MMA
インタビュー

【Bloodsport】ジョシュ・バーネットが語る、プロレスはどこから来たのか「世界に普遍的なものがあるとするならば、それは暴力であり、格闘であり、闘争なのだ」=6月22日(土)両国国技館

2024/04/18 10:04

プロレスのコンセプトが生まれたのは──

──カントとカミュの問答のようですね。しかし人もまた動物である。

「我々はいま社会を生きているが、人間は自然から生まれ育った動物であることには変わりがない。しかし、傷つけられるなんてことは決して許されないことというのがコアなところに備わっている。

 自分が格闘技を指導する時に言うのは、あらゆる場面で、顔や首、喉元周辺に何かをされるとみんなすぐパニックになるということ。すごく不快なんだ。だからチョークをされても落ち着いてディフェンスできるように練習しなくてはならないし、タップアウトすることも覚えなくてはいけないし、ネックロックに対して冷静さを持って対処しなくてはいけない。パンチが飛んできても目を瞑らないように練習しなくてはいけない。自然界において人間の自然な動作、反応というのは、今言ったような部位であったり、頚椎だとか脊髄に関わる部分が、どんな場面でもダメージを負わないように、窒息しないようにいたいのだ。なぜなら我々は今も昔も自然界の生物であることは同じだからだ。

 とにかく目を負傷したらマズいんだ、狩りは目を使うから。捕食して生きているから。我々は、目を使って視界の中で狩猟をするものだ。おおむね音で聞くわけではなく目を使っている。そうやって移動するし、そうやって世界と関わっていて、物だったり、動きを追跡したりしている。

 もう1点、もし脊髄(背骨)に何かあったら足腰が使えなくなるし、手や腕も自由に動かせなくなり、ひいては死に至る。

 だからなんとしてもこの部分は守らなくてはならないし、目や顔など重要な部位の周辺はすべて守らなくてはならない。だから、我々の自然な本能としては自分の身を守るために仕組みができている。我々(ファイター)はそういった本能に逆らって、落ち着いて危機的な状況に対処して、より効果的に戦うことができるようにトレーニングをする。

 自然界にいるのであれば、怪我をしたり、死ぬかもしれない状況だったり自分にはままならないような状況で、落ち着いて対処をするなどと考えることには意味がない。人間は生まれながらにして、自分にとって最も大切なものに対して反応するメカニズムが備わっているのだ。

 それで、今は、さっきも話した通り、我々は新たに、暴力を使わずに、外部のものを利用しようと合意したりということで、こういう状況や環境に対しての順応力を新たに獲得できる。

 我々は、自然界においては本能的に被(こうむ)りたくないと思うことに囲まれていても落ち着いて、冷静でいられるように教えることもできる。しかしその分、戦いには大きな賭けを伴う。

 だから、もし、感情的だったりスピリチュアルな内容を、怪我であったり、もっと悪い、最悪は死というものを伴うリスクなく届けたいのであれば、それを和らげることや、重大な可能性を減らすということをする必要がある──そこにプロレスのコンセプトが生まれたのだと思う。

 その非常にシンプルなアイデアから生まれたものが、だんだん時間が経つことで、プロレス的な側面としてどんどん成長し始め、試合する側や試合を見ている視聴者の精神や感情的なところで、より衝撃的で力強い影響を与えるようになる。つまり飛び降りようとしたり、頭に画鋲を打ったりするようになり、試合そのものをどんどん増やし続け、観客の感情をどんどん引き出していった。

 だから、ほとんど本能的な直感に反することになるし、怪我や死の可能性を減らすことは、それを増やすことに繋がる。勝者と敗者という考え方は、今も変わらないから、感情的なコンテンツとして、誰かが勝ったり負けたり、やり返したり、勝利のために再起したり打ち負かす姿を見せることができるというわけだ」

MAGAZINE

ゴング格闘技 NO.335
2024年11月22日発売
年末年始の主役たちを特集。UFC世界王座に挑む朝倉海、パントージャ独占インタビュー、大晦日・鈴木千裕vs.クレベル、井上直樹、久保優太。武尊、KANA。「武の世界」でプロハースカ、石井慧も
ブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリアブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリア