MMA
インタビュー

【UFC】1年で4試合の王者ペレイラ「試合を重ねることで成長できる」×ラウントリー「アレックスが“ラスボス”だとしたら今回の挑戦はとてもクールだ」

2024/10/04 16:10
 2024年10月5日(日本時間6日)に米国ソルトレイクシティのデルタセンターにて『UFC 307: Pereira vs. Rountree』(U-NEXT配信)が開催される。 ▼UFC世界ライトヘビー級選手権試合 5分5Rアレックス・ペレイラ(ブラジル)王者 11勝2敗(UFC8勝1敗)9KO/TKO ※UFC4連勝中カリル・ラウントリーJr.(米国)挑戦者 13勝5敗(UFC9勝5敗)9KO/TKO ※UFC5連勝中  メインイベントは、UFC世界ライトヘビー級選手権試合(5分5R)で、王者のアレックス・ペレイラ(ブラジル・37歳)が、同級8位のカリル・ラウントリー(米国・34歳)を挑戦者に迎えて、3度目の防衛戦に臨む。  ペレイラは、キックボクシング33勝7敗後、MMAに転向し11勝(9KO)2敗。フィニッシュ勝利率81パーセントの強打者だ。  UFCではミドル級、ライトヘビー級の二階級制覇王者で、ミドル級時代にはショーン・ストリックランド、イズラエル・アデサニヤらに勝利している。  2023年7月にライトヘビー級に転向し、ヤン・ブラホヴィッチに判定勝利。11月にはライトヘビー級王座決定戦として元同級王者イリ―・プロハースカを2R KOに下し王座戴冠を果たした。  2024年4月の『UFC 300』で元ライトヘビー級王者のジャマール・ヒルを1R、左フックでKOして初防衛戦に成功すると、6月の『UFC 303』ではプロハースカと再戦。1R終了時に左フックでダウンを奪うと、2R開始時に左ハイキックで再びダウンを奪いパウンドで2R TKO勝ち。2度目の王座防衛に成功している。  対するラウントリーJrは、MMA13勝(9KO)5敗。UFC5連勝中のムエタイバックボーンのストライカーだ。2018年7月の『UFC 226』では、元K-1ファイターのグーカン・サキに1R TKO勝ちしている。  2014年にプロMMAデビューすると、16年の『TUF23』で決勝進出。2021年9月のモデスタス・ブカウスカス戦以降、カール・ロバーソン、ダスティン・ジャコビー、 クリス・ドーカス、アンソニー・スミスを相手に5試合中4試合をフィニッシュ勝利している。  2024年6月の『UFC 303』でジャマール・ヒルと対戦予定だったが、ラウントリーが禁止薬物のDHEAが混合されたサプリメントを誤って摂取したとUFC側に申告したため、試合中止に。2カ月間の出場停止処分後、約10カ月ぶりの試合でペレイラに挑む。  試合前メディア向けインタビューでの両者の一問一答は以下の通りだ。 ペレイラ「俺やアデサニヤみたいに、簡単にキックボクシングからMMAに転向できると思ってる人がいる」 ──ペレイラ選手は、ほぼ3、4カ月間隔で戦っていますね(※2023年7月にヤン・ブラホヴィッチ、11月にイリー・プロハースカ、2024年4月にジャマール・ヒル、6月にイリー・プロハースカとの再戦で4連勝中)。今回の試合に向けたキャンプの調子は? 「身体は大丈夫だよ。もちろん問題も起こるけど、頻繁に戦うためにはそれが代償だね。でも全体的にいい感じだし、上々の仕上がりだ」 ──前回の試合後には「少し休もうかな」と言っていましたが、もっと間隔を空けるつもりだった? 「いつも試合後には『少し休もうかな』って言うんだけど、結局ジムに戻ってトレーニングを始めてしまうんだ。そうすると、自分の成長を実感できて、もっと頻繁に試合をしたいって思うんだ」 ──今回の対戦相手のカリル・ラウントリー・ジュニアは、メインイベントで戦ったことがありませんが、対戦相手の候補として頭にありましたか。 「いや、正直想像してなかった。