日本時間2023年10月8日(日)朝5時開始予定の『UFC Fight Night: Dawson vs. Green』(米国ネバダ州ラスベガス・UFC APEX/U-NEXT配信)のメインイベントに、UFC8勝無敗1分のグラント・ドーソン(米国)が出場。ライト級でボビー・グリーン(米国)と対戦する。
高校時代にレスリングで40勝8敗の記録を残したドーソンは、MMAをやるために大学行きを止めて、ジムに入門。2012年6月から2014年4月までのアマチュアMMAで8勝1敗。2014年8月のプロデビューから2017年8月のDWCSまで12勝1敗。2019年3月にUFCデビューするとフェザー級からライト級に上げて9戦負け無し(MMA20勝1敗1分)でランキング入りを果たしている。
UFC10戦目の相手は、レスリング&ボクシングでトリッキーなパンチも放つグリーン。イスラム・マカチェフ戦でメインにも抜擢されている人気者を相手に、ドーソンはいかに戦うか。
2022年からフロリダのアメリカントップチーム(ATT)に移籍しているドーソンは、インタビューでジムで堀口恭司からインスパイアを受けていることを明かし、会見では、ジョニー・エブレンとヤロスラフ・アモソフのBellator世界王者2人が、UFCでもトップで活躍するであろうことを語っている。
ボビー・グリーン戦は、世界に自分が王者クラスのファイターであることを見せる試合
──UFC8勝無敗1分、ライト級10位のグラント・ドーソン選手です。高校時代に40勝8敗の戦績でシニアシーズンを終えたそうですが、以降でレスリングではなくMMAに向かったのでしょうか。
「実はネブラスカの大学にレスリングのスカラーシップで入れる事になってたんだけど、その時点で『MMAをやる』と決めていたから断ったんだ。だから高校卒業後はレスリングをやめて完全にフルタイムMMAに移行したんだ」
──なるほど。ドーソン選手の名前が知れ渡ったのは、UFCでのマイケル・トリザーノ、ダリック・ミナー戦でのリアネイキドチョークでの連続一本勝ちもそうですが、4連勝後に、当時7連勝中(1分挟む)だったレオ・サントスを3RにTKOに下したことでした。
「とても強い柔術家・グラップラーでテイクダウンをするのがとても難しかった。正直、試合中様々な場面でイライラさせられた。だから、一番大きな学びとしては“ヘイ、試合中にイライラする事はあると思うが、それは一切問題ないんだ”と思う事、そしてそのフラストレーションとどう対応するかが重要だという事だった。知っての通り、あの試合では最後の1秒でノックダウンをする事ができた。あれは自分にとって大きな気づきとなったよ。どんな試合でもいかなるタイミングでも終わる可能性がある。だから自分も常にディフェンスの気を抜かない事、そして常に戦うのを諦めないという事だ」
──ミズーリ州のグローリーMMA&フィットネスから、2022年にフロリダのATTに移籍していますね。
「レオナルド・サントスとは本当に接戦だったし、頭の中で、何かを変える必要があると思っていた。心の中では、ジムを辞めてより大きなジムを探す必要があると思っていたんだ。でも試合後のボーナスももらったから家を買って、そのままリッキー・グレン戦に臨んだ。1、2Rはテイクダウンからポジションを奪ってドミネートしたけど、3Rに失速してドローになった。これが“ラクダの背中を折った最後の藁”になった。僕が必要としていたサインだった。その後、ATTに行くことに決めたんだ」
──なるほど。ATTでは階級は異なりますが、日本人選手とも交流はありますか?
「もちろん! 恭司とは毎日のように話しているよ。彼はATTでも象徴的な存在だ。若手がみんな尊敬する選手の一人で、彼の経験は全域に渡るだろ? UFCもBellatorも、RIZINも。メジャーな団体すべてに出場して、そのほとんどでベルトを獲っている。だから皆が見上げる(尊敬する)選手だ。身体的には違うよ(笑)、彼はどの選手よりも小さいからね。だけど、精神的には本当に見上げられている(尊敬されている)んだ」
──ボビー・グリーンの手の位置が低い構えは、その堀口恭司選手の伝統派空手の戦い方が参考になったりもしますか。
「恭司がボビー・グリーンを含めどの選手からも抜きんでているのは、ディスタンスとレンジのコントロールなんだ。彼は本当に素早くて、出入りの動きのスピードがある。確かにファイティングスタンスは似ているところがあるとは思うけれど、比べてみると恭司はずっと早くてスピードのある選手で、彼はそのスピードをレスリングにも活用させている。ボビーにはそれがないと思っているんだ。だから、今週末の試合については、マイク・ブラウンたちといいゲームプランが練れていると思うよ。それを土曜の夜(日本時間・日曜朝)に披露するだけだ」
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15歳の頃からUFCファイターになりたいと思ってやってきた。マルクとの試合で「いま正しい仲間と正しいトレーニングができている」と確信した
──グレン戦の引き分け以降、3連勝中です。2022年4月にジャレッド・ゴードンを相手に消耗しながらも3Rに執念のチョークでタップを奪い、11月にリオ五輪グレコローマンレスリング銀メダリストのマルク・O・マドセンからシングルレッグでテイクダウンを奪い、カーフを効かせてリアネイキドチョークを極めました。
