2024年2月10日(日本時間11日)米国ラスベガスのUFC APEXにて『UFC Fight Night: Hermansson vs. Pyfer』(U-NEXT配信)が行われる。
メインイベントは、ミドル級の5分5Rで、同級11位のジャック・ハーマンソン(ノルウェー/スウェーデン・35歳)が、UFC3連勝中のジョー・パイファー(米国・27歳)と対戦する。
19歳でノルウェーに渡り、ヨアキム・ハンセンのもとでMMAを学んだハーマンソンは、対戦相手のパイファー同様にPRIDEやDREAMに刺激を受けた世代で、UFCでのホナウド・ジャカレ・ソウザ戦をベストバウトのひとつに挙げる。
今回、3連勝中のプロスペクトを相手にハーマンソンは、「試合をラウンド後半まで長引かせて、最後に勝つのは俺になる」と、長期戦も辞さない構えを見せた。
「日本で戦った事がある選手は皆、口を揃えて、日本での試合で、日本のファンの前で試合をする事がいかに特別かを語るんだ。それを本当に自分も経験してみたい」──UFC日本大会出場を切に望んだハーマンソンとの一問一答は以下の通りだ。
このスポーツは計画通りにはいかない。だからチャンスがきたら、掴んで戦うんだ
──ハーマンソン選手は、グレコローマンレスラーからMMA選手に転向して14年目になります。
「まぁ、長い旅路だったと思うよ。子供の頃レスリングを始め、10代でMMAと出会い、MMA選手になる事を夢見て頑張ってきた。ペットショップで絶滅の危機にある動物たちの世話をしながら、臨時教師と学生アドバイザーをして、バーテンダーとしても働きながら、ファイターを夢見てきた。その夢を叶えて生きているのがいまだ。素晴らしい旅路だったと思うし、MMAでのいまの自分の実力を考えると、当時のレスリングの実力は同じレベルとは言えない。当時レスリングでオリンピックに行けたとは思えないけど、いまはさらに向上し、MMAで世界と戦っている」
──そもそもなぜMMAファイターになろうと?
「子供の頃から兄といつもブルース・リーの映画とかから学んで格闘技をしていたんだ。2006年頃にインターネットでMMAに出合った。PRIDE、バス・ルッテンやUFC……これだって。2008年にトレーニングを始めて、初めてアマチュアの試合に出たのが2009年だった」
──MMA選手になりたいと伝えた時、家族からの反応は?
「最初の頃、俺の母親は俺が格闘技をやる事を良く思ってなかった。でも彼女の中ではそれはいつしか変わっていって、今は格闘技にすごく興味を持っているし、俺の旅路を応援してくれている。だから楽しめるし、俺の兄弟も常にサポートしてくれていたし、その点はとても良かったと思っているよ」
──9歳からアマチュアレスリングを始めて、18歳からムエタイとMMAを始めたというハーマンソン選手ですが、19歳の時、仕事を探すためにノルウェーの首都オスロに移住したのですよね。
「MMAを始めてからオスロでいくつかジムを試してみたんだ。フロントラインアカデミーという今でも通っているジムがスタートだった。そこからチームヘルボーイでヨアキム・ハンセンとトレーニングをした。知っての通り、彼はノルウェーMMAのパイオニアで大スターだ。彼の下でトレーニングできた事は本当に恵まれていたし、色々な知識を与えてもらえた事は本当にラッキーだった。そこからは自分で道を切り拓き、自分のチームを作っていった。それがとても成功したんだ」
──これまでのキャリアのなかで最も記憶に残る試合は?
