約1年2カ月ぶりとなるリングに上がる五味
2024年6月23日(日)東京・国立代々木競技場第二体育館で開催されるKNOCK OUTのビッグマッチ『KNOCK OUT CARNIVAL 2024 SUPER BOUT“BLAZE”』(U-NEXT配信)にて、「KNOCK OUT特別ルール -73.0kg契約3分3R延長1R」で鈴木千裕(クロスポイント吉祥寺)と対戦する五味隆典(東林間ラスカルジム)。
五味は1998年11月に修斗でプロデビュー。2001年12月、修斗世界ライト級王者に。2004年からはPRIDE武士道に出場し、大旋風を巻き起こした。2005年大晦日にPRIDEライト級トーナメントで優勝、翌年3月に王者に認定。2010年3月よりUFCに参戦。2017年大晦日からはRIZINに参戦し、矢地祐介に敗れるもメルヴィン・ギラードにKO勝ち。2020年大晦日に皇治、2021年大晦日に那須川天心とボクシングルールで対戦。2023年4月、熊本の『KNUCKLE'S』に出場してボクシングルールで山岡恭平から勝利を収めた。
「師匠をぶっ倒すことで恩返しする」とやる気満々の鈴木を前に、自ら勝負を持ちかけたという五味は、一体何を思っているのか?
40代なんていうのは世の中で言えば働き盛りだから
──だんだんと試合が近づいてきましたが、今はどんな心境ですか?
「先日、武心塾さんに行って、今DEEPに出場していて、RIZINにも出場している木下カラテと何年かぶりにちょっとスパーリングしたんですよ。今、あの子はもうMMA選手で、DEEPのタイトルに絡んでいけるとこまで来てるみたいで。いきなりボクシングのスパーリングをしたんですけど、強くなってましたね。プロのMMAファイターの迫力をちょっと感じたんですよ。ボクシングだったら遊んでやろうかなと思ったら、とてもじゃないけど(笑)。それで、ちょっとこれはまずいぞと。やっぱり自分のジムの中でやるトレーニングだけではとてもじゃないけど、危ない目に遭うぞっていうのが分かったので、もう一段階、ジムワークを厳しくやっていくと。そういうのに気づいてですね、本当にベストの自分に戻れるのかどうか、それはもうここからが勝負ですよね。それを自問自答する時ですよ」
──ここからもう1回、ねじを巻き直すと。
「そうですね。今までは時間を使って、トレーニングをタップリしてたんですけど、これからはちょっと緊張感のある、試合に向けたトレーニングに切り替える感じですね」
──鈴木千裕選手から、この対戦については五味さんの方から「俺を超えてみろ」ということで持ちかけられたというお話を伺ったんですが。
「それはね、年末、いつも俺は何らかの形でRIZINに出てたわけなんだけど、去年の11月、千裕がヴガール・ケラモフに勝ったときにね、千裕が、今流行りの格闘技、ちょっとアウトローがやるヤツ、ああいうものに反応したんですよ。そこと比べてどうすんだって、俺は言ったんですよ。余計なこと言わなくていいだろうと。彼らはね、触れられることによってスーパー元気になって(笑)、まるで自分の手柄のように話題を持ってっちゃうんだよと。だから触れなくていいだろうと。そこと比べてる人もいないし、相乗効果っていうのもあるんでしょうけど、余計なこと言うなと」
──ドッシリ構えてろと。
「うん。そんなんだったら、俺とボクシングやってみろって言ったんですよ。もう時間もないし、コンディションもベストじゃないからエキシビションでいいじゃねえかと。そっちに話題を持っていかれちゃうぐらいだったらと。そういうことですよ。その話が何だか急にトーンダウンしちゃって、大晦日はなくなって。そこでね、山口元気さんにこういった機会を作っていただいて、半年経って実現するっていう感じですよね」
──では五味選手は……
「アイツはね、何でもパクるんだよ! 髪の毛の色だとかね、入場曲だとか、全部パクるんですよ。発想も全部パクっちゃって、まるで自分のもののように言うけどさ、大体は俺の発案なんですよ!」
──そうですか(笑)。ただ「エキシでもいいからやろうよ」という声かけが、かなり千裕選手を燃えさせたみたいじゃないですか。ビッグマッチのメインで、3分3Rやるからには、最高のものを見せなきゃという思いが……
「うーん…そうなんですけど、あんまりね、もう気負ってない。もちろん練習はやるけど、あの井上尚弥選手でさえ、気負えばダウンするわけじゃないですか。ということでね。無駄な力は入れないし、作戦も考えないし、これから、木下選手とちょっとやっていくことになると思うけど、プロの1階級下の子たちとやって、俺もなるべく通常体重に近づける努力をして、やってみると。果たして、それができるかどうか。43歳から45歳までの間って、まだ俺も元気というか、やれたんですよ。だけどその間は声が掛からなかったんですよ。すげえもったいないなと思ったんすよね。だけど、まあそんなことも言ってらんないし、やるしかないよね、うん」
──改めて伺いますが、何を見せたいですか。
「ロックショー。今のチャンピオンと元チャンピオンの、拳のロックンロールショー。勝敗とかそんなものを超越したもの。この2人にしかできない。それは何でかっていうと、千裕も今現在チャンピオンで、誰にも文句言われる筋合いもないし、俺も元チャンピオンで、好きなようにここまで戦ってきてね。『もう見たくない』って言われれば、プロの舞台には呼ばれないだろうし、オファーがある以上、俺は挑戦を続けるしね。もちろん、ケガとか事故とか、そういう受け入れなきゃいけないものは受け入れるんだけど、うーん……こればっかりはね、マイク・タイソンだってCOMPLEXだって、『あぶない刑事』だって、みんな復活するからね(笑)。
「それに40代なんていうのは、世の中で言えば働き盛りだから、やるしかないよね。俺だって今後の人生、一生働かないでやっているだけのお金が残ってんだったらやらないよ、俺だって。でもそういうわけじゃないしね。やるしかないよね」
──では最後に、当日、お客さんに一番注目してほしいポイントはどこですか?
「何だろう? そうね、やっぱり挑戦する姿ですね。今現在、飛ぶ鳥を落とす勢いのヤツに、今の俺が挑むというかね。40代とか、人生の先が見えてきたような人が奮い立つようなことを俺が見せなきゃダメですよね。『よし、もう1回仕事頑張ってみよう』とか、そういう気持ちになるようにやろうと思ってますね」