実は前の試合(アンソニー・スミスを3R TKO)の時に彼が俺の名前を出していたんだけど、彼はランキングでだいぶ下だったから、特に気にしてなかった。でも、何にでも備えておかないといけないから大丈夫さ」 ──ファンの間でペレイラ選手がカリル選手にとって「ラスボス(最後の相手)」と呼ばれています。彼はダスティン・ジャコビーやグーカン・サキみたいなGLORY出身のキックボクサーに勝ってきて、あなたがラスボスだという見方をしている人が多い。 「そのストーリーは面白いと思うよ。彼とグーカン・サキの試合も見たし、そこでのいくつかの動きについて研究もした。ダスティン・ジャコビー戦でのファイトも見たんだが、あの試合はカリルの勝ちではないと思う」 ──あなたはダスティンが勝ったと思っているようですが、いずれにせよスプリット判定の接戦でした。グーカン・サキやダスティン・ジャコビーは、カリルに対してどんな過ちを犯したと考えますか。 「みんなに全部教えるわけにはいかないが、彼のゲームには多くの弱点があると思う。たくさんのミスや欠点を見つけたし、それを今回の試合で活かせると思っている。でも、今言えるのは、俺はこの試合を素晴らしいものにする準備ができているってことだけだ」 ──ラウントリー選手は自身の優位点について、「爆発力がある」「サウスポーでハンドスピードが速い」「パウンドが強力だ」と言っています。あなたがこれまで戦った相手と比べて、彼は特に違うところがある? 「いや、これまで戦った相手と比べて特に違うってことはないよ。でも、彼がアグレッシブなところは好きだし、前に出てくるスタイルも気に入っている。だから、いい試合になると思う」 ──ショーン・ストリックランドとの練習はいかがでしたか? 「とてもハードなトレーニングだったけど、非常に充実していた。ショーンは心が温かいし、すごくいいやつだ。世間ではいろいろ言われているけど、俺たちファミリーの間ではいつもナイスで、尊敬を持って接してくれる。彼と一緒に練習ができて本当に良かった」 ──あなたがヘビー級で戦うのか、あるいはミドル級で戦うのか、常に話題になっています。 「このライトヘビー級のベルトを防衛することを選ぶよ。減量して下の階級に行くには時間がかかるし、逆に上の階級に行くにも準備が必要なんだ。だから今のところ、このままの階級が自分にとって最善だ」 ──『ノーチェUFC』のイベントでジョン・ジョーンズに会っていましたが、一緒にトレーニングしたいと思いましたか。それとも、もし戦えたらビッグファイトになるだろうとも考えましたか。 「トレーニングのことしか考えてなかったよ。ジョンは『次の試合が最後になるかもしれない』って言っていたしね。だから、彼のところに行って少し勉強したいと思ったんだ。分かるだろ、俺はオープンマインドな男だから、もし練習ができれば素晴らしいことだと思う」 ──今回の大会の地であるソルトレイクシティの印象は? 「正直に言うと、山の中の大きな家に10人くらいで滞在していて、キャンプに集中していた。あまり外には出なかったから、多くのことは言えないんだ。でも、景色は美しくて、山での時間を楽しんでいるよ。ここは本当に美しい場所だ」 ──これで1年以内に4試合目になります。この頻度で試合を戦えるモチベーションは? 「試合を重ねることで、成長できるからだ。トレーニングしていると、自分がどんどん進化しているのが分かるし、その成長を試合で実感できるのが最大のモチベーションなんだ。だからもっと戦いたくなるし、もっと強くなりたいと思うんだよ」 ──カリル選手にはまだタイトルマッチを戦う実績が無いという意見もありますが、あなたと戦う資格はあると思う? 「いや、彼には戦う資格がある。俺も同じようにランキングを駆け上がったことがあるし、彼もそのためにしっかり努力してきたんだ。努力して、勝ち続けた結果、チャンスが巡ってきたんだよ」 ──ペレイラ選手のジムの皆が、あなたからインスピレーションを受けている。