2024年6月9日(日)東京・国立代々木競技場第一体育館にて開催された『RIZIN.47』のコ・メインのフェザー級(66.0kg)5分3Rで、元RIZINフェザー級王者のクレベル・コイケ(ボンサイ柔術)と、元RIZIN&Bellator世界バンタム級王者のフアン・アーチュレッタ(米国)が対戦。
試合は、クレベルが1R 2分25秒、内ヒールフックでアーチュレッタに一本勝ち。大晦日・斎藤裕戦に続く連続フィニュシュ勝利で、リングサイドで解説した王者・鈴木千裕にあらためて対戦要求、鈴木から直に承諾を得た。
日本在住の日系ブラジリアンとして「みんな半分はいつも(自分を)信じられない。何回も戦う、私、何回も信じてください」とリング上で訴えたクレベル。これまでもBellatorとの対抗戦ではRIZIN代表として戦い、日本人選手との試合では外敵扱いされる状況のなか、観客の前でタイトルマッチをアピールする必要があった。
試合後インタビューでは、アーチュレッタを極めたフィニュシュの布石、鈴木千裕のマニー・パッキャオ戦決定について、歯に衣着せぬ言葉で語り、海外から参戦オファーもあるなか、クレベルは「自分は日本を守る試合がしたい」と語った。
敗者アーチュレッタの言葉も併せて、元王者たちの「告白」を紹介したい。
クレベル「ミドルキックを蹴ると絶対彼がキャッチすることは分かっていたから」
「はい、皆さんよろしくお願いします」
──今の気持ちを教えてください。
「自分の気持ちは、嬉しいです!“良かった、できた!”そういう気持ちです。良かったです」
──対戦相手と実際に戦ってみて戦う前のイメージと違ったところがあったら教えてください。
「いつもイメージと彼はあまり変わらない。彼はいいひとです。さっきの試合のことじゃなくて最初に日本に来たときからずっと彼は優しい。挨拶をしたりリスペクトがある。彼はファイターだけどいつもリスペクトがあって、それは一番大事。でもそれはお互いにあるからあまり変わらない。ファイターとして同じ。自分が戦って(戦う前をイメージは)変わらない。彼はまだ強い。弱い人がBellator王者やRIZIN王者じゃないな。試合後も彼は本当のファイターで強いと思うし、強いだけじゃなくていい男です」
──BellatorとRIZINでチャンピオンになったアーチュレッタ選手をこんなに早くフィニッシュできるという確信はありましたか。
「自分を信じてるじゃん。なので私、試合の前にマルキーニョス先生が言うのは『クレベル、集中してください』と言います。試合が決まる1、2週間だけじゃなくて、何年間も練習してきていて、私に『あなたは絶対また一本勝ちできるよ』って。私はずっと練習をしている。いつもそういう気持ち。彼が間違えていれば絶対勝って、私がタイトルマッチをできるよって。他人が言うことは信じないけど、自分が自分を信じてる。何回も練習して何回も何回もが頑張るじゃん。いつも言っているように、1回チャンスあれば絶対彼を極められるんです。彼は当然レベルが高くて強い。でも、日本は自分の家(ホーム)だから、自分ここ日本で、RIZINフェザー級を日本に(外敵が)来たら、守る。ということをしたいので」
──アーチュレッタ選手にキックして、キャッチされて倒されて、それが足関節に繋がりました。キックをして掴まれてもいいという気持ちもありましたか。
「そう、練習を前からしていて、バックステージでもそれをサトシ先生から言われた。『ミドルキック蹴ると絶対彼がキャッチする』。でもそれは分かってるし、それを心配しない。前、自分の違うコーチが言っていたのは『クレベル、キックだったらいいと思う。(キャッチしたら)相手は掴まっているから。どうせテイクダウンをやりたいのだから、あなたが一番上手なのは寝技だから』と。自分のキックを掴んで彼がテイクダウンを考えているなら私はありがたいです。なので、私が一番強いのも寝技だから、寝技ができるのでありがたいです」
──寝技になるときに足関節でポジションを失う可能性があったと思いますが、あの入り方はATTでマテウス・ガムロらとやりこんできたのか、最初から作戦だったのですか。
「本当にそのポジションはいっぱい練習した。私は分かっていたから、彼はレスリングのスクランブルしていつもバックから逃げる。それをATTでいっぱい練習した。いつもガムロともやっていて、同じことを、彼が何回もテイクダウンして、スクランブルしてそこから私が入るというのをやった。日本に戻っても同じ練習をいっぱいしてサトシ先生が『あ、これがいいポジション』と言えば、それをちょっとずつ細かい点を直して、もうちょっとプレッシャーをかけたりだとか、自分のスパーリングでサトシと『ここのポジションがいい』『ここのスクランブルで足が入る』とかをやって良かった。絶対極まると信じていたから良かったです。ちょうど良かったです。(やってきたことが)できた!」
