2023年9月10日(日)豪州シドニーで開催される『UFC 293: Adesanya vs. Strickland』(U-NEXT配信)のフライ級に、同級10位のマネル・ケイプ(アンゴラ/ポルトガル)が出場する。
当初は同級5位の上位ランカーであるカイ・カラ・フランスと対戦予定も、カラ・フランスが練習中の脳震盪により同大会を欠場。ケイプは、代役でUFCデビューながらMMA7戦無敗1NCのフェリペ・ドス・サントス(ブラジル)と対戦することになった。
オクタゴン3連勝でトップ5と対戦予定だった元RIZINバンタム級王者が本誌とU-NEXTに語った、UFC6戦目と、日本の同階級のライバル平良達郎、そして朝倉海について──。
ドス・サントスは「特別」じゃない。練習した平良は──
──現在の心境をお聞かせください。
「気分はいいよ、対戦相手が変わって、自分が期待してた相手ではないけれど、それでも結局のところとにかく試合がしたかったから。自分がどれだけ強いかをファンのみんなにも見せたかったし。だから気分はいいんだ」
──今回は対戦相手が見つかりましたが、マネル選手の試合は何度もキャンセルになりました。「またかよ」と思うこともあったと思いますがどのようにモチベーションを保ってきましたか?
「自分はいつだって“次の試合はもっといい試合をするんだ”って心に決めているし、UFCとも話しあって、団体としてもこういうことが起こるたびに、もっといい選手との試合を組んでくれようとしているんだ。もちろん、時には“キツイな”って思うよ。だって、そうだよね、ファイトキャンプの真っ最中だったり、試合まであと少しだというところで出来なくなったりするから、やっぱりちょっとイライラを感じる時だってある。でも、いつも自分は気持ちをとてもポジティブに落ち着かせているよ、次に向けて」
──キャンセルになった対戦相手は元王者、続いてタイトル挑戦経験者でした。代わりに対戦するのがデビュー戦の選手となり戸惑いはありましたか? それとも、誰であろうと試合をするということが最優先でしたか。
「もうこの場所にまで来ていたし、ファイトキャンプをこなしてきた。何カ月も、1年近く練習をしてきた。実際のところ、誰であろうと、ニューカマーであろうとUFCと契約した選手なんだからハードな相手であることは間違いないと思ってる。今回の対戦相手をみくびることはないし、デビュー戦ならなおのこと彼は自分のスキルを見せつけなきゃと意気込んでいるはずだ。一方で、自分は同じような気持ちでいるというか、彼をチャンピオンだと思って対峙する。彼はカイ・カラ=フランスを倒すレベルのファイターなんだと。そういう気持ちで自分のやるべきことをやるんだ」
──カイ・カラ=フランスについて十分に対策をしてきたと思います。対戦相手が変わったことで注意している点などはありますか?もしくは、あらたにフェリペ・ドス・サントスに対しての対策を立ててきましたか?
「実のところ、あんまり自分の対戦相手のことは気にしすぎないようにしているんだ。みんなそれぞれに強みがあるけれど、そこにばかり気をつけて、彼らの持つ武器をいかにディフェンスしようか、というような対策には気を取られない。常にオクタゴンの中では僕が攻撃する側であるし、自分が支配者の側だからだ。相手が自分に合わせなくちゃいけないんだ。自分の技術だったりポテンシャルというのがオクタゴンを牛耳っている」
──ブラジルのフェリペ・ドス・サントスは、MMA7戦無敗1NCと、これまで負けがありません。アグレッシブなムエタイファイターだけど、テイクダウンディフェンスなど技術的に粗さも目立つ。この侮れないグリーンボーイであるドス・サントスをどうとらえていますか。
「そうだな、思うに彼は若くて、スキルを見せたいと思っていることだろう。ただ、まだまだ若くて、彼を取り巻くモチベーションみたいなものって、自分が通ってきた道というのか、分かるのだけれど、それでは足りない。一生懸命取り組まなくてはいけないし、何か特別な存在にならなければいけない。自分が22歳のとき、自分はどこか特別だったんだ、そういうものが彼には見られないかな。7戦無敗のいい選手だとは思うけど、あんまり感心することはない。だからといってもちろん過小評価もしない。何が起きてもおかしくないから。だけど自分がこの試合の“フェイバリット”(優勢)であることは間違いない」
──ところで、ラスベガスでは、同じフライ級の平良達郎選手とも組むことはあったのでしょうか。
「ああ、彼に会って一度一緒に練習したよ。とてもいい選手だしどんどん良くなっている。彼は無敗のファイターで……、うん、これが次の相手との違いかな。自分が平良を見たときは何か特別なものを感じたんだよね。まさに言いたいことはこういうことだ。とても素晴らしいファイターでとてもいい選手だと思った、そういう特別なものを、自分の次の対戦相手からは感じなかったっていうことだ」
──では、平良選手の次の対戦相手ドボジャークに判定勝ちしているケイプ選手から、平良選手にもしアドバイスがあるとすれば?
「とにかく集中することだ。僕は平良が必ず勝てると思う。とにかく集中して、これまでと同じようにシャープに戦うことだ。彼のここまでの戦績も素晴らしいし、これからタイトルに向かっていく大きなポテンシャルを持った選手だと思ってる」
──平良選手とドボジャーク選手の試合は、どんな試合になると思いますか。
「タフな試合になるだろう。一本を取るのが大変だ。平良はストライキングも出来てグラウンドゲームも達者だとは思うけど、ドボジャークはめちゃくちゃタフなんだ。ギブアップしない。ただ、平良のスキルとポテンシャルを持ってすれば問題ないし、ドボジャークはダメージが蓄積していると思う。たとえばの話、僕と対戦する前の彼だったらよりタフだったと思うけれど、自分を含む3戦で3Rやり通しているし、あまりいい状態じゃないと思うな」
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朝倉海はちゃんと自分で向き合える人
──RIZINから続けてUFCで活躍するあなたを日本から応援しているファンも多いです。日本で経験した試合で印象的だったのは?
