自分のやるべきことをやる
――ストライカーのイメージが強い菊入選手ですが、NEVER QUITは組み技の猛者揃いで、寝技もやり込んでいるのですね。今回のハーマン・テラドは、分厚い身体から繰り出すフック系のパンチャーですが、バレット・ヨシダの黒帯ですし、腕十字、チョークなどの極め技も持っています。どう捉えていますか?
「テラドはもちろん寝技はできるとは思ってるんですが、まずやっぱり下にならないことを一番に考えていますね。あとは、力が強いので、極め力があるなという感じで、しっかり相手がやってきそうな技の対応をファイトウィークのときは考えてやっていました」
――スタンドでもオーソですが、左の前手のフックなどけっこう振って来るイメージです。
「ただ、どれくらい打撃が速かったり重いのかというのは、向かい合ってみないと分からない部分もあるので、それはもう試合で探り探りでやるという形でいこうかなと思っています」
――この試合が決まるまでの間、PFLがBellatorを買収して、選手たちの行き先も不透明な時期もあり、菊入選手の試合もなかなか決まりませんでした。ちょうど怪我をしていた時期でもあったのですね。その両方の要因で「待たなくてはいけなかった」時期をどう感じていましたか。
「試合自体のオファーは主催者側からは『いついける?』 みたいな感じのはあったんです。でも、ちょうどタイミングが悪すぎて、試合が決まりそうとなったときに入院してしまうというもどかしさというか、試合はもう目の前にあるのに自分が怪我で遠ざかっていってしまうという……だから、途中でもう、ちょっと格闘技を続けるのはキツいかなとも思ったんです。もちろん生活的にもキツかったというのもありました」
――話せる範囲で構いませんが、ほかにもお仕事をされたりしているのですよね。
「普段は……何て言えばいいんだろうな。普通に正社員で働いてるんですけど、だいぶ優遇させてもらって、本当に格闘技に集中できるような環境で仕事をさせてもらってるんです。でも、そこで試合が決まらないってなると、やっぱり助けてもらっている人に対してすごく申し訳ない気持ちにもなりますし、周囲に本当にすみません、とずっと思っていました。あとNEVER QUITでも指導員として働いているので、そういう仕事もやっぱり網膜剥離になると出来なくできなくなってしまう。ダブルパンチというか、このままではキツいな、と考えていました」
――このまま格闘技で、ファイトマネーも入ってこなくて、しかも怪我も続く中で、どうやってモチベーションを保って次に向かおうとやってきましたか。
「半分意地みたいな感じですね。うまく表現できないですけど……これが“仕事”だと、やっと格闘技を仕事にできた、趣味から仕事にできたというか。なので、仕事って、たぶん普通の人、そう簡単に辞めないじゃないですか──まあ、今のご時世すぐ辞める人もいると思うんですけど──でもやっぱり、好きでやってた趣味を仕事にできているので、それはなかなかないことだと思うので、やっと仕事に出来た格闘技を簡単には辞められない、そういう思いが湧いてきたというか」
――プロフェッショナルファイターで生きていると。
「生活できるほどではないんですけど、それでもやっぱり、メインが格闘技で勝てば多くのお金が入ってくるわけで。収入の一部、安定はしないけど、これで稼いでいるので」
――前回がKO勝ち。PFLのシャミル・ムサエフについて投稿しているのを見ると、Bellatorで連勝して、PFLリーグ戦のなかでも戦ってみたいという気持ちもありますか。
「PFLのリーグ戦は……難しすぎて(笑)。あのポイント制というのが、どれだけ早く試合を決められるかというか。出られるんだったら出るかもしれないですけど、いまは決まった試合を勝つことが大事で」
――Bellatorでまだメインカードクラスではないなか、勝ち星を積み上げていけば、ウェルター級で上でやっていくチャンスも生まれてくるかと。
「そうですね。しっかり今後も勝てばいいカードを組んでくれそうな気もするので、落とせる試合なんてないですけど、必ず勝って次に繋げようという気持ちでいっぱいです」
――さきほどテラド選手にインタビューしたんですが、「あいつはNEVER QUITだけど、俺もNEVER QUITだから」って言ってました。
「間違いないですね、それは俺も(笑)」
――互いに辛抱合戦になるかもしれないですが、後手には回りたくない相手ですよね。
「そうですね。ちょっと後手に回っちゃうとガツガツこられるのかなと思うので、なるべく自分からペースを掴みに行きたいですね」
――ズバリどんな試合になるでしょう。
「おそらく打撃戦にはなると思いますね。彼も振ってくると思うので。俺はそれを避けて、自分のリーチでしっかり戦うという、自分のやることをやる感じの試合になると思います」
――日本から応援するファンにメッセージをお願いします。
「ここまでたくさんの周りの人たちに助けられました。前回の試合が終わって、僕に期待してくれた人たちも多く、その期待に応えたいという気持ちです。やっと戻って来れたので、しっかり俺のKO勝ちをU-NEXTで見てください。よろしくお願いします!」