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インタビュー

【Bellator】渡辺華奈に僅差判定で勝利したマクファーレン「正直、負けたと思った」、体重超過の相手に逆転王座防衛のカモーシェ「ベネットにベルトを持つ資格はない」、コーカー代表「カナは惜しい試合だった」

2023/04/25 20:04
 2023年4月23日と24日(日本時間24日と25日)、米国ハワイ州ホノルル・ニール・S・ブレイズデル・センターにて『Bellator 294』と『Bellator 295』が2日連続で開催された。  両日のメインカードで印象的な試合を見せたのが、女子フライ級だ。初日には、「Bellator世界女子フライ級選手権試合」(5分5R)として、王者リズ・カモーシェ(米国)が、体重超過のディアナ・ベネット(米国)を相手にノンタイトルではなくベルトをかけた「王座戦」として戦い、もしカモーシェが負ければ「王座空位」となる試合で、カモーシェが4Rに逆転の一本勝ちで王座防衛に成功した。  また、翌日には、同級2位の渡辺華奈(日本)と3位のイリマレイ・マクファーレン(米国)が対戦。3Rの激闘のなか、1Rを右ストレートを当てたマクファーレンが取り、2Rを柔道の足技でテイクダウン&コントロール、サブミッションにもトライした渡辺が取り返す接戦のなか、最終3Rにも渡辺が投げとパウンド。マクファーレンも際の打撃を返してゴング。  判定はホームのマクファーレンの左手が挙げられ、勝者はコールに小さく首を横に振り、渡辺の右手を掴んで挙げている。  試合後には、前日に王座防衛したカモーシェと、友人のマクファーレンが互いにエールをかわし、対戦を示唆。女子フライ級GPの開催も熱望している。 入場前、舞台裏で涙したマクファーレン  地元のマクファーレンは、前日のフェイスオフ時に、口元に赤い手のペイントをほどこし、入場時にも同様の趣旨の動画を使用した。それは、先住民女性と少女の失踪・殺害事件を認知させる運動(MMIW)を象徴するペイントだった。  試合前の会見から、「MMAで残したい遺産」を問われたマクファーレンは、英語で「Women Warriors」を意味する非営利団体「Na Wahine Toa Foundation」を運営している意味を語っていた。  この財団は2017年、マクファーレンが米国とカナダにおける先住民女性に対する暴力、「Missing and Murdered Indigenous Women (MMIW)」の多さに気づかされたことで誕生したという。 「ネイティブの女性と女子は、他の人口統計よりも高い割合で暴力に直面しており、同じことがハワイのネイティブの女子にも当てはまります。だから、私は自己防衛を教え始めました。彼女たちに反撃の方法を教えようと思ったんです。女性に対する暴力の80%は、実は知っている人によって引き起こされています。護身術に重点を置いていますが、人間関係の赤信号に気づくこと、女性や少女たちを自己啓発すること、そして彼女たちが自分を愛し、自分を尊重し、虐待を受けなくなるような声を見つけることにも重点を置きたいと考えています」  入場時に放送席で解説された通り、プナホウ・スクール在学中に、マクファーレンはバスケットボールのコーチから性的虐待を受けたと主張し、長年にわたる虐待の疑いに対して対策を講じなかったとして、学校を相手に訴訟を起こしている。 「彼の被害者は全員ネイティブハワイアンだったので、私がやっている仕事と100%リンクしており、MMIWと直接繋がってつながっています」と、BBCの取材に答えている。  マクファーレンは19歳の時にカリフォルニアに移住し、10thプラネット、サンディエゴ・コンバット・アカデミーに所属し、グラップリング、MMAを磨いてきた。ハワイに住んでいない79%のハワイアンの一人ではあるが、「今はカリフォルニアに住んでいても、ここが本当に故郷だと感じる場所です。