マイケル・チャンドラー「この2年間、コナーとのこともあったけど、それを乗り越えたからこそ、さらに格闘技への愛が深まった」
──久しぶりのファイトウィークだが、メディア対応や会見はずっとやってきたよね。今回、ケージに戻れるのを心待ちにしているんじゃないか?
「ああ、そうだ。過去2年間を振り返ると、いろんな瞬間があった。疑念が湧いたり、前に進みたいと思ったり、次の試合を組んでほしいと願ったり、そういった色んなことを思った。でも、今この椅子に自信を持って座っている自分を見て思うのは、あの2年間が自分にとって必要な時間だったということだ。人間としても、アスリートとしても本当に良いプロセスだった。今、過去最高に幸せで、健康で、倒すのが難しいファイターになっていると思う。だから、試合が楽しみだ」
──休養期間に学んだ教訓は?
「いい質問だな。学んだことは本当にたくさんあるし、中にはまだ自分の中で腑に落ちていないものもある。でも、忍耐が美徳だということは、何よりも重要な教訓だと思う。極限の忍耐を見せるとき、人からは疑問を投げかけられることがある。実際、いろんな意見があったのは理解してるよ。でも結局のところ、外部の状況に左右されていたとか、自分がコントロールできなかったとか、そういう話をされても、部分的にはその通りだったかもしれないけど、常に自分の意思で動ける立場だった。デイナ・ホワイトやハンター・キャンベルに電話して『コナー・マクレガー戦からは降りる、次の対戦相手をくれ』と頼むことだってできた。でも、自分は待つことを選んだ。それは極限の責任感であり、むしろ自分の強みだと感じているんだ。
そして、自分がオクタゴンの外でもどういう人間であるかを知っている。ビジネスの構築、妻や子供たちと過ごす時間、そういった自分を高めるための努力を続けてきた。これまでの戦績を見てくれ。26カ月で6つのトレーニングキャンプ、5つの試合をこなしてきた。どの試合も生死を賭けたものばかりだった。ファイト・オブ・ザ・ナイトやファイト・オブ・ザ・イヤー、ノックアウト・オブ・ザ・イヤー、デビュー・オブ・ザ・イヤーもあった。かなり激しいキャリアを駆け抜けてきたんだ。だから休養を望んでいたわけではなかったけど、必要なものだった。
この1年半、格闘技から少し離れ、コナー・マクレガー戦に向けたトレーニングキャンプを経て、チャールズ・オリベイラ戦のキャンプへと進むことができた。この過程は良かったと思っている」
──以前、UFCのタイトルに手が届きかけたが、チャールズとの試合では一瞬の判断で結果が変わった。この週末も同じように、一瞬の判断でタイトル挑戦を逃すか、コナーとの対戦権を失う可能性がある。チャールズは君のキャリアを前進させるための壁、つまり乗り越えなければならない存在だと感じる?
「良い視点だな。確かにそう言えるかもしれない。ただ、俺としては、ずっと運命づけられていた道だと思っている。この試合に勝てば、次はナンバーワン・コンテンダーとしてタイトルマッチに挑むことになる。そして、用意された相手が、過去に自分の夢を打ち砕いたチャールズというわけだ。
MMAでは『あと少しで勝てた』なんて意味がない。UFC 262の試合で他のレフェリーがいたら結果が違ったかもしれないが、それに固執するつもりはないし、後悔もない。スポーツはそういうものだ。
チャールズも自分と同じように四肢を持つただの一人のファイターで、俺はマディソン・スクエア・ガーデンの観衆の前でパフォーマンスを見せられる。スタジアムの屋根を吹き飛ばすくらいショーを盛り上げ、自分が誰で、何のために戦っているのかを改めて示すことができる。最高の時間になるはずだ。まるで脚本に書かれたような展開で、人々はカムバックストーリーを愛する。この試合は特別なものになる」
──もしチャールズにバックを取られたら、また後ろに飛び込んでスラムを狙う?
「どうだろうな。正直、チャールズが戦うマイケル・チャンドラーってファイターのことが分かっていないんだよ(笑)。彼は時々無謀な選択をすることもあるからな。だから、どうなるかはその時次第だ。でもいつも通り、アクセル全開で止まらない展開にするから、見逃さないようにしてくれ」
──あなたにハイライト級のKO勝利を収めたチャールズ・オリベイラが、タイトルマッチでもない試合で、再戦を受けたことに驚きはあった?