指導力についても評判ですが、若いファイターたちからお手本にされることについては、どう考えている? 「これは俺にとってすごく大事なことなんだ。ジムだけじゃなく、もっと広い意味でもね。1カ月前にブラジルに行った時、自分が与えているインスピレーションを実感したんだ。下から這い上がろうとしている人たちにとって、俺の存在が大きな励みになっているのだと思う。そうやって人をやる気にさせられることは、俺にとって本当に重要なことだ」 ──アレックス選手の妹のアライン・ペレイラ選手(※元GLORYスーパーバンタム級王座挑戦者、LFAフライ級1勝2敗)が、来週ソルトレイクシティで戦う(『Karate Combat 50』)と聞きましたが、あなたもそこまで滞在する予定でしょうか。 「もちろん、妹の試合はすごく楽しみだよ。彼女は準備万端だし、とても強い。彼女は標高の高い場所で4週間のトレーニングをすることになる。今日も彼女は4ラウンドのスパーをこなしたけど、試合は3ラウンドだけだから、準備ができていると思うよ」 ──10月8日にキックボクシング時代のライバルであるアルチョム・ヴァヒトフ(GLORYでペレイラと1勝1敗。現在MMA2勝1敗)が、ダナ・ホワイトのコンテンダーシリーズでUFCの契約をかけた試合をする。UFCで彼と3度目の試合をするのは楽しみ? 「キックボクシングのことはもうフォローしていないから、彼が今どうしているかはよく分からない。だから、彼の潜在能力についても何とも言えないけど、今の俺とUFCで戦うのは、彼にとって厳しいだろうね。よくある誤解なんだけど、俺やイズラエル・ アデサニヤみたいに、簡単にキックボクシングからMMAに転向できると思ってる人がいる。でも、そういったキックボクサーは俺でもなければ、アデサニヤでもない。そこにたどり着くまでのストーリーを見ればわかるはずだ」 [nextpage] ラウントリーJr「俺が言いたいのは『これまで通りの俺を期待してくれ』ってこと」 ──ラウントリー選手、今回のファイトウィークはいつもと違いがありましたか。 「いろんな意味で特別だったと思うよ。今回は初めてタイトルマッチに向けた準備ができたんだ。トレーニングキャンプでは雰囲気がとても良かったし、みんな笑顔で楽しい時間を過ごしながら準備してた。ポジティブなエネルギーに満ちていたよ」 ──オファーの電話があったときの気持ちは? 「人生で最も大変な1日を過ごしていたんだよ。法的な問題の真っ最中で、電話が鳴ったんだ。『調子はどう?』ってUFC側から聞かれて、俺は『最悪だよ、どうしたんだ?』って答えたんだ。そしたら『これで少しは気分が良くなるといいな。10月5日にソルトレイクシティでアレックスと戦うことが決まったよ』って言われて、その瞬間から一気に1日が変わったんだ。本当に、そこからはずっと笑顔だったよ。着信の相手がUFCだったときは、嫌な予感がして心が締め付けられるような感じだったけど、結果的には最高の連絡だった」 ──以前に、ネット上の人達の発言や批判について言及していたけど、今回の試合発表後にも少し反発があった。それをモチベーションに変えることができましたか。 「ネット上の声は気にしてないよ。他人の意見に割く時間もないんだ。見てくれ、俺は今週末にタイトルマッチをするんだ。ニュースを聞いた瞬間から、それだけに集中している。だから、誰かがそれに腹を立てても、それは俺の問題じゃない。俺のやるべきことは、UFCから求められたことを実行すること。みんな意見を持っているだろうし、この試合が終わった後にも好き勝手に言うだろう。でも、それを気にしてる暇はないんだ」 ──2021年9月から5連勝で4KO・TKO。とくに直近の2試合ではクリス・ドーカス、アンソニー・スミスをTKOに下しています。タイトルマッチを掴むまでの道のりは想像通りでしたか。 「こんな風に実現するとは思ってなかったよ。本当に色々と驚くような展開だった。