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インタビュー

【UFC】ジョン・ジョーンズ「右のパンチがスティペにとっての勝機だ」「アスピナルにはチャンスすら与えたくない」×スティペ・ミオシッチ「どうしてもジョンと戦いたかった」=『UFC 309』

2024/11/16 18:11
 2024年11月16日(日本時間17日)、米国ニューヨーク州ニューヨークシティのマジソン・スクエア・ガーデンにて開催される『UFC 309』(U-NEXT配信)の前日計量が15日(日本時間16日)行われた。  メインイベントの「UFC世界ヘビー級タイトルマッチ」では、初防衛戦に臨む王者のジョン・ジョーンズ(米国)が237.6ポンド(107.77kg)でパス。元王者で同級8位のスティぺ・ミオシッチ(米国)が248.6ポンド(112.76kg)で計量をパスした。  元オールアメリカンレスラーのジョーンズは、2008年に20歳でプロMMAデビュー。前戦2023年3月の『UFC 285』での「UFCヘビー級王座決定戦」で前暫定王者のシリル・ガーヌに1R ギロチンチョークで一本勝ち。ライトヘビー&ヘビーの二階級制覇に成功した。  その後11月にミオシッチとの初防衛戦にへ臨む予定だったが、練習中に左胸の胸筋腱断裂で欠場。JJにとって、1年8カ月ぶりの試合となる。  対する挑戦者ミオシッチは、ミルコ・クロコップを尊敬し、野球やアメフト、レスリングで活躍後、MMAファイターと並行して消防士としても働き、2010年にプロMMAデビュー。2016年5月にファブリシオ・ヴェウドゥムに1R KO勝ちでヘビー級王座獲得。その後、フランシス・ガヌー戦を含む3試合で王座防衛。ダニエル・コーミエーに敗れ王座陥落も、コーミエーから奪還し、2020年8月のラバーマッチも判定勝ち防衛。2021年3月『UFC 260』でガヌーと約3年2カ月ぶりに再戦。2R KO負けで王座陥落、リベンジを許していた。  新旧UFCヘビー級王者の対決は、ジョーンズが初防衛するか、ミオシッチが王座奪還なるか。同級にはセルゲイ・パブロビッチとカーティス・ブレイズを1R KOした「暫定王者」トム・アスピナルも控えているが、会見でジョーンズは、アスピナルに嫌悪感を示し、現UFC世界ライトヘビー級王者のアレックス・ペレイラとのスーパーマッチを望んでいる。 ジョン・ジョーンズ「スティペとの試合後、ペレイラとの試合だけが自分のレガシーに値するものだ。リスクを取るに値する」 ──ニューヨークでMMAが合法化されて以来、毎年11月にMSG(マディソン・スクエア・ガーデン)で大会が開催されているが、これまでのインタビューでもあなたは「いつニューヨークで戦うのか?」と聞かれることが多かった。ヘビー級王者としてMSGで戦うことになった今の気分は? 「ここに来られて本当に誇りに思う。UFCの現状にも誇りを持っているし、あの選挙の時にデイナ・ホワイトがステージに立った瞬間、MMA業界全体が格上げされた気がする。アメリカ人だけでなく、世界中の人々が『あのスキンヘッドの男は誰だ?』って思っただろうし、彼が私たち全員を代表しているんだと思う。MMA記者のみんなにとっても同じだろう。この業界全体がより名誉あるものになったように感じるんだ。それくらいマディソン・スクエア・ガーデンで戦うことは特別なんだよ。  ここは格闘技の聖地みたいなものだし、大統領が観戦するかもしれないなんて話もあるし、タイムズスクエアのビルボードに自分の顔があることもすごく誇らしい。数日前にはラスベガスにいたんだけど、人々がまるで王族みたいに接してくれたんだ。それくらい、この試合に対する期待の高さを感じてる。ファンの中にはこの試合が相応しくないと思っている人もいるみたいだけど、俺にとってはキャリアの中でもっとも名誉なイベントのひとつだ。