──その最後の足関節の場面でアーチュレッタ選手が後方へのスクランブルか、あるいは前に逃げるか、2つの選択がありレスラーだからスクランブルを選んだと話していました。もし仮に前側に足を上げずにそのまま立ち上がっていたら、クレベル選手はどう対処方法を考えていましたか。
「そのポジションのスクランブルはいっぱい練習しました。たとえば彼が自分の足に行って、(そこに)私が行くというのがしたかった。自分の足に行って、なんでも足を極められる。もっとチャンスがある。自分のプレッシャーで絶対彼は立ったりスキップしたりというのは何もできない。なんでも(どの状態も)いっぱい練習しました。上からの立ちも下からの立ちも何回も何回もその練習をしました。サトシがいつも言うのは『クレベルだけじゃなくて、ファイターは同じ練習を何回もやる。(反復)練習をしないと試合ではできない』。そうやってポジションを何回も練習してスパーリングやって“運が良かった”わけじゃなくて、本当に練習してきました」
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千裕は本当に漢。でも、彼は私から逃げている
──鈴木千裕選手には試合後にどんな言葉を言っていた?
「千裕選手は私からちょっと逃げているな。さっきパッキャオとの試合が決まったのも、彼は自分からは逃げている(と感じる)。彼は漢だから、誰とでも戦う(はず)。でも彼は私と戦うことはあんまりやりたくなくて、スキップしてる。自分は榊原さんに『チャンスをお願いします』と言って、『次がタイトルマッチ、どうですか』と言った。それが(平本)連とか朝倉(未来)とか(の『超RIZIN.3』での勝者にもそのチャンスがあると言われているが)関係ない。みんな分かっているでしょう。この階級にランキング(があるとしたらそこ)では、私がナンバーワン。千裕選手はずっと逃げているよ、ということです」
──対戦要求をしたことを踏まえて、他の試合を挟まずに、もう次はチャンピオンの千裕選手と戦いたいですか?
「自分は本当に千裕選手と(試合が)したい。今年あとまだ2試合したい、9月か10月か分からないけど、あと大晦日。本当は次(その9月か10月)の試合で千裕選手としたいです。本当は。なので私すごい頑張って、自分がすぐタイトルマッチじゃなくて、榊原さんが(他の試合を)『もう1回やる』(と言ったら)、もう1回勝つ。もう1回やるとなっても、私はまた勝つ。次は誰ですか? 私は何回も何回も(勝ってきた)。あと2試合(以内)でタイトルマッチしたいし、次で鈴木選手と戦いたいです」
──千裕vs.パッキャオ戦についてはどう思いますか?
「それは本当に素晴らしいな。なんで(かと言うと)、世界だったらパッキャオ選手は有名で、世界でみんな知っているボクシングが上手だから。日本で試合したら世界がそれを観るので。だから千裕選手とパッキャオ選手の試合が決まるのは素晴らしいな。日本で盛り上がるから。でもみんな分かってる。レベル全然違うじゃん。それは“冗談の試合”かな。本物の試合じゃない。エンターテインメントとしては、それは大事ですね」
──自分がタイトルマッチをしたいと。
「したいです。だからたとえばパッキャオには彼をボコボコにしないでください。ボディだけでいい、パッキャオには優しくしてほしい。彼がパッキャオにボコボコにされちゃったらすぐにタイトルマッチができない。パッキャオには“優しくしてください。ちょっと、ボディだけでお願いします”と。頭の怪我しちゃうと多分、千裕選手(の回復を)半年くらい待ってることになる。でも私はすぐ試合がしたい。自分としては10月くらいにタイトルマッチしたいです」
──鈴木選手と対戦するパッキャオ選手に対して“手加減してくれ”というニュアンスのことを言っていました。ボクシングルールで普通にやったら当然パッキャオ選手が勝つと予想しているということですか。
「それはボクシングだけだったら絶対パッキャオ勝つじゃん、イージーマネーだし、遊びみたいな。ファイターの人たちはみんなそれは分かる。ファンの人たちのことはごめんなさい、どうかは分からないけれど。エンターテインメントとしては分かっている。(でも)本当の戦いじゃない。イージーマネー、イージーファイト」
──そういう、いわばエキシビション的な色が強い試合は、クレベル選手はあまり好きじゃないのですか?
