習に臨める」とか自分に合っているものを探っていくという形でやっています。だから正直正解っていうのは分からないんですけどね。
植草 自分は現役生活が終わったから言える部分がありますね。
白鳥 自分の体管理に関しては、疲労もそうですし食事や減量とかも毎試合探ってますね。
植草 すごいなぁ。自分でやっていたんですけど、栄養士さんがついたから「これが良くない。あれが良くない」って言われてそれがムカついちゃって。「もう!一生懸命やったのに。なんでそんなこと言うの」みたいに思ってきちゃって。学校で食事のサポートがつくようになったので、昼夜は学校で食べて、朝は自分で用意するようになったんですけど、朝食べないで行くとフィジカルのトレーナーに怒られて「今日はトレーニングしないから帰れ」って言われる事もありました。自分にはそう厳しく言ってくれる人がいたり環境が整っていたこともありますけど、自分で食事を管理するってお金もかかるし体も疲れるし大変なことを続けているのですごいと思います。
――ストイックに続けられていてすごいですね。
白鳥 でもそれが“めんどくさい”じゃなくて“楽しい”って思えるようになってきましたね。
植草 同じものをずっと食べれる人ですか?
白鳥 食べれますね。
植草 ですよね。アスリートはそうだと思います。海外に行った時は自分でご飯を持ってくるんですけど、お米としゃけと味噌汁、あとはオレンジジュースとヨーグルトを毎日そのメニューで食べていました。
――毎日ですか。
植草 ご飯と味噌汁とオレンジジュースとヨーグルトは固定で、夜ご飯は特別に鰻だけ持ってきておいて、ァイナルの決まった日だけとかに食べていました。あとは生姜焼きや鯖の味噌煮を持ってきておいて、そこだけ変わるみたいな感じでした。栄養士さんに毎回自分で写真を撮って送るんですけど、「植草さん、これ毎日同じものを送ってますか?」みたいに言われたり(笑)。「毎日食事の内容は変わらないんですか?」と聞かれるんですけど、これが素晴らしいと言われているから、素晴らしいもので生き続けようって思ったら続けられました。「飽きないの?ストレス溜まらない?」って言われても、それに何か加えた事によって「脂質高いって。逆にもっとこれ足そうよ」って言われることの方が自分のストレスなので、良いと言われたものを続けられるのってアスリートの特殊能力ですね(笑)。
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脱毛を始めました(笑)(白鳥)
――それでは少し話題を変えますが、冒頭でも少し話した通り今回のキーワードの1つとして『千葉県から世界へ』と言う話になります。植草さんはずっと千葉県で生まれ育って、千葉県を誇りに思っていると思いますが、幕張には何か思い出はありますか?
植草 免許を取ったことですね(笑)。幕張の教習所で取りました。あとは幕張メッセで1回試合しました。
――千葉県で生まれ育ったという事は、子供の時のおやつは落花生だんですよね。
植草 そうです。田舎な感じの茹で落花生かとうもろこしです。でも白鳥選手の地元も田舎の方ですよね?
白鳥 一応東京なんですけど多摩地区の方なんで田舎ですね。
植草 私帝京大学だったので近かったんですけど、何もないですよね。居酒屋しかないみたいな(笑)。
白鳥 そうですね(笑)。
植草 落花生を食べて生きてきたんですけど、国内の大会の時は千葉代表として出場するので、千葉のワッペンを付けて出るっていう時はいつも「千葉で1番になりたい」とか「千葉って空手強いんだ」って思ってもらいたいって気持ちでずっと競技をしていました。
――白鳥選手の所属先のTEAM TEPPENはちょうど千葉県にありますよね。ジムまで通って長いと思いますが、千葉県は良いところですか?
