2024年5月4日(土)タイ・ルンピニースタジアムにて『ONE Fight Night 22:Sundell vs. Diachkova』(U-NEXT配信中)が開催された。日本から秋元皓貴(vs.ウェイ・ルイ)、澤田千優、市川奈々美が参戦した。
『ONE Fight Night 22:Sundell vs. Diachkova』速報
▼第11試合 女子キャッチウェイト(57.37kg契約)ムエタイ 3分5R〇スミラ・サンデル(スウェーデン/元ONE女子ストロー級ムエタイ世界王者)[2R 2分57秒 KO]※ヒザ蹴り×ナタリア・ディアチコア(ロシア)
サンデルは5歳で空手を始め、12歳からタイでムエタイを学んだ。タイで試合経験を積み、なんと男子選手とも対戦して勝利を収めているという。2021年2月からONEに参戦。豪州のディアンドラ・マーティンを相手に、173cmの長身を活かし、首相撲ヒジ&ヒザを効かせ、最後は鋭い左ボディで3R KO勝ち。
2022年4月のONE女子ストロー級ムエタイ世界タイトルマッチで王者ジャッキー・ブンタンを判定3-0で破り、ONE史上最年少の17歳で戴冠した。2023年5月の『ONE Friday Fights 18』ではキックボクシングルールに初出場して判定勝ち。9月にはアリシア・ヘレン・ロドリゲスを3RにTKOして初防衛にも成功した、178㎝の長身を持つ19歳の若き女王。戦績は35勝5敗。
ディアチコアはアマチュアムエタイと散打で数々のメダルを獲得し、2012年にはプロでWPMF世界-54kg世界王座、2014年にはWMC世界ストロー級王座を獲得。2023年4月にONE初参戦を果たすと、ONE Friday Fightsで4連勝(初回KOが3回)を飾って王座挑戦権を得た。戦績は32勝6敗。
前日計量でサンデルがハイドレーションテストはクリアしたものの、体重オーバー(1370グラム)となり、王座剥奪に。対戦相手のディアチコアが、キャッチウェイト戦を承諾。サンデルはファイトマネーの30パーセントをディアチコアに支払う。
試合は、ディアチコアが勝利した場合のみ王座を獲得する変則のストロー級ムエタイタイトルマッチとなった。サンデルが勝利した場合は、王座は空位のままとなる。
1R、前に出て来たサンデルにディアチコアは右オーバーハンドを叩きつけ、左ストレートにつなげる。サンデルは前足を上げてから踏み込みジャブとワンツー。首相撲になると抑えるのはサンデル。離れるとディアチコアはサウスポーになっての左ボディストレート、前に出てくるサンデルにワンツーを浴びせる。前に出るディアチコアがジャブと右ストレートをボディに集める。
2R、右へ回り込むディアチコアを追っていくサンデル。ワンツー、左ミドルを当てるディアチコアに右ストレートから左フックで前に出るサンデル。首相撲になるとディアチコアがサンデルを投げる。後ろ蹴りでサンデルを転倒させるディアチコア。サンデルは首相撲からのヒザに持ち込むが、ディアチコアが逆に首相撲で崩す。
サンデルは前に出てディアチコアにロープを背負わせると右フックから左ボディ、これで動きが止まったディアチコアに左右ボディ&フックのラッシュ、最後はヒザを連打するとディアチコアが崩れ落ちた。
タイトルははく奪となったが、ONEでの無敗記録はKOで守ったサンデルは「計量を失敗して複雑な気持ちになりました。減量は頑張ったけれどパス出来ませんでした。トレーニングキャンプがいつもより短くて苦しかった。次回はちゃんと準備したいと思います。1Rに視界が二重になってしまいました。今回は体重を作れなかったんですが、フライ級のベルトを狙いたい」とフライ級に上げて2階級制覇を目指す方向性だと語った。
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▼第10試合 フェザー級 MMA 5分3R〇アクバル・アブドゥラエフ(キルギス)※11勝0敗[2R 2分52秒 TKO]×ハリル・アミール(トルコ)10勝1敗
フェザー級戦。キルギスタンのアブドゥラエフは26歳。ONEデビューから2試合連続1R KO勝ち中で、2023年3月のONEデビュー戦はオ・テホクに44秒 KO勝ち、23年7月の2戦目は10連勝中だったアーロン・カニャルテに41秒 KO勝ち。