そして、いつか戻ってくる」と語っている。  そんなマクファーレンは、試合後の会見で、渡辺を「アメイジンググラップラー」と称賛し、「正直、負けたと思ったけど、自分がフィニッシュすることに慣れているから、判定になったら負けたと思うことにしている」と語っている。  試合後、女子フライ級の勝者2人とスコット・コーカー代表は、何を語ったか。紹介したい。 [nextpage] マクファーレン「この階級でGP開催を」 ──試合を終えた率直な感想からお願いします。 「すべてがいい感じです。今クィーンズ病院のER(救急外来)にいないから、それもすごく安心できる。今はやる気に満ちています。特に(タイトルショットが)次に来る可能性が非常に高いので、モチベーションを維持する必要があるし、集中し、計画を守り、進み続ける必要があります」 ──戦ってみて、渡辺華奈選手はいかがでしたか。 「カナはグラウンドでのコントロールはとても良かった。でも私たちは、彼女の柔道のスイープやすべてに備えていた。グラウンドに落ちたらすぐにスクランブルをかけなければならないことは覚悟していた。でも彼女は私にスペースを与えてはくれなかった。正直、負けたと思ったけど、自分がフィニッシュすることに慣れているから、判定になったら負けたと思うことにしているんです」 ──接戦の判定にもつれ込んだことについては? 「接戦になったのは、この階級がいかに成長したかを示すもので、良いことだと思う。フィニッシュを決めるのは難しくなったけど、これは女子フライ級がいかに深まり、レベルが高くなったかを示している。今は、フィニッシュを狙いに行ってポジションを失う可能性があるから、もう少し戦術的で戦略的でなければならないのかもしれないです」 ──今後、女子フライ級で望むことは? 「女子のグランプリはどの階級でもやっていませんし、フライ級がおすすめです。私は2019年以来、その必要性を訴え続けてきました。この週末のフライ級の試合はどれもヤバかったでしょう? 100万ドル(約1億3千万円)はかなり甘い響きですし(笑)。“アンクルスコット”グランプリをやりましょう! 新たに家族を作りたかったから、最近は引退をより真剣に考えるようになっていました。でも、100万ドルなら、かなりイケるでしょう。だから、子作りを少し先延ばしにできます」 ──地元ハワイでの入場は趣き深いものでした。緊張はしませんでしたか。 「感情的にならないようにするのはとても難しいことです。ただただ、クレイジーで、バックステージに立っていて、幕が少し開いていて、私の友人や高校時代の学友たちがいて、みんな『イリマ!』って声をかけてくれて。まさかその場にいるなんて思ってもみなかった人たちだったので、とにかく圧倒されました。舞台裏で泣き出してしまいました。でも、ダンサーの皆さんは、とても強く、激しい女性たちで、私を戦場へ連れて行ってくれました。誰もがあのウォークアウトを行い、圧倒されないようにすることに挑戦しています」 ──前日には友人のリズ・カモーシェが王座を防衛しました。 「私はリズのことをとてもよく知っています。お互いのことをとてもよく知っている。彼女の頭の中で何が起こっていたのか、分かったような気がします。彼女の奥さんと一緒に座っていて、指示を叫んでいました。観戦している私の方が緊張していて、でも、リズらしいやり方で、彼女はチョークアウトした。あれが彼女のスタイルなのです。彼女がそれをやってのけたとき、私たちはとても安心しました。デアンナ(・ベネット)はBellatorで3度目の体重超過をしたのに」 [nextpage] カモーシェ「ベネットのエネルギーが落ちていくのを感じた」 ──最初の3ラウンドで苦戦したこと、ベネットの計量ミスについてどう感じていますか。 「絶対に彼女を優勢にしたくなかったけど、彼女は体重を落とさなかったし、それは序盤から感じられた。でも序盤はフレッシュで成功したかもしれないけど、最後はやはりガス欠だった。