MMA
インタビュー

【RIZIN】アーチュレッタ「クレベル相手に寝技にビビってないことを見せる」「ラドウィックがセコンド」「複数階級を制覇して夕日に向かって去る」

2024/05/23 22:05
 2024年6月9日(日)、代々木第一体育館にて開催される『RIZIN.47』で、元RIIZNフェザー級王者のクレベル・コイケ(ボンサイ柔術)と対戦するフアン・アーチュレッタ(米国)が5月22日、リモートによるインタビューに臨んだ。  モロッコの王様に招聘されて同地でファイトキャンプを行っているというアーチュレッタは、名将フィラスと現UFCのアイマン・ザハビ(UFC4連勝中)やナスラット・ハクパラスト(UFC3連勝中)とトレーニングを行っていることを明かし、MMAトレーニングのなかで、クレベルの柔術対策も万全とした。  新たなチームとして、セコンドに元K-1・UFCで活躍したドゥエイン・ラドウィックがつくことを明かしたアーチュレッタは、RIZINでは初のフェザー級でのクレベルとの対戦に向け、「金原がやったような戦い方が一番。グラウンドにも付き合って、ビビらず逃げずに自分の柔術は自信を持って対応できるぞ、という部分を見せつけて、そのうえで圧倒的に勝つ。元王者でタフなクレベルをあえてフィニッシュすることで自分の価値も発言権も上げて、王者の鈴木千裕に挑戦したい」と語った。 これまでは「体重を落とすこと」がメインの練習だった ──アーチュレッタ選手、再びフェザー級に上げた理由は? 「自分の中ではバンタム級ではある程度やり切ったと思う。RIZINでもベラトールでも王者になった。これ以上、自分の体に負荷をかけて追い込む必要はないかなと思ったんだ。これから新しいチャレンジ、二階級王者を目指してチャレンジしていきたい」 ──バンタム級を作るのは大変だった? 「バンタムでやる時はファイトキャンプのいかなる練習も、すべて“まず体重を落とすこと”がメインの練習だったので楽しい練習ではなった。自分をより高めたり、新しい技術を学ぶ練習ではなかったんだ」 ──それが、体重作りのための練習ではなくなり、技術向上の時間を作れたと。現在、何kgでしょうか。どこまで体重を上げて、今回のフェザー級級に落とす形になりますか。 「いま161ポンドで73kgになる。1回の練習が終わった後に、だいたい3.5kgから4kgぐらい落ちるので、フェザー級の体重はすぐに作れる体重だ。日本にはリミットのプラス4gで来日したいと思っているよ」 ──実際の今の練習の中で、その体重がバンタム時代より力が出せていると感じていますか。 「そうだね。今までよりもずっと強いし、身体に力を感じるし、とってもハッピーだよ。今までよりも全然ハッピー。たくさんご飯食べられるからね」 居心地の悪いところに身を投じることによって、ファイターは成長する ──モロッコに滞在されているようですが、いつから? 「(萩原)京平の試合(3月23日・武田光司戦)が終わってから、ファイトキャンプをモロッコの王様に呼ばれてモロッコでやっている。そのグループの中で、素晴らしいMMAファイターたちと一緒に準備できているし、本当に今回のファイトキャンプを“体重を落とすため”のファイントキャンプじゃなくて、“自分の技とか自分を高めるため”のファイトキャンプに使えているので、非常に良いファイトキャンプになっているよ。日本ではいつものKrazy Beeでファイトキャンプを行うことになると思う」 ──モロッコにはどんな練習パートナーがいるのでしょうか。 「フィラスとアイマン・ザハビ(UFC4連勝中)やナスラット・ハクパラスト(UFC3連勝中)、ONE Championshipの選手(イリアス・エナッシ)がいて、ナスラットから共に練習をしようと誘われていたんだ。モロッコのモハメド王が彼らのチームの強化のためにも、我々を呼んでいる。最初に誘われたときには、自分がバンタム級で少し小さかったので参加しなかったんだけど、今回の階級変更で理に適うので参加を決めたよ」 ──チームを変えたと聞いています。あなたの独特の打撃のミットを、いまはフィラス・ザハビコーチが受けたりもするのでしょうか。 「GSPのメンターであり、GSPを指導したレジェンドのフィラスのようなコーチと練習する機会はなかなかないので、自分にとって学びがたくさんあり、素直に聞くようにしている。昨日も彼とスパーリングをして、とても楽しく、色々なアイディアをもらって、対戦相手の対策や、MMAの哲学も学んだよ。  やっぱりファイターっていうのは挑戦が大事で、慣れた環境のなかだけでなく、少し居心地の悪い環境、新しいところや未知の部分に触れて、居心地の悪いところに自分の身を投じることによって、ファイターは成長することになると信じているんだ。