白鳥 ジムに所属するまでほとんど千葉に行くことがなかったんですけど、22歳の時に松戸のジムの近くに引っ越して3,4年くらい住んでいました。
植草 都会でもあり田舎でもあってちょうど良いですよね。
白鳥 ちょうど良いですね。街に出ても変にストレスになることがないですし。東京で街に出ると、人混みが嫌いなので結構ストレスになるんですよ。なので松戸や柏は田舎過ぎず都会過ぎずで良いところですね。
植草 松戸はちょっと治安が悪いイメージがあるんですけど。柏の方が治安は良いかな(笑)。
――柏は駅前がすごい栄えていますよね。
植草 栄えていますね。あまり行かないんですけど。自分もずっと東京に住んでいて、オリンピックが終わってから千葉に戻ってきたんですけど、わざと田舎を選んだんですね。最初は住む場所を葛西とかの東京との境目に住もうかなと思ったんですけど、心が落ち着くような場所を選ぼうと思って。あ、ルーティーンとかありますか?自分は毎回親のお墓に行くのと、お参りするのがすごく大事だなと思ってやっているんですけど、それ以外は時間に常に追われてやっていたので、お寺に行った時の「はーっ」って落ち着いた時に、東京ダメだなと思って千葉の方に行ったんですよ。
白鳥 元々東郷神社に行ったりとかもしていたんですけど、結果を見た時に「あまり必要ないかな」って思った時があって、そこからは変にルーティーンを作らずにいます。
植草 できなかった時が不安になりますよね。
白鳥 そうです。できなかった時もあったので、今はルーティーンを作らずにやっています。
――お2人の共通点を探したら、モデルをやっているという事がありますよね。
植草 モノが違うから?。彼がやっているのはちゃんとした本物じゃないですか。
――でも世間的にニーズがあるという部分でやはりお互いプロフェッショナルだと思います。
植草 ありがとうございます。
――プラスサイズモデルの写真を見て、白鳥大珠の世界観とは全く違う世界だと思うのですがどうでしたか?
白鳥 それがすごく良いですよね。自分が普通に立ったモデルより、人の目を引く気がしますし。植草さんのを見て“プラスサイズモデル”というのを初めて知りました。
植草 自分も競技を引退するまで知らなくて、「こんな世界観があるんだ」っていうのを知ったし、ご時世的にも良いのかなみたいな。
――プラスサイズモデルを始めたことで、世界観はさらに広がったんですよね。
植草 「自分ってスポーツで生きてきたんだな」って改めて分かったし、今まではなかったような関わりも増えました。SNSの投稿もみんなで楽しそうに撮ったものはあったけど、恥ずかしくてできなかった“ちゃんとキメた写真を載せる”っていうことをしなければいけないとか。自分の日常を切り取ることもそうなんですけど、もっと肌を気をつけるとかそういったことをしなければいけない事が増えてきて、「これがモデルの世界なんだ」って実感するようになりました。髪の毛や化粧を気をつけるとか、選手のうちにも“気をつけていたこと”がまた違う“気をつける”になりました。
――白鳥選手はプロキックボクサーとは別に、プロのモデルとして気をつけている部分はありますか?
白鳥 気をつけている部分はあまりないんですよね。特別何かをやる事はないですけど、最近は美容サロンに行ったりはしています。
植草 でも格闘家の方ってみんな脱毛しているし眉毛アートもしているし歯も綺麗だし、みんな綺麗なイメージがあります。
白鳥 自分は脱毛はしましたね。僕が脱毛した理由は、毛がボーボーってわけではなかったんですけど京都から移籍してきた後輩が、「大珠さんて意外とすね毛とか生えているんですね。ツルツルかと思ってました」って言われて。「え、そう?別に普通じゃない?」って言ったんですけど、試合の写真とかを見返したら「確かにな…」って思ったんですよ。だから周りってそうやって見ている人がいるんだって実感してから脱毛を始めました(笑)。
植草 どうしてもプロの格闘家って肌が出ちゃう競技じゃないですか。自分たちは道着を着ているから肌は出ないけど、それでも女性は脱毛をするじゃないですか。でも男の子たちも最近の子たちはしますよね。白鳥 多いですね。
植草 ラグビーをやっている人とかは、テーピングをする時にしんどいから脱毛するっていう理由はあるんですけど、自分の生徒の男の子たちも剃っていて、短パンになった時に「めっちゃ足綺麗じゃん」って思わず言ってしまいました(笑)。今の子たちってそういうの気にしているんですかね。腕とかも剃っていて、男のが剃るなんて自分の時代では考えられなかったです。髪の毛の色とかもそうですけど、今のスポーツ選手はみんな美容意識が高い感じがします。
――その辺りは異性の目や視線は意識されますか?