対するトルコのアミールは29歳。ONEライト級でティモフィ・ナシューヒン、モーリス・アベビ、アフメド・ムジタバ相手に3連勝。フェザー級に落としてアブドゥラエフとの「10戦無敗対決」に臨む。
1R、サウスポー構えのアミール。オーソのアブドゥラエフ。長いワンツーを突くアミール。アブドゥラエフは左ジャブ、右ボディストレート。アミールの左の打ち終わりにボディロックテイクダウン。すぐに立つアミールにバッククリンチ。
背後を取られたアミールはアームロック狙い。しかし背後からこつこつヒザを突くアブドゥラエフが崩してボディロックテイクダウン。ここもアミールはコーナー際で立つと、シングルレッグのアブドゥラエフのバックに回り、キープ。最後にアブドゥラエフが向き直りゴング。
2R、左ストレートを突くアミール。オーソから圧力をかけるアブドゥラエフは右ハイは空振り。クリンチするアミールはダブルレッグに移行。右で差して崩すが、体を入れ替えるアブドゥラエフが前に。そこにヒザを突くアミールも、アブドゥラエフはダブルレッグテイクダウン。立つアミールと体を入れ替えながらアブドゥラエフがコーナーに押し込み。離れ際にワンツーからコーナーに出たアミールに左フック! ダウンしたアミールにすぐにパウンドにレフェリーが間に入った。
アブドゥラエフはMMA11戦無敗・ONE3連勝をマーク。ボーナスを獲得し、タン・カイとの王座戦をアピールした。
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▼第9試合 ライト級 ムエタイ 3分3R×シンサムット・クリンミー(タイ)[3R 1分33秒 KO]※ヒザ蹴り〇ドミトリー・メンシコフ(ロシア))
シンサムットはムエタイジムを営む家庭に生まれ、4歳から練習を開始。兄は海外で活躍し来日経験もあるスッドサコーン。ジムにはヨックタイ、ランバーなど有名なムエタイ選手のほかWBCとWBAの世界王者もいたという。7歳で初めての試合を行い、21歳で徴兵されるとボクシングでナショナル王者にも輝き、2019年の国際ミリタリースポーツカウンシルでのトーナメントではオリンピックボクサー2人から勝利を収めた。
兵役を終えてムエタイに復帰すると2022年3月にONE初参戦を果たし、ニキー・ホルツケンをカウンターの右でKOした。2022年10月にはONEムエタイ世界ライト級王座決定戦をレギン・アーセルと争い、判定2-1の僅差で敗れ。2023年3月の再戦でのタイトルマッチではKOで返り討ちにされた。6月にビクトル・テイシェイラを2RでTKOして再起を飾ると11月にはムーシネ・チャフィに判定勝ちで連勝。
メンシコフはアラゾフとの同門。ロシア国内で7戦を経験した後、2018年9月からGLORYに参戦。3戦全勝をマークしたが、2022年のロシアによるウクライナ侵攻に対する抗議としてGLORYがロシア戦士全員との契約を解除したため、その後はムエタイファクトリーやフェアファイトなどロシア国内の大会で試合を行っていた。11連勝で2023年6月にONEに初参戦し、いきなりライト級ムエタイ世界王者レギン・アーセルに挑戦したが46秒でKO負けを喫した。第2戦はルンラーウィーにKO勝ち、第3戦はムーシネ・チャフィにもKO勝ち。戦績は27勝(19KO)3敗。
1R、前に出ようとするメンシコフに右ロー、左ミドルを蹴るシンサムット。ワンツーで入って来るメンシコフだが、シンサムットも負けじと左右フックを見せる。メンシコフは右ローから右アッパー。離れるとシンサムットが右ハイから右ストレートを繰り出す。さらに左ヒジ。メンシコフのパンチを空振りさせていくシンサムットだが、メンシコフの振りはパワフルで危険だ。
2Rはシンサムットが前へ出て右ローを蹴り、ワンツーを繰り出す。ジャブ、ワンツーのシンサムットにメンシコフは右ヒジを合わせようとするが当たらない。シンサムットの右ローに足が流れ、足を上げるメンシコフ。左ボディを打たれたシンサムットは同じ技を返す。ジャブからのワンツー、左ミドル、左縦ヒジを狙うシンサムット。メンシコフのパンチを丁寧にかわし、右ローと右ミドルを蹴る。メンシコフは左足を蹴られないようにサウスポーにスイッチするが、オーソドックスに戻すとすぐに右ローを蹴られた。