ここでメインイベントを務めることに感謝しているし、心から光栄だと思っている」 ──あなたは対戦相手が決まると、相手の映像を徹底的に見て、すべての動きや癖、なぜそのステップを踏むのか、なぜそのハイキックを出すのか、なぜ特定のブロックをするのかを分析する、と公言している。スティペについては多くの人が「史上最もスキルのあるヘビー級ファイター」と評価しているが、あなたにとって、彼はこれまでにUFCで対戦した中で最もスキルのある相手だと見ている? 「実際のところ、ダニエル・コーミエーが最もスキルフルだと考えている。彼のオリンピックレベルのレスリングや、ダーティーボクシング、ボクシング技術は素晴らしい。でもスティペはそのコーミエーを倒しているからね。  スティペはタイトルマッチに相応しい存在だ。彼はレスリングもできるし、いつも引き締まった体で試合に挑む。スタミナもある。そして右のパンチ――ストレート、オーバーハンド、アッパーカット――これが彼の本当の武器だし、彼にとっての勝機だ。そこはしっかり警戒して準備しているよ」 ──あなたの試合が組まれると、ファンやメディアは対戦相手より次の試合に目を向けてしまうのはなぜだろう? アレクサンダー・グスタフソン戦の前には当時勢いに乗っていたグローバー・テイシェイラのことに質問が集中したし、いざグローバー戦が組まれるとダニエル・コーミエーに関する話題が多くなった。今回も、スティペではない他のファイターの話題が先行しているように思える。 「傲慢に聞こえてしまうのは嫌なんだけど、要するに自分がそれだけの実力を持っているからだと思う。自分が何を成し遂げても、常にそれ以上を求められる。正直言って、今もトム・アスピナル(UFCヘビー級暫定王者)の話題の方がスティペよりも多く取り上げられていることは理解している。それが俺の置かれている立場なんだ。勝つたびに、なにかしらの物言いがつくんだよ。『あいつは実際には万能なファイターではなかった』とかね。  この状況は他のどんなファイターとも違うユニークなものだと思う。シリル・ ガーン(ヘビー級2位)と戦う前は、彼の身体能力やスピード、そしてタイ・ トゥイバサ(ヘビー級12位)戦での勝利で評価が高かった。でも俺が勝つとすぐに『あの程度だった』『こういう欠点があった』と変わるんだ。だから、自分は特殊な環境に置かれていると思うし、そういうものだと受け入れているよ」 ──なぜあなたはファンに、トム・アスピナルから逃げていると誤解されていると思う? 「正直に言うと、根も葉もない話が作られているように感じているんだ。戦う予定が一度もなかった相手から逃げるなんてことはありえない。まるで一度も声をかけていない女の子に振られたようなものだよ。言いたいことがわかる? デイナ・ホワイトやハンター・キャンベル(※UFC首脳陣)とトム・アスピナルについて話し合ったこともないし、彼が自分の対戦相手の候補に入ったことも、一度もない。  キャリアを通じて数々の相手を倒してきたけど、彼を避けているわけじゃない。今自分がスティペと戦う契約を結んでいるから、もし他の相手と戦うとなれば、むしろスティペから逃げることになるだろう。スティペと戦う契約はもう1年以上前に結ばれているんだ。トム・アスピナルの話は急に出てきたもので、彼がベルトを取った瞬間から『俺が逃げている』という話になってしまった。でも彼と対戦する話なんて一度も交渉されたことがないんだよ。だから、ファンはただ現実を無視している。彼らはやっと自分と競い合えると思う相手を見つけて、どうしてもその試合が見たいと思っているんだ。それだけのことさ。  これはフランスのファンと同じようなものだ。シリル・ガーンを倒した後、フランスのファンはかなり批判的だった。それでもまた同じ状況に戻る。『ああ、また一人倒した。次は何だ?』って感じになるんだ。グローバー・テイシェイラを倒した時もそうだ。彼は20連勝していたけど、倒した瞬間に次の話題に移る。それが俺にとっては普通のことだ。  トム・アスピナルがエキサイティングなファイターだというのは分かっている。