竹原の熱血指導にさしもの神保もたじたじに(C)K-1
2023年6月3日(土)神奈川・横浜武道館『K-1 WORLD GP 2023』にて、「初代ミドル級(-75kg)王座決定トーナメント」に出場する神保克哉(K-1ジム目黒TEAM TIGER)が公開練習を行った。
2021年から本格的に階級をアップし、-75kg(のちのミドル級)の中心ファイターとして戦い続けてきた神保。勝ち星を積み重ねるとともに階級新設をアピールし、昨年9月のK-1横浜アリーナ大会でライバル・松倉信太郎にKO勝ちすると、K-1中村拓己プロデューサーも大会の一夜明け会見でミドル級新設を正式発表した。
まさに有言実行した神保だったが、その第一歩となった今年3月の『K'FESTA.6』ではヴィニシウス・ディオニツィオにまさかの敗戦。初代王座決定トーナメントへの出場は決まったものの、トーナメントに不安を残すこととなった。
そんな神保がトーナメント前に訪れたのが、竹原慎二&畑山隆則ボクサ・フィットネス・ジム。日本人初のボクシング世界ミドル級王者となった竹原慎二さんだ。今大会で竹原さんがゲスト解説を務めることになっており、その情報をキャッチした神保が竹原さんに“弟子入り”を志願し、今回の特別練習が実現した。
ジムを訪れ、竹原さんに挨拶をした神保は、さっそく準備してシャドーを開始。竹原さんはその様子を見ながら「何歳?」「格闘技はどれぐらいやってたの?」と質問するなど、和気あいあいとした様子でスタート。しかし「得意なのは蹴り?」との質問に神保が「いや、パンチっすね」と応えると、竹原さんは「そのパンチで得意って言っちゃダメだよ!」と強烈なダメ出し。「パンチを打っている範囲が狭い。スピードがない。ただ正直に打っているだけ」と、自らもパンチを繰り出し、パンチのフォームを実演指導する。ついには竹原さんもリングに入り“熱血指導”が始まった。
ここで目を見張るのが、竹原さんが説明しながら出すパンチの速さ。引退から25年以上が経ち、50歳を超えたといっても、さすが日本人初のボクシング世界ミドル級王者。当時、日本人では最も重い階級で世界を獲った拳は、いかにも軽く打っているにもかかわらず、驚くほどのスピードで飛び出す。このパンチを前にしては、神保も恐縮した様子で「はい」「はい」と耳を傾けるしかない。
竹原さん自らミットを持ってのミット打ち、サンドバッグと指導が進むが、竹原さんからの言葉は「打つ際に腰を入れて、拳に力を乗せること」「フェイントを入れながら打つこと」の大きく2点。それを軸に、細かい指導が続いた。
当初は、選手がいないためスパーリングはなしの予定だったが、熱が入ったためか竹原さん自らグローブをはめ、マススパーも実現。あくまでフォームやポジションを確認するための軽いものだが、滅多にない機会に神保の目も真剣そのもの。スパー中にも細かい指導の言葉が飛び、神保は必死に食らいついていった。かくして、当初の予定を大幅にオーバーして練習は終了となった。
練習後に竹原さんは「今からどうこう言っても変えられないから」と前置きしたうえで「どんなスポーツでもズルさが必要で、それは試合中の駆け引き」と真っ向勝負を身上とする神保に駆け引きの重要性を説いた。
「ちょっとだけ腰の入れ方とかフェイントを意識すれば、それだけでも違うと思います。(神保の)シャドーやサンドバッグを見ていても、ただ目の前の相手を打ってるだけなんですよ。それじゃ当たるはずない。シャドーでもジャブをよけて目でフェイントを入れたり、そういう騙し合いを少し覚えないと。あとは捨てパンチも必要です。(神保は)全部正直に打っていて、ただの根性勝負なんです。どんなスポーツでもズルさがないとダメなので、ズルさをちょっと覚える。ズルさと言っても、それは試合中の駆け引きで、視線をズラして打つとか。そういう中でチャンスを掴んでもらいたいですね。最低限必要なのは3試合やるスタミナ、あとは打たせないこと。自分の得意な距離で戦えるように、考えて戦うことですね」
これ以外にも竹原さんから熱いアドバイスが続き、トーナメントへの意欲をさらに燃やした神保。自分がきっかけとなって実現に至ったミドル級だけに、初代王座への思いは強い。果たしてトーナメントで、この練習の成果は出るのか。