というのも、試合中は、当然全てが自分の思い通りに行くわけではないので、本当にその居心地の悪い環境の中で自分のことを高めることによって、そういったときの問題の解決が身についていく。今まさにそれを自分は体現しているよ。  ピットブル戦(2019年9月・Bellator世界フェザー級GP)のときも、試合の準備は完璧だったのに、コミッションの手違いでセコンドがつけなくなってしまって、自分の思い通りにいかなかった。直前にいろいろ対応しなければならない上に、マイケル・チャンドラーを1R KOに下したばかりのピットブルを相手に誰も戦いたがらず、自分が手を挙げた試合だった。あの試合での敗戦が、後のパッチー戦での勝利に、チャンピオンに繋がったと思っているよ」 ──今回のセコンドは? 「ドゥエイン・ラドウィックがつく。ご存じの通り、日本のK-1やUFCで活躍したコーチさ。それにアーノルド・ヘメネス。確認が取れれば(萩原)京平にもセコンドについてもらいたいと思っている」 ──T.J.ディラショーとも練習していましたが、ラドウィックコーチの指導も受けているのですね。 「5年前に知り合って練習をするようになったんだけど、去年は彼が自分の家族と時間過ごしたいということで、コーチ業を1年間休んでいたんだ。今年から復帰していて、自分の方から声をかけてみたら、ぜひやらせてくれということでついてもらうことになった。自分がモロッコで練習している動画とかも全部、逐一送って、今どんな練習をしているか? どんな環境でいるのかも、ラドウィックは全部把握しているよ」 [nextpage] クレベル戦は、パッチー・ミックス戦前のファイトキャンプに似ている ──クレベルのようにあそこまで柔術に特化した選手はなかなかいないと思います。今回、柔術家対策をモロッコでできているのでしょうか。 「自分のキャリアの中では、全ての試合において“MMA”というものを高めるために、柔術も導入して練習してきたので、特に今回で言うと、パッチー・ミックスと試合(※2020年9月にアーチュレッタが判定勝ち)をした時のファイトキャンプに似てるのかなと思う。ミックスはあの当時、柔術しかなくて、その彼の強みを一個一個ずつ潰して、いかなる場合のシチュエーションの練習も反復でやっていた。そして、相手の柔術を封じ込めることができれば打撃が生きてくるから、それに向けた打撃の強化というのもミックス戦ではやっていたので、今回はそのミックス戦のキャンプに似てるかなと思う」 ──柔術黒帯の選手とも練習を? 「当然今のファイトキャンプで一緒に練習している仲間の中にも柔術の黒帯がいるけど、今回の試合に向けて、特別に柔術の黒帯とだけ練習をしているというわけではなく、あくまでもMMAの能力を高める練習をしているよ」 ──クレベルの寝技やグラウンドの展開になった際の対応については? 「最高のゲームプランは、金原がやったような戦い方が一番だ。グラウンドにも付き合って、逃げずに自分の柔術は自信を持って対応できるぞ、という部分を見せつけて、そのうえで圧倒的に勝つというのが完璧なゲームプラン。自分もそれをやりたい。ただ、今回はフィニッシュしないといけないと思っている。自分は何としてでも発言力を得なければいけないから。クレベルはタフだし、まず極められない。その中で元王者、タフな相手をあえてフィニッシュすることで自分の価値が上がると思っているし、発言権が上がると思っている。今回は自分がRIZINフェザー級で通用することを証明するためにしっかりとした勝ち方をしないといけないので、これがクレベルだろうが誰だろうが、フェザー級に転向しての一戦目。激しくて一番調子のいいフアン・アーチュレッタを見せたいと思っている」 ──クレベル選手の寝技以外で警戒するところは? 「あまり自信過剰にとらえられたくはないけど、寝技以外の脅威はあまり感じない。動きもスローだし、打撃もゆっくりめな感じ。蹴りはどちらかというと寝技に繋げるためのもののように感じる。ちょっと打撃に自信がないのかなと感じるね。打撃をもらうとガチャガチャな打撃にもなってくる。自分としてはそこを利用して、自分の打撃に自信を持って、フットワークなどを駆使して戦えば行けるのではと思っている。彼のグラップリング以外は脅威には感じていない」 ──クレベル攻略については金原選手と斎藤裕選手が、その攻略の糸口を示したと思われます。参考にしていますか。 「そうだね。金原の試合は特に参考になる。やはり寝技にビビってないという姿勢を見せることが非常に大事なのかと思う。