16年経って、ついに6歳若くて30ポンド重い相手が出てきて、みんなそれを見たがっているのも理解している。でも自分にとってはこう思うんだ。『俺にとって何の意味があるんだ?』と。彼に勝ったとしても何も変わらない。トムを倒すのはシリル・ガーンを倒すのと同じようなものだ。彼には英国全体の応援があるし、今勢いに乗っている。でも俺が彼を倒しても、自分には何の変化もないんだ」 ──もしUFCがこの試合の後に話を持ちかけてきて、金銭的な条件が納得できるものであった場合、トム・アスピナルと戦うことを考える? それとも、彼が自分にとって何の意味もないから戦うつもりはない、という立場を貫く? 「彼は俺にとって何の意味もないんだ。何も変わらない。彼は6歳若くて、35ポンドも大きいからね。それを見たいと思う人がいるのは理解している。『ジョンよりずっと若くて大きな相手と戦うのを見たい』という話になるのも理解できるよ。  でも俺から見たら、あるいはもし君が俺のマネージャーだったらどう考えるかだよね。同じ年齢で、今歩いている体重もほぼ同じのアレックス・ペレイラ(ライトヘビー級王者)と戦う方がいいだろう。ペレイラは普段240ポンドくらいで過ごしているからサイズ的にも近いし、彼の実績も素晴らしい。ビジネス的にも理にかなっている。  全く名のない、しかし危険かもしれない相手と戦うか、それともすでに多くの実績を持ち、非常に危険で自分のレガシーにも影響を与える相手と戦うかの違いだ。シリル・ガーンを倒しても俺にとっては何も変わらなかった。ただ少し多くの金を稼いだだけだ。トム・アスピナルとの試合も同じだろう。でも、アレックス・ペレイラを倒したとなれば、それはもっと大きな意味を持つんだ。その論理を理解できないわけじゃないだろう」 ──新しいUFCグローブが6月に導入されてから、今回また以前のグローブに戻るようだが、これについてどう思う? 「以前のグローブに戻るのはすごく嬉しいよ。数週間前に新しいグローブが送られてきて試してみたんだけど、キツく感じた。以前はXLサイズのグローブを使っていたけど、新しいグローブでは3XLをつけなければならなかったんだ。手がカーブする形状が非常に不快で、ファイトウィークに、このグローブをつけてどうやって戦うか悩んでいたよ。本当にトレーニングでも使いたくないと思っていたからね。  最近ハンター・キャンベルから電話があって、『UFC309に出るファイターはみんなベテランだ。なぜ新しいグローブで不安を与える必要がある? 慣れたグローブを使えばいい』と言ってくれた時、本当にホッとした。自分の手を巻いてくれるコーチのブランデンもすごく安心していたし、俺もホッとしたよ」 ──デイナ・ホワイトは君を「歴史上最高のファイター」と称していて、多くの人が同意しているし、あなたもそう主張している。一方で、トム・ブレイディやウサイン・ボルトは自らを「歴史上最高」と言うことは避けている。この事実についてどう思う? 「デイナ・ホワイトが自分を『歴史上最高のファイター』と強く推してくれているのは確かだね。彼の支援には本当に感謝しているよ。MMAは他のスポーツとは少し違う。俺はトム・ブレイディやレブロン・ジェームズ、マイケル・ジョーダンといった偉大なアスリートたちのファンだ。でも格闘技は何かを超越しているんだよ。全く異なるものなんだ。  億万長者のオフィスを見てみると、モハメド・アリの写真が飾られていることがある。人種、宗教、信仰に関係なく、ファイターという存在は特別なんだ。これは他のどの称号とも違う名誉であり、特別なバッジを身につけるようなものだ。モハメド・アリ自身も『自分は史上最高だ』と言い続け、それが今でも記憶に残っている。もし俺が同じことを言えば、アリの言葉を思い出す人もいるだろう。  マイク・タイソンも同様にその偉大さで人々を魅了してきた。もし自分がそのレベルに近づいているなら、受け入れ、主張するべきだと思うんだ。それは簡単に手に入るものじゃないし、特別なことだ。時には自分自身が一番の応援者になることも必要だし、今はその瞬間だと感じている。