3R、シンサムットがジャブ&右ロー。メンシコフは右ストレートを伸ばしていくが、シンサムットを捉えられない。ならばと距離を詰めて左右フックから右アッパーを打つも空振り。しかし、ロープに詰めたシンサムットへ左ボディから左右ボディを連打するとシンサムットが身体を丸め、このチャンスにメンシコフは左右フックとヒジ。最後は首相撲に捕まえてのヒザ蹴りを顔面とボディへ叩き込み、シンサムットはスローモーションのようにゆっくりと倒れ、メンシコフのKO勝ちとなった。
逆転KO勝ちを収めたメンシコフは「相手が疲れているのは分かった。絶対にKOするつもりだった」と、諦めずに勝利を手にしたと語った。
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▼第8試合 キャッチウェイト (78.93kg契約) MMA 5分3R〇モーリス・アベビ(スイス)[判定3-0]×ジャン・リーポン(中国)
アベビが体重超過でライト級戦から174ポンドキャッチウェイト戦に。
ブルース・リーのフーディを着込んだリーポン。ONE3勝1敗。対するアベビは体重超過した側だが、グローブタッチに応じず。
1R、ともにオーソドックス構え。長身のアベビは右ロー。ダブルレッグテイクダウン。ハーフのリーポンはフルガードにするも首を抱えて背中を着く。
腰を抱いてリーポンの立ち際にバックから足を入れるも、中腰で前に落としたリーポン。すぐにアベビはスクランブルからシングルレッグテイクダウン。
リバーサルするリーポンを再び下にするアベビに、下からアベビは三角絞め、オモプラッタ狙いも潰したアベビが上でゴング。
2R、圧力をかけるアベビが左ミドル、左フック。シングルレッグのリーポンにバック狙いのアベビ。その際で上はリーポンもアベビは亀から立ち上がりに。がぶりのリーポンはヒザ。シングルレッグに入るが切るアベビはバックに回り、四の字ロック。
3R、互いに手数が減るなか、飛び込んでの右を突くリーポン。右を差して組んでボディロックテイクダウン! バックから両足を巻いてリアネイキドチョーク狙いも腰をずらしたアベビが正対して上に。
オーバーフックして背中を着くリーポンが背中を見せて立とうとするところにバックに回るアベビ。それを落としてバックに回るリーポンだが、ここも落とされ、アベビがバックに。4の字ロック。
判定は3-0で体重超過のアベビが勝利も、疲労困憊でスポンサーTシャツを1人で着ることができず。
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▼第7試合 バンタム級 キックボクシング 3分3R×秋元皓貴(日本/元ONEバンタム級キックボクシング世界王者)[判定0-3]〇ウェイ・ルイ(中国/初代K-1 WORLD GPライト級王者)
元ONEキックボクシング世界バンタム級王者の秋元は、ジャン・チェンロン、チュー・ジェンリャンら中国の強豪のほかカピタン・ペッティンディーアカデミーに勝利するなど5連勝も、2022年11月のペッタノン・ペットファーガス戦でスプリット判定負け。しかし、試合後ペッタノンに禁止薬物の陽性反応が認められたため、ペッタノンの王座は剥奪となっている。
この試合から1年以上、リングから遠ざかっている秋元には、1月の日本大会で、最初にジョナサン・ハガティーとのタイトルマッチのオファーがあったが、ハガティー負傷により日本大会には間に合わず。「その後ジョン・リネカーとのスペシャルルールやミックスルールでの話もありましたが、キックボクシングでの試合をしたいという思いが強く(秋元)」日本大会出場ならず。今回のルイ戦が決定した。
散打出身のルイは、2017年2月の「K-1 WORLD GP 初代ライト級王座決定トーナメント」でK-1初参戦。1回戦で佐々木大蔵を2R KOに下すと、準決勝でクリスチャン・スペトゥクに判定勝ち。決勝で平本蓮の左ローに苦しみながらも手数を返してスプリット判定勝ち。中国人初のK-1チャンピオンに輝いている。