「全然驚いていないよ。チャールズは誰とでも戦う男だ。彼がどんな相手で、どんなに危険かをよく理解している。彼は実績のあるベテランであり、元チャンピオンで、俺に勝ったこともある相手だ。
こういった状況では、裏でいろんな話し合いが行われていると思うし、モチベーション次第だと思う。チャールズ・オリベイラのモチベーションは単純だろう。UFCに『タイトルを争いたい』って言えば、UFC側も『じゃあ、まずこの男を倒せ』と言うはずだ。
俺にとっては、コナーとの話が消えて、彼がすぐに戻ってこないとわかったときに、チャールズ・オリベイラは完璧な相手だった。タイミングも完璧で、これ以上の展開はないと思う。だから、チャールズがこの再戦を受けたことに全く驚きはない。チャールズは真の戦士だから」
──ライト級には、連敗しても1勝すればすぐにタイトルマッチ挑戦に名乗りを上げられるようなポジションにいるファイターが揃っている。ダスティン・ ポイエー、チャールズ・ オリベイラ、そしてあなたのようにね。その状況についてどう思う?
「それは実績やスケジュールによるところが大きい。今、自分もこのポジションにいられることが嬉しいよ。UFCでの試合数はポイエーやチャールズ、それに他のファイターたちと比べれば少ないけど、俺も長くUFCにいて、トップクラスの選手たちと戦ってきた。ダン・フッカー(ライト級6位)をノックアウトしたこともある。今では彼が再びランクを上げてきて俺よりも上にいるけど、それも復活を果たしたからだ。
このライト級はUFC、いやスポーツ界で最も過激でエキサイティングな階級だと思っているし、そんな階級の一員であることを本当に幸運だと思っている。そしてこの試合後には、イスラム・マカチェフ(ライト級王者)やアルマン・ ツァルキヤン(ライト級1位)と肩を並べられる位置につきたいと思っている」
──タイトル挑戦への、理想の道のりは?
「もちろん、自分の意思だけで決まるわけではなく、状況次第だ。これまでもカメラの前やマイクで自分なりのロードマップを語ってきたけどね。まだコナー戦が可能性として残っているし、彼が問題を片付けて戻ってきたら、その時にどうなるか次第だと思う。俺もコナーもその試合を望んでいるし、『TUF 31』のストーリーを終える必要もあるから、それが間に入るかもしれない。俺は時にはすべてのチップをテーブルに置いて、自分に賭ける男だ。タイトルマッチ挑戦が確定していても、コナー戦のオファーがきたら、どっちを取るのかまだ何とも言えない。
ただ、この試合を終えて、来年の6月や7月まで待ちたくない気持ちもある。年齢のことも、試合のブランクも気にしていない。俺は25歳のような気分で、これまで以上に危険なファイターになっていると感じているけど、時間は常に流れている。無駄にするのは嫌なんだ。
だからどうなるか見ていくつもりだ。ラマダンが3月に終わり、その後4月や5月にキャンプを始めるだろうけど、具体的にどうなるかはまだ分からない」
──ファイターたちの分析を聞くと、「マイケル・チャンドラーが興奮を抑えて自制しながら戦えるかが鍵」と言っていたが、この部分の調整には取り組んできた?
「マディソン・スクエア・ガーデンは特別な場所で、オクタゴンに閉じ込められた時に人を変えるんだ。それを言葉で表すのは難しい。でも、それがこの試合を受けた理由でもあるし、このストーリーの一つの要素でもあるんだ。俺はまだマディソン・スクエア・ガーデンで勝利を掴んだことがない。だからまた一つの挑戦、一つの山を登るチャンスを得た。
自分が成長を続けていることを証明するための機会でもあるんだ。見てもらえれば分かるが、今の俺は以前と少し違う。言ってきた通り、チャンドラー1.0は血に飢えた男だったが、チャンドラー2.0はベルトを狙っている。それが試合の興奮を損なうわけじゃないし、アクセルを緩めるわけでもない。暴力的で激しい戦いは変わらない。ただ、もう少し計算された動きを見せるだけだ。そして、試合ではチャールズ・オリベイラの意識を失わせるつもりだ」
──休養期間中に、引退が頭をよぎったことはある?
「いや、そんな風には思わなかったよ。むしろ逆だ。残念ながら妻やマネージャーから『そろそろ引退を考えないか』と言われたりもしたけど、俺は『いや、まだだ』って感じなんだ。時間を巻き戻せたような気分で、このスポーツにさらに夢中になったと思う。『離れてみると恋しさが増す』って言うだろ? それがまさに必要だったんだ。試練や浮き沈み、特にこの2年間、コナーとのこともあったけど、それを乗り越えたからこそ、さらに格闘技への愛が深まった。
今は新しいスタートを切った気分で、このキャリアにも新たな意義を感じている。視界がすごくクリアになったし、正直に言って、このスポーツが以前より簡単に感じられるんだ。もちろん、オクタゴンの中でチャールズ・オリベイラと戦うのが簡単だとは言えないけど、スポーツ自体への捉え方が軽くなったんだ。重荷が減った気がして、純粋に試合に臨むのが楽しみだよ」
──「次はタイトルマッチに挑戦したい」と言っていたけど、その前にアルマン・ ツァルキヤンがイスラム・マカチェフを破って新王者になる可能性がある。その可能性についてはどう思う?
