2023年10月29日(日)午後2時から韓国ウォンジュのチアック体育館にて『ROAD FC 066』が開催された(KAKAO TV、AFREECA TV)。
▼ROAD FC グローバル63kgトーナメント決勝 5分3R〇キム・スーチョル(韓国)21勝7敗1分[2R 4分25秒 TKO]×原口 央(日本)9勝5敗※スーチョルが63kgトーナメント優勝
スーチョルは、2021年9月に4年5カ月ぶりにMMAに復帰し、パク・ヘジンに敗れるも、2022年5月の再戦で左ハイから右ストレートを効かせてのパウンドで2RTKO勝ちでROAD FCフェザー級王座戴冠。2022年の大晦日の「RIZIN×BELLATOR全面対抗戦 次鋒戦」でフアン・アーチュレッタにスプリット判定負け。
2023年6月から「ROAD FC 63kgトーナメント」に参戦。1回戦でアレクセイ・インデンコに1R ギロチンチョークで一本勝ち。続けて8月の準決勝でブルーノ・アゼベドに判定3-0で勝利。決勝進出を決めていた。
対する原口央は、兄の影響で弟の原口伸とともに8歳からレスリングを始めると高校全国選抜選手権3位に。2019年5月の『ZST.64』でMMAデビューし、山本空良に判定勝ちを収めた。
2021年9月の『GLADIATOR 015』でMIKEと再戦。2Rにヒザ蹴りからのパウンドでTKO勝ちし、GLADIATORフェザー級王者となると、2021年11月の『VTJ 2021』で宇野薫にも判定勝ち。RIZINでは関鉄矢に判定負け、緊急参戦の中原由貴戦ではTKO負けを喫したが、その後、『DEEP TOKYO IMPACT』で増田拓真に一本勝ち。
2023年6月の「ROAD FC 63kgトーナメント」1回戦でムン・ジェフンに判定勝ち後、8月26日の準決勝でラザバリ・シャイドゥラエフが体重超過で不戦勝に。今回のキム・スーチョルとの決勝を決めていた。
会見でスーチョルは、記者から「原口はまだ実力が未知数の相手で、スーチョル選手押しのマッチメークという意見もありますが?」と問われると、「この状況で僕が後押しされていると?」と反論。
「そう思う人がいるなら誤解です。ここ1年を通して、ロシア選手(インデンコ)をギロチンで仕留めて、ブラジルのアゼベドも倒したけど、彼は自分の相手としては最も勝ち星を持っている相手の一人だったし、そういう相手と戦ってきた」と、トーナメント決勝まで険しい道のりだったと語った。
続けて、決勝で対戦する原口央について、「央選手はムン・ジェフン選手を破り、次の試合は実現しなかったけど、それもまた実力のうち。それに自分は正直言って、央選手が決勝に上がってくると思っていました」と、実力者を認めていたとした。
同時に、試合経験においては、スーチョルが倍以上のキャリアを誇ることもあり、「まだ経験的な意味では、原口選手は少し自分が戦ってきた相手としては少ないと思う」と評した。
その言葉を受けて原口は、「そうですね。僕自身、23歳からMMAを始めて今年で28歳。こうして約5年のキャリアで『アジア最強』と言われるキム・スーチョル選手と戦えるのは嬉しく思います」とコメント。
優勝賞金1億ウォン(約1,100万円)の決勝戦だが、「(優勝賞金のことは)あまり考えてなくて前回の試合が終わってから今日までキム・スーチョル選手のことばかり考えていて、だから賞金がどうとこじゃなくていまはもう試合に集中している状態ですね」と、サングラス姿で語った。
最後は「ほんとうにもう僕はこのトーナメントに賭けていて、最後もうケージの中で死んでもいい、それくらいの覚悟で戦います。うん、『This tournament is mine』」と、決意を見せた原口。
独特なステップで圧力をかけて、首相撲、ヒザ蹴り、左ハイと巧みに上下に打ち分け。ケージレスリング、スクランブルも強いスーチョルに対し、原口は、自身の強みであるケージレスリングとスクランブルで最後にトップを奪い続けることが出来るか。
対日本人無敗のスーチョルは、「自分は原口選手を過小評価していません。ファイトだから、無条件に相手に勝つつもりで試合をします。それは相手にとっても同じだと思います」と油断なく戦うという。
記者からは、1年前の大晦日での王者アーチュレッタとの死闘以降、参戦が遠ざかっているRIZINでの試合についても聞かれたが、スーチョルは、「RIZINのオファー? 正直、チャンピオンシップの機会をもらえると思っていましたが、その機会は朝倉海選手にいったし、基本的に自分はRIZINにとって“外国人”だし、人気のあるスタイルでも無いし、顔もあんまりイケてないし(笑)。
そういうことも分かっているから、今回、央選手と試合をして、どうなるかな。RIZINから何かいい話があるかもしれないけど、いまはそのRIZINの話はしたくありません。ただ自分はいまこの試合に勝つために、100%、いや200%集中しています」と語るにとどめた。
1R、サウスポー構えの原口。右ストレートを入れるスーチョルに、原口は低いダブルレッグも、切るスーチョルはノーアームギロチン、ニンジャチョーク! 仰向けで抜けて立つ原口にハイエルボーのギロチンチョークも!
