ムエタイ
インタビュー

【BOM】日本vs.タイ対抗戦に挑む日本人3選手、士門「ラジャで2階級制覇狙う」九里虎「とにかく勝ちを重ねていく」JASMINE「世界タイトルを獲る」

2024/06/08 21:06
 2024年6月9日(日)神奈川・横浜大さん橋ホール『Shimizu presents BOM46』(U-NEXT配信)では日本vs.タイ5対5マッチが行われる。  第3試合と第4試合はジュニアで、第7試合から第9試合でBOMの主力選手がタイ人ムエタイ選手を迎え撃つ。第7試合でノンナム・ルックワンドゥン5(タイ)と対戦するJASMINE(ポゴナクラブ)、第8試合でチュープンレック・エックススタームエタイ(タイ)と対戦する佐藤九里虎(FAITH)、そしてメインイベントの第9試合でテープマンゴーン・ファイタームエタイ(タイ)と対戦する士門・エイワスポーツジム(=吉成士門/エイワスポーツジム)のインタビューが主催者を通じて届いた。 士門「面白いムエタイを見せた上で、倒して盛り上げる」 ――前回4月のRWS JAPANではイサンヌア・チョーバンセン選手を相手に完勝でした。 「2月のRWS JAPANで永澤サムエル聖光選手が結構やられていたので、難しい試合になるかなと思ったんですけど、思ったより自分の技が当たりました。やりやすいスタイルの選手だったことも良かったです」 ――永澤選手はジャパンキックでベルトを獲るなど日本でトップクラスの選手だけに同じ相手と対戦したことで比較される部分があったと思うんですけど、そこは意識してました? 「そうですね。日本のベルトを持ってる選手とやってイサンヌア選手は完勝していたので、ここで僕が勝てば日本での格付けも上がるかな、と意識していましたし、他の日本人選手とはレベルが違うところを見せたいと思っていました」 ――試合中に完勝している手応えはあったんですか? 「自分の攻撃が当たっていたので、そこで自分が勝っているという実感はありました」 ――次の試合が近づいていますが調整はいかがでしょうか? 「いつも通り順調です。練習では全体的に強化していて、相手が首相撲の選手なので、首相撲も多めにやっています」 ――対戦相手のテープマンゴーンに関してはどういう情報を入手してますか。 「試合映像を見たところ、178㎝の自分よりも2㎝背が高くて首相撲の選手という印象です。どこかのランキングとか入っている選手かはあんまり分からないですね」 ――ちなみに士門選手はまだ身長は伸びてますか? 「たぶんもう止まってるんじゃないですかね(苦笑)」 ――なぜそんなに大きくなったんですか。 「よく寝るからじゃないかと。普通に夜寝て、朝練して昼練して夜練するスケジュールの中、その間にもよく寝てたら大きくなっていました。ちなみに母が170㎝あるんで、もしかしたらその遺伝のおかげかもしれないです」 ――自分よりも大きい選手とやるのは何回目ぐらいですか。 「あまり大きい選手と戦ったことはなく、2回か3回ぐらいなのでやりにくいですね」 ――大きい相手になると、対策とかスパーリングパートナーはどういう感じになりますか。 「相手が大きいと、いつもの自分のスタイルが通用しづらい部分があると思うので、相手のスタイルをよく考えて対策をしています。首相撲で負けちゃいけないと思ってるし、負けない自信はあります」 ――ここで勝って今後どういった展開を考えていますか。 「いま僕はラジャダムナンスタジアムのスーパーフェザー級4位でここで負けたら評価は落ちちゃうので、勝って維持して近いうちにラジャのタイトルを狙っていきたいです。今チャンピオンはコンパタックという選手で、蹴りがうまくて距離感がうまくて相手の攻撃をもらわなかったりとめちゃめちゃ技術が高い選手です。今はまだ自分が勝てる可能性はなく、判定とかになったら絶対に向こうが有利なので、もっと技を磨いて倒せるように頑張っていくだけです」 ――いつぐらいに挑戦できたらと、漠然と考えていることはありますか。 「自分はこの階級ではそんなに長くやれずライト級に階級を上げることも考えているので、早いうちに挑戦したいですね」 ――二階級制覇も狙いますか? 「そうですね。スーパーフェザーで取って、ライト級でもベルトを狙っていきたいです。ライト級のチャンピオンはジョーンという選手で首相撲がゴリゴリの選手です。スーパーフェザー級のチャンピオンの方が強い印象があるので、スーパーフェザー級を獲ればライト級も問題なく取れると思います。ライト級になると重森陽太選手やレンタ選手も狙っているタイトルになりますね。あと、タイ人も昔より階級が重い選手が増えてきて、さらに外国人選手が軽量級よりも多くなってくるので、結構激戦区かなと思います」 ――今回は初のメインイベントになります。 「自分が日本の大会でメインをはるのは初めてのことで、メインイベンターという使命感があるので、面白いムエタイを見せた上で、メインらしく倒して盛り上げて、出場が決まっている7月のRWS JAPANにしっかり繋げたいと思います。応援よろしくお願いします」 [nextpage] 佐藤「ガンガン攻めて早いラウンドで勝負を決めたい」 ――佐藤選手の本名は佐藤駿なんですよね。