2025年1月と2月にUFC日本人選手の試合が連続する。バンタム級の中村倫也とフライ級の鶴屋怜。UFCナンバーシリーズに連番で出場する期待の両者と、対戦相手の実力に迫った。
まずは、1月18日(日本時間19日)、米国ネヴァダ州ラスベガスのTモバイルアリーナにて開催の『UFC 311』に、UFC3連勝中の中村倫也が出場。元ONEでタジキスタンのムイン・ガフロフと対戦する。
▼バンタム級 5分3R中村倫也(日本)9勝0敗(UFC3勝0敗)5KO/1SUB ※UFC3連勝中ムイン・ガフロフ(タジキスタン)19勝6敗(UFC1勝2敗)10KO/7SUB ※元ONE
中村は、MMA9勝0敗(5KO/1SUB)の29歳。2017年レスリングU-23世界選手権のフリースタイル61kg級で優勝後、2021年7月に修斗でプロMMAデビュー。2022年6月から23年2月にかけて行われた『ROAD TO UFC』バンタム級トーナメントでググン・グスマン、野瀬翔平、風間敏臣をいずれも1Rフィニッシュで優勝、UFCとの契約を勝ち取った。
2023年8月のUFCシンガポール大会で、ファーニー・ガルシアに判定勝ち後、2024年2月の『UFC 298』アナハイム大会でカルロス・ヴェラにも判定勝ちしたが、右の拳を骨折し長期欠場。米国フロリダのアメリカントップチーム(ATT)での8週間のファイトキャンプを経て、約1年ぶりに復帰する。
中村は、堀口恭司のYouTubeで、ATTでの合宿生活を「勢いでやっていることも、1回ストップして、ここはこういう考え方だから、そこに手を置いて体重を乗せておいてから進めるように」と、瞬発的な力の動きではなく、理にかなった技術をいつも通りの呼吸で行い相手を制する柔軟な動きを身につけることができるという。
さらに、「1日2回、同じ時間に練習できて生活のリズムも良い。1箇所ですべてが揃うから移動で使うエネルギーと時間がもったいなくない」と、各分野のコーチ陣と強豪選手が揃う環境を効率がよいと語っている。
UFC本戦4戦目で、どんな進化を見せるか。
中村と対するガフロフはタジキスタン出身でコンバットサンボをバックボーンとする28歳。2016年からONEに参戦し、リース・マクラーレンに判定負けも、2018年にレアンドロ・イッサを1R、右オーバーハンドでKO。2019年10月にジョン・リネカーに判定負けでONEを離れ、UAE Warriorsで1勝後、コンテンダーシリーズ2021で現UFCのチャド・アンヘリガー(UFC2勝3敗)にスプリット判定負け。LFAで2連勝し、UFC入りを決めた。
2023年6月のUFCデビュー戦で、ジョン・カスタネーダの左ハイでダウンを奪われ、バッティングの減点もあり判定負け。続く10月のサイード・ヌルマゴメドフ戦では、左右連打からのダブルレッグに、ヌルマゴメドフのニンジャチョークに捕まり一本負けで、2連敗。
2024年6月の前戦ではカン・ギョンホに序盤はテイクダウンからトップコントロール。さらにカーフを効かせて、ギョンホのテイクダウンにはスクランブルで返して最後に右の後ろ廻し蹴りを当てて判定勝ち。UFC初勝利をあげている。
オーソからの右カーフは、サウスポー構えの中村には当てはまらないが、中村の得意の左の上下の蹴りは、頭を下げて入るガフロフに有効だ。その一方で、ガフロフの右オーバーハンドは軌道が分かりにくく、頭から突っ込んでくる打撃にも注意が必要だ。
腰の強さもあるが、レスリング力は中村が上。むしろ際の強さとスクランブルの強さが際立ち、LFA王座を獲った近い距離のバックスピンキックも意表を突く攻撃で、ギョンホ戦の終了間際にもヒットさせている。
地力の強さと粗さがあるが丁寧さに欠けるガフロフを相手に、幼少期からMMAでの戦いを見据えてきた中村は、スタンドの間合いからどう立ち会い、組んでいかにポジションを取るか。ATT合宿も経て、その精緻なMMAでガフロフを封じ込める戦いに期待したい。
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鶴屋怜はBJJ黒帯のアグレッシブファイターで地元豪州のニコルと対戦「次は絶対に一本かKOで勝つ」
