キックボクシング
インタビュー

【イノベーション】次の獲物は森井洋介、原口健飛が初のヒジあり5R挑戦「尊敬を込めてノックアウトする」

2019/09/23 18:09
2019年11月17日(日)岡山・岡山市総合文化体育館メインアリーナ『JAPAN KICKBOXING INNOVATION 認定 第6回岡山ジム主催興行』で、元KNOCK OUTライト級王者・森井洋介(野良犬道場)と対戦するRISEライト級2位・原口健飛(FASCINATE FIGHT TEAM)のインタビューが主催者を通じて届いた。  原口は空手出身で、高校からはボクシングを始めて17歳でプロデビューし、2016年西日本新人王決定トーナメントで準決勝進出。2017年にキックボクシングでプロデビューすると、わずか2戦目でACCELフェザー級王者となり、翌年(2018年)のRoad to RIZINキックトーナメントでMOMOTARO、宮崎就斗を破り見事優勝。  RIZINの大舞台では元K-1世界王者・大雅を相手に判定1-0(1ポイントは原口)でドロー。今年に入ってからはRISEで外国人選手相手に初回KOが2回、ライト級トップの北井智大にも判定勝ち、さらに9月16日には強打者チャンヒョン・リーに完封勝ちして9戦負けなしの波にのっている。戦績は12勝(7KO)1敗1分。 チャンヒョン、森井とは試合をしたくなかった ――9月16日、RISE幕張メッセ興行のチャンヒョン・リー戦は、ジャッジ2名がフルマーク(全ラウンド原口が優勢)の30-27(残り1名は30-28)をつけての完勝3-0となりました。 「作戦通り完璧に戦えました。90点! 10点のマイナスは、もっと行けるところで行くべきだったなって心残りです」 ――その作戦とは? 「距離ですね。自分の優位を保って絶対にロープを背負わない。相手のジャブが当たらないけれど、僕の三日月蹴りは入る間合いをキープする。ジャブがヒットしないとパンチは当たらないですから。今回に限っては『倒す』ってことを頭から抜いて勝つことに専念しました。常にKOは狙いたいんやけど、チャンヒョン選手のタフネスは半端ないので、無理に倒しに行くことで自分の距離が保てなくなることを避けなくちゃあかんなと」 ――関係者間で原口選手の実力評価はすこぶる高くはありましたが、紛れもない超競強豪からの勝利は、その実証となり、一気に注目度が増しました。 「幼稚園から空手をやって、プロボクサーからプロキックボクサーになって、14戦のキックキャリアで間違いなく最強の相手でした。チャンヒョン選手には、実は特別な思い入れがあるんです」 ――特別な思い入れとは? 「対戦が決まる以前から憧れのキックボクサーの一番がチャンヒョン選手だったんです」 ――それは意外でした。 「絶対に後ろに下がらない勇敢なところや、最後まで倒しにいく姿勢、リング外ではビックリするほど人徳者で、今回の試合も外国人選手にも関わらずチャンヒョン選手への声援が凄くって、日本にファンが沢山おられることにも感動しました」 ――そんな特別な選手に勝利した次、“Mr.KNOCK OUT”とまで呼ばれた森井洋介との試合が決まっているわけで、『前門の虎、後門の狼』状態。虎をクリアーしたら、すぐに狼が待ち受けているわけです。 「僕、ずっと前から『強すぎて試合をしたくない選手がいる』と周囲に言っていたのですが、それがチャンヒョン選手と森井選手だったんです。 ――そんな「試合をしたくない」2選手と連戦となってしまった? 「やりたくないけど→やりたい→やらなきゃいけない、といった具合で是非やらせていただきたいと」 ――何故、真反対の方向に気持ちが切り換えられたのでしょう? 「強くなるには、強いヤツとやらなきゃあかんやないですか!」 ――名言です。 「今の選手たちを見ると勝率だとか気にして星取り計算するようなのが多くて、僕はほんっとにそんなんどうでもいいんですわ。弱過ぎて試合をする意味が見つからない相手以外、オファーされて相手を選んだことなんかないし、これからだって変わりません。