今回モロッコに来てから、ザハビ兄弟やナスラット、それに打撃の方もGLORYやONE活躍したキックボクシングの選手とも練習しているんだ。今回のようにグラップリングが強みな2人の選手が戦う場合は、打撃戦になる可能性もある。互いの寝技を相殺して、打撃の勝負になることも十分あるので、そういった展開を狙ってキックボクシングの強化もしている」 ──クレベル選手は、これまでの対戦相手のなかで何位に入る難敵でしょうか? 「クレベルはもうチャンピオンも経験してベルトと巻いている選手なので、当然リストのトップの方には入れなければいけない。トップ5には間違いなく入ってくると思う。というのも、やっぱりチャンピオンっていうのは経験があって“勝ち方を知っている”というのは間違いない。だからこそチャンピオンになれる。そして彼は40戦以上やっているし、経験もあるので、理論的には、彼は本当にトップの選手であろうと思っている。実際手を合わせてみて肌を合わせてみれば、詳細なランキングはできると思うけど、少なくとも今、書面上・理論上は、彼はトップ5に入る相手なのは間違いないと思う」 [nextpage] 鈴木千裕と今やったら100%勝てる自信がある。いろいろ混ぜて常に考えさせて戦う ──4月の「RIZIN.46」で、フェザー級王者・鈴木千裕が金原正徳をTKOに下し、初防衛に成功した試合をどう見ましたか。 「事前の予想ではもっと膠着した、実力伯仲の試合になるかと思ったけど、(鈴木)千裕が金原のテイクダウンを防いで、うまく距離を取ってパンチを当てた。金原にレスリング力を使わせなかった部分で素晴らしい対応をしたと思う。そんな中、フェザー級が非常に面白い階級になってきているし、RIZINはフェザー級を盛り上げるために、たくさんの仕掛けをしていると思っているので、これからフェザー級で戦うのが楽しみだ。特にタイトル戦、その辺の試合は全部楽しみなんじゃないかと思う」 ──クレベル選手に勝てば、王座挑戦も見えてくると思います。鈴木選手の印象は? 「千裕は本当にいい選手。すごく波に乗っている。評価すべきKOをたくさん生み出している。彼のファイトスタイルは戦闘好き。ハートで戦う。そういう選手と試合をするのは私は大好きさ。波に乗り勢いに乗っている選手に勝つことが自分の価値の向上に繋がると思うので、ぜひやってみたい。どういうふうに戦うかと言えば、やはり自分はMMAのすべての技術を使って戦う。空振りをさせて、千裕を後手に回す。常に考えさせていろいろなことを混ぜて、千裕を考えさせるような技術を駆使したい。自分のレスリングや柔術やボクシングを使って、とにかく相手よりも早く動くのがキー。今やったら100%自分が勝てる自信がある」 ──「今やったら」の意味は? 「今だったら100%勝てる自信はある。数年経ったら100%ではないかもしれない。私も歳を取るし、能力としては右肩下がりになる。千裕はこれから伸びてくるので、数年後にやったら、当然勝率は下がるんじゃないかと思う。でも今ここでRIZINが私のフェザー級復帰戦1発目でタイトル戦をやらせてくれていたら、100%勝つ自信はある」 ──鈴木選手が王座を保持し続けていた場合、あと何戦くらいで戦いたい? 「完璧な世界観で言うと、自分が思うような展開でクレベルを圧倒して発言権を得たら、何ならすぐ。『超RIZIN』(7月28日)で鈴木選手と戦いたいという気持ちはある。RIZINが声をかけてくれたらいつでも試合ができるように準備はしている。そういう意味でもRIZINと独占的な契約を結びたかったというところもある。自分がRIZINのフェザー級でどのように戦っていくのかに対し、非常にモチベーションも上がっているし、楽しみなので、いつでもどこでも戦うという気持ちでいる」 ──あなたが対戦した朝倉海選手の兄である、フェザー級の朝倉未来についての興味は? 「その機会があれば100%受けたい。最終的にはお客さんが見たい、需要のある試合をするのが我々の仕事だと思っている。お客さんが盛り上がるなら受けたい。その試合を受けることでタイトル戦が遠のくことになったとしても、お客さんに求められるような試合を優先してやっていきたい。最終的に我々はエンターテイナー。お金を払ったお客さんが欲しがるものを提供する義務があると思う。タイトル戦が遠回りになっても、朝倉選手が望んでそこに需要があると思うなら、間違いなく優先してやりたい」 ──フェザー級王座を獲得後、将来的なプランは? 「100%、ほかの階級にも挑戦したいと思っている。現実的にはKOTCの時のようにライト級までいけるのかなと。特に年齢が上がれば、体重を落とさなくても済むので、71kgのライト級は現実的なのかなと思う。