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インタビュー

【RIZIN】井上直樹と王座を争うキム・スーチョル「ここに骨を埋める覚悟で来ています。子供が生まれてほんとうに命がけで戦うという精神力が一層強くなった」

2024/09/28 00:09
 2024年9月29日(日)さいたまスーパーアリーナにて『RIZIN.48』が開催される。メインのライト級タイトルマッチ前のセミファイナルでは、「RIZINバンタム級(61.0kg)王座決定戦」として、キム・スーチョル(ROAD GYM WONJU MMA)と井上直樹(Kill Cliff FC)が対戦する。  井上は、日本人最年少の19歳でUFCと契約した元フライ級戦士。2020年2月からRIZINに参戦し、2024年3月の前戦で佐藤将光を判定で破り、当時のRIZINバンタム級王者・朝倉海とのタイトルマッチを呼び掛けていた(※朝倉海はUFCi入りし、RIZIN王座を返上)。  対するスーチョルは、初代ONE世界バンタム級王者にして、ROAD FC初の二階級(バンタム&フェザー級)制覇王者。2023年10月の「ROAD FC 63kgトーナメント」決勝戦で原口央にTKO勝ちで優勝し、2024年4月のRIZINで中島太一にTKO勝ちするなど、これまで日本人には敗れたことが無いく、現在4連勝中だ。  ともに悲願のベルト獲得に向け、王座戦2日前にメディアインタビューに応じた(※井上直樹コメント)。 スーチョル「どちらがより強靱な精神力を持っているか」 ──試合を2日後に控えた心境を教えてください。 「心境は大変いい気持ちでいます。今回も従来通りのトレーニングを積んできました。これまで十数年間夢見てきた舞台で、チャンピオンになるまでもう数日しか残ってないということを、とても嬉しく思います」 ──今回の井上直樹戦に向けて強化してきたことは? 「特に今までと違うことはやっていません。従来通りのトレーニングを積みました。スパーリングもたくさんしたし、グラウンドもたくさん練習しました。グラウンドが少し弱いと感じたので研究を積み、柔術の著名な方々にしっかりとトレーニングしていただいたので、いい具合に仕上がっている状態です」 ──減量の状況は? 「もう適正体重になっています(※陣営によると翌日の計量に向け、すでにリミットを切っているという)」 ──対戦相手の井上選手の印象を。 「とても明るくていい青年です。韓国で『お母さんの友達の息子』という表現があります。イケメンで運動が良くて勉強も出来る。彼にはそういういいイメージがあります」 ──どんな展開を予想していますか。 「こういった試合は肉体の要素が1パーセント。残りの99パーセントが精神力だと思います。どちらがより強靱な精神力を持っているか。それが試合のキーポイントになると思います」 ──井上直樹選手を上回っていると自信を持っている点は? 「まず年齢が私の方が確実に上。その分、たくさん食べてきました(笑)。それが勝っている点です。それは冗談として、さきほど部屋の外で子供の泣き声が聞こえたかもしれませんが、私は子供を育てています。この子育てをしているという経験は、決して無視できないことだと思います。井上選手よりも上回っているとしたら、強靱な精神力だと思います。もちろん試合なので、私が負けるかもしれませんが、99.9パーセント、私は彼より強い精神力を持っています。なぜならば、私が子育てをしているから。子供が生まれて、ほんとうに試合に命がけで臨むんだという精神力が、一層強くなったと思います。それが井上選手よりも優っているところです」 ──井上選手は「二度と自分と戦いたいと思わせないようにする」と言っていますが、その言葉についてどう感じますか。 「それに対して言う言葉がないですね。一度死ぬほど戦ってからそれについてコメントしたいと思います。私はここに骨を埋める覚悟で来ています。妻が聞いたら嫌がると思いますが、命をかけてここに来ていますので、明後日、試合で死ぬようなことがあっても、ベストを尽くしたい。子供がいますが、妻は能力がある女性ですので、立派に育ててくれるでしょう。だから命がけで死ぬ気で戦う覚悟です」 [nextpage] 結婚して子供が生まれたら、幻聴が聞こえなくなっていました ──もし勝つことになると大きなタイトルは3つ目(初代ONE世界バンタム級王者、第4代ROAD FCバンタム級王者&第4代ROAD FCフェザー級王者)になります。3つも獲得するのは並大抵ではないことだと思います。3つ目を狙う気持ちを教えてください。 「全ては幻だと思います。3回チャンピオンになること、3つのベルトを獲得すること、それは重要ではありません。私にとって重要なのは、ここまで来たということ。