その後もタイトルマッチでゴンナパー・ウィラサクレックに判定勝ちするなど、怒涛の33連勝を飾るが、2018年3月の卜部功也戦で700gの体重超過。変則王座戦の末に、卜部の左ストレートを浴びて2R KO負け。キャリア初のKO負け、約3年7カ月ぶりの黒星を喫していた。
K-1を離れてからは、Glory of Heroes、武林風にカムバックし、2023年4月の前戦『武林風 536』では東本央貴に判定勝ち、20連勝をマークしている。
1R、サウスポーのルイに秋元は右ミドル、ルイも軽快なフットワークから左ミドルを蹴る。ミドルの蹴り合いが続く中、秋元は右インローも蹴り、ワンツーを繰り出す。両者ともスピーディーなフットワークから蹴りを多く出す。右にポジショニングしての右フックから左ミドルを蹴るルイ。秋元は左右のミドルを腕で受ける。前に出ることが多いのは秋元で左右ミドルを当てていく。
2Rも前に出る秋元が右ストレートで下がったルイに飛びヒザ、さらに左フック、右ローでルイのバランスを崩す。左フックから右ストレート、1Rよりも距離を詰める秋元がヒットを奪う。
モーションの小さい右ストレート、左フックで前に詰める秋元。ルイはバックステップでクリーンヒットを避ける。そこへ秋元が右ローの連打。ルイは秋元の前進を前蹴りで止め、左右フックを返す。
3Rも前に出るのは秋元。右ストレート、右インロー―でヒットを奪い、手数でも秋元が優る。秋元は右の三日月を蹴り、右ボディストレートから左フック。下がるルイに秋元が左ミドルをヒット。ルイは左ボディ、左ローを返す。前蹴りで止めようとするルイだが、秋元の前進は止まらない。右ストレート、右ローと最後まで攻め続けた。
試合が終了すると両者とも手を上げる。判定は3-0でルイが勝利。解説の野杁は「マジか」と声を上げるが、「ゲームを支配していたルイ選手に軍配があがったのかな。簡単に言えば倒せば誰も文句を言わないので倒さないとダメってことですかね」とコメントした。
秋元 - ウェイ ONE判定スコアJudge1 9-1010-99-10
Judge29-1010-99-10
Judge39-109-109-10
※28-29が2者、27-30が1者
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▼第6試合 フライ級 MMA 5分3R〇リース・マクラーレン(オーストラリア)[判定2-1]×フー・ヨン(中国)
フライ級4位のマクラーレンと、5位のフー・ヨン。
1R、ともにオーソからフー・ヨンのワンツーの右を被弾したマクラーレンがダウンするが、シングルレッグでしのぐマクラーレン。さらに右をアゴに受けてグラつくか、マクラーレンはボディロックからテイクダウン。
すぐに立つフー・ヨン。突き放したフー・ヨンにスイッチからダブルレッグも切るフー・ヨン。マクラーレンはさらに左を被弾し、後退。しかしスタンドからバッククリンチのマクラーレンは引き込みバックに!
しかしフー・ヨンは正対して立ち上がり。自ら組みに行く動きも。シングルレッグのマクラーレンに足を抜くフー・ヨン。マクラーレンは右ミドルからワンツーの左を当ててゴング。
2R、ともにオーソドックス構えから。右が伸びるフー・ヨン。被弾しスイッチするマクラーレン。フー・ヨンの左に合わせて組みに行くが離れるフー・ヨン。右ハイはかわす。サウスポー構えから左ストレートを打ち。シングルレッグから脇を潜りバッククリンチのマクラーレン。
後方に引き込むが、ここもすぐにフー・ヨンは正対して立ち上がる。マクラーレンは右を当てて前に。フー・ヨンは徐々に疲弊か。軸がブレる。ここでシングルレッグテイクダウンはマクラーレン。送り手で制して、外したフー・ヨンの立ち際に腕十字狙うもここは外したフー・ヨン。マクラーレンはシングルレッグに入りゴング。
3R、スタミナあるマクラーレンは、打撃でも攻勢に。左右を振ってシングルレッグからダブルレッグテイクダウン。立つフー・ヨンにシングルレッグ。ドライブしてバッククリンチ。フー・ヨンが正対したところにボディロックからダブルレッグに移行し、すぐにバックテイク!
