2024年6月15日(土)エディオンアリーナ大阪第一競技場『RISE WORLD SERIES 2024 OSAKA』にて、引退セレモニーを行う麻原将平(パウンドフォーパウンド)のインタビューが主催者を通じて届いた。
麻原は正道会館空手出身で、2008年4月にRISEでプロデビュー。RISEを主戦場にしながら2010年と2011年にはK-1 WORLD MAXにも出場した。2004年1月には挑戦者決定トーナメントを勝ち抜き、4月にRISEライト級王座に挑戦。王者イ・ソンヒョンに判定2-0で惜敗した。2016年10月にはHOOST CUP初代スーパーライト級王座決定戦でTKO勝ち、初タイトルを獲得。2017年9月にはRISEライト級王座に2度目の挑戦も王者・不可思に敗れた。
2023年2月のRISE20周年記念大会に現役最古参として出場し、瑠夏に初回KO勝ちして華を添えた。同年5月、『KICK BOXING WORLD CUP』でテーパプット・シンコウムエタイに判定負け。これが最後の試合となった。生涯戦績は27勝(8KO)18敗1分。39歳。
原口くんにはペットパノムルンを倒してベルトを獲ってほしい
――麻原“選手”と呼べるのもあとわずかな期間となりましたが、長い間お疲れ様でした。
「長い間ありがとうございます」
――キャリア16年ですよね?
「この前僕もそれを見て長いなと思いました」
――ここまでキャリア16年を続けてこれた理由はなんですか?
「たくさんの人に支えてもらってとかよく言うじゃないですか。若い頃は皆同じことを言ってるなと思ってたんですけど、この年まで現役をやって、まさにそれに尽きるなと思いました。色んな人に支えられてここまで闘えました」
――今年の9月3日に40歳になりますよね。30代で引退をするのは良い節目だと思ったからですか?
「年齢とかはあまり考えていなかったんですよ。でも自分のジムを出して怪我も多くなって、年齢的にも色んなことが重なったタイミングでした。だから30代でっていう風には特に思ってませんでした」
――やり切った感じはありますか?
「だいぶ前から1戦1戦最後のつもりでやっていて、試合前はこれが最後かなっていう気持ちだったので、かなりやり切りましたね」
――いつくらいの試合から「これが最後」と思って試合をしていたんですか?
「イ・ソンヒョンと2回目のタイトルマッチをした時は最後のつもりで全力で挑もうと思っていました。まあ最後とは思ってないですけど、全部ぶつけて最後になってもいいやって気持ちでやっていました」
――これで麻原選手が引退してしまったら、同じく大ベテランのT-98選手もかなり悲しみますね。
「結構彼とはやり取りをするので『お疲れ様でした』とは言ってましたけど、最古参のバトンを渡します(笑)」
――今気持ち的には晴れ晴れしていますか?
「めっちゃ晴れ晴れしてます。でも全然自分がまだ引退するという感覚がないので、引退すると言ったものの気持ちはまだ選手のままだったんですけど、XとかInstagramでメッセージやコメントをもらって読んでいると、『自分は今回で選手として引退なんだな』と改めて実感するというか、寂しい気持ちになります」
――結局キャリアはRISEで始まりRISEで終わることになりましたね。
「めちゃくちゃ嬉しいですね。RISEで大森のGOLD GYMでデビューしているので、RISEにはすごく思い出があります。色んな団体に出してもらったんですけど、RISEでデビューして引退セレモニーもしてもらえるっていうのはすごくありがたいですし嬉しいですね」
――デビュー戦もして、大会場でもたくさん試合をしましたね。やはりそれなりに選手としての満足感はありますか?
「大きい会場は色々やらせてもらったので、それぞれに思い出もあってかなり満足感もあります」
――今振り返ってみて、RISEでのベストバウトってどの試合でしょうか?
「自分的には何個かあるんですけど、裕樹さんとの試合と、イ・ソンヒョンとのタイトルマッチと、不可思選手との試合はよく覚えているし、ターニングポイントになるような試合でした」
――それぞれに色んな思い出があるわけですね。
「めちゃめちゃありますね」
――裕樹さんとの試合はどんな事を覚えているんですか?
「トーナメントでの試合だったんですけど、僕がデビューくらいの時からトップ戦線で戦っていてすごい選手だったので、いつか対戦して倒したいと思っていました。それで裕樹さんのトーナメント1回戦が終わって、僕が入場ゲートの前にいた時に『決勝で待ってるから、俺と闘いたいなら上がってこいよ』って言われてすごく熱くなりました」
――良い話ですね。
「でしょ(笑)。ただその試合は延長までいってギリギリ勝ったんですよ。結局決勝で裕樹さんと試合することになったんですけど、1日2試合のトーナメントで僕が1回戦で拳を痛めてしまって、練習していた右フックが出せない状態だったんですけど直前に閃いた左手のコンビネーションが上手く当たってダウンを取ることができたんですよ。その後逆にダウンを取られつつも最後打ち合いをして、なんとか勝った試合でした」
――ソンヒョン戦はどんな思い出が残っていますか?