精神力を持って、全ての体力を注ぎ、全ての力を注ぎ、ここまで来たということ。命がけで勝つためにここまで来た、そのことが重要で、ベルトは重要ではありません。もし勝ったとしたら、もちろん気分はいいと思います。ただ、その翌日、息子と妻を見ながらコンビニで買った100円ぐらいのおにぎりを食べる──それが私の人生にとって一番大事なことであり、それだけで私は満足です。もう一度言いますが、全ては幻です」 ──スーチョル選手は、10月27日に韓国のROAD FCでも試合(63kgトーナメント準決勝でキム・ヒョンウと対戦)をすると。1カ月間の連戦は過去にもあるのでしょうか。 「決してよくあることではないです。でも経験はあります。以前日本でROAD FCの試合(1バンタム級で中原太陽にギロチンチョークで一本勝ち)があって、その4週間後に階級を上げて(フェザー級)戦極王者のマルロン・サンドロと試合をしたことがります(ドロー)。とても面白い経験でした。でも今思うと、何回思い返してもありがたい経験だったと思っています」 ──ところで、スーチョル選手の人気が日本で高まっている実感はありますか。 「人気は実感していません。自分の生き方をそのまま続けているだけですが、好きになっていただいていたとしたら、本当に心から、心から感謝したいと思います」 ──逆にRIZINは韓国に広まっているのでしょうか。 「格闘技ファンにとってもRIZINは無視できないとても大きな団体なのは確かですが、単なる一般の人には格闘技選手としてのキム・スーチョルの方の知名度が高いと思います。ただ韓国人よりも外国の方からよく連絡がきます」 ──7月に『超RZIN.3』がありましたが、ご覧になっていますか。印象に残っている試合があれば。 「見ました。印象に残っているのはメイン(朝倉未来vs.平本蓮)ですが、あえて“扇久保兄さん”とあえて呼ばせていただきますが、とても尊敬しているからです。皆さん信じられないかもしれませんが、扇久保兄さんの方が私より年上です(笑)。階級をフライ級に下げて、10歳以上若い選手(神龍誠)と試合をしたこと、これは素晴らしいことで、とても感銘を受けて感動しました」 ──FFCのマークのTシャツは先輩が後援してくれたのでしょうか。 「その方に電話を一本しただけです。試合をするにあたって、いろいろ費用がかかるので支援をしてください、と一言いいました。そうしたら、すぐに支援をしてくださいました。ありがたいことに、私の周囲にはそういう方たちがいます。毎日、千回も万回も感謝しています。そういう方々がいて幸せです」 ──2017年12月に引退を表明したスーチョル選手は、持病の強迫性障害・パニック障害が悪化したことが原因だと公表しました。どのように乗り越えたのでしょうか。 「まずパニック障害がありましたが、これはちよっと鬱の状態で、夜になると幻聴が聞こえて、かなり苦しみました。ほんとうに辛い時期もありましたが、解決方法はとても簡単です。いつも毎日ほんとに些細なことに感謝の気持ちを持つおとです。それから食事を抜かないということ、歯磨きも必ずするということ。こういった小さなことの積み重ねを欠かさないということです。それから、いいお話だけを聞こうとする、そういった努力もしました。他には1人でいる時間を楽しもうということで、たくさんいい本を読みました。その後、結婚して子供が生まれたら、不思議なことに幻聴が聞こえなくなっていました。  周りの人たちにさらに感謝するようになりましたし、物事の明るいところだけを見るようとしました。暗いものを暗くみると暗くなります。暗いものも明るいと考えながら、憂鬱なときほど物事を前向きに明るく考えること、感謝することが重要です。  こんなことを言っていますが、私はよく妻と喧嘩します。夫婦喧嘩もよくしますし、減量しているときに幼い子供がまとわりついてくると辛いなと思うこともよくあります。それでも彼らに対する感謝の気持ちを忘れないこと。何と言ってもコーチたち。MMAやブラジリアン柔術のコーチたち、一緒に練習してくれる仲間たち。みな男性ばかりでむさくるしいですけど、彼らへの感謝の気持ちを常に忘れないようにしています。そしてジョン・ムンホン館長、私の師匠ですが、辛いときもいつも私をサポートしてくれました。館長のことも心から愛しています。こうした方々に支えられて私は克服できたのだと思います」 ──ところで、今回勝てば、念願のSwitchを購入してもらえるということですが、間もなくSwitch2も発売されるとの情報もあります。それでもすぐに欲しいでしょうか。それとも待ちますか。 「それは……私には決定権がないです。妻が決めることなので何とも言い難いです(微笑)」
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