リングネームの“佐藤九里虎”はどういった由来でつけられたんですか? 「以前にいたジム、フェニックスジムでは漫画のキャラクターからリングネームをとっている選手がいたりして、僕のリングネームはお菓子のグリコから取ったと思われていますが、漫画『WORST』の主人公の花木九里虎という九州出身の強い男がいて、自分もそこから取り自分で付けました」 ――ちなみにその漫画とコラボとかいい話があったりは? 「全然ないですね(苦笑)」 ――前回2月のRWS JAPANではリュウノスケ・ウォーワンチャイ選手に判定勝ちでした。 「RWS JAPANのリングではアグレッシブに前に出た方がジャッジには好印象を与えられるので、それだけは意識して絶対に下がらないようにしてプラン通りには試合ができました。リュウノスケ選手は若くて勢いのある選手で自分は30代ですが、一日一日ちゃんと成長できるように意識して練習することで20代の時よりも強くなっている実感はあります」 ――今回キャリア初のタイ人選手との試合になりますか? 「実はプロデビューした数戦後のことであまり記憶にないのですが、タイのMAX MUAYTHAIで一度試合をしています。タイには練習目的で行ったところ、たまたま『試合に出ないか』と声を掛けられて急遽出ることになりました。でも自分の中ではなかったことにしてるんで、特に戦績には加えてないです(苦笑)。僕は当時、RISEを主戦場にしていてムエタイをやったことがなく、相手は完全に首相撲の選手でその展開でやられました」 ――では、今回首相撲の展開になる可能性もありますが、首相撲に対してトラウマだったりは? 「いや、今は特にトラウマはないですね。今ガンガン首相撲を練習やっているかと言われたらやってないのですが、あまり組まない展開にしたいと思います」 ――所属ジムFAITHの加藤督朗会長は現役時代はタイでよく試合した選手ですけど、影響は受けてないんですね。 「会長からは特に首相撲をやれとは言われないですし(苦笑)。会長は身長もデカくて組んでヒジを打つタイプですが、僕は小柄なのでファイトスタイルが違いますね」 ――今回の相手、チュープンレック・エックススタームエタイ選手にはどういった情報がありますか。 「試合映像をFacebookで少し見ただけで特に印象はなく、若い選手ということしかあまり情報がありません。正直、やるまで分からないんですけど、ガンガン組まれても組まれないような展開に持っていきます」 ――どういった勝ち方をしたいですか。 「今回は5R制なので早い段階で倒して勝てたらいいなと。5Rも試合をやりたくないので、前回以上にガンガン攻めて早いラウンドで勝負を決めたいと思います」 ――今回セミファイナルに抜擢されて主催者の期待も感じますか。 「試合順はいつも特に意識してないですけど、皆さんに面白かったと思われるような試合をしたいですね。7月にはRWS JAPANが開催されるので、今回勝ってそこの舞台に繋げたいですね。そこでは誰とやりたいというには全然考えてないですけど、今一つ一つこつこつと勝つことだけを考えてやっています」 ――ムエタイルールにこだわりはありますか。 「僕はヒジあり・なしとか全然ルールにこだわってはなく、むしろ試合ではヒジをほぼ打ってないので、ルールが違っても戦い方は変わらないのです」 ――今後、見据えている目標はありますか。 「自分自身は全然年齢とか気にしてはないんですけど、周りから見たらまあまあいってる年齢なので、一戦でも負けたら辞めないといけないという瀬戸際にいて、とにかく勝ちを重ねていくことだけを意識してます。自分は佐賀県出身なので、佐賀出身のファイターとしても知名度を上げていきたいですね」 ――ファンにメッセージをお願いします。 「とにかく会場を盛り上げていい試合して、必ず勝つんで楽しみにしててください」 [nextpage] JASMINE「ボートでは国体に出場して、U-18の日本代表候補に選ばれました」 ――JASMINE選手はハーフなんですね。 「そうです。お父さんが日本人で、お母さんがフィリピン人です。意味は分からないのですが、フィリピンでおばあちゃんから『JASMINE』と呼ばれていたので、リングネームにしています」 ――一般的にハーフというと身体能力が高いと言われてますけど、ご自身でもそう感じますか? 「フィジカルやパワーはあると思います。普通の男性よりも手が大きいので、高校の時の握力は65ありました(笑)。靴のサイズは測ってもらったら24.5なんですけど、甲高と幅広なんで26.5、ナイキだと27を履いてます(笑)」 ――普通に大きいですね。何かスポーツ歴はありますか。 「中学の時に陸上で100Mハードル、砲弾投げ、リレーをやっていました。高校進学するときに何か新しい競技に挑戦してみようと思って高校から始められるスポーツがボートだったんで、中学の先生にお願いしてスポーツ推薦でボート部のある高校に進学しました。ちなみに100Mハードルと砲弾投げで県体に出場し、ボートでは高校1年の時に関東で優勝し、高校3年間は埼玉選抜で国体に出場して、U-18の日本代表候補に選ばれました」 ――それで握力があったんですね。 「そうですね。