「確かに彼らの最初の試合は、激しい展開だったらしいし、接戦だったという声も多い。でも実際にその試合を見たわけではなく、人から聞いた話だ。とはいえ、アルマンは前回チャールズ・オリベイラを倒したし、勢いがある選手だ。でも正直なところ、アルマンが勝つとしたら、驚くね。
イスラムはこれまでのパフォーマンスで、ライト級で間違いなく最強の選手だと証明し続けている。打撃も向上しているし、ポイエーにも打ち勝った。そしてグラップリングで、あらゆるファイターを圧倒できる実力を持っている。
彼は深い目的のために戦っている。母国、宗教、そして自分自身のレガシーのために、さらにはハビブ・ヌルマゴメドフやハビブの父親の遺志を背負って戦っているんだ。それは特別なものだし、美しいストーリーだと思う。
だから俺は、イスラムが勝つだろうと予想している。そして、自分にとっては、オリベイラへのリベンジを果たした後、オリベイラ以上に評価の高いイスラム・マカチェフと戦うのが理想的なストーリーだと思う」
──ダスティン・ポイエーは君のことを「偽善者」とか「汚いファイター」だと呼んでいるよね。Xでも口論があったけど、もしタイトル挑戦がないなら、彼と再戦してその個人的な因縁を清算したいと思う?
「いや、あんまり考えていないな。ダスティンは俺に勝利しているから、再戦して負けるリスクは取らないだろう。それにチャールズ・オリベイラを倒せば、俺は彼よりも上にランクされる。
他にも選択肢がいろいろある。マックス・ホロウェイとのBMFタイトルマッチ、イスラムとのライト級タイトルマッチ、それにまだ契約のあるコナー・マクレガーとの『TUF 31』を終わらせる必要もある。選択肢はたくさんあるんだ。
正直、ダスティンはその選択肢の一つではないかもしれない。因縁を清算する時が来るかもしれないけど、今のところは、同じ階級で同じ目標を目指す二人のファイターというだけだ」
──コナー・マクレガー戦やタイトルマッチがすぐには実現しない場合、どんな選択肢があると思う?
「マックス・ホロウェイ(ライト級5位)戦はリストの中でトップになるだろうね。BMFベルトを賭けることやランキングの状況を考えると、それも興味深い話だ。今のところ、俺は彼よりも上にランクされることになるだろうし、マックスがライト級に転向するという話を聞いて嬉しい。彼にとって減量はきつい部分だっただろうし、フェザー級で戦い続けるのも大変だったと思う。
マックスが、すでに激戦区であるこのライト級に入ることで、UFC全体、ファン、そして俺たちファイターにとってもいい影響を与えると思う。マックスとの試合は素晴らしい選択肢だし、BMFベルトを賭けるならさらに盛り上がるだろうね。どう展開するかはわからないけど、楽しみだよ」
──ライト級で他に戦いたい相手は?
「実はウェルター級で戦うことも面白いと思っているんだ。ウェルター級でのトレーニングキャンプを本当に楽しんだし、あの『ライト級まで減量しなくて済む』っていう感じは最高だった。減量は決して簡単じゃないからね。俺がこれまで体重超過をしたことがないのも、試合から降りたことがないのも、徹底した自己管理と王者のような生活を送っているからなんだ。でも、実際にライト級まで落とすのは相当大変な作業なんだよ。
減量も仕事の一部だけど、ウェルター級での試合はやってみたいと思う相手が何人かいる。いろいろとアイデアを出していたけど、今回は結局チャールズとの試合になった。当初はウェルター級で戦うつもりで、1年半ほど体と精神をその体重に合わせて準備していたんだ。でも、臨機応変に対応して減量を進め、ライト級での試合に向けて調整した。試合では、まるで地獄から飛び出してきたような勢いで、良いパフォーマンスを見せるつもりだ」
──ウェルター級で戦ったら面白そうな相手は?
「ウェルター級で思い浮かぶのはコルビー・ コビントン(ウェルター級6位)だな。面白い試合になると思う。でも、今はライト級で本当に素晴らしいポジションにいるんだ。チャールズ・オリベイラを倒せば、ライト級のタイトルマッチ挑戦が現実的になるし、ウェルター級での試合を考えるのは少し難しいところもある。でも間違いなく、ウェルター級で面白くなりそうなマッチアップがたくさんある。どうなるかは、お楽しみだよ」
──あなたとチャールズ・オリベイラが初めて戦った時、チャールズは試合の途中で失速する、あるいは逆境に弱いファイターと見られていた。ただ、あなたとの試合でそのイメージを覆した。あなたにとっても、チャールズに対する見方は変わった?
