2024年10月12日(日本時間13日朝5時開始)米国ネヴァダ州ラスベガスで開催される『UFC Fight Night: Royval vs. Taira』(U-NEXT配信)のメインカード第1試合にて、ガーナのアブドゥル・ラザク・アルハサンが、ジョシュ・フレムド(米国)とミドル級で対戦する。
▼ミドル級 5分3Rアブドゥル・ラザク・アルハサン(ガーナ)12勝6敗(UFC6勝6敗)ジョシュ・フレムド(米国)11勝6敗(UFC2勝4敗)
決してMMAが盛んではないガーナで、アルハサンは柔道からスタート。2010年のノースグレン選手権90kg以下級で銅メダルを獲得するなど、格闘技の才能を開花させた。
日本とガーナの交流から柔道に出会い、同国で切手にもなった蒲原光一師範の教えが「いまの場所に導いてくれた」という。
米国に渡り、2013年にプロMMAファイターとしてデビュー。その後、Bellatorなどの大会に参戦し、6戦6勝6KOの記録を残し、2016年11月にUFCデビューを果たすと、オクタゴンでは6勝6敗と奮闘中。“戦士の王”は連勝なるか。
フレムド戦を前に、同門で同大会でメインを戦う平良達郎や、日本への思いなども語ってくれた。
相手がどんなゴリアテであっても、自信を持って立ち向かえる
──“柔道サンダー”の異名を持つアルハサン選手です。幼い頃から柔道を始め、22年間柔道を行っていたそうですが、ガーナで柔道を始めたきっかけは何ですか?
「実はガーナには、日本のトヨタが誘致されていて車両組立会社があるなど、とても大きい産業なんだ。そのトヨタが大会スポンサーになるなど日本と関係が深いんだけど、日本からは青年海外協力隊の人たちが柔道コーチ達も連れてきて。その中の一人が自分の“センセイ”になった。今は日本の講道館で教えていると思うよ。先生の名前は蒲原光一。彼が自分にガーナで教えてくれたんだ」
──ガーナには、柔道隊員が10数代に渡って柔道の普及と国際大会のメダリストの育成を目的として派遣されているらしいですね。たしか蒲原先生は、ガーナで切手にもなっていますね。
「そうだよ! 通常みんな任期は2年で、次の人が来るんだけど、蒲原先生は4年か6年、とにかく任期を延長していました。本当に自分の柔道はすべて蒲原先生から教わった。体落から何から、本当に柔道の全てを教わりました」
──MMAでは柔道技はあまり見せないですよね。得意技は?
「そう、まだ見せてないのには、訳があるんだよ(笑)。大内刈、内股も好きだけど。MMAではその技を出すタイミングが来ていない。心配しないでくれ。機会がきたら必ず世界に僕の柔道技を披露するから」
(C)razakjudo
──いまはあなたが子供に柔道を教えている動画を見ました。当時、蒲原先生から武道において、どんな教えを受けましたか。
「蒲原先生とのひとつのシーンが頭に浮かんだ。この出来事が今までの自分を支えてきたと思う。このストーリーを是非シェアさせてほしい。実は、柔道は自分の兄が先に柔道を始めたんだ。兄は自分を連れて行くのを嫌がってた。だからある日、こっそり兄の後ろを付いて行った。それでジムの場所を見つけて、蒲原先生と話す事ができた。先生は『中に入っておいで』と言ってくれた。1年くらい経って、きっと蒲原先生は僕の才能に気付いてくれたんだと思う。色々教えてくれるようになった。
僕の最初の試合の時、今でもはっきり覚えている。誰も僕が勝つって思っていなかったんだ。そんな中、蒲原先生がまっすぐ僕のところに来て『アブドゥル、君は強い。私が君に教えたんだ。さぁ、行って勝ってこい!』って言って背中を強くバンって叩いてくれた。僕はその時まだ白帯なのに、全然上の上級者を相手に試合に勝ったんだ。その時、蒲原先生を見たら『バンザーイ!』って両手を上げて喜んで叫んでいた。その後『信じてたよ』って言ってくれた。『相手がどんなゴリアテ(巨人)であっても、自信を持って立ち向かえ、しっかり練習してきたんだ。必ず勝てる』と。それが彼から学んだ事さ。彼がいなかったら、そもそも僕はこの競技にすら出会っていなかったと思う。彼がここまで導いてくれたんだ」
──練習が自信を生み、大きな相手にも立ち向かえると。あなたのMMAデビューはテキサスだったと思います。何がきっかけでアメリカに来られましたか?