また、2025年2月9日(日)に豪州シドニーのクドス・バンク・アリーナで開催される『UFC 312』にて、鶴屋怜(THE BLACKBELT JAPAN)のUFC2戦目が決定した。地元・豪州出身で、鶴屋と同じくUFC2戦目の柔術黒帯スチュワート・ニコルと対戦する。
▼フライ級 5分3R鶴屋 怜(THE BLACKBELT JAPAN)10勝0敗(UFC1勝0敗)スチュワート・ニコル(豪州)8勝1敗(UFC0勝1敗)
22歳の鶴屋は、MMA10勝0敗(4KO/4SUB)。修斗等で活躍した鶴屋浩の次男で、高校時代にジュニアオリンピック2位のレスリングと柔術をバックボーンに2021年にプロデビュー。DEEPで3連勝後、2022年12月にPANCRASE3戦目でフライ級王者に。2023年5月から『ROAD TO UFCシーズン2』フライ級に参戦すると、ロナル・シアハーンに2R Vクロスアームロックで一本勝ち、8月の準決勝でマーク・クリマコに判定勝ち、2024年2月の決勝でジーニウシュイエに1R TKO勝ちで優勝。UFCとの契約を勝ち取った。
2024年6月の『UFC 303』ラスベガスT-Mobileアリーナ大会でUFCデビューすると、カルロス・ヘルナンデスに判定勝ち。完勝劇で無敗記録を更新している。
今回の試合決定に鶴屋は、UFC公式SNSで「2月9日シドニーで開催される『UFC 312』でスチュワート・ニコル選手と対戦することが決まりました。前回はしょっぱい試合で判定になってしまったんで、次は絶対に一本かKOで勝つので、応援よろしくお願いします」と、フィニッシュ勝利へ意気込みを語っている。
対する29歳のニコルは、MMA9戦8勝(4KO/3SUB)1敗の30歳。豪州北東ソロモン諸島出身で、豪州BROZ柔術で黒帯を巻いている。2018年6月のACBブリスベン大会でMMAデビュー。その後、XFCやBeatdownなど、地元プロモーションで8戦全勝、4連続フィニッシュ勝利をマーク。2024年3月には、日本で5連勝中だった北野一声を、ケージレスリングからバックマウントを奪い、初回パウンドアウト。UFCと契約した。
2024年8月の『UFC 305』豪州パース大会でUFCデビューし、体重超過のヘスス・アギラーに1Rギロチンチョークで一本負け。キャリア初の黒星を喫した。
鶴屋のUFCでの相手はいずれも同門の平良達郎と関わりのある選手だ。初戦のヘルナンデスは平良がUFC5戦目で2R TKO勝ちした相手。そして今回のニコルは、平良がUFC3戦目で1R 三角十字に極めたアギラーに、前戦で一本負けしている。
そのアギラーは平良戦後、3連勝中。陣営としては、実力者アギラーを通してニコルの実力を比較し、戦いも研究済みだろう。
サウスポー構えの鶴屋に対し、スイッチするものの基本はオーソのニコルは、右のインカーフも打ち、右のニータップも得意。アギラー戦では、バッククリンチに対しキムラで切り返してすぐに得意のバックマウントを奪う動きも見せている。
ハーフに戻したアギラーの差した左腕を小手に巻いてのヒジ打ち、鉄槌やパウンドも得意とし(※XFCでも相手の脇差しに小手巻きで押さえ込み)、ポジショニングに長けている一方で、グラウンドで殴ることも好む。
また、アギラーが亀になると、すぐに背中に飛び乗るなど、バックポジションを得意とするため、グラウンドになった場合は、鶴屋としてはバック・トップの取り合いで上回れるか。
トップからの相手のスクランブルに小手巻きからのクルスフィックス、インバーテッドトライアングルでの頭に足をかけた横三角絞めでのパウンドなどでもフィニッシュしており、グラウンドMMAを得意とするニコルは、アギラー戦での結果以上に、難敵といえる。
グラップリングをベースに強気で圧力をかけるニコルのスタンドに、アギラーはカーフの打ち終わりを狙ってのパンチ、さらに自身の得意のギロチンをぶつけることで真っ向勝負で競り勝った。
果たして鶴屋は、強みが似ていて、よりグラウンド打撃で荒々しいニコルを相手に、どんな戦いを見せるか。注目のフライ級戦だ。