現王者のサトシとも自分と相性の合う相手だと思う。過去にライト級でも戦っているので非現実的なことではないと思っているし、ライト級もワンチャンあるのではないかと思っているけど、まずは足元をすくわれないようにフェザー級を制してから、RIZINと自分をライト級でプロモートしてくれる意思があるか話したいと思う」 ──コンキスタドール(征服者)のあなたにとって、この複数階級挑戦の意味は? 「自分の血の中にそういう挑戦心があるのかもしれない。とにかく自分のMMAキャリアは、複数階級にチャレンジしてやってきたので、同じようなチャレンジで自分のキャリアを終えるのも自分らしくていいと思っている。この素晴らしい大きな団体で、複数階級を制覇して、そのまま夕日に向かって歩いて去る──これは素晴らしい。自分のキャリアとしては本当に最高の終わり方なんじゃないかなと思うし、そういう機会をもらえていることに感謝したい」 ──ところで『RIZIN.47』では現RIZINフライ級王者の堀口恭司vs.元Bellatorバンタム級王者のセルジオ・ペティスの2年半ぶりの再戦も行われます。ペティスとも対戦したあなたの予想は? 「非常にいいマッチアップだと思う。堀口は自分と同じで負けた相手にリマッチの機会がなかなか与えられなかったと思う。恭司は絶対に雪辱を晴らすだろう。セルジオとは私も戦ったけど、すごく策略家でディフェンシブなファイター。恭司はディフェンシブでもありオフェンシブでもあるので、ホームでもあるし、恭司が雪辱を晴らすんじゃないかと思う」 [nextpage] 今はもうRIZIN独占の契約選手。世界進出に貢献したい ──現在の契約状況は? 「今はもうRIZIN独占の契約選手なので、もし対抗戦があれば100%誇りを持って、RIZIN代表として戦いたいと思っている」 ──今回の試合からRIZINを主戦場に戦うとのことですが、日本で戦う意義について教えてください。 「日本で戦うことは自分にとって非常に光栄なこと。日本の方はあまり気づいてないかもしれないけど、世界中のファイターにとって、格闘技の文化において、日本は素晴らしく大きなインパクトを持っている。そのことに日本人の多くの人は気付いてない。世界中のファイターは日本で戦うことを夢見ているし、オファーが来ることを首を長くして待っている。日本には歴史があって、過去最高のファイターたちが戦った土地でもあり、そういう最高の戦いが行われた舞台で戦える。そしてその中で一度、王者になり、また王者を目指せる機会を与えられたことは、自分にとって光栄以外の何物でもない」 ──RIZINの世界戦略については? 「RIZINの次のステップはインターナショナル化することだと思う。去年、アゼルバイジャンで第1回目の国際大会をやって、お客さんもたくさん入りすごく成功したように見えた。千裕が相手の国のチャンピオン(トフィック・ムサエフ)をKOしてすごく話題となった。そういうことをどんどん続けていくことが一つだと思う。自分もRIZINの国際化の手助けをしたいと思っている。とにかく自分はアメリカでRIZINをもっと広めたい。もしアメリカで大会をやるなら、自分はその大使になりたい。タイトルチャレンジなのか、自分の防衛戦なのかは分からないけど、自分がタイトルに絡んでRIZINというものをアメリカに広めたいという気持ちは大きい。  特に自分がRIZINの大使をやりたいという理由としては、やはりRIZINで戦うという意味の大きさは自分が一番よく知っていると思うから。というのも、UFC以外でこれだけ大きな大会をやり、これだけやりがいのある試合を組んでくれるところはほかにないと思う。なので、自分はUFCかRIZINか選ばなければいけなかった時に、RIZINを選びたいと思ったし、実際にRIZINを選んだ。やはりUFCの世界観や競技だったり、プロモーションのみという部分よりかは、しっかりと歴史があり、格闘技、MMAに対しての戦う意味とか、そういう部分をしっかり理解してくれているRIZINを自分は選んだし、世界中のファイターでもそういった部分を選ぶ選手は他にもたくさんいると思う。真のマーシャルアーティストはみんな日本で戦いたい、RIZINを選びたいという気持ちは絶対あると思うので、そういった意味で世界に行くチャンスは全然あると思うし、そこを手伝いたい」 ──今回もご家族が帯同する? 「娘はバレーボールキャンプ、上の息子はレスリングキャンプで来れないけど、一番下の息子が来るよ」
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