スタンドでリアネイキドチョークをアゴ上から極めて、最後はマウントからパウンドでゴング。
判定は2-1に割れて、両者が手を挙げるなか、最後のコールはマクラーレンに。初回にニアフィニッシュに追い込まれながら、1R後半以降は巻き返したマクラーレンは、勝ち名乗りに跪いて歓喜した。
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▼第5試合 ライト級 キックボクシング 3分3R〇ルンラーウィー・シッソンピーノン(タイ)[判定2-1]×ボグダン・シュマロフ(ブルガリア)
ルンラーウィーは2015年いすゞカップトーナメントで優勝、2020年にはEM LEGENDの77kg級王座にも就いた。ムエハードコアとRWSを経てONEには2025年2月から参戦し、4戦目でドミトリー・メンシコワにTKO負けするも4勝1敗の戦績を誇る。外国人選手との対戦が多く、ユセフ・ブガネムとも2度対戦。また、ペンチャック・シラットの大会で3度優勝しているという実績も持つ。
シュマロフは2023年2月に『ONE Friday Fights 6』に初参戦するとマルワーン・フーリを1分15秒でKO。7月の2戦目もコンスタンティン・ルスにも3RでTKO勝ちしている強打者。KO負けも無し。
1R、パンチ&ローで前に出るシュマロフにサウスポーのルンラーウィーは左ミドル&左ローで対抗。ガードを固めてどんどん前に出て右ローと左右フック&右アッパー、左ボディで攻めまくるシュマロフ。ルンラーウィーも防御に回らずワンツー、左ミドル、左ロー、左ヒザ、左ストレートで応戦する。
左ヒザ、前蹴りとボディを攻めるルンラーウィーに、シュマロフも左右ボディを返す。ラウンド終了直前、シュマロフは左右フックと右アッパーをガムシャラにまとめて印象点を稼いだ。
2Rも同様に前へ出るシュマロフを左ミドル、左ヒザで迎え撃つルンラーウィー。自ら飛び込んで左ヒザを突き刺すルンラーウィーだが、シュマロフは前進を止めず左右ボディ。鋭い左ヒザが突き刺さってもお構いなく前へ出てパンチを繰り出すシュマロフ。ルンラーウィーは前蹴りもボディに連発する。左右ボディを打つシュマロフは動きが鈍くなってきたが、距離を詰めると左右フックの連打と右アッパー。
3R、左右フックを振り回しながら前へ出るシュマロフにルンラーウィーは左ミドルと左ヒザ、左ローで応戦。右ローを蹴って左右フックにつなげるシュマロフはルンラーウィーにロープを背負わせると左右ボディ。ルンラーウィーは前蹴りで突き放し、ステップで離れると追ってくるシュマロフに左ヒザを突き刺す。明らかに疲労してスピードが落ちているシュマロフだが攻撃と前進を止めない。そこへルンラーウィーが意表を突く右ハイキック。
フルラウンド両者攻撃を止めなかった熱戦は、ルンラーウィーが判定2-1で勝利を手にした。
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▼第4試合 女子アトム級 MMA 5分3R〇澤田千優(日本/team AKATSUKI)[判定3-0]×ノエル・グランジャン(タイ/フランス)
澤田は、MMA7勝1分の無敗。兄・澤田龍人と同じレスリングベースで、2018年東日本学生選手権フリースタイル50kg級優勝、全日本社会人選手権優勝、全日本選手権5位などの実績を持つ。2021年5月に修斗でプロMMAデビュー。リーグ戦で優勝するなど3勝1分で初代女子アトム級王者に輝いた。
2023年2月にタイで行われた『ONE Friday Fights 5』では、イランのサナーズ・ファイアズマネシュを相手に2R アメリカーナで一本勝ちすると、チーム・オーヤマでの北米修行も経て、5月に米国フロリダ州マイアミ開催の『Combat Global』でアナ・パラシオス(メキシコ)にテイクダウン&パウンドで判定勝ち。
12月の『プロ修斗公式戦 COLORS Vol.2』では中村未来に1R 腕十字で一本勝ちし、修斗世界女子アトム級王座の初防衛に成功している。