強くなる為だったら嫌いな試合だってなんぼでもやったります」 ――嫌いな試合? 「実は、試合するのって子供の頃から大嫌いで、それは今もなんです」 ――それはまた何故? 「試合前のピリピリした空気がイヤで。試合が決まった瞬間から練習でも普段の生活でも試合中心になって緊張感が入り込んできて、計量の時なんかそれがピークになるやないですか。一番イヤなのが試合の日、会場入りしてからの控室の雰囲気。いっそのこと試合なんて、ある日、突然、その場で始まるくらいの方が僕は楽です」 ――武道家的な発想です。 「それだけの練習を普段からしているので、可能であればそう願いたいです。ホンマに」 [nextpage] 先生との組手でボッコボコにされて、更に連帯責任で2時間のスクワット ――幼少期から空手で輝かしい実績がある原口選手ですが、ここでここまでの半生を改めてお聞かせください。生まれ育ち、家族構成は? 「兵庫県伊丹市がホームタウンです。3コ上の兄貴がいます。空手は、伝統派の道場で5歳から始めました」 ――そのきっかけは? 「マンションのポストに入っていたチラシです。僕は嫌だったんですけど、お母さんに無理やり連れていかれました(笑)」 ――どんな稽古と試合をされていたのでしょう? 「今思えば怖いくらいに無茶なところでした。当時、凄い強い道場で、チャンピオンが常にいるような日本一クラスのチームで、理不尽なくらい厳しくて」 ――理不尽というと? 「大概、日曜日が試合なので、月曜日に会議があるんです。そこで『昨日、優勝した人?』と言われて僕とかが手を上げる。出ればほとんど優勝していたので、僕はいつもそっち側でした。10名出場して2、3名は優勝するような強豪道場でしたが、当然、そうでない道場生がほとんどで、彼らへの説教の後、先生との組手でボッコボコにされて、更に連帯責任で2時間のスクワットをやらされます」 ――先生が幼稚園児や小学生をボコボコにして、そこから2時間スクワット? 「しこ立ち2時間、正拳突き2時間というパターンもあります」 ――現在なら体罰で告発されてしまうレベルです。 「ですよね(笑)。けど、親公認で両親が写真撮ったりしてるくらいで、問題にはなってなかったですね」 ――それに関して反発があった? 「やらされている当時は、納得いかなくて、けど、ひたすら我慢でしたけど、今となっては、アレに耐えることができたから今があるって思えて感謝しています!」 ――そんな激しい伝統派道場からフルコンタクト空手に移られた? 「小3で聖武会館に移りました。もう、嘘のように天国で。先生が『褒めて伸ばす』主義で、怒っているのを見たことがないくらいでしたから」 ――ここでも無数のタイトルを手にするわけですが、過去一番印象に残っている優勝は? 「それが最近なんすけど、2017年4月の第32回POINT&K.O.全日本空手道選手権大会の優勝ですね。1回戦が120kgの外国人。2回戦が190cm、110kgの外国人、準決勝戦が110kgの日本人。決勝戦が80kgの日本人でなんとか優勝できました」 ――POINT&K.O.は、由緒あるフルコン空手のブランドですが、まさかの無差別級? 「はい、30年以上の歴史で最軽量だったらしいです」 ――その前には、中学卒業後まもなくプロボクサーになられて、西日本新人王トーナメント準優勝(フライ級)までいかれているわけで、5戦4勝(2KO)1敗という好レコードを残されています。 「有名になってお金を稼ぐにはボクシングかなと思ってやってみましたけど、どうにもこうにも蹴りたくて、そうこうしているうちに那須川天心選手とか派手に活躍しだして、こりゃあキックボクシングもいけるかなと(笑)」 ――前述のPOINT&K.O.大会優勝からすぐにプロデビューして、2戦目でACCELフェザー級王者となり、3戦目でRISEのDEAD OR ALIVE 57kgトーナメントに参戦し、SB日本スーパーバンタム級王者だった内藤大樹選手に接戦の上、判定負けですが、今のところ唯一の黒星がこの試合です。