「生きてきてこんなに練習したことがないってくらい追い込んで、すごく自信もあったし、セコンドとの練習も全部完璧にして挑んだ試合だったので、絶対に勝てると思っていました。結果は5ラウンド戦って僅差の判定負けだったんですけど、勝ったらこうするっていう次の展望も考えていたので『人生終わった』っていうくらい何も考えられませんでした」
――不可思選手との試合はどんなところが印象に残っていますか?
「あの時は試合前からバチバチだったじゃないですか。直樹選手との試合後にリングに上がってきた時も睨み合いになったし、エンタメ要素なしで因縁もあるような感じで、不可思選手との試合の入場前も睨み合っていました。バチバチだったのに5ラウンドっていう闘い方が上手くて支配されて負けて、すごく悔しかったから覚えています」
――そういう悔しさはどのように乗り越えて現役を続けてこれたのでしょうか?
「ソンヒョンの時は、人生終わったと思ったからどうでもいいわって思って、それまで海外に行ったことがなかったんですけど1人でタイに行ったんですよ。それで言葉もわからないけどタイで練習して、そういう人達に触れ合って色々教えてもらっていくうちに、もう1回やりたいと思いました。不可思選手に負けた時は男の喧嘩に負けたって感じがあって、やる気を失くしている時にセコンドの先輩に新極真の緑代表と一緒に食事をする機会を作ってもらったんですけど、そこでどストレートな事を言われてもう1回頑張ろうと立ち上がれました。だから結局、色んな自分に関係してくれる人達に会って、色んな話を聞いて頑張ろうという気持ちをもらえました」
――キックボクシングの道を選んで間違いはなかったですか?
「そうですね。今このインタビューで話していて改めてそうだなと思いました」
――これからはキックボクシングとどういう風に関わっていきますか?
「今は大阪の森ノ宮で自分のジムをやっているんですよ。フィットネスを中心でやっているので、一般の人たちにもキックボクシングの良さや楽しさを広げていきたいです」
――いつか自分でもプロを育ててみたいという気持ちにはなりますかね。
「そうなると僕はダメなんですよ。その人に全部集中して他を疎かにしてしまいそうなので」
――今やっている仕事を放棄してしまう可能性もあるって事ですね。
「そうなんですよ。実際アマチュアでやりたいっていう人を、出稽古に連れて行ってあげたり、ジム終わりに走りについて行ったりとかしていたので、これが本当のプロを育てるってなったらそっちに全集中してしまいそうなんですよね」
――ちなみに麻原選手の引退については、パウンドフォーパウンドでお世話になった武蔵さんや森知行さんたちはなんと言ってらっしゃいますか?
「お二人とは頻繁に連絡させてもらってるんですけど、残念だなってのとお疲れ様っていう感じで、最後に引退セレモニーは盛大にやろうよって言っていただいています」
――今回RISEの大会で行う引退セレモニーは、長く活動の拠点としている大阪で行えることになりましたが、このことに関してはいかがですか?
「引退セレモニーを大阪で、しかもRISEの大きな大会でしてもらえるっていうのは本当に嬉しくてありがたいことですね」
――今から10カウントを聞いている自分を想像することはできますか?
「全くできないですね」
――結構涙脆い方ですか?
「僕全然泣かないんですよ。たぶん最後に泣いたのがイ・ソンヒョンに負けた時です。ほんまに涙が出ないので冷酷な人間だなって言われるんですけど涙が出ないです」
――少し意地悪な質問になってしまいますが、近い将来にもう一度復帰を考える時はありそうですか?
「なんか既にもうあったりするんですよ(笑)。試合を見たり、今のRISEのSNSから流れてくる煽り映像とかカッコいいので、あんなのを見ていたら熱くなるじゃないですか。そういうRISEの映像を見ていて、またやりたいなって思ってしまう時もあるんですよね」
――ちなみに今RISEで活躍している選手で、期待している選手はいますか?
「いっぱいいますけど原口くんは、次はGLORYでタイトルマッチをやるしすごいなと思いますね。昔裕樹さんのところでスパーリングしたことがあるんですけど、すごい上手いのでこのままペットパノムルンを倒してベルトを獲ってほしいですね。他にも仲が良い選手は多いので、大﨑兄弟もめっちゃ良い子だし、数島大陸も会ったらふざけ合う仲だし、みんな強いので頑張ってほしいなと思います」
――最後に今まで麻原選手を応援してくれたファンの皆様に、最後のメッセージをお願いします。
「長い間、応援していただいてありがとうございました。ここまで現役でやってこられたのもスポンサーの方、先輩、後輩、先生、家族と沢山の方々が応援をしてくれるおかげだと思うので、今回で引退しますけどまた第二の人生も頑張っていくので見守っていてください」