彼女を見ていると、体重計に戻るたびに顔を作るエネルギーがあれば、サウナに行くエネルギーがあるだろうと感じたよ。このスポーツにおける彼女の名声は、体重を減らすことだ。  彼女にはベルトを持つ資格はない。もし、彼女が計量を成功させて体重を増やしながら同じパフォーマンスをしたのなら、私は彼女を褒め称えるだろう。彼女はまたもや不正を働いた。もし私が誰かの体重を上回っていて、減量する必要がなかったら、私ももっと早く上位に食い込むことができただろう。だから、彼女を終わらせ、このスポーツ界から追い出したかった」 ──4Rに逆転の肩固めをスペースが無いなかで極め切った。最後の回復力はどこから? 「私は自分の中に深く潜り込んだ。私は諦めない。海兵隊員であることの意味を教えてあげると。何が必要でも、どんなに大変でも、やり遂げるんだ。彼女が疲れているのが分かかった。コーチは『もういい。彼女に3R渡したんだから、最後はやり遂げろ』ってね。私が彼女に近づいたとたん、彼女のエネルギーレベルが落ちていくのを感じたよ」 ──ベネットの試合後のケージ内でのコメントについては? 「彼女は、これまでの試合と同じように『ごめんなさい、体重が合わなかったの』と言った。そんな言い訳は通用しません。私は夜11時まで起きて体重を測定し、朝5時に起きて二重三重のチェックをする。私たちはこのスポーツのプロであり、このスポーツで最も大きな組織のひとつに所属しているのだから、すべてを可能な限り最善の方法で行う必要がある。彼女は、私に対して『尊敬の念しかない』と言っていました。私にとっては、体重を落とさないということは、相手をリスペクトしていないということなのです」 ──翌日にはイリマレイ・マクファーレンvs.渡辺華奈が行われます。観戦しますか。 「私は会場に足を運ぶつもりです。ハワイで、このような連続したイベントを行うことで、私が会場にいることができるのは素晴らしいこと。ハワイにいるときは、友人のイリマ(・レイ)マクファーレンを応援するために参加するんだ。試合の最後には、(勝者と)戦うためにケージに呼ばれることを期待しています」 ──コンテンダー不足による引退を考えることは? 「私のキャリアの終わりは、周りの人たちに左右されるものではない。周りの人が(自分のレベルに)達していないからと言って、グローブを置くつもりはないです。再戦であろうと関係なく、私はステップアップし、やり遂げるつもりです」 [nextpage] コーカー代表「カナにとってとても惜しい試合だった」 ──渡辺華奈とイリマレイの試合の判定をどう感じましたか。 「日本のファンがモヤモヤするのは理解できるよ。とても惜しい試合だった。私はジャッジでもオフィシャルでもレフェリーでもないのはこういう場合があるからだ(苦笑)。彼らに任せている。だってこんな僅差の試合の判定なんてしたくないからね。その結果、スプリットデシジョンだった。このような状況では、何が起こるか分からない。あるジャッジは“打撃がより効果的”と判断し、別のジャッジは“グラップリングとコントロール”に注目する。それが、あのような接戦の場合は問題になってくる」 ──1Rはマクファーレン、2Rは渡辺。3Rのジャッジスコアが勝敗を分けた。マクファーレンが最終回序盤に当てた数に比べ、渡辺の手数は劣らず、そしてあの投げが採点に影響されないのは……。 「とにかくこれだけは言える……ヒット数というのはひとつあるけれども、ダメージの問題なんだろう。どれくらいのダメージを与えているのか? それは打撃数だけをカウントしても分からないことだ。あえて自分の見解を言うなら、1ラウンド目は明らかにイリマ=レイがすばらしいワンツーを当てて取ってたと思う。2ラウンドはカナが取った。そして、問題は3ラウンド目。自分は互角だと思った。ジャッジはイリマ=レイが3ラウンド目も取ったということで彼女が勝利したが、とはいえ非常に接戦だった。カナにとってはとても惜しい試合だった」
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