内藤選手は、那須川天心と2度も戦っている日本のトップ級。その後、RIZINのトーナメントに優勝して、K-1世界王者だった大雅とドロー。それがこの2年間に満たない間の出来事なのですから、恐るべきスピードで駆け上がってきた形です。 「いただいたオファーを全部戦い抜いたらいつの間にかここまで来ることができました」 [nextpage] 5Rは、早めに倒せばいいことかなと ――そして、日本最強クラスへの挑戦といって過言はない森井戦、RISEやRIZINでの活躍が多い原口選手は、今回、ヒジ打ちあり、首相撲無制限、5Rのどれもが初体験のルールとなります。それぞれどのような対策を? 「ヒジと首相撲は、森井選手がそれ中心で仕掛けてくるタイプじゃないんで大丈夫かなと。もちろん、無策ではありません。それらを“させない”方法は、頭の中にあります。5Rは、早めに倒せばいいことかなと(笑)。不安はありませんよ。いつも通りの動きが5Rでもできる自信があります。 ――ヒジ打ちや首相撲を認めたムエタイ系ルールとそれらを制限したK-1系ルールにキックボクシングが二分される昨今ですが、ムエタイの頂点クラスがRISEで立て続けに敗れている通り、このルールの違いは競技の違いとも思える中、このレベルでそれらをものとしない原口選手に驚きます。 「ホンマに強いなら“立ち技”の範疇でルールは関係あらへんと思います。天心選手はもちろん、シュートボクシングの海人選手だってキックボクシングルール上等やないですか。MMAは、普段まったく練習してへん寝技をぶっつけでするわけにいかないから「それでも勝てる」なんて言うたらあかんでしょうけど、男と男が向き合って戦うのに細かなルールの差をゴチャゴチャ言うのは好かんです」 ――男らしい覚悟です。 「にしても、相手が森井選手じゃなかったら受けなかったかもですけどね(笑)」 ――今度の試合、どんなところに注目してもらいたい? 「足技です!」 ――元プロボクサーながら? 「三日月蹴りはもちろん、ハイキックとか殺傷力が強い一発を狙います。もちろん、パンチで倒したい気持ちもあるので、イケる時にがっつりイキます! って言いながら、あえてヒジっていうのもありかな(笑)」 ――ここで勝つとその先が気になるところです。 「そしたら、RISEライト級王者で61kgの世界トーナメントで優勝した白鳥大珠選手しかないでしょう! RISEのベルトを巻いたら、それを看板にして他団体や世界中の強いヤツを的にかけたります」 ――幅広い体重で戦っている原口選手ですが、ベストウェイトは? 「63kgくらいが一番ええですね。今、下は61kgがギリかな」 ――まさかの那須川天心戦は? 「流石に向こうが小っちゃいでしょ。ベスト同士でないと」 ――今年、ご自身が代表を務めるジムがオープンしたそうですね。 「はい、9月2日に兵庫県西宮市にFASCINATE FIGHT TEAM(※1)をオープンしました。お父さんが会長で自分が代表です。是非、お越しになってください!」 ――原口選手は、トレーナもできる? 「趣味が筋トレなんです。酒は飲まないし、友達と夜遊びもしない。「酔って記憶ない」とかカッコ悪くて。筋肉に悪いものは何もしたくない。もちろん、タバコは大嫌い。キックボクサーを辞めたらボディービルダーになりたいなって。試合が決まってない時も毎日の筋トレは欠かしません。仕事でパーソナルトレーナーもしています。空手やキック、ボクシングは、もちろんフィジカルトレーニングもお手の物なので、トレーニングに関しては何でも応えられますよ!」 ――「FASCINATE」とはどんな意味でしょう? 「“魅了する”ってことですね。そんな試合をするってことです。強いヤツがその強さを証明して魅せつけます。僕の中の最高の二人。チャンヒョンさんの次は、“Mr.KNOCK OUT”森井選手、尊敬を込めてノックアウトします!」
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