白鳥 「肌綺麗だな」っていうのは言われるので、そういうのは意識しますね。女性って肌とか髪に敏感じゃないですか。だからより年齢が上がると共に気にするようになりました。もちろん人前に出る競技なので、より自分を綺麗に見せれるようにしたいなと思っています。
植草 競技的にもファンありきですもんね。
白鳥 この間も、風みたいなものを顔に当てて、そうすると肌がツルツルになるっていうのを初めてやりました。
植草 なにそれ。なんて名前のやつですか?
白鳥 『ミコステラ』って言うんですけど、リフトアップみたいなやつですね。
植草 気になる。あとで教えてください(笑)。
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3日に1回。少ないですね(植草)
――植草さんもモデルをやられていると、当然異性の目というのは気にしますよね?
植草 そうですね。でも自分は女性に好かれたいです。自分のSNSって8割が男性なんですよ。10万人くらいフォロワーがいて8万人が男性なんです。今後もっと広げていきたいと思った中で、SNSをアマチュア競技なんで頑張っていたんですけど、世界チャンピオンになった時にフォロワーが1万人しかいなくて。それで前マネージャーと話し合って“SNSをもっと増やそう”ってなった時に、投稿が朝昼夜が良いって言われているので、それを全部投稿の内容を変えることになったんですよ。朝は「おはよう。行ってくるね」みたいな感じで。お昼はその時やった筋トレをあげる。夜は空手をあげる。みたいな感じで毎日続けたんですよ。
それでフォロワーが5万人、6万人ってどんどん増えていった中で、『植草さん=筋トレの人』になったんですね。そしたらボディビルダーとかクロスフィッターとかがフォローしてくれるようになって、それプラス格闘技ファンってなったから、結果どうしても男性が多いんですね。でもそれでフォロワーが増えて、そこの中で「自分は好き」と思ってくれるファン層はもう取ったなと思ったので、次は女性に好かれるようになっていきたいなと思っています。
――今の植草さんの言葉にヒントが多々含まれていますね。
白鳥 僕SNS本当に投稿しないんですよね。インスタにストーリーって機能があるんですけど、あれがなかったらフィード投稿をしていたと思うんですけど、あの機能があるからストーリーばっかりになっちゃって。
植草 めっちゃあげてそうなイメージでした。
白鳥 そうやって頑張っている時期もあったんですよ。毎日あげれなくても、3日に1回は最低あげるみたいな。
植草 3日に1回。少ないですね(笑)。
白鳥 僕も一時期「毎日あげろ」って言われている時期があって、頑張っていた時があるんですけど、どうしてもあげるものがなくて。
植草 日常を切り取れば良いじゃないですか。得意な事は何ですか?
白鳥 僕本当に練習とサウナと筋トレもますけど、あとは車を毎日乗るのでドライブとか。あとは家でゲームをしたりとかそんな感じなんですよ。
植草 良いじゃないですか。もう5個ある(笑)。だからそれをビジュアルが良い時に撮り溜めるじゃないですけど、友達とサウナ入る時とか減量して腹筋がバキバキの時に撮っておいたり、運転している時も横から撮っておくとか。女性ファンは絶対多いじゃないですか。だからコーヒーを飲んでいる時の写真とか、それだけでも全然良いと思います。
――それを1日に3回あげれば良いんですもんね。
白鳥 1日3回あげてたんですか?
植草 あげていました。
白鳥 毎日?