亡き母もそれを望んでいたはずだから」 ──アレックス・ペレイラとの試合が注目されるべきものだということには同意するよ。彼の実績についても、君の主張は説得力がある。ただ、多くの人が批判するのは、君がトムを選ばなかったことよりも、彼について「自分と戦うに値しない」といった発言だと思う。君がタイトル挑戦権を得た時期と比べると、トムの方が勝利数、フィニッシュ数、ランカーへの勝利数、メインイベントの出場回数が多いし、暫定王者でもある。これについての君の見解は? 「たしかに、自分の言い方が正しくなかったかもしれない。実際のところ、トム・アスピナルにはタイトルマッチを戦う権利があるし、彼には最高のUFCキャリアを歩んでほしいと本気で思っている。個人的にトムに対して何の悪意もない。だから『彼が自分に相応しくない』と言ったのは間違いだったかもしれない。彼は価値あるものを持っている。  ただ、自分が思うのは、彼はもっと素晴らしいキャリアを築くべきだということだ。多くの人はすぐにトップに行きたがるけど、ビジネスの世界で言えば、今の彼の立ち位置と自分の立ち位置が違うんだ。彼が自分と交わるべき相手ではないということさ。わかるだろう?  トムがどうとかではなく、自分がどうしたいかが重要だ。これだけ長い間UFCで戦い続け、努力を積み重ねてきたからこそ、自分には『この相手と戦いたい、この相手は嫌だ』と言う権利があると思っている。だからこそ、自分はベルトを返上することも厭わない。ヘビー級の王座が必要とは思っていないし、自分が築いてきたものはベルト以上のものだと感じている。もし自分が一歩退いて、『さあ君が新たなヘビー級王者になれ』とチャンスを与える時が来たら、それは自分の選択でそうするだけだ。でも、今の自分にとって意味がある試合を求めているんだ。  アレックス・ペレイラとの試合だけが、自分のレガシーに値するものだ。彼は自分と同い年で、現役で戦っていて、特別な価値がある。多くのファンも見たいと思っている。彼らは自分が負けるところを見たいんだろう。それは理解している。だから、アレックスとの試合はリスクを取るに値するものだ。  トムのことを言えば、彼はフィニッシュ率が高いとか、色々な点で注目されているかもしれない。でもタイトルを持っていない。17回の世界タイトルを獲得した自分が戦う相手は、自分と同じレベルでなければ意味がない。トム・アスピナルとアレックス・ペレイラが同じレベルではないということさ。興奮を呼ぶ試合を望む人もいるだろうが、自分はレガシーを追求したい。それが自分にとって重要なことなんだ」 ──引退についてはまだ決めかねているようだが、インタビューのたびに考えが揺れているようにも見える。これまでのキャリアを振り返って、後悔していることはある?それとも、全てが予定通りに進んできた? 「たくさんの後悔があるよ。でも最終的に、今の自分が成長した大人になっているというのも自覚している。チームプレイヤーとして、隣人として、個人として、自分がどんな人間かを誇りに思っているんだ。人生で経験するすべてのことが、自分を形作るものだから、過去に経験したいくつかの出来事がなければ、今の知恵も持っていなかっただろうね。だから、今の自分をとても誇りに思っているよ。素晴らしいキャリアだったと思うし、これで質問の答えになっているか分からないけど。  引退について言えば、今の目標はスティペを倒すことなんだ。スティペを無視して、次のことを考えるなんて失礼だろう。まずは彼を倒すことが最大の目標だ。そして、もし圧倒的で破壊的な勝利を収められたなら、その時の心の中の願いは『次はアレックス・ペレイラだ』となるだろう。  ただ、最終的にはUFCがどう判断するか次第だ。もしUFCがその試合を望まないなら、それは実現しないし、自分も次のステージに進むだけだ。でも、こう考えるんだ。『みんなは自分との別れを選ぶのか、それとももう一つのスーパーファイトを見たいのか』ってね。