でも、タイトルマッチを控えている今、自分がいるこのポジションには満足している。タイトルマッチのオファーをもらえたことが嬉しいし、準備もできているって実感してるんだ。これはただのラッキーじゃなくて、強引に試合が組まれたわけでもない。俺はずっと準備してきたし、ずっとこうなると言ってきた。そして、今その時が来たんだ。100パーセント、王者になれると思っている」 ──ペレイラ戦の試合展開の予想は? 「正直、どんな試合になるかは分からない。特定の展開を期待しているわけじゃない。集中して、決意を持って、注意深くケージに入るつもりだ。今回のキャンプで大切にしてきたのは、自分自身に集中すること。他のことに惑わされないようにしないといけない。だから、どうなるかは分からないけど、どんな展開にも対応できる準備はできているよ」 ──2015年にアンデウソン・シウバが、トレーニングキャンプで「カリルにKOされた」と冗談を言っていた。その際、当時2戦2勝だったあなたについて、「将来の王者になる」とも。アンデウソンのようなレジェンドが、10年前からあなたを「未来の王者」と言っていたことに関して、思うことは? 「それはよく思い出すよ。特に、自己疑念が湧いてくる時にはね。特に大きな目標に向かっている時には、みんな少しはそういう気持ちを抱えるものだと思うんだ。でも、アンデウソンのようなレジェンドが、俺がまだ2戦しかしていなかった頃から『こいつには何かがある』って見抜いてくれていたんだ。すごく感謝してるよ。それは俺のストーリーの大切な一部で、俺が王者になった時には全てがピタッと合わさるんだ」 ──その言葉でプレッシャーを感じたことは? 「プレッシャーっていうより、ただただ嬉しかったよ。アンデウソンに会った時、彼が俺を受け入れてくれた時のことを思い出すし、俺たちが築いた関係は心地良くて温かいものだったんだ。もちろん、彼が成し遂げたことはすごいし、俺にとって永遠に史上最高のファイターだ。彼のようなキャリアを持ちたいと思っているし、特にMMAの世界では彼が大きなインスピレーションになってる。でも、そんな彼からそういう言葉を聞くと、ただ愛情を感じるんだ。彼は俺を弟のように扱ってくれた。最高だとしか言えないね」 ──ここ最近で、あなた自身に注目度が高まっているのは感じていますか。 「アンソニー・スミスとの最後の試合の後から、新しいファンがたくさん増えたと思うよ。それが本当に嬉しくて、すごくモチベーションになってるんだ。今では、ベガスのどこに行っても、スーパーやモールで、必ず誰かが声をかけてくれるんだ。俺からどれだけ影響を受けたか、教えてくれたりもする。アンソニー・スミス戦以降、その大きな変化を感じてる。今回のキャンプでは、メディアの取材も多くて、10日間くらいトレーニング漬けだから、実際に反応は見れてないけど、もっと多くの人が俺のことを知ってくれたと思う。これからも、誰かに良い影響を与えられたら嬉しい」 ──GLORY出身のグーカン・サキやダスティン・ジャコビーに勝ってきたことで、アレックスを「ラスボス」とみなすファンがいます。そういう見られ方は気にしないですか。 「ファンの視点から見ると、そういう風に捉えるのは楽しいだろうし、アレックスが『ラスボス』だとしたら、今回の挑戦はとてもクールだ。それに、試合に対する興奮や期待がさらに高まると思うし、そういう点で楽しんでもらえるのは嬉しい。いいことだと思うよ」」 ──チェール・ソネンやカマル・ウスマンがあなたの勝利を予想している。勝敗予想が割れ始めたけど、これはアレックス時代にみんなが飽きているのか、それとも正当な評価であなたを勝つと思っているのか、どちらだと思いますか。 「どっちもあるかもしれない。でも、俺を応援してくれる人は、本気で俺を信じてくれてる。逆に、何らかの理由で俺が成功するのを望んでない人もいる。常に、アンチもいるもんなんだよ。