柔道出身の山本は道衣を掴んでパウンドした(C)ROMAN
2024年7月21日(日)沖縄県糸満市潮崎町のくくる糸満にて『GFC10th Anniversary Match & ROMAN ZERO』が開催された。
トライフォース創設メンバーの1人・渡辺直由がCEOを務める「Roots Of Martial Arts Network」=ROMANは「格闘技の原点を探求し、日本に再び格闘技の本流を取り戻すこと」を使命とし、以下の3つのルールによる試合が行われる。
1.R.O.M.A. Rules(時間無制限バーリトゥード)※頭突き、金的あり
2.ROMAN COMBAT(道衣着用MMA)
3.ROMAN JIUJITSU(オリジナル柔術)
※ヒールフック、スラミング、外掛けあり
今回の『ROMAN ZERO』は、10月14日(月・祝)の旗揚げ大会『ROMAN ONE』に向けたプレ大会。沖縄で當山馨氏が主催するGFC内で行われ、今回は上記ルールのうち、2のROMAN COMBATと、3のROMAN JIUJITSUの試合がテストマッチとして実施された。
▼ROMAN COMBAT(道衣MMA)ルール 5分2R
-山本歩夢(拳秀館)
[ノーコンテスト]
-大村友也(IMNグランプリング)
道衣を着用することでMMAはどう変わるか。「袖やズボンの中を掴むことも可能」(渡辺)というROMAN COMBATルールの5分2R戦。
プロMMA3勝2敗の山本歩夢は、元パラエストラ柏所属。柔道では高校時代に埼玉県のインターハイ予選と選手権予選共に66kg級と73kg級で優勝し、インターハイでも5位に入賞。
2020年12月に、DEEP FKTライト級優勝の斎藤龍之介を1R TKOで下すと、21年2月のDEEP 100で高塩竜司から初回一本勝ち。同年6月には現JTTの西谷大成を初回パウンドでTKOに仕留め、3連勝をマーク。2021年12月に関鉄矢に一本負け後、2022年3月の『RIZIN 34』でRYUKIにTKO負け。今回は2年4カ月ぶりの再起戦となる。26歳。
対する大村友也はMMA5勝7敗2分。柔道ベースで柔術茶帯。DEEPでは拓MAX、鷹辰に判定負け後、大阪A-Toys Challenge Fight、Chakurikiで2勝1分。LETHWEIではOFG着用のアンビータブル・ルールも戦っている。33歳。
1R、道衣にオープンフィンガーグローブを着けたMMA。サウスポー構えの山本に、オーソの大村は右ハイ。ブロッキングの山本。さらに大村は右インロー。ステップを踏んで回る。
そこに飛び込み、右で奥襟を掴みに行く山本。左で脇を差しに行く大村の頭が下がると、山本の狙いは奥襟ではなく、背中越しの帯を掴みに。
帯を掴んでの内股を狙う山本だが、右足を抜いて帯を掴んだまま正対すると、大村はダブルレッグへ。右で帯は掴んだままの山本は、スプロールしてから金網で立ち上がり。ズボンも掴み離れない大村に、帯を離して右手にキムラクラッチを組みに。
アームロックを組ませずに左で差してシングルレッグで押し込もうとする大村に、右手を左手で掴んで組ませない山本。ケージ背に右手でこつこつ頭を叩くと、大村も山本の左袖を右手で掴んで引き付ける。
レフェリーから「指掴まない」と指掴みの注意があるなか、顎下に頭をつけて押し込み右ヒザは大村。ここで右で帯を掴んだ山本は、左で袖を掴んで引手も取って払い腰テイクダウン!
#ROMANCOMBAT#DOGIMMA#道着MMA#山本歩夢#大村友也 pic.twitter.com/HM2M9Z5O1N
— ROMAN - Roots Of Martial Arts Network (@romancombat) July 24, 2024
低い体勢ながら帯・引手を掴むことで大村の身体を返して投げた山本は、そのままトップへ。ハーフにからむ大村はシングルレッグへ。その道衣を片手で掴んで頭を下げさせる山本。ノーギMMAならこの片手のコントロールは頭を押さえつけきれない動きだ。
奥襟あたりを掴んで下に押し付け、右手で3発パウンドする山本に、亀の大村は左手を腰に回そうとする。その瞬間に右ヒザを突く山本。4点ヒザで「反則だ」とセコンドからの声も、左にいたレフェリーから確認出来なかったかそのまま続行。
動きが止まる大村のシングルレッグを腹固めに両足を組む山本。しかし大村も足を持ち上げると解除した山本は着地してなおもシングルレッグの大村の頭に鉄槌!