そして、俺にとって唯一意味があるスーパーファイトは、アレックス・ペレイラ戦なんだ」 ──キャリアの中で一番の思い出は? 「2011年、ニュージャージー州ニューアークでの出来事だね。強盗にあった夫婦を助けたんだ。自分は刑事司法を学んでいたし、その知識を活かして犯人を取り押さえ、警察が来るまで拘束することができた。  そしてその数時間後に、(『UFC 128』で)初めて世界タイトルマッチで勝つことができたんだ(※マウリシオ・ショーグンに3R TKO勝ち)。その日は、自分の力を正しい方向で2回も使えた気がして、本当に特別な日だった。あの日のことは絶対に忘れない。それが自分のキャリアの中で最高の瞬間だと思う」 ──あなたのこれまでの受け答えは非常に正直で、ビジネス的にもアレックス・ペレイラとの対戦が合理的だと感じる。ただ、あなたよりも若く、あなたよりも大きな相手に挑戦しているジョン・ジョーンズを見たいというファンの希望も理解できる。競技者として、その挑戦に興味は沸かない? 「少しはそういう気持ちもあるかもしれない。でも正直に言うと、トムがあまりにも嫌な奴だから、ビジネスをしたくないんだ。あいつのファンもすごくうるさいし、あいつ自身が本当に嫌な奴なんだよ。彼は30歳で、いわゆるインフルエンサー世代の人間だ。ネットでTシャツを売ったり、そういうのにはもう興味がない。もっとリスペクトがあれば、何か考えられたかもしれないけどな。  でも、これはビジネスなんだ。俺と戦うことであいつは人生を一変させるチャンスを得ることになる。でもそのチャンスすら与えたくない。個人的に俺に対する態度が間違ってたんだよ。俺はもう40歳目前の大人だから、記者会見とかで騒ぎを起こしたくない。  一方でペレイラは尊敬できるし、クールで多くを語らないタイプだ。そんな彼とはビジネスをするのもありだし、彼のような人間ならすべてを賭けることができる。彼は実績もある。トムはただのおしゃべり野郎だ。今はホットかもしれないけど、こんな奴はすぐ消えるんだよ。セルゲイ・ スピバック(ヘビー級7位)も同じようなポジションにいたが、すでに失速している。俺はこのスポーツを長くやってきたから、一時的な話題先行型の奴にチャンスを与える気はない」 [nextpage] スティペ・ミオシッチ「ただ戦場に出て、全力で戦って、すべてを稼ぎ取った男として覚えてほしい」 ──しばらくファイトウィークであなたの姿を見ていなかったけど、以前はメディアの質問攻めをあまり好んでいなかったように思う。少し離れてみて、今はもう少し受け入れやすくなった? 「まだ嫌いだよ……冗談だ(笑)。これも試合の一部だし、人々は自分の話を聞きたい、見たいと思っていることは理解している。それがちょっと面倒なのは、やっぱり同じような質問が繰り返されるから。でも、これが仕事だからね。皆が記事を書きたい気持ちも分かるし、昔よりは慣れたよ。受け入れて、理解している」 ──ジョン・ジョーンズ戦が無ければ復帰しない予定だった? それとも、いずれにせよまだ試合をするつもりだった? 「必ずしも復帰すると決めていたわけではなかった。もちろんジョンとの試合が一番望んでいたことだ。でも、もしそれが実現しないなら、それで終わりでもいいと思っていた。でも、すべてが上手くいったんだ」 ──当初この試合が組まれたときは、ファンはかなり興奮していた。ただ、一度試合が延期となってからは、別に暫定王者(トム・アスピナル)も生まれた。この試合後には、やはりこの試合がヘビー級ベストファイターの一戦だったと評価されると思う? 「そうなってほしいけど、そこは気にしていないよ。このキャリアを通じて学んだことの一つは、人がどう思うかを気にしすぎないことだ。それぞれが意見を持っていて、それは変わらないからね。正直、気にしていない」 ──ジョン・ジョーンズはヘビー級転向初戦でシリル・ ガーン(ヘビー級2位)を倒したけど、彼のリーチや体格が注目される中で、ヘビー級だとその影響が小さくなるかもしれない。君もジョンと同じくらい大きな体格を持つことで、彼の強みを無効化できると考えている? 