誰もが俺を好きになるとは思ってないし、みんなが俺の味方をするとも期待してない。でも、応援してくれる人たちのことは、本当に大事にしてるし、感謝してる。俺が自分の力を発揮できるように応援してくれる、その気持ちはすごく嬉しいよ。その他の人たちのことは、全く気にしていない。俺は自分の仕事をするためにここにいるし、俺自身を信じてるんだ」 ──アレックスが、ショーン・ストリックランドをトレーニングパートナーに選んだことについては、どう感じていますか。 「それはクールだね。実際、最後にショーン・ストリックランドと会ったのは、UFC PIだったんだ。あの時は、ダン・イゲが3、4時間前のオファーで試合(ディエゴ・ロペス戦)に出た後のことだった。PIに行ったらダン・イゲがいたから『すごい度胸だ』って称賛をするために声をかけたんだ。  そしたら突然、ショーンが俺に近づいてきて、こう言ったんだ。『カリル、俺はアホだよ。正直、ちょっとお前のことが好きだ。お前はリベラルだけど、でも全体的にはお前を尊敬してるよ』って。彼が和解を求めていると思ったんだ。だから、俺も『OK、問題ない』って、それで終わった。それ以降に何か言われても、俺の中ではもう『ただのトークだし、気にすることはない』って感じだね」 ──「スーパーシークレットな動きがある」と聞きました。少し教えていただくことはできますか。 「スーパーシークレットだから無理だね。ヒントは、自然に出てくる動きだ。無理に狙う動きじゃない。タイミングが合えば、うまくいく可能性はあるけど、無理に狙ったら成功しないかもしれない。ピースが揃った時にしかできないんだ。だから、誰を相手にしても起こる可能性はある。技の名前は、成功してからつけるよ」 ──アレックス・ペレイラ選手は、足全体を引いて相手のキックをブロックすることがありますが、そこについて気にしていることはありますか。 「いや、特に気づかなかったよ。後ろ足でキックをチェックするみたいな動きや、足を引いてキックをかわすような動きは見たことあるけど、そういうことにあまり注意を払っていないんだ。ケージの中にいて、リアルな状況で、しかもタイトルがかかってる時に相手が襲いかかってくると、全く違った状況になるからね。だから、ネットで見たことや噂にあまり囚われないようにしてる。戦いは本能的で直感的なものだと思うから」 ──格闘技では勢いに乗ると連勝して秀でた成果を上げるファイターが多い。アレックス選手の場合もまさにそうで、彼はずっと無敵状態で、派手に相手をKOしてきた。勢いがつきすぎると、それが過信につながることもあると思う? 「俺としては、彼が過信して入ってくるとは思いたくないんだ。彼がベストな状態で来ると信じたい。もちろん、勢いに乗ることは大切で、それが自信につながることもある。それは良いことだと思うけど、俺たち二人とも、お互いがどんな相手と戦うのかはちゃんと分かっていると思う」 ──2014年6月のプロデビューから10年。ある映像で、ラウントリー選手が一時期300ポンド(約136kg)あって、鬱状態でタバコを吸っていたと話していたのを見ました。それが今、UFCのチャンピオンシップに挑戦できるところまで来た。ここまで来た自分にどれだけ誇りを感じていますか。 「そうだね、本当に遠くまで来たと思うよ。俺がどこからスタートしたか、過去のことが今になってだんだん知られるようになってきたけど、あの頃の自分はもうずいぶん前に、遠いところに置いてきた感じだ。  振り返れば、当時の自分やその時に経験していたことが分かるけど、今は現在の道のりに集中しているんだ。すべての困難を乗り越えたことが本当に嬉しいし、その後も、途中にあるいくつかの壁も乗り越えてきたことが誇らしいよ。俺がそれをやり遂げたことに自分でも誇りを感じているし、チーム、コーチ、家族、そして近くにいる全ての人たちに感謝している。今は、俺の周りにいる人たちと、それから俺を支えてくれる人たちが何よりも大事なんだ。