2023年8月27日(日)17時から『ROAD TO UFC(RTU)シーズン2 準決勝』(シンガポール・インドアスタジアム)が開催される(U-NEXT配信)。
日本からはフライ級で鶴屋怜(vs.マーク・クリマコ)、バンタム級で上久保周哉(vs.シャオ・ロン)、フェザー級で神田コウヤ(vs.リー・カイウェン)、ライト級で原口伸(vs.パク・ジェヒョン ※バテボラティ・バハテボラが失格)の4選手が1回戦を勝ち上がっている。準決勝ではどんなファイトを見せるか。各階級の優勝者は、UFCとの契約を勝ち取ることになる。
フェザー級でUFCへの道を進む神田コウヤにリー・カイウェンの意気込みを聞くと、神田は「勇気を持ってハリケーンの目の中に入っていく」と語った。
――1回戦を経て、神田選手の中で、自分の中で感じたこと、修正したことなどもありますか?
「1回戦から変えたことはとくに技術的なことはなくて。やっぱり一番大きいのが内面的な変化だと思います」
――それはどういう内面の話ですか?
「前回は上海で試合があって、相手の選手が中国人で、入国の手続きとかもすごく大変で、そういうのも含めて、それを全部乗り越えたので。声援とかも完全にあっちでしたし。それを乗り越えたという自分がいるので。前回はそういった自分がいなくて、今回はそれを乗り越えた自分が今いるので、それは大きいと思います。やっぱり自分の中の自信が多いほうが、動きに対してためらいがなくなるというか、戸惑いがなくなると思うので、そういう自分の判断に対する自信というのは、前回よりはあるんじゃないかなって」
――あの試合で、ここで行くか、行かないかというシーンがいくつか判断があったかと。
「ありましたね。とくに2Rとか、ちょっとうーんという感じだったんですけど、自分はセコンドの人にそういうペース配分を任せて手綱を握ってもらってお願いしているので──過去の戦いを振り返ることになっちゃうんですけど、牛久絢太郎選手とタイトルマッチをしたときに、セコンドの中では勝ってたという判断で進めてて、そういうペース配分で行っていたんですけども、そういうわけにはいかなくて……。セコンドの方も『どちらか分からないときは取られているかもしれない』とはっきり言ってくれるので、そこを信じて。自分はそういう苦い経験をしているからこそ、もう負けているかどうか、勝っているか微妙なときは躊躇せず行こうという、そういう身体の中に、血の中に刻まれています」
――それであと一歩のところで競り勝つ形になっているかもしれないですね。
「本当にその敗戦が生きた戦いだったと思います」
――前回中国で今回も中国人ファイターのリー・カイウェンが相手で、UFC PIも含めて研究されていますね。
「彼はアカデミー生ですよね、PIの。そして米国でも練習もしている。でも、自分の予想なんですけど、構わず来るんじゃないかなと。あんまり研究分析して、相手の動きに対してこうとかっていう感じの選手ではないのかなって。そういうふうにしちゃうと、気にしすぎちゃうと、結局後手に回るじゃないですか。彼って先に、いきなりカーンと始まった瞬間に跳びヒザをやったり、そういうアグレッシブな選手なので、もしかしたらセコンドの言うこと聞かずに振り回してくるんじゃないかって勝手に思っていて。自分の世界観のある選手なので、それが彼の強みでもあるし、弱みでもあると思ういます」
――強みであり、弱みでもある、と。
「そこらへんが、自分もあんまり作戦とか技術にとらわれないようにはしたいなという風に思います。喧嘩するときは喧嘩するという」
――パラエストラ千葉ネットワークだと誰と練習することが多いのでしょうか。
「自分はアマチュアの選手とも練習するし、プロでいつもという選手は……太田(忍)選手や岡田遼選手とか、けっこうみんな昼と夜の練習で、みんな自分の仕事のスケジュールとかで動いているので、まだデビューしたてとか、デビューしてないような選手とかと組むことが多いです。正直あんまりそこまでトップ・オブ・トップで、皆さんが思い描いているような選手とは、やってないかもしれないです」
――あのヒジ打ちなど思い切った動きは、自分の中でイメージしてやっているということですね。
「そうですね。全て、練習の中とかでもそうですけど、一番大きい学びは、自分の過去の試合映像がどんどん自分を改善してくれているので、どんどんフィードバックを得て、必ず、試合が終わった後は飽きるまで試合映像を見ますし。一番大事なのって、やっぱり相手どうこうより、自分の試合を振り返ることが一番大事なので。
やっぱり対戦相手にとらわれてしまうというのは、朝倉未来選手みたいに分析分析みたいな感じに、そういう傾向に日本はなっていると思うんですけど、果たして“自分”を分かっている人ってどれくらいいるんだろうなって」