あと、ボートは足を使う競技なので、脚力だけでなく背筋もありました。ボートにはシングルスカルという1人乗り、ダブルスカルという2人乗り、一人舵手(コックス)付きの4人漕ぎのクォドルプルという種目があり、それを私は全てやっていました。やっぱり体幹がないと沈(ちん)といってボートから落ちてしまうのですが、私は一度も落ちたことはないです。ちなみに全国ローイングマシン大会(全国エルゴメーター大会)で日本一でした」 ――当時の夢はオリンピック出場ですか? J「一応、大学進学の時も推薦で入れるという話もあったんですけど、もう好きなことをやりたくて、オリンピック出場とかも全く考えたことはなかったです(苦笑)」 ――キックを始めたのはどういう理由からですか? 「出産して40kgも太ってしまい、有名な医者から『こんな太った妊婦を見たことない』と言われて、半年後の検診でも『絶対体重は戻らないよ』と言われたことで、火が付いちゃって(苦笑)、「『絶対はありません!』と言って、26歳の時にフィットネスで今とは違うジムでキックを始めて6カ月ぐらいで40kg落としました。そして、トレーナーになってアマチュアの試合に出るようになって、今所属しているポゴナクラブに入会して、アマチュア3戦全勝してプロになりました。そのうちの1試合は1R59秒くらいで右のワンパンで失神KO勝ちしましたね。それも16オンスで」 ――アマチュアの試合で!? どうしてプロになろうと? 「全くなるつもりはなかったんですけど、コロナの時期でアマチュアの試合が全くない時に、プロでのオファーがあり、人生一度きりなんでリングに上がる機会もそんなにないからやっちゃおうというノリで、2020年10月に『Krush-EX』でプロデビューし、プロ3戦目でNA☆NA選手に勝ってWMC日本女子バンタム級王者になり、5戦目で七美選手に勝ってIPCC日本女子スーパーバンタム級王者になりました。まさか自分が2度もタイトルマッチを経験して、ベルトを巻くとは思いもしなかったですね」 ――やはり陸上やボートで培ったフィジカルの強さがキックでも活きたわけですね。 「そうですね。他の女子選手よりはフィジカルの強さはあると思います。ボートは足、背筋を使う競技なので首相撲の展開になっても女子選手に回されてこかされることはないですし、強い前蹴りも打てるので早くからスポーツをやってて良かったなと思います。出稽古に行ってもあとは80kg近い女性やMMAの選手とボディブロー対決をやっても一回も倒れたことはないですね」 ――ネット情報によると、スパーリングで男性のアバラ骨を折ったことがあるとか? 「タイミング良く前蹴りやミドルが入って折ってしまったことはあります(苦笑)」 ――まだプロ5戦とキャリアは少ないながらも二本のタイトルを獲っていることで、まだまだ伸びしろはありそうですね。 「こう見えてメンタルが弱いんです(苦笑)。とりあえず綺麗な顔のままリングを下りたいということしか考えてないです」 ――次は初のタイ人選手との対戦になりますね。 「映像を見たら手足が長いという印象を受けました。あと、首相撲の展開が多い選手でしたが、私はそういう展開になっても負けない自信はあります。ムエタイをやっている以上、いつかタイ人と戦ってみたいという気持ちはあったので、勝つための準備はしています」 ――世界女子ムエタイの機関として活動するWMA(ウーマン・ムエタイ・アソシエーション)の日本支局のメンバーとしてBOM・中川夏生代表、RWS JAPAN・佐々木洋平代表が女子ムエタイの日本普及のために活動することが認められたことで、今回の試合はWMAスーパーバンタム級戦として行われることが決定しています。 「そうですね。かなりの実力者の今回の相手に勝ったら、10月のBOMで世界タイトルに挑戦させていただくお話をいただいてるので、ここは絶対に落とせません。以前よりも上がりましたが、ムエタイはまだ世間的に認知度は低いので私が世界タイトルを獲ることで広めていきたいですし、ムエタイは若い子だけがやっているのではなく、母親でもここまでやれるんだという誰かの刺激になれたらいいなと思っていますね」 ――お子さんにも世界のベルトを巻く姿を見せたいですか。 「息子は今小学3年生なんですけど、ムエタイを始めた理由が、息子を産んでからカッコいいママになりたいという気持ちもありました。最初にWMCのベルトを獲った時に息子から『カッコ良くて最高のママだよ』と言ってくれた時は、やっていて良かったなと。あと、最初に息子にベルトを巻かせてあげたら『仮面ライダーのベルトよりもカッコいい』と言ってました(笑)。息子には『いつも帰りが遅くなっちゃってごめんね』と言ったんですけど、『頑張ってるのは僕が一番分かっているから全然寂しくないし、これからも頑張ってね」と言ってくれて、さらに練習にも身が入るようになりました」 ――いいお話をありがとうございます。 「もう年齢も年齢で引退ももうちょっとなので、限られた時間の中でたくさんタイトルマッチに挑戦して1つでも多くベルトを巻けたらいいなと思います」
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