「アメリカに来たのも柔道がきっかけだったんだ。ガーナでアフリカ大会があって、その後にアメリカの世界大会に招聘されて。アメリカに来たら、アメリカのチャンスの多さに惹かれて、ここでやっていこうと決めて、ずっとアメリカにいるよ。仕事はこっちでデルタ航空で働いて、バーの用心棒もした」
──MMAと柔道の違いをどう感じましたか。
「いろいろな意見があるけど、僕は柔道はMMAに移行しやすいと思っているんだ。MMAでたくさん学ばなきゃいけない事っていうのは組み技やグラウンドだろう? 柔術やレスリングさ。僕は既に柔道は身についていたし、双手刈が得意だったから移行はスムーズだったと思っている。あと学ばなきゃいけなかったのは打撃だけ。でも柔道のバックグラウンドがあったおかげで、それもすんなりと吸収できたと思っている」
──柔道をやっていて打撃もすんなりと出来たというのは? アルハサン選手はカーフキックも得意技としていますよね。
「ああ、それは柔道を学んでいたときにキックボクシングのコーチも来ていたんだ。というのも蒲原先生は友達がたくさんいたのだけれど、その中に空手の先生も何人かいたんだ。彼らから空手を学ぶ事もあった。そこで蹴りを学ぶ機会に恵まれた。蒲原先生はキックボクシングのコーチも紹介してくれて、そのコーチがやってみないか? って。それで少しやってみたんだけど、キックボクシングも僕に合っているのか、早いスピードで吸収できた。そういう事もあって学ぶ事は容易だったと思う」
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平良は本当にハッピーな人だよね。いつ見ても笑顔で接している
──あなたが言う通り、蒲原先生が格闘技に導いてくれたのですね。さて、今回の対戦相手のジョシュ・フレムド選手は、組みにおいてアルハサン選手にアドバンテージがあるように感じますが、それでもこれまでのようにスタンド中心に戦いますか。
「たしかにグラップリングにおいて、100万パーセントの自信があるよ。調子にのるわけじゃないが、本当に自信があるから言っている。彼より自分の方が強いことは自分が分かっている。グラップリングでもスタンディングでも、どの局面においてもね。ケージの中でそれを証明したい。もし彼の方が強かったとしても、勝利へのガッツは俺の方がある。勝つ為には何でもする。僕のグラップリングを見た事がある人は少ないと思う。打撃で戦うのが好きだからどうしてもスタンドが多くなるけど、だ今回はグラップリングの展開になったら、皆さんに僕のグラップリングをお見せする。それが今回の僕の計画なんだ」
──7月の前戦コディ・ブランデージ戦は、垂直エルボーを打ったためにノーコンテストになった。今後、12-6エルボーが11月から解禁となることをどう考えていますか。
「素晴らしい事だと思う。最初その情報を見た時に“ん? 時間が巻き戻らないかな”って思ったよ(笑)。いい事だと思う。これからいくらでもエルボーが打てるから。UFCが改善してくれたと思っているよ。これからは選手が途中で負傷のフリをしたり、マットに手を着いて試合から逃げ出す事も少なくなるでしょ? だから嬉しく思っている」
──これまでは初回に抜群の強さを誇るアルハサン選手ですが、2回目以降に失速することがありました。スタミナの改善の自信はどうですか?
「とても自信があるよ。ずっとスタミナの事を皆に言われ続けてきた。実際にスタミナの強化にかなり集中して準備をしてきたので、スタミナの心配をする必要性もないくらいだ。これまでは自分でも気になっている事ではあったので。今回はたとえ50ラウンドあったとしても、準備はできている。ケージで死ぬ覚悟が出来ている。100パーセントで1R目から最後のラウンドまで戦います。そうなるはずだ」
──今回の試合に向かうファイトキャンプは、Metro Flexとフォージ・ファイト・クラブ(旧エレベーション・ファイトチーム)でも練習したのですか。
「僕は今テキサスに住んでいるから、同地のMetroFlexに行っている。そして3週間はコロラド、デンバーにあるチームエレベーションでトレーニングしている。そして3週間後にまた戻ってきて、Metro Flexで、というような風に交互にトレーニングをしているんだ」
──ということは、今大会のメインイベントを戦う平良達郎選手のトレーニングも見たことが?
「あぁ、あるよ! どうしても大きい階級はこっち、小さい階級はこっちって分けられているから。直接喋った事はないのだけど、目が合ってハーイとする。とても才能のあるファイターだと思う。それだけじゃなくて、本当にハッピーな人だよね。いつ見ても楽しそうに笑顔で話しているんだ。常に人にナイスにしている。
バイアスがかかっている訳じゃないんだけど、僕、本当に日本が大好きで。日本のカルチャーが本当に大好きで、柔道の蒲原先生の影響もあると思うんだけど。日本のすべてが大好きなんだ。日本の人達がリスペクト持って生活をしている事も。今まで3度日本に行った事があるんだけど、全然足りない。日本人を見るともう『Oh Yeah、ハーイ!』っていう感じだよ」
──では、そんな日本のファンのメッセージを。
「2025年に、また日本に行きたいな。日本の文化が本当に大好きです。僕の夢はUFCがいつか日本で開催される事、そうしたら日本のアリーナで戦う事ができる。それが夢です。僕の事を是非、応援をしてください。僕もあなた達を応援しているので。いつも応援してくれてありがとうございます!」
──そういえば『ONE PIECE』もお好きなんですよね。
「ハハハハハハハハハ! あー、その話しないようにしなくちゃと思ってたのにな。アニメ大好きなんだよ! 自分の書斎があるんだけど、『ONE PIECE』のフィギュアでいっぱいなんだ。一番のお気に入りは、ゾロだよ」
──ルフィーよりも?
「いやいや、ルフィーも好きだよ。ただファイターだったら、ゾロのあのエネルギーは分かるはずだよ! でもルフィーも好きだよ、ゾロの次にね!」