2024年8月、高橋“SUBMISSION”雄己(和術慧舟會HEARTS)が、『ADCC USオープン』に出場するために米国ネヴァダ州ラスベガスに向かった。
日本でサブミッション・オンリールールを採用する『Level-G』プロデューサーでもある高橋は、『ADCC USオープン』出場後、同時期に行われる『ADCC World Championships 2024』と『クレイグ・ジョーンズ・インビテーショナル2024』(CJI)を視察している。
それは、「日本でグラップリング文化を創る事をこれからも仕事にしていくのなら、競技に身を置くだけではなく世界で最もホットな場所に立って、その空気を感じる事が必要」との思いからだった。現地からの生のリポートを下記にお届けしたい(第1回)(第2回)。
◆18 Aug
T-Mobile Arena, Las Vegas, NV
【ADCC 2日目レポート】
「各決勝戦が行われるADCC 2日目。1番注目して観ていた-66では優勝争いに絡むと目されていたドリアン・オリバーレス、ガブリエル・ソウザ等を擁するブロックを初日に勝ち抜いた、若き足関節技師オーウェン・ジョーンズが、当代随一と言っても過言でないレッグロック&ガードプレイヤーのジエゴ・パトとの足関対決に臨みました。ここはパトがオーウェンを足関で切って落として貫禄の決勝進出を果たします。
逆山は前回王者の“ベイビーシャーク”ことジオゴ・ヘイスがジョシュア・シスネロスを下して決勝へ。ベイビーシャーク、Polarisの時に部屋が隣だった縁もあるのですが、ガードプレイヤーがADCCを勝ち抜く姿を見たかったので今回は決勝はパト応援の心構えで観戦します。
減点を厭わず引き込んで極めを狙うパトが見せ場を作りますが、極め切れず。中盤にベイビーシャークがパトをパスして肩固めで2連覇を果たしました。
続いて印象深かったのは-77。特にミカ・ガルバォン vs. PJ・バーチの準決勝がこの日の個人的ベストバウトでした。
ポイントにこそギリギリ至らないものの、10th planet 随一のレスリング&トップゲーム強者のPJが圧倒的優勝候補だった“神の子”ミカを相手にレスリングとトップゲームで攻勢をかけ続けました。
結果は延長まで0-0で迎えたレフェリー判定でミカが決勝進出を決めるのですが、自分含めて一緒に観戦していた周囲のオーディエンスの判定は総意でPJでした。とにかくそのくらいの死闘でした。
-77の逆山を勝ち上がったのは、なんと42歳のヴァグナー・ホシャ。異常なフィジカルとベースの強さで決勝でミカを苦しめるも敗退。ミカが悲願の優勝を果たしました。
CJIもめっちゃ面白かったけど、ミカやPJと同じトーナメントにケイドやウィリアム・タケット、リーバイ・ジョーンズがいたら……と考えるとそれも観たかった気もします。
こんな感じで個人的に印象深かった-66、-77を中心にレポートしましたが、スーパーファイトでゴードンがユリ・シモエスから21点という大量得点を上げたり、無差別級でカイナン・デュアルテが優勝したりと他にも色々ありました」
【総括】
「いわゆる『格闘技界を盛り上げる』ようなビッグイベントを打つには、やっぱりCJIのようにスポンサーと、それを引っ張る話題性を作る必要があると感じました。ADCCも今となっては歴史と権威が最大の魅力ですが、歴史も権威もここまで積み上げる過程で話題性も経済力も伴っていたわけだし。
ただ、今、日本は今すぐにビッグイベントを打つ事が必要な段階ではなくて、その前に競技会や指導環境の普及によって関わる人数を増やしていく必要があると感じました。俺はそこに対してLevel-Gを通して貢献しようとしているけど、もっと世間的に認められるものにするには実体の曖昧な“グラップリング界”を統括的にまとめてフロントとなれる全日本グラップリング連盟のようなものが必要なのかも知れません。
なお、自分が実際に現地で視察した試合の中で気になった試合や動きを、トレーナーの森安一好氏と分析する記事をnoteで公開しています。こちらもぜひご確認ください」(高橋“SUBMISSION”雄己)