山本アーセン「カウンタータイプなんて一番なっちゃダメな選手なのに、そこで変にかっこつけようとした自分がダメだった」
山本アーセンです、クソみたいな動きしちゃってほんとすみませんでした」
──試合後の率直な感想をお聞かせいただけますか。
「いやー、今ちょうどここ来る前に自分のダイジェストが流れて、それをちょっと見ていたんですけど、全然もっと行けばよかったですね。あんなカウンターとかバカみたいに狙うから……ほんとに、もっとちゃんと自分出して、もっとちゃんと攻めとけばよかったですね。あー……」
──攻められなかったのは作戦があってのことなのか、相手が何かをしてきたからなのでしょうか。
「福田選手が結構ジャブで気持ちいい感じになっていたから、自分もそれをはたいて、奥手を当てるみたいな、ちょっとスパーリングでも当たってたし、ウォーミングアップでもちょっと狙えるなって自分でちょっと自信ついてて。で、ジャブを狙いすぎちゃって、ちょっと自分が、重心がちょっと後ろに一個乗っちゃってカウンタータイプの選手になっちゃって。で、自分なんて、本当はカウンタータイプの選手になっちゃダメで、一番なっちゃダメな選手なのに、そこで変にかっこつけようとした自分がダメだったっすね。
もっと最初から最後まで自分の動きして詰めて詰めて詰めてそのなかでハメれたら良かったんですけど、なんか余計なことしちゃったっすね。余計なことをして自分の良さを自分で消した、みたいな。本当に、言葉悪くてすみません、クソみたいな試合をしてしまいました。すみません!」
──対戦相手の印象は試合前にイメージしていたものと戦った後では違うところはありましたか?
「もう一回やりたいとしか今思えないし、ただ、“今、自分ここにいるのか”ってちょっといい意味で自分の位置確認ができたから。で、自分のだめなところが今までで一番見えて、自分が何をしないといけないか今までで一番見えた試合だったので、絶対強くなれるっす。また強くなります。セコンドにめっちゃサポートしてもらって、もちろんやっていることも出たんですけど、なんか、ちゃんとチームで決めていたことを自分で無視ったところがありますね、今よく考えてみたら。まあ、次は欲とかも何もかも捨てて、自分たち、仲間たちで話したことをしっかりと最初から最後まで遂行するような選手になりたいです。自分で暴走するのは止めます」
──打撃戦で福田選手を攻め込む場面も。打撃戦は今回の最初からのプランでしたか?
「もちろんグラウンドありきで進めるっていうのがもともとのプランだったんですけど、ちょっと自分のなかで“漬ける”試合じゃなくて、ほんと今回、自分のなかで、正直なことを言うと“KOで勝てる”気がしたんですよ、なんの根拠もないですけど、KOで勝てる気がして、ちょっと今回、立ち技でマジで行ってみようって、自分だけで決めていたところがあったんですね、チームにあんまり言わないで」
──「KOできそう」というのはいつ頃感じたのですか?
「ずっとキャンプのなかで打撃にちょっと自信はついていたんですけど、昨日、結構自分の中で、何か分からないけどKOで勝てる気がすると思って。で、打撃でちょっと勝負してみようかなと思ったっスね。打撃を見せたかったです。自分がどこまでできるんだよ、みたいな。(相手が)ちょうどランキング1位だったり元修斗王者でどちらかっていうと打撃のほうの選手だったから“あっ! これで超魅せられる”と自分で勘違いしちゃったところがあったですね。でもやっぱり俺はね、死んでもレスラーだってことをこれから忘れないように戦っていきたい。でも打撃もこんだけあるんだよっていう、ちょっとしたメッセージにもなったと思うので、ここから相手、俺と戦うのちょっと嫌になるんじゃないですか? 分かんないけど」
──ドクターストップで試合が終わりましたが、負傷具合は?
