2023年9月22日(金)に木村“フィリップ”ミノルの所属ジムであるBattle-Boxの渡辺一久会長より、RIZINのドーピング検査で陽性となった木村にジムとしての処分(ペナルティ)として「無期限の試合出場」が発表された。
この発表を受け、榊原信行RIZIN CEOがコメント。「それがどういう意図で下されたものか僕らもしっかり発表を読んでみたいと思います」と前置きし、ジム側とは「まだ話していない。1回話はジムとしようと思う」という。
「結局、半年間も待てないってことだと思うんだよね。木村ミノル側からすると」と話し、「僕らも選手たちが抜いた後、抜く前とかを検証したこともないので分からないけれど、抜くといろいろな反動がある、肉体的にも精神的にもあると聞いているし、そういうものも含めてどう木村選手および木村選手サイドが真摯に受け止めて、とにかくRIZINに出ることを目標に頑張ってくれると思ったんですけれど」と、半年間を経ずに他団体に出るならそれは残念に思うとした。
「ファンからすると(半年間の出場停止は)短いと思った。でも僕らからすると、僕らは温情もあるって言うか。その競技とか選手とプロモーターで一緒に立場は違えど二人三脚で作り出すものだから、選手が生きていくためには試合をしないとファイトマネーが稼げない。じゃあ2年間(出場停止)ですとボーンとうっても、2年間俺たちが生活を保証してあげることが出来るのか。2年後に旗を立てても2年間も選手は走り続けられないから、本当に抜いてクリーンになって出直す気持ちと身体を作るのに半年あればいいでしょ、っていうのが僕らの考え。
だから半年後に旗を立てて、RIZINに戻って来たいんだったら半年でその権利を手に入れられるだけの肉体を作って、もう1回検査を受けなさいということなんだよ。1年出られません、2年出られません、って言ったら迷走してその選手自体が薬から縁を切ることが出来ない。僕らからするとこの業界の選手の立場も考えて、ひとつのこれが正しいかどうかも含めた自分たちなりの判断だったけれど、半年では短いのかもしれないけれどその前に半年の時点で検査してクリア出来なければRIZINには出られないから。そういう意味では半年でも2年でもどっちでもいいんですよ」と、RIZINとして出場停止期間を半年に区切った理由を説明。
しかし、「僕らは半年間という中で拘束力のあるような選手契約を持っているわけではないし、僕らはフェデレーションという立場を謡っているので。その間にジムや違う団体が入ったり、それぞれの哲学とか考え方に則って選手ってコントロールされているので、僕らが500人いるUFCの選手契約みたいに独占的に2~3年間コントロール出来るわけではない。そういう意味で言うと、僕らがアウト・オブ・コントロールの選手なので、現状木村選手と出場契約すらないんですよ」と、木村を拘束するような契約は持っていないとのこと。
「だからRIZINとしては、半年間の中でクリーンな身体を作って再検査を受けて陰性だということが証明されれば、半年以降の中で試合が出来る可能性を作りますよ、本当に半年間精進して最短であれば半年間で薬を抜いて身体を作って準備を整えてくれれば出る権利は作りますというのが僕らの判断。これが常習犯で2回も3回も4回もやっている選手なら違うかもしれないけれど、初めて検査に応じてドーピングの結果が出たんだから、彼が本当に格闘家として反省してダメなんだってことを理解して、RIZINに出るためには完全にステロイドと決別しなくてはいけないってことを決めれば自ずとそれに基づくアクションが決まるんじゃないかとは思ってはいるんですけれどね」と、試合に出場するのは半年間待って再度検査を受け、クリーンになったことを証明してからでいいのではないか、と話した。
また、木村との対戦を望んでいる安保瑠輝也が、今回の宇佐美正パトリック戦を「リングサイドまで見に来い」と木村に言っていることには「知らないです。でも別に来てもいいんじゃないですか。別にRIZINでやらなければいいもん、そんなの。うちではやらなくても別にどこかが他でそれを受けてくれる。安保とも長期的な契約があるわけではないので。BreakingDownでやればいい(笑)」と、現時点で安保vs.木村がRIZINで行われる可能性は極めて少ないとの見解を示す。
「僕らが意図的に、大晦日に木村ミノルが間に合うから半年にしたんやとか、そんなちんけなこと考えてないって。木村ミノルが出てきて安保とやるって大晦日がTHE MATCHのように大フィーバーになるかって言ったら、だいぶアンダーカードの下の方にしか組めないカードなので。もうちょっと大きな心を持って愛を持って、責任感と厳しさを持って中長期的に向き合っていく問題だと思うし、一概に僕らもああでもないこうでもないと言えないけれど。これは本当に難しい問題だと思うんですよ」と、半年後という期限は大晦日に間に合うように設定したわけではないと断言。
そして「この前、RISEの伊藤さんとも話して、日本の中でアンチ・ドーピング機構というかドーピングの検査をしてもらえるためには、みんなで一堂になって格闘技界で共同の第三者機関のようなものを設けるのか。でも結局、格闘技界の中でザルになってしまうというか。例えばK-1とRIZINとRISEとKNOCK OUTと4団体だけでやりますって言ったって国としては認めないと思うんだよね。競技全体としてアンコントロールになるんだったらWADAは受けてくれないですよ。
格闘技界ってある人が突然今日プロモーターになろうと思ったらなれちゃう業界なので難しい。何が正しいか分からないけれど、ただ意識はちゃんと持ってひとつのアンチテーゼにはなったと思うのでね、今回のアクションは。少なくともRIZINの中ではひとつのアンチ・ステロイドに向けた自分たちの指針を、今のものを基準にどう高めていくかは常に向き合って考えていきたいと思っています」と、アンチ・ドーピングへの姿勢を示した。