「全部の試合のことをしっかり覚えているよ。全試合が特筆に値するものだ。全ての試合もだし、全ての試合をした場所も、日本でのことをしっかり覚えてる。食べ物も、ファンのことも、そのファンが自分にどれだけ良くしてくれたかも。些細なことだって全部が思い出だ。日本が大好きだよ、日本という土地が好きだし、いつだっていい思い出を残すことができた。いつも心の中にあるよ」
━━朝倉海選手とは連絡を取り合っているのですか?
「うん。いつも、トレーニングのことだとかファイトキャンプについてとか話しているんだ。それで今回の試合に向けて、タイで一緒にトレーニングするなんてことも計画しあっていたのだけれど実現しなかった。自分はオーストラリアに早めに入ることにして、来てからもう3週間になるんだけど。それでタイに行く時間もなくなってしまった。とにかく、彼とは今も連絡を取り合っているよ」
──その練習仲間でライバルでもある朝倉海選手は、あなたが7度も試合キャンセルにあったように、拳の骨折、今回は練習で左膝内側側副靭帯損傷でなかなか試合がコンスタントで出来ていません。何かアドバイスやかける声があれば。
「彼は賢い子だから。デカくていいビジネスをやっていて、もしビジネス的にうまくいってない人間だととにかく生きるために戦うしかないっていう状況になるから、モチベーションを保つのがすごくキツくなってしまうと思うのだけれど、自分が思うに朝倉海って子はすごくメンタルも強い人だと思っていて、自分が彼を倒した時にも話してそう思ったし、周囲も含めてスマートだ。
こういう状況になったときに無理やり鼓舞するというようなことじゃなくて、ちゃんと自分で向き合える人だ。健全な状態で、試合について心配する必要はない。YouTubeでも元気にやっている感じがするし、とにかく彼はほんとに大丈夫だと思う」
━━日本のファンのにメッセージをお願いします。
「いつも応援してくれている皆さんへ、ありがとうございます。皆さんのことを片時も忘れたことはありません。シドニーでの試合もぜひ見て下さい。(日本語で)ありがとう! 」
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UFCフライ級ランキング(2023年9月7日 時点)
【写真】UFC世界フライ級の頂点は、堀口恭司の盟友パントージャ。堀口がBellatorで戴冠すれば、ATTに2本のベルトが揃うことに。
王者 アレッシャンドリ・パントージャ(ブラジル)※ケイプ、ロイヴァル、ペレス、7月にモレノを下し、戴冠1位 ブランドン・モレノ(メキシコ)※フィゲイレードと2勝1敗1分。7月にパントージャにスプリット判定負けで陥落2位 デイブソン・フィゲイレード(ブラジル)※モレノと1勝2敗1分。ケイプ戦をキャンセル、バンタム級転向?3位 アミル・アルバジ(イラク)※UFC5連勝中。6月にカラフランスにスプリット判定勝ち4位 ブランドン・ロイヴァル(米国)※モレノ、パントージャに敗れるも、ボントリン、シュネル、4月にニコウラにTKO勝ち5位 カイ・カラ・フランス(ニュージーランド)※UFC3連勝後、モレノにTKO負け、アルバジにスプリット判定負け。9月のケイプ戦をキャンセル6位 マテウス・ニコラウ(ブラジル)※UFC4連勝後、4月にロイヴァルにTKO負け7位 アレックス・ペレス(米国)※2022年7月にパントージャに一本負け、2023年3月のケイプ戦をキャンセル8位 マット・シュネル(米国)※ス・ムダルジに一本勝ち後、ニコラウに2R TKO負け、2023年6月のドボジャーク戦はキャンセル9位 ティム・エリオット(米国)※ニコラウに判定負け後、ウランベコフ、アルタミラノに判定勝ち。10月にモカエフと対戦10位 マネル・ケイプ(アンゴラ)※ニコラウにスプリット判定負け後3連勝。9月にドス・サントスと対戦11位 ムハンマド・モカエフ(英国)※UFC4連勝で10月にエリオットと対戦12位 ス・ムダルジ(中国)※エンボーFC出身。UFC3連勝から2022年7月にシュネルと大激闘の一本負け13位 タギル・ウランベコフ(ロシア)※2022年3月にエリオットに判定負け、11月にネイト・マネスに一本勝ち14位 スティーブ・エルセグ(豪州)※6月にドボジャークに判定勝ち15位 コディ・ダーデン(米国)※8月にジェイク・ハドリーに判定勝ち。
平良達郎がランキング入りを目指すフライ級では、上記のランキング以外では、15位にいたダビッド・ドボジャーク(チェコ)が、6月にエルセグに判定負け後、注目コディ・ダーデンの台頭でランク外に。そのドボジャークと日本の平良達郎が10月14日に対戦する。そのほか、平良が判定勝ちしたカーロス・カンデラリオに三角絞めで一本勝ちしたジェイク・ハドリー(英国)、そのハドリーに判定勝ちしているアラン・ナシメント(ブラジル)ら強豪が控えている。