――自分自身を。
「生きるうえで、それって一番大切なことじゃないですか。他人に依存せずに、やっぱり自分の軸で動いていくって。そんな感じで、自分も自分を見つめ直しています」
――自分の動きがどう変わっているかというのを把握しながら、練習の中では、場合によっては一般会員の人とも組みながらアップデートして、自分を強くしなくちゃいけない。それはすごい大変なことのように感じます。
「短期的に見たらそれほど大変ではないと思うんですけど、長期的に見たら、すごく成果を上げられていると思うので、けっこう試合前だけ追い込んでという選手は多いと思うんですけど、自分の場合はもう本当に日々淡々と過ごしていて、指導して練習、指導して練習の繰り返しで、そんなにあんまり練習量も年間変わらないですし、もうむしろ試合前のほうがちょっと減量も始まって、1カ月くらい練習は少なくなるかなくらいの感じですね」
――では常に自発的に考えていないといけないですね。
「そうですね。もう常に格闘技に身を向いているので」
――リー・カイウェン選手の試合は、ONEでの試合も含め、見ていますか。
「見ました」
――彼もそこから変わってきていますよね。
「やっぱりスイッチとかもするようになってるし、この前の復帰戦とかはすごくいい状態で、心身ともに臨めてたんじゃないですか。彼って、ONEでデビューしたとき、年齢が若いから、いまは27歳、自分と同じ歳なんですけど、心身ともに充実しているんじゃないですか。すごく強くなっていると思います」
――それは神田選手にもいえるんじゃないですか。
「そうですね。やっぱり27歳ってけっこう、30歳に差しかかるし、すごく充実してきているんじゃないですか」
――その中でどんな試合で勝ちたいと思っていますか?
「自分はやっぱり前回みたいな試合がしたいんですよね、結局。それが一番気持ち良くて」
――キツい試合ですね。しんどいことをする。
「気持ちいいですね。でも、これって理想論をいえば、ダメージなく一本KOで終わっちゃえばいいんですけども、現実ってそんなに甘くない。相手もそうとう強いし」
――対戦相手は数分間だけだったらすごい強い強さを持っている。
「まさにハリケーンみたいな感じで。やっぱ強いと思います」
――その暴風雨圏に入っていくことになりますね。
「はい。やっぱそこに入っていく勇気が大事だと思います。台風を恐れて下がっちゃうと、台風って先端が一番破壊力があるじゃないですか。台風の目に入っちゃえばダメージはないと思うので、そういう、前に出る勇気が大事じゃないかなというふうに思います。もちろん下がるときは下がらないといけないけど」
――その近距離も戦いもバリエーションが増えている。そこにはヒジ・ヒザがある。それがケージ際だけじゃなくて、マットの中央でも。
「ヒジ打ちに関しては、自分が練習の中で、デビュー決まったときから、自分はもうヒジのサポーターを買って。みんないま、全然ヒジのサポートしないじゃないですか」
――たしかに。それは練習で出さないからですよね。
「だから覚えないし、試合でも出せない。試合で振り返れば、また自分の中で得られるものがあるので。ヒジとヒジあて、ヒザあてをやらないでしてるのはたぶん覚えないですね。MMAグローブしないで練習、スパーリングしているのと同じじゃないですか。それくらい自分の中では、あれ? と思っちゃいます」
――前提として捨てているというようなものだと。
「そうそう。可能性を捨ててる」
――それが神田選手のグレコと交わるというのがすごく興味深いです。
「そうですね。最初から調和できていたわけではないですけど、徐々に徐々にという感じですかね。まだ半分くらいじゃないですか。まだまだ行けると思います」
――DEEPからRIZINにも出場して、「ROAD TO UFC」というチャンスをつかんだ。勝てば必ず契約出来るが、勝たないと終わりというこのトーナメント出場の選択を、今どう感じていますか。
「自分ってけっこう大事な場面で取りこぼしてきたんです。そこまでたどり着くのももちろん素晴らしい選手たちを撃破して上がってきたわけですけども、やっぱり生活を変えたいなと、自分の中で。もっと豊かになりたいし、このまま人生終わっちゃうのかなと考えるときがあって。もっと生活水準を格闘技で上げて、豊かになりたいなと思っています。だから、それが今ちょうど人生を変えるきっかけが訪れていて、そこを掴むかどうかは自分次第だと思っているので、前戦の戦いとかは、いろいろチャンスを取りこぼしてきた中から経験で学んできたこともありますし、経験値も上がっているので、今までの自分とは同じじゃないよ、ということを戦いの中で見てほしいですね」