前戦は2024年3月の『ONE Fight Night 20』。現女子アトム級4位のジヒン・ラズワンを相手に120ポンド キャッチウェイト(※両者体重超過もラズワンの体重に合わせた)で戦い、判定3-0で勝利。初回のラズワンのバック、三角絞めのピンチを冷静に防いで、打撃で向き合いテイクダウン。
2、3Rをテイクダウンからパウンドしコントロールした澤田が、日本人として初めてラズワンに勝利していた。これでアトム級のランキング入りかと思われたが、キャッチウェイト戦だったためか、敗れたラズワンは4位のまま。澤田はランキング外となっている。26歳。
対するグランジャンもノーランカーの強豪。MMA5勝1敗で、唯一の黒星はDouble GFC女子ストロー級王者のキム・ソユル(8勝1敗)戦で、キムの三角絞めに一本負けを喫している。27歳。
父がオランダ人で柔道やムエタイ、MMAもこなす格闘家で、母はタイ人というグランジャンは、9歳でフランスに移住し、20年近く柔道に専念。フランス柔道選手権やタイ柔道選手権で優勝すると、23歳でMMAに取り組み、タイに拠点を移し、タイガームエタイで打撃技術を磨いてきた。澤田も試合をした3月の『ONE Fight Night 20』でヴィクトリア・ソウザと対戦し、右カーフを効かされながらも右ストレートと首投げテイクダウンで判定勝ち。キム戦の敗北から再起を遂げている。
150cmの澤田に対し、グランジャンも153cmと体格はほぼ同じ。オーソドックス構えで右の強打はカウンターも得意とし、組んでも差して大内刈、大外刈、首投げ・払い腰、小外がけと足技が利く。“リル・モンキー”の異名のごとく強いテイクダウン、起き上がりにギロチンチョークなどパワフルな攻撃を武器としている。
一方で、グランジャンはキムの打撃に真っ直ぐ下がる場面も見せており、互いにとって課題の打撃がペースを握るキーとなり、ともに得意とする組みが、柔道組みとレスリングのテイクダウンのなかでどちらがトップを奪うか、注目の1戦となる。
1R、サウスポー構えの澤田。オーソのグランジャン。澤田は左インローから左ミドル。右回りで外足を取る。ダブルレッグに入る澤田を差し上げたグランジャン。
離れる澤田はローから左ハイをスリップもすぐに立ち上がる。左ミドルでグランジャンの身体を上げさせてダブルレッグテイクダウン。すぐに立つグランジャンのスクランブルを押さえ込んでハーフからヒジ。左で差すグランジャンを前腕で寝かせてヒジ!
ハーフから右で頭を抱えてパスを狙う澤田。グランジャンは腰を切りフルガードに戻すと、その立際に左ヒザ。さらにシングルレッグでテイクダウンしてゴング。
2R、右回りで左の蹴りは澤田。左インローにグランジャンも右ストレートを合わせる。澤田は打撃からダブルレッグに入るが、差し上げるグランジャン。首投げで投げた澤田は、上の取り合いを制す。フルガードのグランジャンにヒジをこすりハーフに。グランジャンに右を差させない澤田は左の細かいパウンド連打!
グランジャンの右手を送り手にして左手で固定して殴る澤田。さらにマウントを奪い、左ヒジ。グランジャンはブリッジで浮かせてハーフに戻すが背中は着かされたまま。足を戻し、蹴り上げで立とうとするが、すぐについていく澤田が上のままゴング。
3R、グランジャンの右ミドルをキャッチしてテイクダウンした澤田、すぐにサイドを奪い、左手首を掴んで、右で脇差し左ヒザ! 左ヒジと左ヒザで挟むように前後で打ち込み。グラウンドヒザにグランジャンは頭を抱える。
足を戻し亀から立とうとするグランジャンをがぶりヒザの澤田。下のグランジャンは腕十字を狙うが、またいでかわした澤田はハーフからみたび寝かせて右回りでパスガード! バックマウントで右のパウンドを連打から左右の連打。打たれるままのグランジャンにハーブ・ディーンレフェリーは止めず。そのままゴング。
判定は3-0で澤田が勝利。澤田はフライデーファイト1勝、本戦2連勝でONE3連勝に。マイクは渡されなかったが、澤田はランキング入りなるか(※追記・試合後、5月9日に澤田が3位にランクイン)。
◆女子アトム級MMA王者:スタンプ・フェアテックス(タイ)1位 ハム・ソヒ(韓国)2位 デニス・ザンボアンガ(フィリピン)3位 アリヨナ・ラソヒナ(ウクライナ)4位 ティファニー・テオ(シンガポール)5位 ジヒン・ラズワン(マレーシア)