「体格は確実に試合に影響するね。ヘビー級は他とは全く別モノなんだ。相手は大きく、強い打撃を持っている。いろんな要素が違う。俺もいくつかの策を用意しているよ」 ──ジョンは君が「ビッチ」と呼んだことに怒っていたみたいだね。 「そうか、まあそういうこともあるよな。奴だって俺を叩きのめすって言ってたんだろ? だから仕方ないだろ。お互いに言いたいことを言う場面もあるけど、別に気にしないよ」 ──ジョン・ジョーンズは試合を盛り上げるために、あえてあなたと火花を散らすような言動をしている思う? 「そうかもしれないけど、正直何を考えているのか分からないな。だけど、いくつかの発言を聞いて、『おいおい、マジかよ』って思うこともあったよ。誰かから聞くまで全く知らなかったし、正直笑っちゃうような話だよ。本当におかしな感じで、ちょっと笑えるくらいだ」 ──周囲の意見や批判は気にしないと言っていたけど、キャリア初期の頃はどうだった? 「キャリアの初期は少し敏感だったと思う。『君は俺を知らないし、俺も君を知らない。なのに何でそんなことを言うんだ?』って感じだった。ひどいDMをもらうこともあって、『どうしてそんなことを言うんだ?』って思ったよ。でも、だんだん気にしなくなった。なぜなら、彼らは俺を知らないし、俺も彼らを知らないからだ。彼らはただ何かに苛立っていて、それを俺にぶつけているだけなんだって気づいたんだ。だから、今は本当にどうでもいいと思っている。これが自分にとって一番の決断だった」 ──周囲の批判は少し落ち着いた感じはある? 憎しみの言葉や攻撃的なコメントは減った? 「いや、全然。常に何かしら来るよ。DMも毎日のようにくるし、『お前はクソだ』『死ね』とかいろいろね。でも、それが現実さ。仕方がない」 ──休養期間は、どれくらいMMAに関心を持っていた? ペイパービューを買ったり、ヘビー級の試合をチェックしていた? 「ペイパービューはキャリアを通じてほとんど見なかったと思う。基本的には見なかったんだ。でも、友達が試合をする時は見ていたよ。例えばクリス・ワイドマンや、スティーブン・ トンプソンが試合をする時は見ていた。それ以外では、たまに面白そうなカードがあった時や、ライブで観る時くらいかな。でも、特に意識して見ることはなかった。人生には他にもやることがあるからね」 ──ヘビー級の他の試合は特に注目していなかった? 「いや、注目してたよ。周りの人が試合についてメッセージをくれたりするからね。ただ、インスタやSNSから離れることも必要だった。試合を絶対見なければ! という感じではなかったかな」 ──ジョン・ジョーンズ戦が以前に流れた際、あなたは苛々していたとコーチは言っていたけど、実際はどうだった? 「本当にそうだったよ。試合が近づいていて、一生懸命準備してきたのに、直前になって流れたからね。彼が怪我をしたこと自体に怒っていたわけじゃない。ただ、その瞬間、すごく悔しかったんだ。“もうすぐそこまで来ていたのに”と思ってね」 ──ジョンは対戦相手の映像を徹底的に見て研究するタイプだけど、君もジョンの映像を同じように見ている? 「俺も確かに彼の映像を見るよ。彼には癖がある。確かに状況によっていろいろなことをするけど、誰にでもあるような傾向があるんだ。それを見つけて突くのがポイントだよ」 ──もし今回勝利すれば、ランディ・クートゥアーに続いてUFC史上2人目の3度目のタイトル獲得となるけど、それは君にとってどんな意味を持つ? 初めての戴冠となったファブリシオ・ヴェウドゥム戦、リベンジを果たしてベルトを奪い返したダニエル・コーミエー戦、そしてこのジョン・ジョーンズ戦、どれが一番特別だと思う? 「どれも特別だよ。俺は勝つことが好きだから、すべてが特別なんだ。でも、今回の勝利は一味違うかもしれない。なぜなら、相手はジョン・ジョーンズだから。みんなが『ジョン・ジョーンズはすごい』って言うし、これ以上の相手はいないからね」 ──ジョン・ジョーンズと同じように、あなたもレジェンドだ。