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【UFC】「砂漠にいる」──物議をかもしたドクターチェックとノーコンテスト。ダナ代表「選手とドクターの間には大きな言葉の壁があった」

2023/10/23 12:10
 2023年10月21日(日本時間22日)、アラブ首長国連邦アブダビのエティハド・アリーナにて『UFC 294: Makhachev vs. Volkanovski 2』が開催され、ドクターチェックが原因の2つのアクシデントが物議をかもしている。  ひとつは既報通り、第6試合のバンタム級戦での元DEEP王者のビクター・ヘンリーへのジャビッド・バシャラートのローブローへの対応だった。  2Rにジャビッドの左インローを股間に受けて前のめりに倒れて悶絶するビクターに対し、ドクターは「彼の蹴りは君の睾丸に当たってないだろう?」と問い、苦悶するビクターは何故そんなことを聞かれているのか理解できないという表情で、睾丸に当たっていると返した。結果、試合はノーコンテストに。ビクターのセコンドのジョシュ・バーネットは「彼の睾丸はサツマ(マンダリン)のように膨れ上がっている」と証言している。  続く第11試合のライトヘビー級戦で2つ目のアクシデントが起きた。  1R、サウスポー構えのマゴメド・アンカラエフ(ロシア)が左ボディストレートをヒット。腹を押さえてくの字になるジョニー・ウォーカー(ブラジル)だが、フェイクのダメージを装ったのか、詰めてきたアンカラエフにすぐに跳びヒザ蹴りを放ちに。  しかし、その身体が浮いたところにアンカラエフは組みつき、ボディロックからケージに押し込むとウォーカーは金網を背に片ヒザ立ちとなった。  アンカラエフは左手を喉元に、右手でウォーカーの対角の左手を縛りコントロール。左足をかけてバックを狙うアンカラエフに対し、背中を譲らず立ちたいウォーカーは、左手を解除して脇を差しに。  右手をマットから放し、片ヒザ立ちとなったところで、アンカラエフはウォーカーのアゴに反則の左ヒザを打ち込んだ。  いわゆる「グラウンドポジション」での相手の頭部への反則の打撃だった。  現在のユニファイドルールでは、両足と両手の4点がマットに着くか、手と足以外の部位(ヒザ、尻、背、腹、ヒジなど)が着いているとグラウンド・ポジションと認められており、その際でアンカラエフは顔面にヒザを突き上げていた。  すぐにレフェリーが両者を分けると、ウォーカーもアゴを指してダメージをアピール。  そこにビクター・ヘンリーもチェックした件のドクターがレフェリーに呼ばれてケージインし、ウォーカーの状態をチェック。ウォーカーに質問を投げかけて、回答を聞くと、レフェリーに「彼は続行できない」と告げると、レフェリーは両手をクロスし、故意でない反則による試合ストップを宣言した。  ところが、ドクターチェックに返答していたブラジル人のウォーカーは、ファイティングポーズを取って中央へ。  それを止めようとするレフェリーの胸を両手で突き飛ばすと、アンカラエフも応戦体勢に。  慌ててダナ・ホワイトUFC代表もケージイン。レフェリー、ジャッジ、インスペクターら7人のスキンヘッドの関係者が砂漠の蜃気楼のように増殖して両者を引きはがす混乱に陥った。  試合結果は、ヘンリー戦の金的蹴りに続く、2試合目のノーコンテンストに。解説席のダニエル・コーミエーは「またあのドクターだ……」とつぶやいた。 [nextpage] 試合後会見でダナ・ホワイト代表が明かしたドクターとウォーカーの会話は──  両者を諫めたダナ・ホワイトUFC代表は、試合後の会見でこのときのことをこう語っている。 「いろいろなことがあっただろう。彼(ドクター)はウォーカーに『今どこにいる?』と聞いたら、ウォーカーは『砂漠にいる』と答えたそうだ。まあ間違っていないよな」と、ケージの中でのドクターチェックでのやりとりを明かした。  ウォーカーは英語を話すものの母国語ではないため、ホワイト代表は、ドクターの質問とウォーカーの回答の間で齟齬があったと考えている。 「2人の間には大きな言葉の壁があると思う。経験不足だし、最悪だよ。時々起こることのひとつで、我々はそれを正し、修正していくしかない」と、険しい表情を見せている。  この言葉の問題は、英語圏以外の選手のときに、たびたび起きており、日本人選手の場合でも、レフェリー、ドクターとのやりとりで通訳を交えて正しく意味を理解できないと、不利益に繋がるケースが出ている。  アンカラエフは、2022年12月のUFC世界ライトヘビー級タイトルマッチで3位のヤン・ブラホヴィッチと対戦し、試合を優位に進めたものの1-1の5R判定ドロー。王座獲得に失敗しており、今回もウォーカー戦でチャンスをモノにすることができなかった。  混沌としているライトヘビー級戦線では現在、王座は空位。  2023年1月にグローバー・テイシェイラを判定で下したジャマール・ヒルが王座についていたが、練習中にアキレス腱断裂により長期戦線離脱を余儀なくされたため、王座を返上している。そして1位のイリー・プロハースカと3位のアレックス・ペレイラが11月11日に「UFC世界ライトヘビー級王座決定戦」を行うことになっている。
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