「誰もが『負け犬』『プレッシャーに弱い』なんて言われたくない。でも一時期のチャールズ・オリベイラは、まさにそう見られていたんだ。でもそれが彼を否定することにはならない。誰にだって浮き沈みや成長の時期があるし、人間として成長するための試練だと思う。彼は貧しいスラム街出身の少年だったが、大きな夢を抱き、最終的にUFCチャンピオンになった。でもその道のりには苦難や批判もあったんだ。負けるべきでない試合に負け、体重超過もしていた。俺にとっては、体重を守れないのは大きな問題だ。プロとしての責任を果たすべきだからな。
だが、彼はすべてを乗り越えて、自分を変えた。そして過去の評価を覆したんだ。今回、俺が戦うのはこれまでで最高に危険なチャールズ・オリベイラだと思っている。だが、試合の大舞台でこそ俺は本領を発揮する。楽しみだよ」
──ファイターの人生、ファイターのキャリアというのは非常に独特なものだと思うけど、君が成功するために必要だと考える重要な特性や資質は何だと思う?
「表面的な部分で言えば、タフさや努力、闘志を持つことが重要だと言える。でも、それはこのスポーツのフィジカルな面にすぎない。本当に重要なのはメンタルや精神的な部分だ。忍耐力、未来を見据える力、そして辛抱強く努力を続ける力が必要だ。今日の努力がいつか必ず報われると信じることが大事で、その瞬間にそこに立っていなければ意味がないと理解することだ。若い選手たちにはいつもそう伝えているよ。22歳で成功することや、23歳でビッグファイトに出ることが全てではないんだ。
長くキャリアを続けることこそが大切で、俺のように35歳を過ぎても戦い続ける姿勢が求められる。このスポーツで長く活躍することができれば、実り多く、成功に満ちたキャリアが築ける。体を大切にすることは何よりも重要だ。体は自分たちの最も大切な資産なんだから。特に俺たちプロのアスリートにとっては、体を最も大切にしなければならない。
俺の体がこの年齢でもこのパフォーマンスを見せられるのは偶然じゃないんだ。細部に気を配り、やるべきことをやり続けるだけだ。欲望ではなく必要なことにフォーカスすること、それだけだよ。最高の仲間に囲まれ、成長を続け、自分のベストバージョンであり続けること。負けた時は自分を許し、勝った時は自分を褒めて前に進む。それが全てだ」
──父親がセコンドにつくと言っていたけど、そんな中でマディソン・スクエア・ガーデンで初勝利を挙げたら、どんな気分になると思う?
「特別な瞬間になるだろう。この間、父の手について話したんだ。このキャンプでは俺の指に大きな傷ができていて、4週間くらいずっと割れた状態だった。グローブで傷が裂けてしまったんだ。でもその時、父の手を思い出したんだ。俺が今でも愛してやまない父の手は、大きくてひび割れた、まさに職人の手だ。彼はその手で俺たちの生活を築き、家族を支えてくれた。
これは多くの人にとっては些細なことかもしれないけど、父の象徴なんだ。父がこれまでUFCで俺のセコンドに入ったのは一度だけで、それがチャールズ・オリベイラ戦だった。あの時はベルトを獲得して父の肩にかけたかった。でも、それは叶わなかったんだ。
今度またその機会を得ることができるのは、本当に恵まれた二度目のチャンスだと思っている。父はMMAやコーチングについて詳しいわけではない。ただ、そこにいてくれることが大切なんだ。彼がそばにいることで、精神的な支えになってくれる。
俺がUFCで最も努力を惜しまないファイターであり、スポーツ全体でも最も規律を守る男だと自負しているのは、両親から受け継いだ例を見てきたからだ。彼らは文句を言わずに常に働き続け、必要なことをやり抜いてきた。だから父がセコンドにいてくれるのは特別なことなんだ。チャンドラー家にとって、とても特別な夜になるはずだ」
──トム・アスピナル(ヘビー級1位)が「チャンドラーは無計画だから、危険なファイターだ」と言っていたが、どう思う?チャールズ・オリベイラがダゲスタン系のグラップラーに二度敗れていることから、今回のキャンプでダゲスタンのグラップラー、アブドゥルアジズを招いたという話もある。
「トムのインタビュー自体は聞いていないけど、そういう内容だったらしいね。でも、計画がないわけじゃないよ。むしろ今まで以上に計画を立てていると言ってもいいくらいだ。チャンドラー1.0とチャンドラー2.0の違いを見せるつもりだけど、暴力的な戦いであることは変わらないよ。
アブドゥルアジズに関しては、チャールズに対抗するためというより、単純に彼が素晴らしい友人であり、素晴らしいトレーニングパートナーだからだ。彼はMMAで目立つ存在になるよ。それくらい優れた選手だ」