鈴木博昭「最短距離で上がってきている秋元選手と、だいぶ遠回りして、冬の時代を乗り越えた僕の試合が組まれて、色々思うところはあった」
──試合後の率直な感想をお聞かせください。
「残念です。まあしょうがないですけど。これが勝負なんで。残念ですが、しょうがないでしょう」
──秋元選手と実際に対戦してイメージと違うところはありましたか。
「いや、おおむね想像通りではあったんですけど、思った以上に反応が良かったかなっていう。やろうとしたときの反応速度が想像より良かったなというのがあります」
──試合後、ワーっと叫ぶ声が響いていました。
「そうですね、今回は変にお祭り気分で行かずに、ちゃんとじっくりじっくり、まあ戦いってうまくバン! と行って終わることも、そんなのばかりじゃないので、じっくりきついところに引きずり込んだろうと思ったのですけど、きついところなんだけど自分が上回ってなかったというのがあったので、それをやりきれなかった自分の悔しさというか。それが勝負です。何回も言いますが」
──試合を終えたばかりですが、今後の目標・展望を教えてください。
「正直ここで勝たにゃというのがあったので、今すぐこれといった展望を今言える言葉は持ち合わせていないです。まあじっくりと考えねばと思いますが。やっぱ、いい舞台ですね、いい。RIZINは相変わらずエキサイティングでいい舞台です。それは改めてみなさんにお礼を言いたいなと思います」
──シュートボクシング時代を含めて、負けてああいう感情の出し方をするのが自分は見たことも聞いたこともなかったです。先ほどの言葉を否定するかもしれませんが、今回の試合に対するモチベーションや勝敗に関して何か違う部分があったのかと思いました。いかがですか。
「いい質問をありがとうございます。やっぱり、最短距離で上がってきている秋元選手と、だいぶ遠回りして、冬の時代を乗り越えた僕が戦って、何かこう、やっぱり組まれたときに色々思い返すことが、普段あまりないんですけど、というか思わないようにしているというか。『俺は新人だ!』とずっと言っているのですけど。なんかこう、どこかすごい昔を思い出して。
僕も高校行かずにその当時は空手ですけど、ずっとやって、SB時代からあの頃はなあ、と思い返すことが今回あって。倍以上というか、自分の子供のほうが年近いくらいの秋元選手と戦うことになって、すごく思うことがいっぱいあったんですよ。だから、昔のガウンを引っ張り出して着ようとしたりもあったし、今回SBの。いろんな事情で着てはいないのですけど。すごく振り返ることが多かったです今回は。だから、そこで落としちゃいかんかったという気持ちはあります。だけど、何回も言いますけどこれが勝負です。落ち込もうが落ち込むまいが、これが勝負です。でもやっぱり、どこかそういう昔ながらの感情がちょっと溢れてしまったかなと思います」
──いろんな思いを抱えて戦ったと。秋元選手には期待するのか、それともまだ自分のファイターとしての悔しさのほうが大きいでしょうか。
「両方ですね。もちろんこの負けて“もういいよ”っていう感情は正直ないので。なんとしてもここは変にウルァ──! って言うのは持たずにじっくりと、絶対変に爆発せずに、じっくりコイツを料理したろと思っていたので、“あれ? 怪物君の試合にしては爆発しないな”と思った方も多いとは思うのですけど、まあ今回は。それがゆえに、どこかやりきれない気持ちもゼロじゃないというのもあるし、まあ、本当にいろんな感情がありますよ。でもまあ本当にそのいろんな感情こそ格闘技なので、ちょっと一言で言い表すことができないのですけど」
──次の試合に向かうモチベーションになっていますか? 休みたいメンタルですか?
「僕自身、一応こう見えて経営者でもあるし、後身の選手たちもたくさん抱えているなかで、いつまでファイトしていいのだろうという気持ちも本音を言うとゼロではない、いつまで自分にエネルギー使っていいのかなというのもあるし。でもこんなね、格闘技が生業なので僕は。じゃあ今回何もできず、何も反応できずに一方的にボコられたわけではないし、まだやれるぜコノヤローという気持ちもあるし。なんかこう、色々ですね。
まあでも全部抱え込んでいるからこその鈴木博昭でもあるし、だから今の入場曲でもある。全部抱えて行こうが行くまいが、俺はやりきってやるよ、というところもあるので、まあ本当に、“もういいっすわ!”という気持ちになるまで全身全霊で戦いたいという気持ちは今でもあります。今すぐどうこうとはっきりしたことは言えないですけど、競技だけが怪物君ではないので、僕は。全てひっくるめたタフガイとして生きる強い男としての怪物君でいたいので、またそんな姿をみなさんにお見せしたいという気持ちはもちろん、あります」