ここも仰向けになり抜ける原口は腕十字狙いからシングルレッグでレッスルアップ! 金網に詰めて尻下でクラッチしてリフトし、テイクダウン!
下のスーチョルは腕十字に深く入るもクラッチしている原口はかつぎパスからバックテイクで左足をかけるとスタンドになるスーチョルにボディロックから正対際にキムラ狙い。それを抜いたスーチョルが仕掛けてゴング。
2R、跳びヒザで前に出るスーチョルは左ボディも。シングルレッグから右腕をツーオンで掴む原口は粘り強いシングルレッグ! 金網背に座るスーチョルは原口の片足外し際でバックに。
原口は潜りからディープハーフ狙いも、潰したスーチョルが股下に腕を入れてクルスフィックスでパウンド。しかし腕を抜いた原口は、スーチョルのマウントに合わせて潜ってシングルレッグで立ち上がり、近距離で左右ラッシュから左! 打ち合いにも退かず、右の蹴りを掴んでシングルレッグへ。
足を外したスーチョルは右ヒザ! 効かされた原口はラッシュを受けるが、右で反撃、押し戻す。立ち合いのなか、スーチョルは左を原口のアゴに当てると、一瞬間を置いて脳を揺らされた原口がダウン! パウンドのラッシュにレフェリーが間に入った。
「この試合に賭けている」という言葉通りの覚悟の試合で勝機を掴もうとした原口は、TKO負けに跪いて涙。試合後、スーチョルは赤子を抱いた妻とケージでキス。
しっかり勝ち切ったスーチョルは、ケージのなかで「ありがとうございます。ちょっとうまく動けなかったですね。 ごめんなさい、本当にごめんなさい。とにかく頑張って……、そして私たちの家族、そして私たちのチーム。本当に大好きです。 そしてこの大会を誘致してくださった市長、会長に本当に感謝します。私が皆さんに感謝しすぎて身も蓋もないですね。 本当にありがとうございました」と挨拶。
続けて、司会者から「明日からまたすぐにトレーニングを始めるんじゃないですか? 次のトーナメントのために」と問われると、「とりあえず私の奥さんが、えー、うちのジウちゃんを連れてきてくれる? 奥さんと。息子が生まれました。あぁ、私の人生がすごく辛い人生だったのに、一筋の光を与えてくれましたね。 私にとって本当に我が子。ああ。妻を本当に愛しています。妻が虎のようになったらトレーニングをするんです。妻が(休むことを)許可しないなら仕方ないですよね。 まあその中で、こうやって上がってきました。家族を見ると、今まで培ってきたものが溢れ出します。さあ、私たちの家族、奥さん、私のベイビー、本当に愛してるよ(赤ちゃんと奥さんにキス)、これからもお父さんと仲良く暮らそうね」とユーモアたっぷりに優勝を語った。
敗れた原口も、スーチョルの子供の頭を撫でると、「スーチョル選手、ありがとうございます。この試合にほんとうに賭けていたので……来年もここでやり返したいと思います。あと、そろそろスーチョル選手にスイッチを買ってあげてもいいと思います」と語った。
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ヤン・ジヨンがBRAVEの高橋謙斗に完勝
▼バンタム級 5分3R〇ヤン・ジヨン(韓国)9勝1分[判定3-0]×高橋謙斗(日本)7勝2敗1分
ジヨンは、MMA4連勝後にRIZINで昇侍、魚井フルスイング、ROADで平澤宏樹を相手にいずれもフィニッシュ勝利。初参戦時は当初の相手の朝倉海が拳の怪我により欠場。代役の昇侍に一本勝ちを収めている。以降、朝倉との対戦をアピールしてきたが、『ROAD FC 63kgトーナメント』出場が決定。
6月の『Road FC 64』1回戦で、MMA6勝0敗で全試合をフィニュシュ(2KO・4一本勝ち)しているキルギスの強豪ラザバリ・シェイドゥラエフと対戦し、1R リアネイキドチョークで一本負け。プロデビュー以来無敗の連勝が「7」でストップした。
しかし、8月の『Road FC 65』ではトーナメント「リザーブマッチ」に回り、ムン・ジェフンにスプリット判定勝ち。引退するジェフンの介錯を務めている。
髙橋は、BRAVE GYM所属で柔道をバックボーンとし、MMA7勝1敗。2018年に『THE OUTSIDER Experiment League』で勝利し、2019年11月から『Brave Fight』に参戦。プロ5連勝で、2022年3月にフミグローブTVに判定負けで初黒星も以降、GRACHANで松本大輔とドローを含む2勝1分だ。