「たくさんあるけど、2019年4月の(ホナウド)ジャカレ・ソウザとの試合は、5Rをフルに戦って勝利した。自分の一番のパフォーマンスができたと思っている。2018年のターレス・レイチとの試合もすごく記憶に残っているね。1Rでかなり大きな怪我をしたけど、それでも最後まで戦い切って、トップをとる事が出来て、3Rにパウンドアウトでフィニッシュできた。とても記憶に残っているよ」
──スウェーデンやノルウェイというMMAの先進国ではなかった国からユノラフ・エイネモやヨアキム・ハンセンに続いて、アレクサンダー・グスタフソンやあなたのような選手が出てきた。いまは『ROAD TO UFC』でインドからアンシュル・ジュビリやプージャ・トーマのような選手がUFCとの契約をかわしています。まだMMAがメジャーではない国からUFCデビューを目指す人たちにどのようなアドバイスがありますか。
「そうだな……。自分の母国で試合ができないという事はとても厳しかった。ノルウェーでは今もMMAは違法なんだよ。それは俺が母国で試合をする事ができないという事を意味する。それをするためにあちこちに出向いて試合をした。その後に少し大きな団体、ケージウォリアーズで階段を昇る機会を得る事ができ、チャンピオンになって、防衛する事もできた。だから外に出て、掴めるチャンスは掴むことが大事だ。『完璧な道が待っていてくれる』とは思わない事。自ら動いてチャンスを掴み、チャンスを掴んだら、その中でベストを尽くす事。
若い選手のほとんどは年間を通して予定を組もうとしているかもしれない。『今年は3試合をしよう、何月に1試合目をしてあとはいつ、次はいつ』のという風にね。だけどこのスポーツはそう計画通りにはいかない。だからチャンスがきたら、掴んで戦うんだ。常に完璧なキャンプができて完璧な準備ができる訳ではない。日々のトレーニングを積み重ね、新たなスキルを身につけ、持っている力を出して戦うんだ。そうする事でいつか報われる日がくると思う」
──なるほど。そして今週末の試合でハーマンソン選手は、メインイベントを戦います。そのプレッシャーはありますか。
「これまでの試合と変わらず向き合っているよ。ヘッドライナーのカードになれた事を楽しめている。UFCがこのカードに俺を入れてくれた事は、UFCが俺の良さを理解してくれていると思っている。3試合前もそうだったけど、今までもメインイベントの機会はもらえているが(※2022年2月にショーン・ストリックランドにスプリット判定負け)、そのポジションに選んでもらっている事はとても嬉しいよ」
──対戦相手のジョー・パイファーは12勝中8つのKO勝ちと、3つのサブミッションでの勝利を持ちます。どうとらえていますか。
「ジョー・パイファーは素晴らしい対戦相手だ。選手として強い、ハードパンチャーだし、レスラーとしても強い。だからタフな試合になるだろうね。ただ、俺も強いんだよ。俺も彼にとってはなかなか厳しい対戦相手になるだろう。エキサイティングな試合になると思っている。自分のランキングを守る事も自分がそこから上がっていく事も楽しみでしかないよ」
──両者ともにフィニッシャーのこの試合は、どのような試合になると予想していますか。
「タフで厳しい試合になるだろう。俺は試合をラウンド後半まで長引かせるつもりだ。そうする事で俺のカーディオも活きてくるし、最後に勝つのは俺になるだろう」
──さきほど掴めるチャンスは掴めと。ヨアキム・ハンセン選手は日本でも多くの試合をしました。ハーマンソン選手も米国以外で戦いたいとも?
「それが叶ったら最高だね。UFCが日本で開催してそこでカードを組んでもらえたら、マジで夢が叶うよ。このスポーツを見始めた時は、PRIDEやDREAM、PANCRASEを見ていたんだ。日本のMMAの歴史はすごい。日本のMMAシーンはとても有名だ。日本で戦った事がある選手は皆、口を揃えて、日本での試合で、日本のファンの前で試合をする事がいかに特別かを語るんだ。それを本当に自分も経験をしてみたいと思っている。もちろん日本の国の文化も経験してみたいと思っている。ヨアキムから聞くたびに、本当に魅力的でいつか行ってみたいと思っていたし、それが試合で選手として行く事になったとしても、観光客として行く事になったとしても、素晴らしい経験になると思っている。日本のファンの皆さんも、次の僕の試合にぜひ注目してもらえれば嬉しいな」