2024年10月13日(日)東京・後楽園ホール『SHOOT BOXING 2024 act.5』のメインイベントで、初代GLORYライト級王者ダビッド・キリア(ジョージア)との対戦が決定したSB世界スーパーウェルター級王者・海人(TEAM F.O.D)のインタビューが主催者を通じて届いた。
昨年8月のGLORY世界ライト級タイトルマッチで敗れたティジャニ・ベスタティ(オランダ)へのリベンジを狙う中、今回海人に用意されたキリアは、今年対戦したペットモラコットに並ぶ世界トップレベルの強豪といえるだろう。海人は元GLORYライト級王者撃破なるか。
ここで勝てばGLORYサイドにもアピールになる
――前回8月のドラゴミール・ペトロフ戦から振り返っていただきたいと思います。ペトロフに組まれて崩した時に、ペトロフ選手が腰を強打し試合続行不可能となり海人選手の2R TKO勝ちでした。
「ああいう形で終わって、痛い様子を見せて帰ってくれたのであれば僕も納得していたんですけど、試合後に控え室でペトロフと挨拶したんですよ。『ありがとうございました』とお互いに言い終わった後に、向こうにいたペトロフのセコンドに呼ばれたら普通に小走りしたペトロフの姿を見たら『えぇ!?』と思って(苦笑)、走れるなら試合してくれよと思って、そこからずっとモヤモヤが残った状態でした」
――そうなると、試合中にこのままでは海人選手に勝てないと思ったペトロフ選手が戦意喪失したということですかね。
「その姿を見たら、なおさらそうやなと思いました。それをわざわざSNSに書くことでもないのかなと。ただ“あれは投げて勝った”と言われる方もいて、本当に僕が投げたのであれば全然そう言っていただいていいのですが、僕は投げてはいなく、崩しの中でああいう形になりました。例えば、ストレートで倒したのにフックで倒したみたいに言われてるのも僕は納得いかないので、そこだけ引っかかっていました」
――それでSNSでも珍しく「あれは投げじゃない」と熱く書かれていたんですね。
「そうです。SBには、ちゃんと投げ技もあって、投げたのであればしっかりポイントもつくし、各ジャッジも投げた後に投げたかどうかの確認をするじゃないですか。そういう素振りもしてないのであれば、もう投げじゃないやんと、ルール上の正論を言っただけです」
――和田レフェリーはその後のマイクで「投げ技」という言葉を使っての説明があったことで、見ていたファンを混乱させてしまったのかなとも思いました。
「投げありのルールの中でああいう形になったので、それで倒れて立てなかったことでKOとなるのはSBとして普通なことなので、和田レフェリーはちゃんとルールに従ってやっただけだと思います。あの場面で咄嗟に『崩しによるでKOでした』と言えないと思うので、そういうことも踏まえて、僕から“そこは違うよ”というのも言いたかったので発信しました」
――なるほど。試合の話に戻しますと、ティジャニ・ベスタティ選手との再戦を見据えてペトロフ戦ではやりたいことを試したりはありましたか。
「それも今からちょっとやっていこうみたいな感じでした。普段、僕は同じ階級の選手とスパーリングはなかなかできない環境なので、攻撃の当たり方を確かめたり、パンチの位置は相手の身長が変わってくると、打つ場所もそれだけ変わってきます。顎を一つ打ち抜くにしてもベスタティだったら、ちょっと上に打たないといけないし、前回の相手であればちょっと下に打たないといけないので、そういう調整を1Rにして、2R目からはしっかり当てていこうという感じでいたのですが、ああいう形で終わったので、今からもうちょっとやりたかったのになと、消化不良な感じでした」
――大阪に戻ってからすぐに練習再開されたんですか?