「自分としてもエンターテインメントは本当に大事。自分も嫌いじゃなくて、それはOKだし好き。でも一番の問題は、自分はタイトルマッチがやりたくて(タイトルを持っている)千裕選手と戦いたい。彼は分かっている。彼が(次の)試合を決めるのにお金のことを考えてる。エンターテインメントで、お金を出してやっていることに対して怒るのではなくて、タイトルマッチをしたいけど、でもいつか分からない(ことが問題)。私が怒る(のは)、タイトルマッチがやりたい(から)。千裕がそれ(タイトルマッチ)をしたのは4月。きっと次は大晦日(までやらない)。すぐに(タイトル防衛戦を)戦うことはしないです。
なので、もしパッキャオにボコボコにされて、彼が頭フラフラになって、長い休みに入って、3カ月以上休んで、あとは大晦日、彼は『ピットブルと再戦したい』だとか、誰が戦いたいだとか、エスケープ(逃げて)いる。それは好きじゃない。でも、千裕選手は本当に漢じゃん。アゼルバイジャン行ったり、ピットブルともやって、強い。本当に漢。でも、彼は私から逃げている。私は前に試合をしていて簡単に彼は極まるから。彼、MMAまだ上手じゃない。彼のMMAはまあまあ。カウンターパンチもキックも当てられる。でもMMAのスペシャリストじゃない、彼」
──同じフェザー級のシェイドゥラエフ選手やダウトベック選手の試合は観ましたか。
「2人とも見ました。当たり前ですが、自分は日本を守りたい。でも(同時に)自分は前(上)を見ていたい。後ろ(下位)を見ても仕方ない。2人はRIZINでまだ1人は2試合目で、もう1人は1試合目です。後ろを見ることより、自分は自分に近い(ランクの選手のことを)考えている。外国人では、今自分に近い選手はいない。外国の有名選手が日本に来るということなら考えますが、そういう話とはまた違って、2人は上手だし強いけど、私はまだ2人を心配(意識)していない、ちょっと私にはまだ遠いです」
──朝倉海選手がUFCに行くと発表しました。クレベル選手はRIZINを守りたい思いがあるのか、自分もUFCに行ってみたいという思いもありますか。
「まあ、それ難しい。昔は自分にもUFCに呼ばれるチャンスが色々あった。でもRIZINでやりたくて、(海外の団体から)オファーがあったけどやりたくないと断った。日本を守ることしたかった」
──UFCからオファーがあったのですか。
「前あった、2回あった。自分は『いいです。日本で(試合が)したいです』って(断った)。自分としては、日本の選手だって言ってもあまり信じてもらえないかもしれないけれど、信じてください。自分は日本のファイターとしてやりたいんです。日本のファイターとして、自分はまだ日本で戦うことがしたい。KSWにも『もう1回戻って』とオファーされたりするけどやりたくない。自分は日本を守る試合がしたい」
──朝倉海選手を応援はしますか?
