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レポート

【UFC】モルガン・ シャリエール「柔道をやっていたから、相手の重心が感じ取れる。レスリングのアジャストも難しい事じゃなかった」

2024/09/29 04:09
 2024年9月29日(日)、フランス・パリのアコーアリーナにて『UFC Fight Night: Moicano vs. Saint-Denis』(U-NEXT配信)が開催された。 ▼フェザー級 5分3R〇モルガン・シャリエール(フランス)20勝10敗1分(UFC2勝1敗)[2R 0分27秒 TKO]×ガブリエル・ミランダ(ブラジル)17勝6敗(UFC1勝1敗)  1R、ともにオーソドックス構え、。右ローのミランダの蹴り足を掴もうとするミランダ。ワンツーから組みに行くミランダに、右で差して四つで金網背にするシャリエールは両脇差して投げ狙い。  ミランダは右オーバーフックで引き込み狙い。残したシャリエールに、右小手で投げも挑むが、ここはシャリエールも投げられず。押し込みヒジ。そこに引き込んだミランダだが、シャリエールはインサイドガードからパウンドし、体を離す。  ミランダの左右に角度を変えて右カーフを打つシャリエール。ミランダの組みに崩して上に。鉄槌を落とすもグラウンドで深追いはせず。  立ち上がるミランダ。ジャブからダブルレッグもスプロールして潰すシャリエール。右小手でフックスイープから跳ね上げたミランダは返されながらも腹ばいになったシャリエールのバック狙い。それを落としてすぐに立ち上がるシャリエール。ミランダは右ハイ、右ストレートで前に。かわすシャリエールは上体を振ってかわしてゴング。  2R、右カーフを蹴るミランダ。さらに右前蹴りで前に。右ストレートを強振するが、それをかわしてダブルレッグのシャリエールは、ボディロックからテイクダウン狙い。クラッチを切って右の蹴りから背中を見せてバックフィストで向き直ろうとしたミランダだが、そこを追うシャリエールは左フックをヒット! ミランダが仰向けにダウン! すぐにレフェリーが間に入った。  前回同様の振り返りざまの打撃でのKO勝利の地元シャリエールは、ケージの上で、満員の観客の大歓声を浴びた。 MMA禁止時代のフランスでMMAを始めるということ  フェザー級(5分3R)で、ブラジルのガブリエル・ミランダと対戦する柔道出身の“ラストパイレーツ”モルガン・シャリエール(フランス)19勝10敗(UFC1勝1敗)に話を聞いた。 ──モルガン・ シャリエールという発音でOKでしょうか。そのルーツは? 「まずニックネームの“Last Pirate”というのは本名のMorganから来ていて。Morganというのはジャマイカの海賊からきているんだよ。父のヘンリー・モーガンがその海賊から名前をとって付けてくれたんだ。心のままに従うという精神がすごく好きで。俺のファイト人生は、前はいつもフランスで戦えなかった事もあって、海外に行って全てをかけて強い相手と戦って宝を国に持って帰る感じだった。苗字の発音は“シャリエール”で間違いない」 ──いまはファイトで宝探しをしている状況ですね。そのバックボーンは柔道になりますか。 「そう、柔道は確か自分が6歳か7歳頃に始めた。格闘技がとてもやりたいと思っていて、小さい頃に両親に空手か柔道がやりたいってお願いをしたんだ。そうしたら家に近いのが柔道だった事もあって両親が柔道を選んだ。そうしたらやっぱり大好きになって、その後10年間続けた」 ──近所で柔道を行えるほど、フランスでは盛んだと思いますが、柔道でのキャリアは? 「実は柔道では結構強かったんだ。特に6歳から14歳くらいの小さいときにたくさんトーナメントも勝ったし、リージョナルチームにも参加していた。たくさん試合を重ねた。毎週末試合を小さい頃からしていた。平日3日は練習をして試合の準備をして、週末や休みの日は試合をした。自分が16、17歳の頃に柔道のルールが少し変わったんだ。そこから少し負けるようになった。自分が得意としていた技が新ルールでは使えなくなった。その技を多用していたから、通用しなくなって違う競技をしたいと思ったときにMMAに出会ったんだ」 ──当時は、一本、技あり、有効の3段階から有効を廃止したりもしていましたね。柔道時代の得意技は? 「日本語の名前は忘れたけど、足を掴む技をたくさん使っていたんだ。MMAでも内股とかはよく使っているよ。相手が投げようとしてくるところをカウンターで足を取りに行くのが好きだったんだ。