通常はサイドバック気味に腰を抱くポジションで、左手で襟を持って固定し、右拳を頭に落とすが、道衣の襟が上に上がり、後頭部の半分が隠れる状態で、その上から山本も鉄槌する。
道衣ありで固定されて殴られるため、パウンドの威力が強い状況に。シングルレッグからディープハーフ気味に前転して潜ろうとした大村だが、かわず掛けの山本の足と道衣を持たれているためか潜れず。
大村はヒザを立てて立ち上がりへ。中腰の大村の襟を掴んだまま右手でパウンドする山本。大村はパウンドをもらいながらも右足を手繰り寄せてテイクダウし、サイドになったところでホーン。
ノーギとは異なるグリップで両者ともに疲労が見える。
2R、オーソから左ローを先に突く大村。左サイドキック、右ミドルも。右で飛び込む山本に左前手フックを狙う大村。喧嘩四つで山本の左ローが股間に当たりローブローに。中断。
再開。ワンツー、右で飛び込む山本に、大村は左回り。山本は左ミドルを当てるが、道衣1枚あるだけでダメージはいかに。
大村の右ハイをかわした山本だが、左ローは被弾。山本は左ミドルを突いて組みに。四つ組みで互いに投げを打つが、上になるのは山本! そのままマウントを奪い、顔の上に胸を置くと、道衣があることで下の大村はそれだけで呼吸が苦しいはず。
吉田秀彦vs.ホイス・グレイシーのように袖車も狙える体勢から、山本はこつこと頭に鉄槌。ダブルアンダーから腰をずらしてブリッジで崩そうとする大村だが、山本も右手を着いて戻すと左手で襟を掴んで、右のパウンド! 亀になる大村はバックにつく山本に足をかけさせずに前に落として、すぐに立つ山本にバッククリンチへ。
スタンドで背後からヒザを突く大村。正対した山本は金網背にまたも背中ごしに帯取りに。その顔に組みながら右のパンチは大村。一転シングルレッグで尻を着かせて上に。立ち上がろうとする山本をダブルレッグで中央側に背中を着かせると、サイドポジションに。抑え込みながら左のパウンドをこつこつ突き、山本のブリッジをいなして仰向けにさせてホーン。
判定コールは3-0で山本の手が挙げられたが、試合後、山本の反則行為(4点ヒザ、後頭部への打撃)について、大村サイドから抗議があり、後日審判・運営で厳正な審議を重ねた結果、ノーコンテストに変更された。
試合結果は、道衣ならではの課題を残す部分が出たものの、道衣があることでMMAが変わることがはっきりと分かる内容に。
ショーツひとつとっても掴むことが反則のMMAにおいて、立ち技でも道衣掴みの打撃が許され、組んで脇を差す、小手に巻く、頭をやボディを使って抑え込むという動作に、道衣があることで異なる動きや技が有効になってくる。
また掴みがあることで容易にスクランブルを許さず、抑え込み、ポジショニングに優れたものが試合を優位に運び、掴んで固定しての打撃という強度を増す攻撃も有効となる。
かつてのフランスのグラン・トロフィーや頭部へのパウンド無しのトーナメント・オブ・J、戦極SRCジャケットルールの加点方式など、ジャケット格闘技はこれまでにも存在した。
ホイスvs.吉田の再戦でホイスが道衣を脱ぎ、上半身裸になったのとは異なり、両者が道衣を着ている戦いでは、柔術や柔道、大道塾やコンバットサンボなどの道衣あり格闘技の技術が「全局面」でどう活きるか。
さらに、ROMANでは、道衣MMAのROMAN COMBATのほかに、「医師の監修の元、安全管理を徹底したうえで行う、頭突き、金的あり」のR.O.M.A. Rules(時間無制限バーリトゥード)を解禁する予定だという。
現代MMAの技術が進化するなかで、バーリトゥードになったとき、果たして戦いはどうなるのか。それを行える心技体を持つ者は誰なのか。ボクシングから原点回帰のベアナックルファイトが存在するいま、MMAからバーリトゥード回帰は、禁断の扉を開けることになるかもしれない。
(主催者発表)
【ROMAN COMBAT戦 ノーコンテストの理由】
1.後頭部(耳より後ろ)が道衣に隠れる場面などがあり、かつ動きもあり、打撃が適正な場所にヒットしたか否かをレフェリーが瞬時に断定する事が難しい状況であったこと。
2.諸事情(新ルールがまだ浸透していなかった事でレフェリーの立ち位置的に見にくい状況であったなど)によりグラウンドのヒザ蹴りで、一旦試合をストップし減点を入れず続行になった事により、その後の展開が全く変わってしまった可能性が否定出来ないこと。
※時折後頭部に当たった打撃やヒザ蹴りのダメージにより、大村の動きが落ちた可能性。減点が入っていれば巻き返しで山本がその後の戦略を変えた可能性などを考えると減点無しで試合がそのまま続行し終了した今、その後に1点を引いて採点したとしても公平にはならない為。
【今後に向けて】
今回は「本大会」に向けた新ルールを試すプレ大会という位置付けで、盛り上がりのなかに課題もみつかった。
今後の改善に向けて、
・レフェリーやジャッジ陣とのミーティングの機会を増やし、テストのスパーリングを繰り返しデータを収集すること。
・後頭部が道衣に隠れる可能性などを考慮し、「後頭部の定義」を改変。後頭部への攻撃禁止部位は、頭頂部中央から頚椎にかけて左右5cm(計10cm幅)とする──などが検討されている。