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【RIZIN】“MMAファイター”皇治の可能性はどこにある?「誰に否定されようが笑われようがまだ格闘家、皇治は死んでない」

2023/06/02 21:06
 2023年4月1日の『RIZIN.41』でK-1時代から因縁があった芦澤竜誠と対戦し、スプリット判定で敗れ、試合後に引退を示唆していた皇治(TEAM ONE)が6月2日、引退撤回を表明。34歳にしてMMAに挑戦することを明らかにした。  MMAファイター皇治の可能性はいかなるものか。  4歳から始めた空手では魚本流の大会で全国1位。父親の影響で組みもある日本拳法を中学までやっていた。運動神経も良く、サッカーではセレッソ大阪ジュニアチームで活躍した。 俺はビビらず怖がらず前に突き進もうとずっと決めている  しかし、プロのキャリアは立ち技のみ。30代半ばにしてのMMA挑戦について、皇治は、「大概の奴はやらないスよね。無理やと思って諦めると思うんですけど、自分はずっと大した結果を残せていないかもしれないけど、無理やと言われ続けて、ここで一丁前に喋っているわけですから不可能はないと思っているし、一つの目の前に出た結果にビビって辞めてしまうのか、将来の自分のしたいことを目指してやり続けるのかでだいぶ変わると思う。俺はビビらず怖がらず前に突き進もうとずっと決めているので」と、その思いを語った。  RIZINの榊原信行CEOは、皇治が引退を翻意したのはいつか、と問われ、「僕は前回、終わったはなから“そんなふざけたことを言ってないで、とにかくやれ”という話をこんこんとしていた。本人も“悔しかった”と言っていたし、練習も1週間くらいですぐに再開したと言っているのだから、割と早い段階で翻意していたのではないですかね。引退宣言はそのときに(芦澤に負けた)かっこ悪さも含めて、もうここまでかなと本人は思ったかもしれないけど、その後、僕も試合後、すぐに何度か会って、そのときは僕の前では(引退撤回を)明言しなかったですけど、割と早いタイミングでもう一回やってやろうという、それもMMAでやってやろうという腹を決めたんだと思いますね」と語る。  MMAでの最終目標について皇治は、「UFCのチャンピオン。人の夢、笑ったらあかんよ(笑)。まあそれは冗談として、でも本気でやってます」という。 「久しぶりに燃えているんで。金や名誉のためではなく、自分の生き方。“34歳でMMAなんてアホちゃう?”とみんな笑っていると思うんですけど、笑われるのも大きければ大きいほど価値があると思っているんで。人生に正解なんてないと思うんで、自分の生き方を貫こうと思っています」と、MMA挑戦も生き方、だと語った。  それが、一度はやると言ったことへのけじめなのか、敗れた相手へのリベンジのためか、MMAにおける強さの追求なのかは、さまざまな気持ちが入り混じっているようだ。 [nextpage] 4月の芦澤戦は「傲慢だった」  4月のキックルールでの芦澤戦は「傲慢だった」という。芦澤のヒザ蹴りに果敢に前進するが、被弾し続けた。 「ヒザ蹴り、いつもだったら何とかするのに、“あんなもん効かん”と戦って、傲慢だったことが恥ずかしかった」と、試合後、皇治は振り返っている。 「もうたまらなく悔しかったんですよね。敗北というのはむちゃくちゃ悔しくて、むちゃくちゃカッコ悪いと思うんですよ。さんざん調子にのって、調子こいて余裕をこいて負けたので。  彼は4月1日は強かったし、気持ちがすごくて全部俺より上を行ったから、ああやって俺は負けてもうたんで、そこに対しては何もない。でもあれはボランティア。全部ドラマ。あいつとは“戦争”と言っていたんで、俺はまだ白旗は振ってない」と、一足早くMMAに取り組んでいる芦澤とのMMAでの再戦も視野に入れていることを語った。  MMAの練習は「毎日やってる」という。  TEAM ONEの盟友で元DEEPウェルター級王者の住村竜市朗、住村のセコンドにともにつく青木真也、JBJJF全日本選手権&ノーギ選手権優勝の実績を持つ柔術家・竹浦正起らと、MMAの基本から学び、皇治の強みを活かしたMMAの戦い方を模索していくことになる。  皇治は寝技について「楽勝ですね。さんざん“寝技”はしてきましたから。もうそういうのは止めましたけど」と笑わせながらも、「あとは真っすぐに、男とイチャイチャしていこうと思います」と取り組んでいることを語る。 [nextpage] 近距離での戦いが持ち味の皇治だが「MMAに来たらひよっ子なんで」 CARPE DIEM三田で竹浦正起と練習する皇治。(C)@1_kouzi  一方で、“何でもあり”のMMAでは“何でもやらなければいけない”わけではなく、取捨選択して戦うことも可能だ。皇治は、「寝技はしませんよ」と、組み技・寝技はディフェンスを中心に練習し、相手の組みを切ってスタンドで勝負するスタイルで行くことを語っている。  