壱・センチャイジム「BLACKで通用するようなら、他団体にも打って出たい」
──まず11月大会ではOFGルールに初挑戦して勝利しました。試合後は、いつもの試合との違いはありましたか?
「僕が怖かったのは拳のケガだったんですけど、今回はいつもよりケガなく終われましたね。顔に傷は負ったんですけど、それは練習に支障は来さないので、試合の次の日から練習に復帰していました」
──そうなんですか! 大会全体では選手の外傷が多かったようですが。
「細かい傷はあるんですけど、蹴り足が痛いとか、拳が痛いとかはなかったですね。初めてのOFGということで、みんなが何を求めてるかと考えたら、やっぱり打ち合い、殴り合いが見たいんだろうなと思ったので、今回はもらう覚悟でこちらもぶつけにいってたんです。それこそ『ケガしても、みんなが楽しめればいいや」という感じだったので、終わってみたら「意外とこういう気持ちでいった方が、ケガがないのかも」と思いましたね」
──なるほど。で、試合翌日から練習していたら、急にオファーがかかって連戦になったと。
「そうなんですよ。練習していたから受けたというのもありますね。相手の古木選手の強さは認めているので、練習してなかったら受ける相手じゃなかったんですよ。でもジムの後輩が2人、12月10日に試合だったから彼らのためもあって練習に参加していたので、オファーが来た時に『準備できてるんで、やります』って言いました。でも会長からは『勝てる見込みないだろ? 私に考える時間をちょうだい』と。『プランがあるなら教えて』と言われたので僕の考えを話したら『じゃあやるか!』ということで。会長が、『壱がBLACKルールで勝つにはこれしかない』と考えていたことと、僕のプランがハマったので、GOサインが出た感じでしたね」
──これまでにヒジなしの試合というと……。
「初めてです。今までは全部ヒジありでやってきたので」
──そうですよね。そのルールの違いは大きいと思うんですが、不安はない?
「ジムでやってるスパーリングとかも、BLACKルールみたいなもんじゃないですか。だから不安という不安はないです」
──と言っても、相手はそのBLACKルールのチャンピオンですよ。あれだけのハードパンチャーですし。
「僕はもともとBLACKルールの試合には興味があったんですよ。日本はヒジなしルールが主流だから、BLACKの方が他団体に乗り込みやすいし、比べられやすいじゃないですか。だけど今までやったことがなかったから、未知の世界だなあと思ってたんです。そこにこんなオファーがあって、せっかくやるんだったら一番強いヤツとやりたかったので、ちょうどいいなと思って。古木選手だから受けたんですよ」
──なるほど。
「みんなからは『この緊急オファーで、しかもBLACKでチャンピオンとなんて、よく受けたね』って言われるんですけど、僕からしたら古木選手だからやる意味があるんです。どうせやるならトップとやって、勝ったら『こっちの才能もあったんだな』と思って続ければいいし、勝てなかったらムエタイらしくREDに絞ってやっていけばいいなと思って。結局、スーパーボンとかブアカーオとかシッティチャイとか、ムエタイベースの技術を使ってヒジなしの大会で活躍してる選手だってたくさんいるじゃないですか。結局ムエタイって何でもできるので、このルールに生かせる部分だけ使えばいいんですよ」
「ウチのジムはアマチュアの選手が多いし、K-1系の選手やMMAの選手も出稽古に来たりしているので、スパーリングもほとんどBLACKに近い形でやることが多いんですよ。それをけっこうやってるので、同じ感覚かなと。だけど一つ問題があるとしたら、1日の練習で平均4回はヒジを出してしまうところですね」
──出ちゃいますよね(笑)。
「コーチもミットで『ヒジ! ヒジ!』って毎回言うんですよ。そこだけ、僕とコーチの意識だけが問題ですね。
──でもそれは大問題な気もしますが(笑)。
「僕らは普通のキックボクサーのワンツーぐらいの感覚で『ワンツーヒジ!』って出ちゃいますからね。まあ注意点はそこだけですね」
──改めて、古木選手の警戒すべき点とは?
「もちろん体、フィジカルの強さですね。誰が見ても古木選手の方が力があって、誰が見ても僕の方がテクニックがあると思うんですよ。だから古木選手はどうやって僕を打ち込むか、壱はどうやってテクニックを生かしてロングの攻撃を出していくか。誰が見てもそうなると思うので、ある意味すっごく分かりやすい試合になると思いますね。『力vs技』みたいな。だから僕自身、すっごく面白いんじゃないかなと思います。
──実際、今回BLACKでどこまでできるか、楽しみなんじゃないですか?
「楽しみですね。僕がブアカーオやスーパーボンみたいに、BLACKでもある程度通用することが証明されたら、その時は可能性を広げて、日本の他団体も盛り上げることができると思います。古木選手とやれば1戦で分かるので、手っ取り早いですね」
──前回に続いて、また新しい姿が見られそうですね。
「そうですね。前回はやること自体は同じで、攻撃が入りやすいとかいう話だったんですけど、今回はやること自体が正反対ですからね。本当に全く違う僕が見られると思います」
──では最後に、今回の試合で一番注目してほしいポイントはどこでしょう?
「古木選手は僕から見ても強いし、僕もすごく好きな選手なんですけど、やっぱり少し華に欠けるんですよ。だから華の差を見てもらえればいいなと思います。やっぱり華がある選手がチャンピオンの方が面白いので、そこを見せたいと思います」