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2023年9月24日(日)の『RIZIN.44』(さいたまスーパーアリーナ)に向け、出場全選手の個別インタビューが22日(金)、都内にて行われた。
メインイベントとなる、第11試合のフェザー級(66kg)5分3Rで、クレベル・コイケ(ボンサイ柔術)と対戦する金原正徳(リバーサルジム立川ALPHA)が、記者からの質問に答えた。
知っていることが増えて、クレベルの強さを改めて感じている、ちょっと今までではない経験です
──試合を2日後に控えた心境は?
「クレベル戦が決まってから2カ月長かったです。眠れぬ日々が続いたり、キツい練習が続いたり、充実した日々を過ごせたなと思っています」
──あらためて、対戦相手のクレベル選手の印象を。
「試合を決める前、戦う前から強いのは知っていたし、あらためて映像を見返すと強いという感想しかないです。自信が無くなっていく場面が続いたので映像を見ずにいたら──SNSで流れてくれるのであれやめてほしい(苦笑)。見る気がないのに目にとまっちゃうのはあるので、見ないように極力しています」
──さいたまスーパーアリーナでのメインの楽しみは?
「それはないです。小学校のピクニックじゃないので、最後だから、メインだからいいというのがない。オープニングから(試合まで)ちょっと長い、というくらいで変わらない。何10試合もやっているので、いつも通りですね」
──試合展開のイメージは?
「どうなんでしょうね。みんなが思っているような展開なのか、自分の思う展開なのか。クレベルの思う展開なのか、予想できないことではあるんで。どういう状況、どういうパターンになっても、負けるパターン・勝つパターンで練習を重ねてきました。どの状況になってもいつも通りできたらいい。どんな状況でもパニックにならないように、テイクダウンされたり、バックも取られるかもしれないし、そのなかでもちゃんとした対応を焦らずに、投げ出さずにやりたいと思います」
──勝ちパターンのイメージはできていると。
「勝つパターンはこれなのかなという感じはありますし、勝負できるのはここなのかなというのはある。当日組んでみないと分からないことが多いので、何年か前に組んだイメージではないなと。けど大きく構え過ぎてしまうのも良くないので、当日の“現場あわせ”でセコンドや自分の感じたまま動けばいいなと思っています」
──今回の試合の注目度は、山本“KID”徳郁戦(2009年大晦日Dynamite!!)以来でしょうか。
「時代がちょっと違ってくるので、反響の鳴り合いが変わってくるから、どうなんでしょうね。その都度、反響は違ったし、UFCも、RIZINで始めたときも、それによって波があるから。でも僕としては変わらない。周りが騒いでいるだけで、特に意識はしていないです」
──身近な家族からは、今回の強敵に向かうにあたってエールやアドバイスは?
「家族はもう、試合すること大反対なんで(笑)。嫁なんてクレベルのこと知らなかったし。存在は知っていたけど、こんな反響と知らなかったし、メインだと昨日知ったくらいで。興味ないんで、僕には。それくらいがいいんです。観戦? さすがに会場には来ます。さすがに来なかったらヤバい(笑)」
──子供にもその姿を?
「僕が頑張っている姿をそう何回も見せることはできないので、自分が頑張ることで、将来、子供に『俺も頑張っていたんだぞ』と、あと20年くらい威張れるので、この15分だけ頑張って、という感じです」
──長く続けてきて良かったという感慨も?
「プラマイゼロですね。嫌なことも辛いこともたくさんあったし、勝たなきゃ何も始まらない。長く続けていればいいこともあれば嫌なこともありますから」
──クレベル選手に勝つパーセンテージを上げる練習をしていたというなかで、いまそのパーセンテージは?
「分かりません。それは分からないです。100パーセント勝つつもりでリングには上がる。その勝つための作業を2カ月間やってきて自信にはなっている。100で上がらなければ、自分が自分を信じなければ、誰が信じるのかと。自分だけは、自分のチームだけは、金原だと。もちろん山はあります、起伏はありますけど、明日、明後日、24日にピークに持っていけるようにやってきたので、最後、自分を信じてリングに上がりたいと思います」
──クレベル選手の動画はどのくらい見たのでしょうか。
「自分は動画を見て対策を練るタイプではないし、そんなに嫌だなと思ったことはないけど、改めてクレベルの試合を見返すと、強いなという言葉しか出てこない。若かったときは勢いで余裕とか言っていたけど、知っていることが増えて、クレベルの強さを改めて感じているし、ちょっと今までではない経験です」
──「試合を見ると自信を無くす」と言っていたが、これだけキャリア重ねた金原選手にとっても、クレベル選手は特殊な相手だと。
「あんまりこういう感情になることは無かったですね。今までは、成り上がっていこうとか、上に行ってやろうという気持ちのほうが強かったから、ネガティブ要素はあまり無かった。いろいろ知ることによって、改めてクレベルの強さが強く輝いて見えますよね」
──それは単純にプレッシャーなのか、プレッシャーを感じる自分に持っていく感覚なのでしょうか。
「覚悟は試合が決まった時点で出来ている。逃げることは出来ないし、正面から戦うことしか出来ない。何ですかね、本当に分からない。歳を取ると色々考えは変わってくるのかなと思っています」
──キャリアの集大成と言われる試合で、クレベル選手はどういう存在でしょうか。
「なかなか難しいですけど、今まで何回か練習一緒にしたことある仲だし会えば普通に話す、知らない仲でもない。僕がいなかったというか、その間に急にパッと出てきて、出てきたら活躍する選手と、実力は分かっていたし、頑張ってこの地位まで来たのだと思います」
──以前、ケラモフ選手の名前も出していましたが、この試合の後は?
「終わった後に打ち上げに行きたいな、くらいです」
──今回の試合は「答え合わせ」と言っていましたが、これまで連勝があっても、戦ってきたレベルがかつてUFCで戦って来た相手と違うとしたら、あらためてここでクレベル選手と戦うことが持つ意味を、どうとらえていますか。
「本当に言い方は良くないかもしれないけど、今まで連勝した3選手とはレベルが違う。そのなかで自分も試合に賭ける思いや熱量が今までと全然違う。これまでは、自分の持っているものを、いいパフォーマンスで出来れば負けない自信があった。今回それだとクレベルには勝てない。怪我しても何してもいいから、一種懸命頑張って、コンディショニングっていうよりも、自分が今持っている120パーセントに仕上げて行かない限りは勝てない。
自分に鞭打って、最後になってもいいという思いで取り組んできたつもり、もちろん最後にするつもりはないけど、これまで培ってきたものを全部出して、格闘技しかやってこなかった自分が、格闘技で強いやつに負けてしまうと、自分がやってきたものの否定になる。自分を肯定させるために勝つ。それが“答え合わせ”です」