彼らのおかげで責任を持って前に進めている。  このタイトルマッチは大きなことだが、ある意味では、まだ始まりに過ぎないと感じている。タイトルマッチに向けて準備していて、これは俺のキャリアの最高潮だと思うけど、個人的な成長や、これからの自分を考えると、まだこれが始まりなんだと思っている」 ──何度か山に籠もってトレーニングをしていると聞きましたが、パークシティでのトレーニングは高度に順応するため? 「その通り。早めにここに来て準備を整えたかったから、かなり長く滞在したよ。メディア対応のために山から下りてきたけど、それまではずっと山にいて、毎日トレーニングしてた。ランニングやグラップリング、全部そこでやってたよ。  本当に素晴らしい場所だね。ソルトレイクシティとパークシティは、俺の中では世界の好きな場所トップ10に入るよ。これまでいろんな場所に行ったけど、ここは本当に美しいところだ。ユタのホッケークラブの試合にも行ったけど、すごく楽しかった。めちゃくちゃ歓迎してくれたし、観客もチームも最高だった。エキシビションマッチだったのに、みんな全力で応援してたよ。ファンもすごくサポートしてくれるし、コーヒーショップも美味しいし、食べ物も最高だ。まだ雪は降ってないけど、俺はスキーが好きだから、パークシティに行ってスキー場を見ただけでワクワクするよ。絶対にまた何度も訪れると思う」 ──試合が間近に迫って、ついに何年ものトレーニングと努力の成果を出す瞬間が来ました、どんな感情が湧いてきていますか。感情的になるのを避けているのか、それとも感情ごと全てを受け入れていますか。 「俺は全てを受け入れているよ。感情含めて、この瞬間を楽しんでるんだ。ポジティブに、感謝の気持ちを持って、幸せでいようとしてる。毎日こうやってPPVのメインイベントで戦って、タイトルに挑戦できるわけじゃないからね。だから、毎日目が覚めた時、日中、そして寝る時にも、この瞬間に感謝してるんだ。自分が今いる場所に感謝してる。それが、感情やプレッシャーに対処するために役立ってるんだと思う。  今ここにいることが嬉しいし、準備が整っていると自覚できていることが嬉しい。コーチやチームにも感謝してる。彼らの献身があるからこそ、ポジティブなエネルギーに包まれているんだ。もちろん、緊張や不安はいつか来るだろうし、その時はその時だ。でも今、この瞬間にいる限りは、ポジティブに、心を満たしていこうとしてるよ」 ──もしあなたがテイクダウンを狙ったらファイトマネーの一部をチャリティに寄付してほしい、ってアレックス・ペレイラが言っていた。それについてどう思う? 「いや、別にテイクダウンを狙うかどうかに関わらず、俺はチャリティに寄付するよ。賭けみたいなことは好きじゃないし、そんなことはしないけど、もし『チャリティに寄付してほしい』と言われたら、寄付するよ。俺はテイクダウンを狙う予定はない。これまでも何度も言ってきたけど、それは俺のプランじゃない。でも、もし何かが起こって、仕方なくテイクダウンを狙わなきゃいけない状況になったら、それは仕方ない。これがMMAだからね。  もし彼に何か強烈な一撃をもらって、自分を守るためにそうせざるを得ないなら、やるかもしれない。でも、俺のゲームプランは、ディヴィジョン1のレスラーみたいに組み合うことじゃない。俺のファンならみんなそれを知ってるはずだ。俺が言いたいのは『これまで通りの俺を期待してくれ』ってこと。タイトルマッチだからとか、相手がストライカーだからって、いつもと違うことを期待しないでほしい。これまで見てきた俺を、そのまま期待してくれればいい。だから、テイクダウンするかどうかに関係なく、俺はラスベガスのチャリティに寄付するよ。ラスベガスは俺の故郷だし、ベルトを持ち帰る場所だからね。そこには助けが必要な施設や基金がたくさんある」
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