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【ONE】新入生や新社会人に贈る、武尊が自著『ユメノチカラ』で明かした「新しい環境に適応できず、夢を見失いかけた経験」

2024/04/17 12:04
【ONE】新入生や新社会人に贈る、武尊が自著『ユメノチカラ』で明かした「新しい環境に適応できず、夢を見失いかけた経験」

武尊が新入生や新社会人にも参考や励ましとなるエピソードを綴った(C)ONE Championship

 春。新社会人や新入学、転勤や異動で新たな環境に身を置き、悪戦苦闘している人も多いことだろう。

 自分のことを誰も知らない状況は、これまでの自分を捨て去り、新たな自分像を作り上げるチャンス。と同時に「これまでの自分とは違う、新たなキャラでいきたい」と意気込んだものの、慣れないキャラに空回りしてしまい、結果、新たな人間関係の構築に失敗してしまうケースもある。


 K-1で前人未到の3階級制覇を達成し、現在はアジア最大の格闘技団体のONEに参戦している武尊にも、新しい環境に上手く適応できず、歯車を狂わせて、苦境に追い込まれてしまった経験がある。

 発売中の著書「ユメノチカラ」(徳間書店)で、武尊は当時の状況や心境を包み隠さずに明かしている。

「世界最強のK-1チャンピオンになりたい」

 テレビで見たK-1ファイターの勇姿に感動してK-1のチャンピオンになるべく小学2年から空手道場に入門した武尊。

「あまり言いたくはないけど、僕には才能がなかった」(「ユメノチカラ」より。以下も同著より引用)


 道場でも試合でも同級生たちに負ける屈辱を2年間味わったものの、心と身体が少しずつ強くなり、ある時に「もっと練習すれば勝てるようになる」と気づき、通常の練習時間が終わった後で自主的に居残り練習を始めると、実力は飛躍的に伸びた。

「練習すれば強くいられる」

 確かな自信を手に入れて、武尊は「K-1チャンピオンになる」という夢に向かって歩んでいた。

 ところが、思わぬタイミングで歯車が狂ってしまう。

 中学を卒業して、高校に進学した時だった。武尊は高校ではボクシングをやりたいと考えて、ボクシング部のある高校に進学する。


 そこで、武尊はひょんなことから退学処分を受けてしまう。
 
 その兆候は中学3年の終わり頃に現われていた。髪を金髪に染め、耳には5、6個ピアスの穴を開けた。同時期、小2から通っていた空手道場から足が遠のく。

 武尊はこう振り返る。

「自分に自信がないから、強く見えるようにしていたんです」

 道場での厳しい練習で「強さ」という自信を手にしていた武尊。


 高校ではボクシング部でボクシングに打ち込み「強さ」を手にするはずが問題を起こして退学処分となった。幼少期から慣れ親しんだ空手道場には、見た目の強さを求めた結果、足が遠ざかってしまった。自分を支えてきた「格闘技」という軸を失ってしまったのだ。

 加えて、学校側から「友達と連絡を取りあうな、学校を辞めた後は一切関わるな」と言い渡されており、携帯に登録してあった連絡先を消されて、友達と話をすることも出来なくなった。

「それからは昼ごろに起きて何もやることがなく、自分の部屋に引きこもって、ずっと呆然として過ごす毎日。僕はどんどんメンタルをやられてしまった」(同著)

 格闘家になる、チャンピオンになるという夢をかなえることをモチベーションに生きて来た武尊にとっては「この先の人生を何を支えに生きていけばいいのか分からない」状態はあまりにも辛過ぎた。

 格闘技以外の道を模索はしてみたものの、子供の頃からの「格闘技」という夢に代わるものはそう簡単に見つからない。


 八方ふさがりの状態に追い詰められて、武尊は自宅のコンクリートの壁に1時間頭を打ち付けるといった異常な行動を取るようになり、異変に気づいた母親が病院に連れて行くと「うつ病」と診断された。

 病名が分かり、武尊はホッとしたという。
「それまでは、なぜ自分がこんなにつらくて苦しくて、毎日重苦しい気持ちを抱いてるのかが全然わからなくて(中略)でも病気の症状だったのなら、治療を受けて治せばいい」(同著)

 そして「ピンチはチャンス」が口ぐせで、いつもポジティブな母親からはこんな助言を貰った。
「格闘技をやりたいなら、キックボクシングのジムを探して行けばいいじゃん。K-1甲子園に出たいんでしょ? それならもう1回、別の学校に入り直せばいい」(同著)

 武尊は母親と共にジムや学校を探し、キックボクシングのジムに入り、別の学校に通って、K-1甲子園の出場資格を得た。そうして「格闘技で強くなって、K-1の世界チャンピオンになる」という子供の頃から思い続けた夢を再び追いかける生活を取り戻した。


 武尊は「K-1と格闘技に救われた人生」という。

「強く『こうありたい』と思う夢があれば、途中で何かあったとしても、そこから元の軌道に戻るための方法を考えるようになる。夢がなければ、どんどん道を逸れていってしまったと思うし、今ごろ、僕はどうなっていたか……」(同著)

 武尊は自著「ユメノチカラ」を出版した意図をこう明かす。


「今まで生きてきて、メンタルの病気になったことがあって“こうしたらもっとうまく生きられるのに”とか“こうしたらメンタルが整う”ということをいろいろと学びました。自分で経験して身につけたものもあって、同じような悩みを抱えている人にちょっとでも参考になればいいなと思います。たくさんの人に読んでいただけたらうれしいです」

 新入生や新社会人はもちろん、自分の生き方に迷ったり、悩んだりしている人は「ユメノチカラ」を読んでみてはどうだろう。武尊が自分の心と身体で実際に体験して、得た知恵や知識やヒントがたくさん詰まっている。

文/茂田浩司

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