近年、日本人K-1トップファイターでMMAに挑戦しているのは、平本連が2勝3敗、久保優太が1勝1敗。すぐには結果が出ないことが、別競技であることを示している。  MMAの距離は、K-1より遠い。皇治の打撃スタイルをいかにMMAで活かすか、アジャストが必要となる。  皇治は、近年こそ飯田裕トレーナーのもと、これまでより長くなったジャブ、ワンツー、そしてダウンも取れる左フックを武器としているが、近距離での戦いが持ち味。  しかし、その距離はMMAでは組まれる距離となる。  ムエタイ出身ファイターの中には、首相撲をMMAの組みにアジャストする者もいるが、組むことが禁じられた立ち技選手には、特有の組みの弱さがあることも多く、皇治は組む力がどれだけついてくるか。  UFC史上初の二階級同時王者となったコナー・マクレガーは、「精度はパワーに勝り、タイミングはスピードを凌駕する」と戦いを語るが、近い距離でタフに勝負する皇治は、いかにMMAのなかで、これまで培った武器を活かすか。  近年、痛めていたヒザの状態もMMAを戦うにあたり重要となってくる。  パンチより蹴りの距離は遠い。スタンドから始まるMMAにおいて、パンチ、蹴り、組みが連動しているのがMMAで、皇治にとってかつての蹴りが「組まれにくい蹴り」として戻ってくれば、ストライキングを軸とするMMAファイターの武器になる。  そして、テイクダウンされても立ち上がるためにも、ヒザのコンディションは大きくかかわる。  そのヒザの状態については、「(芦澤戦で)足どうこうは関係なく言い訳にはならない。右ヒザにいた60人の生霊も霊媒師に払ってもらったんで大丈夫です」と笑い飛ばしてみせた。  そして、皇治の対戦相手の誰もが舌を巻く「打たれ強さ」は、MMAではどうなるか。  オープンフィンガーグローブ(OFG)は、ボクシンググローブのような重さを伝えられないものの、殺傷力が高くなる。立ち技時代のような「打ち合い」はリスクが大きく、1発で「効かされる」場面も増えるだろう。  必然と距離が遠くなるなかで、皇治は困難な挑戦に向かうことになる。得意のボディ打ちの距離になっても、OFGでボクシンググローブのように効かせることができるか──などさまざまな面で異なる状況で、平本も久保も、自身の強みを見出している。 「MMAに来たら“ひよっ子”なんで、上で調子こいてるやつらとやれるように頑張ります」と語った皇治。  そのファイトスタイルは決してMMA向きとは言えないものの、「これまでも多くの人が無理ということを実現させてきた」皇治は、今回も同じようにMMAと向き合っている。 [nextpage] 「恥をかく覚悟が出来たらいつでもいい」という榊原CEOに、皇治は「しっかりトライアスロンルールでひっくり返してやる」  皇治はMMAのキャリアを、どうスタートさせるか。  榊原CEOは、「ここまでのキックからの転向組を見ていても、久保選手を見てもそんな簡単じゃない。汗をかきながら、恥をかきながら今回の北海道大会にたどりついている。(MMAをやると)言うのは簡単ですよ。また恥をかきにくることになるかもしれないし、その恥をかく覚悟が出来たらいつでもいいですよ」と語る。  また、モデファイドルールやミックスルールでのデビューの可能性についても、「どのレベルでMMAをやるか。こればっかりは本人次第なので、ほんとうに簡単じゃないので──YA-MANもそうですが、高校生の練習生に絞められるわけですよ。そういったことを皇治が泥だらけになって覚悟を決めてやれるかどうか。1カ月経って、2カ月経って、それが無ければ、前座試合ですよ。それこそアマチュアからやり直せとなりますから、そんなに甘くはない。 『MMAに挑む』と言った瞬間、彼の場合、61kgだから、その頂上には堀口(恭司)がいたわけですよ、そこにたどり着くのはどうなのよという話で、そのあたりの覚悟と努力を、先入観無く見届けてチェックして、彼の行ける幅を相談していければいいかなと思います」と、“泥だらけ”の覚悟を見て決めていきたいとした。 (C)@1_kouzi  MMAデビュー戦の時期については、「準備が整えば7月でも9月でも。大晦日でもいいと思っている」という榊原CEO。 「デビュー戦は竹浦スペシャルか青木スペシャルで決めるんで楽しみにしていてください」と、フィニッシュ技まで予告した皇治は、会見後、カルペディエム三田での竹浦との濃密な組み技の写真をアップした。  皇治がMMAに取り組むにあたり、その「覚悟」が見えた言葉がある。「しっかり“トライアスロンルール”で俺がひっくり返してやろうと思っています」──MMAでもしんどいことをやり続ければ、皇治のスタイルは生きる。 「誰に否定されようが笑われようがまだ格闘家 皇治は死んでない」、そう練習後に皇治はつぶやいている。
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