(日本勢)前戦で三浦彩佳(アトム級&ストロー級)が平田樹に判定勝ち、澤田千優がラズワンに判定勝ち。なお。当初、発表された4月6日(土)『ONE Fight Night 21』での三浦vs.ラズワンはキャンセルとなっている。
スタンプは6月8日開催の『ONE167』でデニス・サンボアンガを挑戦者に迎えて防衛戦を行う。澤田の勝敗予想は、「打撃で上回るスタンプが優勢」だった。
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▼第3試合 ストロー級 ムエタイ 3分3R×トンプーン・PK・センチャイ(タイ)[判定0-3] 〇ザカリア・ジャマリ(モロッコ)
1R、ガード高く左ジャブから入るトンプーン。じりじり圧力をかける。ジャマリはその入りに右から左を強振する。さらに左右ローを前足、奥足に。
詰めるトンプーンは右ミドル。その2発目に右をカウンターで打つジャマリはボディ打ち、右ヒジも。しかし頭をガードするトンプーンは右ミドルからコーナーに詰めて右ヒジ。それを右回りで抜けるジャマリも右ヒジを返し、トンプーンが追う。
2R、右ローから入るトンプーン。圧力を強めるが、ボクシング巧者のジャマリは左右フックからアッパーも。トンプーンはジャマリの左をかわして詰めての左ヒジで、ジャマリが右額をカット!
左縦ヒジで前に出るトンプーンに、左フックを返すジャマリ。しかしトンプーンは左ミドルを当てることで、ジャマリを後傾させてパンチを遠ざける。しかし、ジャマリも前に出ると左ボディ! トンプーンが圧力をかけ直してゴング。
3R、グローブタッチ。右ミドルを脇腹に当てたトンプーン。ボディ打ちから顔面を突くジャマリに、トンプーンも左ボディ! 下がるジャマリに右ミドルのダブルを当ててガードを上げさせて左ボディ! 下がるジャマリをロープに詰めて左ボディ。下がりながらのフックのジャマリの左に動きが止まったトンプーン! ボディ打ちから左右にグラついたトンプーンだが、ジャマリの打ち疲れに立て直したトンプーンが押し戻す。
左ヒジで押し込み、右ミドルのトンプーンに、ジャマリは右回りで手を挙げて流す。判定は3-0でジャマリが勝利。乱打戦のオープンフィンガーグローブマッチに、解説の野杁は「この舞台に俺は入るのか、と。ムエタイは危ないですね」と苦笑した。
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▼第2試合 キャッチウェイト (59.87kg契約) サブミッション・グラップリング×市川奈々美(日本/Arete Brazilian Jiu Jitsu)[0分35秒 リアネイキドチョーク]〇ビアンカ・バジリオ(ブラジル)
柔術世界選手権&ADCC世界王者のバジリオに対するは、2010年東アジア選手権優勝。2018 World Jiu-Jitsu Champion ships 3位の市川。
1R、市川の詰めに頭を下げさせたバジリオは、がぶりであごを極め、引き落としてバック奪取。すぐに足を差し入れ、4の字ロックでリアネイキドチョーク。市川が失神した。
バック奪取から極めまで、35秒フィニュシュ。2週間前にヒザを壊したことを明かしたバジリオはタンミ・ムスメシとの対戦をアピールした。
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▼第1試合 フライ級 ムエタイ 3分3R〇ショーン・クリマコ(米国)[1R 2分06秒 KO] ※サウスポーから左ボディストレート×ホスエ・クルス(メキシコ)
サウスポーのクリマコが左ミドルを蹴ると、クルスもすぐに右ミドルを蹴り返す。クリマコが左ストレートを出すとクルスも右ストレートを返すという展開。右インローから右ストレートの連打で前へ出るクルスをクリマコは首相撲に持ち込むもブレイク。
前に出てワンツーを繰り出すクルスにクリマコは左ロー、左ミドルで対抗し、左ストレートを打つとクルスは後退。ロープを背負ったクルスにクリマコが左ストレートをボディに突き刺し、ダウンを奪う。足をバタバタさせて悶絶するクルスを見て、レフェリーがストップした。