「あっ、ちょっと血が垂れてきた(血を拭いて)。まあ見た目はすげえボロボロだし、あの時はしっかりレフェリーの指も見えて『何本?』という質問にも全部答えて『お願いします、もう本当に大丈夫だから』と本当に脳も何も効いてなかったので。ただ、試合中でジャブがこっち(腫れていた左目)寄りになったという印象が自分の中であったんですよ。(相手)セコンドの『もう少しでこっち閉じるから』という声も聞こえて、“あ、閉じにきてるんだな”みたいな。だったら、集中的に狙うんだろうな、多分フックじゃなくて、まっすぐ集中的にここ狙うんだろうな、じゃ、はたいてストレート出してやろうというところに繋がっちゃったですね、正直。あそこを気にせないでもっと前に出ていたらよかったんですけど。はぁ……」
──止められる直前も「問題ない」と。
「あと1分半だったので続けられました。多分やれたっス」
──最後までやることで自分に勝てるチャンスがまだあると感じていましたか。
「効いてるって分かってたんで、何回も脳揺れるじゃないですか。人間の脳みそって絶対リセットされないんですよ。“ああ効いた!→うーん!”って、ゲームみたいにゼロにならないんですよ。ある程度どこかでダメージがあるから。だから絶対倒せると思っていたんですよ。でそこで“めっちゃ強いの当ててやる、ぶっ倒してやろう”って、カウンターファイターになっちゃったりなのかもしれないですね。だからあそこで何も変えずに、ちゃんとレスラーの味も出しながら、テイクダウンも狙いながらやっていたら、またどこかで当たって倒してたんじゃないかなと思って。
なんか、さっきもリプレイ見ていたら、効き方がどんどんどんどん大きくなっていってたんで、最後の方はヒザついてたから、多分次はしっかりぺちゃってなるんじゃないかなって思っていたのもあるっスね、まあそれは試合を見てから思ったのか。たしかにチャンスはあるんじゃねえかなと思ってたんです。倒せるチャンス、まだあるなと思って。自分はいたって顔以外健康だったので。ただ相手が足とボディと脳みそが効いているのが見えてたから、あとは、あそこもっと散らせばよかったのか、そこがヘッドハンターになってたんだ。そういうことか」
──伊藤裕樹戦が2年半ぶりの試合になり、今回は4カ月程度でした。これくらいのペースでもっと試合を重ねていきたいですか?
「はい。絶対レベルアップできるっス。で、もう打撃は自分がどこまで大体できるというのが見えたので、次はどっちもちゃんと混ぜながら、自分のいい要素を入れながら相手をぶっ倒せるファイターになります」
──誰にも言わずに打撃勝負を決めたことを聞いた、セコンドの中村倫也選手はいかがですか? その素振りは全くなかったですか?
「素振りはあった」
倫也 素振りはあったかもしれないですね、今日行きの車で「今日なんかすごいことが起こる気がするなー」みたいな言葉があったり。プランはレスリングをしっかり使うことだったのですけど、結果的に、練習の打撃の自信と実践の打撃の自信は全く別物なので、本当に別物なので。今回アーセンは後者を手に入れたと思ったので、結果的にすごい良かったと思っています。
「褒めすぎだから」
──カーフもある程度効かせてパンチも当たって、結果は結果として、打撃の経験値はすごく得られたと?
「何回、倫也のカーフ蹴ったか分からない。それが勝ちに繋がらなかったことが悔しいのと、せっかく未来のホープである矢野トミーちゃんをセコンドにつけて、まさかの1回もテイクダウン行かないっていう(苦笑)。そこちょっと反省してます。マスコットキャラクターみたいになっちゃったし。トミーちゃんに前回の試合、いつもだったら『相手はここ弱いからここ一本極まるよ、この動きだったら相手嫌がるよ』ってことばっかり言われるんですけど、トミーちゃんはすげえ正直だから『前回のアーセン、これやってたからこれ逃げられたんだよ』とか俺の悪いところから指摘して、自分の悪いところを、『こことここ直せば大丈夫だから』みたいなことを言ってくれて。で、そこから結構自分のグラウンドゲームの意識が変わったっすね。
だから本当はグラウンドめっちゃ成長してるんです。見せなかったけど、本当にトミーちゃんと倫也のおかげで、グラウンドの完成度っていうものがすごい上がったんですけど、ただレスリングやってパウンド打ってヒザじゃなくて、本当にテクニックが詰まったグラウンドゲームができるようになってきてるんで、次試合決まったらしっかりそこを見せて。で、相手が疲れて嫌がったら、もうブン殴るし、相手がガード固めてんだったらグラウンドに持ってって一本極めに行くし、あの次はちょっと自分のまた違う方の成長をしっかり見せてやろうと思ってます」
──伊藤選手とは違い、福田選手との試合ではテイクダウンが難しいという考えのなかで打撃もしっかり立ち合う必要があると考えた部分もありましたか。
「(テイクダウンを)取ろうと思ってなかったです。何回か入りにいったのも、あれは全力で取りに行っていないので。ただ単にこっち、こっちというのを思わせて、ちょっとオーバーハンド当ててやろうかなというのもあったので、あれが自分のテイクダウンじゃないので」
──序盤に深追いしなかったのもそういうところから?
「もともとチームから『深追いだけはするな』って言われてたんで、相手ブラックホールみたいな選手だから、自分の距離感をしっかり保ちつつ、しっかり上・下を散らしてテイクダウンも入れてっていうのが元々の作戦だったから。そこはまあなんとかできたかなとか。自分の中で良しとしようかなってところで、それはすごい自分の中では初めての戦い方なんで。
あと、最後に自分のチームメイトに感謝するのと、これからチームメイトも試合あるし、矢野トミーちゃんもこれから柔術の大会バンバン出たりするし、倫也もUFCでこれから無敗のまんま上に行くし、自分の仲間のチェックもよろしくお願いします。感謝しています。また帰ってきます! 強くなって」