植草 毎日。当時は取材もすごく多かったから、写真もあったし宣伝もあったし、マネージャーがほとんど常についていたので撮ってもらっていました。あとは筋トレの動画で、スクワットやクリーンが強かったのでそれを毎日あげて、ベスト更新できた時と更新できなくて悔しいってあげるとか、そういうものをあげていました。美しい自分だけではなくて、学食を食べている自分とかふててる自分とか、自分の全てを曝け出していましたね。
白鳥 なるほど。すごい勉強になりますね。
植草 やっている事が5つとも女性ファンに引っかかると思います。
――アピールができますよね。
白鳥 でも僕も同性ファンを増やしたいと思いますよ。今僕のフォロワーの男女比が半々なんですけど、業界的にも格闘技って男性ファンが多くて。20代前半の頃とかは、どうしたら女性が格闘技の会場に足を運ぶかなとか色々考えていたんですけど、実際に会場に来るかってなると、今だとABEMAで見れちゃうし結構難しいんですよね。
植草 ファンが来てくれたらサインをするとかはどうですか?
白鳥 大会場でのファンサービス的な事ですか。
植草 「今日は白鳥くんが会場にいるから来てくれたらチェキが撮れますよ」みたいな。
白鳥 それは色々RISEに提案してもらいたいです(笑)。
――植草さん、このままアドバイザーになれますね。
植草 アスリートの自分の友達で水球をやっている子がいるんですけど、彼はマジで筋肉美なんですよ。それを分かっているからニコニコしてプールから上る姿だけとかでも、自分は「すげえ、めっちゃ体強い」みたいに思うんですよ。水泳の中で筋トレしたりとかしているのをあげているってすごいなってシンプルに競技者としては思うんですけど、それを友達もフォローしていて何でフォローしているのか聞いたら「めっちゃかっこいい。体がすごい美しい」って言っていて。白鳥選手もそれを見せられる側だと思うんですけど恥ずかしいとかはありますか?
白鳥 恥ずかしいとかはないです。SNSを更新する頻度が減ってしまったなって思いました。
――もうアドバイスよりも植草さんから「こうしなさい!」ってマストで言ってもらった方がいいかもしれないですね。
植草 ビジュが良いのにもったいないですよね。
白鳥 また最近思い始めましたね。
植草 「俺ビジュ良いな」って?
白鳥 いや、違いますよ(笑)。SNSの投稿を頻度良くやっていった方が良いなと思って。どうしても今回の大きい大会の時だけにしていても、今いる層にしか届かないので、やっぱり大事だなと思いますね。メディアに取り上げられるだけじゃなくて、自分でできることって沢山あるんだなって。若い頃はもっと頑張ってたんですけどね…。
植草 まだ若いです(笑)。
白鳥 この業界でいうと、ベテランというかMAXが35歳ぐらいだと思うんですよ。なので、まだ中堅というか若手ではなくなってきたので。でも今が良い時期だと思っているんですけど。
植草 絶対そうだと思います。
――最後になりますが、今回の1DAYトーナメントに出場する白鳥選手にエールを一言お願いできますか?
植草 会ったら親近感も湧くし応援したくなるので、私も応援したいし優勝してほしいなと思うので、やっぱりチャンスを掴める人がきっと今後伸びていけるし、ここが大きなチャンスだと思うので、しっかりチャンスを取ってそのビジュをみんなに見せつけてください。
――じゃあ白鳥さんからも千葉県発、世界での先駆者である植草さんにこれから空手の指導者として頑張ってほしいというエールをお願いします。
白鳥 僕が上から言えることは何もないですけど、世界を知っている方だからこそ、自分の経験を人に伝えられる事も沢山あると思うし、自分が長時間やってきた事が意味なかったのかなとか思うこともあると思うんですけど、やっぱり自分が経験してきた事を今の生徒たちに伝えられる事は沢山あると思いますし、空手って競技人口が広いと思うので、全空手家たちに伝えられるように、僕ら格闘家としては同じ類なので、共に頑張っていけたらなと思っています。お話しさせていただいて、刺激になる言葉とかも聞けたので。ありがとうございます。