会見では、「ヤン・ジヨン選手が実力ある選手だったので、チャンスだなと思ってオファーを受けさせてもらいました。ROAD FCでいい試合をして、ヤン・ジヨン選手に勝たせていただきます。よろしくお願いします」と意気込みを語っている。
1R、ともにサウスポー構え。勢いよく中央に出るヤン・ジヨンに、高橋も押し戻すと、ヤン・ジヨンが左ロー。右ミドルハイは空振り。ヤンジヨンは再び左カーフキックを当てる。
どっしり中央で構えるヤン・ジヨン。両者ともに慎重で口頭注意。右ジャブのヤン・ジヨンに右を狙う高橋だが待ちの姿勢。
高橋の打ち終わりに右を当てるヤン・ジヨンは右ハイも突いて、高橋のシングルレッグを受け止める。そのまま金網まで押し込む高橋だが展開なくブレーク。
ヤン・ジヨンのワンツーの左をかわした高橋の低いテイクダウン狙いを切って上になるヤン・ジヨン! 高橋は下のままゴングを聞く。
2R、左右にステップする高橋に、左手をぐるぐると回して迎撃を狙うヤン・ジヨン。ワンツーの左を見せる。右オーバーハンドを当てる高橋だが浅い。ダブルレッグを切られると下から外がけ内ヒールへ! ヒザを抜いたジヨンにレフェリーはブレーク。
スタンド再開。中央を取るジヨン。金網まで圧力をかけて左アッパーを突く。さらに左フックの飛び込み。ジヨンは右ローまで繋ぐ。シングルレッグの高橋をがぶるジヨンはバックに回り細かいパウンドでゴング。
3R、前手の右フックから左で飛び込む高橋だが、ブロッキングしたジヨンに、高橋は前足にシングルレッグへ。ここも切ってすぐにバックに回るジヨン。両足をかけて背後から細かいパンチ。リアネイキドチョークを狙う。高橋はそれを防ぐも正対できず。そのままコントロールされてゴング。
判定3-0でヤン・ジヨンが危なげなく勝利した。
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▼ROAD FC グローバル70kgトーナメント決勝 5分3R〇アルトゥル・ソロヴィエフ(ロシア)[1R 1分32秒 TKO]×ムングントスズ・ナンディンエルデン(モンゴル)※ソロヴィエフが70kg級トーナメント優勝
1R、ともにオーソドックス構え。右フックで前に出るソロヴィエフに、ナンディンエルデンは右ロー。入りに右フックも狙うと左右の連打でソロヴィエフを金網に詰める。
しかし右の相打ちのタイミング後、詰めたナンディンエルデンに、ソロヴィエフは左フック! 棒立ちになって倒れたナンディンエルデンに、ソロヴィエフはパウンド。70kgトーナメント優勝を決めた!
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▼無差別級 5分3R〇キム・ミョンファン(韓国)[2R TKO] ※左ストレート×シム・ゴンオ(韓国)
1R、サウスポー構えのゴンオ。オーソのミョンファンはワンツーの右を当てるは、圧力をかけるのはゴンオ。オーソに戻して右で組みに。それを左右で剥がすミョンファン。ダブルレッグにも入るが、切ったゴンオが金網に詰めてブレーク。
右オーバーハンドを当てるミョンファン。ゴンオも押し戻して左のクリンチアッパー。距離が空くとミョンファンが右! さらに右から左、さらに右を当てるとゴンオがダウン! ミョンファンがTKO勝ちした。
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▼ROAD FC グローバル70kgトーナメント補欠戦 5分3R〇ユ・ジェナム(韓国)[判定3-0]×ハン・ユンス(韓国)
1R、ともにオーソドックス構え。ユ・ジェナムがダブルレッグテイクダウン。小手に巻いて投げるハン・ユンスの上に。立つハン・ユンスは突き放し右ミドル、サウスポー構えにスイッチするがオーソに戻すと、ハン・ユンスが右ミドルで前に。
左ローを返したユ・ジェナムのローがローブローに。再開。ワンツースリーで前に出るユ・ジェナムに、ハンユンスは右を返し、右アッパー!
2R、ユ・ジェナムはダブルレッグテイクダウン。立つハン・ユンスはワンツーの右オーバーハンド。ユ・ジェナムは体を入れ替えられてもディープハーフからリバーサルでスタンドに。ユ・ジュナムが前に出てゴング。
判定は3-0でユ・ジュナムが勝利。70kg補欠戦を制した。