「もちろん。応援します。自分の階級じゃないというのもあるけど、彼が大好きじゃん。彼はいい男だし、いいファイターだからいつも彼の応援をしています。彼はUFCに行ってもトップ選手になれますよ、彼には(その)ポテンシャルがあるじゃん」
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アーチュレッタ「誤った方法を選んでしまった」
──試合後の率直な感想をお聞かせください。
「非常に残念で悔しい気持ちでいっぱいです。いい試合をしようと思ったのですが、おかしな形で負けてしまったので残念です」
──対戦相手と実際に戦ってみて、戦う前の印象と違ったところがあったら教えてください。
「クレベル選手のキックを掴んでテイクダウンするということは意識して実践し、そこで起きたことというのは、彼は背中を着いて、自分が彼のお腹の上に乗る変わった形であのまま前に転げて逃げるか、スクランブルするかで、自分はスクランブルすることを選択したところで足を掴まれてしまったという感じです」
──試合を終えたばかりですが、今後の目標・展望を教えていただけますか。
「この怪我が深刻でないと願いつつ、それによって7月なり9月なり日本に戻ってきたいです。相手は誰であろうと仕切り直したいです。クレベルが先を行く形になり、王者になることがあれば、それで彼が次に誰と戦うにしろ、自分は自分のチャンピオンを目指す道を進んでいくのみです」
──今の話の流れで言うとRIZINでは今後もフェザー級で試合を続けますか。
「100パーセント、フェザー級で戦うつもりでいます。今日はたまたまああいう形になってしまったというのも変ですけれど、自分としてはあのままもう少し行けば自分が勝てると確信していたので、またチャンスをもらえればと思います」
──BellatorとRIZINの両方でベルトを巻いたアーチュレッタ選手がああいう負け方をすることに日本のファンからは驚きの声があがっています。練習も含めてああいう取られ方をしたことはあったのでしょうか?
「レスリングではよくあるポジションですが、2つのことが言えます。彼が徐々に自分の足を蹴ってバックを取ることを考えていて、自分は彼にバックを取られたくないですから、そのなかで誤った方法を選んでしまった。自分が彼のお腹に座っているような状態で多分前のほうに転がってあの場を出れば良かったけど、そのかわりに(またいで)ロールすることを選んだ結果としてヒザが危なくないように彼の腰をかけなくてはいけなかったところをし損ねてしまった。そこから起きた展開が速く、ヒザを痛めてしまいました」
──フィニッシュは回転して逃げるときに最後かかとを掴まれる前にタップしていました。ヒザが極まっていてタップしたのでしょうか?
「彼がかかとを掴む前に、自分が回転して蹴ろうとしたところでヒザの外側がポキっといったような、捻った感じで痺れてきてヒールフックに入ろうとする直前にヒザを怪我してしまって、そのトランジションでよりキツくなっていました。自分が蹴り出そうと飛び出す直前から起きていたことでした」
──最後の逃げ方はクレベル選手に誘われたのか、単純にご自身がミスをしたのか、どちらですか?
「テイクダウンをしてああいう形になって自分としてはとにかく早く動かないと自分のバックを取られると分かっていたからああいう状況になりました」
──ヒザの怪我が心配ですが、今も歩いていてどのような具合ですか。
「高校のときに似たような感じの怪我をしたことがあるけれど、当時と比べて今は医療も進歩していますし、4、5週間で何とかなるんじゃないかという感覚でいます。日本も含めて先進医療などを調べて、まずはMRI検査などもして治療していきたいです」
──メインのバンタム級戦・堀口vs.ぺティス戦を観ていたら感想を教えてください。
「観ました。堀口選手はぺティス選手をテイクダウンして上手く全体的にコントロールしていたと思うし、ぺティスもスーパーアスリートだから、右(の打撃)を避けながらスピニングバックキックなど驚異的な動きを見せた。2人とも素晴らしい試合を見せてくれたと思います。自分もああやってファンを楽しませる試合をしたかったですが、今回はそれは自分の試合ではできなかったですね。とにかくいい試合をして、彼らに全部持ってかれましたね」
──休憩時間に前回の対戦相手である朝倉海選手がUFCに挑戦すると発表しましたが、それを聞いていかがですか?
「非常に素晴らしいことだと思います。彼のためにも嬉しいことだと思うしサポートできることがあれば提供したい。彼の将来を楽しみにしています。自分はRIZINでやっていくのみですし、彼には頑張って成功してほしいと思います」
──日本にもアーチュレッタ選手のファンがたくさんいますのでメッセージをお願いします。
「皆さんの愛とサポートを受けて本当に感謝しています。それこそがRIZINと契約した理由でもありますし、ここで戦えるうちは日本のMMAというものを代表して、もっとRIZINが大きくなる手助けをしたいと思います。将来的にアメリカ進出することがあればメインを張りたい、これから手伝っていければと思っています。
RIZIN、榊原さん、柏木さん、関わるスタッフの皆さん、記者の皆さん、愛とサポートをくれたすべてのファンに感謝を伝えたいです。また戻ってきていいショウをお見せしたい。これは終わりではなく始まりに過ぎません」