空道
レポート

【空道】世にも稀な頭突き・金的ありの無差別大会、軽量級英雄・目黒雄太の偉業達成を、西尾勇輝が阻む!

2023/11/27 18:11
 道衣と顔面防具を着用のうえで、頭突きやヒジ打ち、道衣を掴んでの打撃・投げ・寝技によって争う“着衣総合格闘技”である空道(くうどう)。その全日本無差別選手権が、コロナ問題による大会開催休止期間等を経て、2023年11月19日(日)、2019年以来4年ぶりに実施された(宮城県仙台市・カメイアリーナ仙台)。  本来、武道とは、護身の流れを汲むものであり、体格無差別で稽古・試合を行うことこそが本分というポリシーに満ちたものであったが、武道のスポーツ化の流れのなかで、空道においても、身長(センチ)と体重(キロ)の数値の和(体力指数)によってクラス分けを行う体力別大会のみが、国際大会では実施されるようになっている。  そんななか、武道発祥国である我が国・日本においては、国際大会に繋がる予選大会の実施の必要のない年度の秋季にかぎり、階級分けなしの空道無差別大会を実施しており、通常のルールでさえ空道は“なんでもあり”に近いうえに、さらに、この全日本空道無差別選手権においては、「体力指数差が大きい(20以上ある)場合、体力差を埋める技術として、双方の選手に(コンビネーションの一環としての使用に限り)金的蹴りが認める」という独自ルールが存在する。  そんな今大会において、空道最軽量級である体力指数-230クラスのツートップは序盤から度胆を抜く。  2023世界選手権-230クラス王者・目黒雄太は、昨年U19(≒高校生)-240クラス全日本を春・秋連覇して一般全日本に昇格してきた佐々木惣一朗(大道塾仙台東支部)を絞め落とし一本を奪取。  一方、2023世界選手権同クラス準優勝者・佐々木龍希は2021全日本同クラス準優勝者・大西凜駿(大道塾横須賀支部)のフロントスープレックスをオモプラータで切り返して制してみせた。  166.7センチ、66キロの目黒と168センチ、63キロの佐々木が共にベスト8入りを果たし、観る側に「小よく大を制す」ロマンの実現を、おおいに期待させたのだが……。 ▼準々決勝 第3試合〇西尾勇輝(大道塾大阪南支部)[延長 ポイント2-0]×目黒雄太(大道塾長岡支部) ※本戦で、掴んでの打撃により目黒に減点(対戦相手に1ポイント)1回,延長でも掴んでの打撃により目黒に減点1回あり。  空道における最軽量級-230クラスで全日本V7(コロナ問題などによる不開催年も含めると全日本階級別9年間無敗)を達成している目黒と、今大会出場者において直近大会の最重量階級でもっともよい成績(2023世界選手権-270クラスベスト4)を収めている西尾勇輝の準々決勝は、今大会のハイライトといえる一戦であった。  西尾が右ストレートで目黒をのけ反らせれば、目黒は自らより22キロ重い西尾を投げ、ハイキックを決める。攻防は互角、あるいはオーディエンス・ジャッジ的にいえばやや目黒優勢ながら、掴んでの打撃が禁止であるルールであるにもかかわらず、組んだ瞬間、目黒は打撃を放ってしまう。  空道は、通常ルールにおいては掴んでの打撃がOKであり、体格差が大きい(体力指数の差が30以上)場合のみ、安全性確保のために、掴んでの打撃が禁止になるのだが、目黒の肉体は条件反射的に、掴んだら、通常ルール下通りに打撃を繰り出してしまうのだった。組み合った状態での打撃を放つ度に、警告→減点1→減点2と、審判からのコールを浴び、目黒はここで姿を消した。 ▼決勝戦〇西尾勇輝(大道塾大阪南支部)[延長 ポイント2-0] ×佐々木龍希 (大道塾総本部) ※本戦は両者ポイントなく自動延長。延長戦で、掴んでの打撃により佐々木に減点(対戦相手に1ポイント)1回,右ストレートにより西尾に効果(1ポイント)1回あり。  準々決勝不戦勝、準決勝では2022年アジア選手権‐240クラス王者・遠藤春翔から左フックでポイントを奪い、決勝進出を果たした佐々木は、細かく左右に動きながらローキックやジャブを散らし、ヒットアンドアウェイの展開をつくり、西尾が狙う右ストレートの照準を絞らせない。  本戦が両者ノーポイントで終わり、延長戦に突入すると、このままの流れでいけば、無差別大会の醍醐味といえる“小よく大を制す”ドラマが実現するのではないか……という空気が場内に漂い始めるが、現実は甘くはなかった。  西尾と佐々木との体力指数差は34。やはり「組んだら打撃なし」のルール下の試合となったわけだが、佐々木も目黒同様に、組んだ瞬間、頭突きを繰り出してしまう。その違反行為で西尾に1ポイントを献上することとなり、旗判定まで持ち込むことができず“小よく大を制する”ドラマは完結ならず。 【写真】優勝者に授与される深紅の旗“北斗旗”を手にする西尾勇輝。大道塾大阪南支部所属、177センチ、88キロ、30歳。2022アジア選抜選手権-270クラス優勝の実績を持ち、今大会を競技生活の集大成と考えていたそうで「これで(選手生活は)一区切りとしたい」とのこと。  西尾にとっても、判官びいきな視線に対し、説得力ある攻めをみせられたわけではなかったため、不本意な部分があっただろう。安全性と実戦性、そしてシンプリシティー(分かりやすさ)の間で絶妙なバランスを保つルール設定の難しさを感じさせた大会であった。 【大会結果】 ◆男子優勝  西尾勇輝 (大阪府、大道塾 大阪南支部)準優勝 佐々木龍希(東京都、大道塾 総本部)第3位 遠藤春翔(東京都、大道塾 総本部)第4位 辻野浩平(大阪府、大道塾 岸和田支部)第5位 服部晶洸(神奈川県、大道塾 横浜北支部)第6位 中上悠大朗(東京都、大道塾 総本部)第7位 目黒雄太(新潟県、大道塾 長岡支部)第8位 小野寺稜太(東京都、大道塾 総本部) ◆女子優勝 渡辺玲那(神奈川県、大道塾 横浜北支部)
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