引退する時、どのように記憶されたいと思う? 「ただ戦場に出て、全力で戦って、すべてを稼ぎ取った男として覚えてほしい。何も与えられたものはなく、自分でつかんだものだけだ。普通の肉体労働者としてただ戦うのが好きだった、そんな風に覚えてもらえればいいよ」 ──引退の話が出たけど、最近消防署を異動したんだよね。消防士としてはどれくらいで引退できるの? 「それはまだまだ先の話だよ。そっちの引退については、しばらく話す必要はないな(笑)」 ──トム・アスピナル(ヘビー級暫定王者)がバックアップファイターとして控えているけど、ジョン・ジョーンズのファイトウィークには何かが起こる可能性もあるよね。それについて準備する必要があった? 「いや、正直に言うと、ジョン・ジョーンズに集中しているのが今の優先事項だ。トムのことについても話し合ったし、彼がどんな動きをするか映像を見て研究した部分もあるけど、現時点ではジョン・ジョーンズだけを見ている。それ以外のことは考えないよ。万が一のことがあれば、その時は対応するさ」 ──ジョンが1年前に試合を辞退した時、他の相手と戦うことを考えたことはあった? 「いや、正直に言うと、どうしてもジョンと戦いたかったんだ。最高のファイター同士の試合をファンも見たがっていたし、これは偉大なレガシーを築く戦いだとみんな言っていた。でも残念ながら、怪我はこのスポーツの一部だし、それが起きてしまった。だから、彼に怒っていたわけじゃない。怪我をしたら仕方ないし、俺に何ができるわけでもない。ただ、本当に悔しかった。もうすぐそこまで来ていたのに、怪我で止まってしまう。それが本当に辛かったんだ」 ──ジョン・ジョーンズがアレックス・ペレイラ戦に興味があると言ったり、トム・アスピナルについてXで話題にしているけど、自分を軽視しているように感じる? 「そうだね。もし俺を軽視しているなら、それは良くないことだ。俺は試合翌日のことすら考えていない。今の俺が見ているのはジョン・ジョーンズとの試合だけだ。俺のすべてを彼に向けている」 ──ブランクがあるから、試合に慣れるために序盤は少し時間が必要? 「いや、関係ないよ。準備は万全だし、すぐにトップギアで戦える」 ──君のヘッドコーチであるマーカス・マリネリは、これまであまり注目を浴びていないかもしれないけど、君がファイターとして成長するために人生を捧げてきた存在だ。ファイターとしてではなく、一人の人間として、それは君にとってどんな意味を持つ? 「彼は俺だけのために人生を捧げているわけじゃないよ。もちろん、俺にとって特別な存在だけど、チーム全体に時間と労力を注いでくれる。俺たち全員のために全力を尽くしてくれるんだ。彼は俺の親友でもあり、娘の名付け親でもある。それくらい彼を尊敬し、愛している。  彼もいずれ認められるさ。彼は地元の選手を育てて、彼らを強くしている。多くの選手がジムを変えることがある中で、彼は地元の選手を一から育てる。それがいかに難しいことか分かるだろう。それでも彼は結果を出している。本当に素晴らしいことだよ」 ──クロアチアのルーツについて聞かせてほしい。 「世界で最高の国だ。(最後にクロアチアに行ったのは)2019年か2020年だったな。その後はコロナの影響もあって難しかったけど、家族と行ける機会を楽しみにしているよ」 ──クロアチアを再訪する予定は? 「実は母を連れて行くつもりなんだ。母が行きたがっているからね。でも、もう少し待つつもりだ。娘は問題ないけど、息子がもう少し成長して落ち着いてからかな。トイレトレーニングがもう少し進んだら、良いタイミングになると思う」 ──もしUFC外で誰か一人と戦えるとしたら、誰を選ぶ? 「妻だな。いつも俺を叩きのめしてるからね。もし別の舞台で戦ったとしても、結果は変わらないよ。彼女に叩きのめされるだろうね。どのみち俺は負けるよ(笑)」
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