「マルクとの試合は、自分の自信に拍車をかけたでき事だったと思うよ。自分はさっきも話したように高校までしかレスリングをしていない中で、彼はオリンピックのメダリストだ。オリンピックはレスリングでは一番大きな舞台だ。だから、そんな凄い経歴の相手に、MMAを通してレスリングの技術で勝ったという事は、今自分がキャリアで積み重ねている事は正しい道のりだと証明する出来事だった。正しい仲間と正しいトレーニングができていると。そして、UFC王者になるというゴールに向けて、レスリングのバックグラウンドを持つ不敗の選手に一本勝ちできた事は大きな自信になったよ」
──ところで、あの引き手を掴んでの柔道スロー・払い腰は、ATTで習得したのでしょうか。
「たぶん、アブダビのナド・ナリマニとの試合の事だよね。彼の事を投げたからね。実はあれはレスリングから学んだ事なんだ。柔道はレスリングに比べて確かに投げ技がより多いけど、フォークスタイルレスリングには投げ技もあるんだよ。首投げとかは基本的な動きなんだけど、引手を掴んで足を使って投げる。柔道の技からもきているかもしれないけど、グラップリングはグラップリングだ。その中で自分がレスリングの基礎が一番いいなと思っている理由は、そういう風に色々な伝統的な技が、ギを着ないレスリングに少しずつ取り込まれているからなんだ」
──なるほど。たしかに世界最古の格闘技でしょうから四肢を使ったありとあらゆる動きが試されているでしょうね。そこに打撃も極めも加わるからMMAは大変です。7月の前戦ではMMA24勝3敗、UFCでも5勝1敗の強豪ダミル・イスマグロフにも判定勝ち。さまざまなテイクダウンを見せました。2Rにはダブルレッグから持ち上げながら、イスマグロフをスラムせずに寝かせて、とても冷静だと感じました。
「イスマグロフをスラムしなかったのは、彼を持ち上げた時に“クラッチロック”って言うんだけど彼の腕が自分をロックしていたからなんだ。あのままスラムしていたら、そのままスクランブルになって彼が上を取っていたかもしれない。だから自分は安全なポジションを常にキープできるように心がけていたよ」
──落ち着いてクラッチを解いて、ボディロックするイスマグロフの顔を剥がしてニアマウントからバックを奪いましたね。
「どうやって冷静さをコントロールしているかっていうことについては、自分の大きな強味の一つが状況判断だと思っている。何が試合中起こっているのかを理解する能力だ。その能力は自分がこの競技を長くやってきているから得られたものだと思っているんだ。15歳の頃からUFCファイターになりたいと思ってきた。だから常にトレーニングを重ねてきたし、その瞬間の為にずっと過ごしているんだ。今週末のボビー・グリーンとの試合も同じだ。この大きな舞台の為にどれだけ自分が準備してきたかという事なんだ」
──前戦で元暫定王者のトニー・ファーガソンに一本勝ちしたボビー・グリーンとの試合は、ドーソン戦選手にとってどんな意味を持つ試合になりますか。
「グリーンとの試合は──まず彼はハイペースで向かって来ると思っている。ボクシングスタイル中心の打撃戦だ。そして彼はショーマンだから、対戦相手へのトラッシュトークもするし、自分をカッコよく見せたい選手だ。しかし、僕は確実に準備はできている。そしてこの戦いで、世界に自分はワールドチャンピオンクラスのファイターなんだって事を見せたい。その1歩目がボビー・グリーン戦なんだ」
──UFC APEXでの試合がしばらく続いていますが、再び世界に飛び出す試合になりそうですね。最後に日本のファンにメッセージを。
「いつも恭司から日本のことを聞いているよ。日本のファンのみんなに伝えたいのは、もし僕を知らない人がいたら、とにかくSNSをフォローしてね。絶対好きになってもらえると思う。約束するよ!」
──そういえば、あなたのインスタでイスマグロフをリフトしている写真には、『NARUTO』の言葉が添えられていましたね(“Don't be afraid of death, be afraid of the unlived life.”死を恐れるな、生きられない人生を恐れろ)。いつか日本でも試合を見てみたいです。
「そうだね、実は、妻とのハネムーンに日本に行く予定を立てているんだよ!!」
──おおっ、それは。次の試合、そして来日も楽しみにしています!
「みんな、ぜひ会おう!」
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ATTの盟友エブレンとアモソフは、UFCでもベルトを巻ける
インタビュー後の会見でドーソンは、ATTの盟友で現Bellator世界ミドル級王者のジョニー・エブレンと、同ウェルター級王者のヤロスラフ・アモソフについて聞かれ、「ジョニー・エブレンは、この惑星で最高の185ポンドファイターだ。ジムでの話をしてはいけないことは知っているし、普段から厳しいルールを設けているけれど、彼はイジー(イスラエル・アデサニヤ)の前を歩いている。ジョニー・エブレンは今の地球上で最高の185ポンドファイターだと断言するよ。Bellatorが無くなるという噂があるが、そうなればヤロスラフとエブレンをUFCで見ることができるのに、と強く願っている自分がいる」と語った。
また、「両者がUFCでベルトを巻くことを信じているか」と尋ねられると、「イエス」とだけ答え、マイクを置いている。