足を取った後にそこから投げに繋げる自分が得意なコンビネーションがあって、このテクニックをずっと使って柔道をやってきたからルールが変わった時に、まるで技が使えなくなってしまった」 ──いまではズボンをつかむことする禁止です。それでMMAに移っていったのですね。前回のチェペ・マリスカル戦は、右ストレートを避けてからのダブルレッグが目をみはる動きでした。柔道からレスリングのアジャストについては問題無かったのですか。 「ありがとう。柔道をやっていた事でとても強い体幹(バランス)がついた。自分で対戦相手のバランスが上手く取れていない事を感じとったりできるんだ。小さい頃からずっと柔道をやっていたから、相手に触れるとどこでバランスを取っているかを感じる事ができる。どこを狙うべきか、どこでひっくり返せるかが分かるんだ。それはレスリングでも多いに役立ったよ。  フランスでたくさんレスリングの練習もした。MMAを身につける為のトレーニングは3、4年かかっていると思うけど、GIを着ていない状況でも相手のバランスを把握してどうテイクダウンするべきかが自然に身についているんだ。相手の重心が感じ取れる。だから柔道からレスリングのアジャストも難しい事じゃなかった。  同じ競技ではないけど、相手をひっくり返して、バランスを崩すという意味では通ずるものがあるだろう? だから自分の柔道スキルがレスリングに活かせるんだ。そういった事もあって自分のレスリング技術は他の人とは少し違って、テイクダウンを取る事が難しい。柔道のおかげで自分は一本足でも両足でもバランスがとてもいいので、例えば目をつぶってどこに立っていても俺を倒す(ひっくり返す)事はできないと思うよ」 ──なるほど。そして柔道では常に自分のバランスを保ちながら移動する、すり足が基本だったはずですが、シャリエール選手はキックもとても巧みです。オーソからの左のスイッチや、フロントキックも。 「俺のコーチがフレンチボクシング出身でフットワークをたくさん使う。だから16歳、17歳頃、MMAを始めた頃から、右に左にスイッチをする事を学んだトーキックなどのキックもコンビネーションしながら。あと、コーチのカリム・ウナジェラは、空手が本当に上手いんだ。フランスのナショナル王者でもあった。だから空手とフレンチボクシングが混ざっているのが俺のスタイルなんだ」 ──柔道からMMAに転向後、しばらくしてフランスでMMAが解禁された。それまでは国外でも試合をしていましたね。 「そうだね。フランスでMMAが解禁されたのは4年前。それまではMMAは禁止されていた。それまではカスタムルールのパンクラシオンが行われていて、ケージではなくリングでルールもだいぶ違う。例えばグラウンドにおいてはパウンド無しの柔術のみに限られたりね。そこから自分は始めたんだ。確か7試合くらいやったと思う。当時の試合がMMAの戦績として載らないのは少し悲しいけどね。  ただ、海外に行ってMMA選手達と戦ったりする経験は自分が成長するためにも大きかった。フランスでは戦えなかったから、選手達へのリスペクトはもちろん無かった。本当に何も無かった。ジムの選手達も経験もなく。今の自分のポジションにくるまでが大変だったんだ。海外団体と契約する事も難しい事だから、いろいろ厳しい時期ではあったけど、特に落ち込む事もなく、常に戦いながら前に進むようにしていた。トレーニングして試合をする事をずっと積み重ねていけば、必ず頂点にたどり着くと思っていたし。自分のターニングポイントとなったのはケージウォリアーとサインできた事。そこからいろいろと道が開けたんだ。自分はいい選手だし、それを見せる為の場所が必要だったから」 ──ガブリエル・ミランダとの試合はどのような試合になりそうですか? 「柔術家でグラウンドスキルはとても高いよね。彼のゲームプランはきっと単純で、俺をテイクダウンする事を狙って来るだろう。先にサブミットする為にね。チョークも上手いから気を付けないといけない。ただ、俺も柔道で黒帯を持っていて、キックボクサーでもあるから自信はある。彼にとってハードな相手になるだろう。俺をサブミットするのは難しい。これまで俺はフィニッシュされた事ないから、そんな俺を彼がフィニッシュするなんて無理に決まっている。それができなかったら、彼は俺に勝つことは無理だろうね」 ──最後に日本のファンにメッセージを。 「日本には行った事がないけど、是非、柔道の母国へ行ってみたい。皆、応援ありがとう。U-NEXTで試合を楽しんでもらえると嬉しいです。俺の格闘技のスキルや柔道スキルを見せる事を楽しみにしているよ!」
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