「普通だと試合の翌日は1日完全休みにするのですが、ジムに行ってすぐに練習再開しました。ホント、ムカつきすぎてじっとしていられないし、携帯を見ててもSNSを通してアンチからメッセージ、コメントが来て、それを見たらまたイライラしてくるので、もう練習していたら携帯を見ないなと。次戦が誰かは決まってなかったんですけど、僕がやりたいのはベスタティだだ一人なので、いろんな対策を練ってやり始めましたね」
――戦いの神様が休ませてくれなかったんですね。
「ホントそうですよね。そういうことなんやなと。あそこで休んでいたら、また自分のレベルは下がっていたのかもしてないし、そういう流れが自分に必要だったのかなと今になって思います」
――次の対戦相手はダビッド・キリア選手に決まりましたが、最初にオファーが来た時はどういう心境でした?
「元GLORYの王者だけであって、今後ベスタティ戦につながる試合になるのかと言われると、どうなのかなと思ったので、SB協会の方々と話し合いました。一応、僕としては元GLORYライト級1位のエリンコ・ケールとやりたかったのですができない状態とのことで、それよりも下のランカーの選手とやることになったとしても気持ち的に盛り下がるなと思っていたところ、キリアはGLORYサイドが送り込んできた選手ということでした。
キリアはONEでもそうそうたるメンバーとも試合しているので、やってもいいのかなと。ここで勝てばGLORYサイドにもアピールになるし、キリアはケールに勝ってる選手なので、次につながっていくのかなとも思いました。キリアにしっかり勝てば、ケール戦につながるだろうし、勝てばベスタティしかいない状態になると思うので、どうせなら追い込む状況にしようと思いましたね」
――キリア選手は元GLORY王者で、2021年から参戦したONEのリングではジョルジオ・ペトロシアン、シッティチャイ・シッソンピーノン、タワンチャイ・PK・センチャイ、また中国ではスーパーボンと対戦して鎬を削ってきた紛れもなく世界トップレベルの実力者です。ベスタティ戦を見据えた大事な試合が続く中で、かなりヤバい相手が用意されたと思ったのですが、キリア選手に関しては以前から意識してたり、試合を見ていた選手でした?
「もちろん観ていました。70kgでONEで試合しているのも見てましたし、どのタイミングで当たるかというのは全然考えていなかったですけど、いつか当たるのかなと思ってた選手でした」
――選手としてどういった印象がありますか。
「頑丈ですよね。芦原空手出身の空手家というのもあるので、足や腹の耐久性に自信があるのか、これまでの戦績を見ると顔面では倒されてないことから分かるように顔面のガードは徹底しているタイプです。意識して見たのはそこだけです。あとは、パンチや蹴りに関しては、そこまで警戒して対策するほどでもないのかなと。今までにしっかり固めて前にグングン入ってくる選手としては、イ・ソンヒョンや野杁正明選手とかでもそうでしたけど、自分は不得意なタイプではないと思うので、普通に倒せると思います」
――逆に顔に当てて倒したいとも思いますか?
「そうですね。今の僕なら大丈夫だと思います。この階級になって、ちょっと前までは顔面に当てても意識を断つほどの威力は出せないなと、まだ70kgの身体ができていないなように捉えてましたけど、今はそこにも自信があります。一発で相手の意識を断てるようにもパワーは付いていると思うし、じわじわコンビネーションでまとめて倒すという風にもできるし、今は70kgでも自由に腹でも倒せるし、足でも倒せたりと、何をしても勝てるというものを作れている自信はあります」
――70kgに転向した当時よりも今の方がレベルアップしているのを感じていると。
「そうですね。全然違うと思います。70kgに上げてやった選手たちと今、試合をしたらパワー、スピードが上がってるし、キレもすごいと感じてもらえると思います。69kgや68kgとかバラバラな契約体重で試合していたら、またちょっと違ってたんでしょうけど、徹底して70kgで試合をしてきて、僕は試合を経て強くなっていくタイプで、試合をこなしてきたからこそ倒し方も分かってきたし、ストーヤンのような身体のあたりが強い選手や高身長のベスタティともやったし、色んなタイプの選手とやった経験があることで今の僕があると思います」
――では次も衝撃的なKOを期待してます。
「はい! 倒すのは当たり前。今回は内容にこだわっていくので、ちょっと楽しみにしてください」