2023年4月1日(土)丸善インテックアリーナ大阪(大阪市中央体育館)にて『RIZIN.41』が開催された。
第5試合のバンタム級(5分3R)では、3連敗中の金太郎(パンクラス大阪稲垣組)と、DEEP同級暫定王者の石司晃一(フリー)が対戦。
オーソドックス構えの石司に対し、サウスポー構えの金太郎は、互いに立ち位置の取り合いで慎重なスタンドの攻防から、最終ラウンドに石司が組んでバックコントロール、接戦をスプリット判定で制した。
RIZIN初陣で勝利した石司に対し、金太郎はこれで4連敗。試合前に「作戦もいろいろ組んできているので、みんなが面白いなと、ずっと見ていられる試合になるんじゃないかなと思っています」と、目が離せない展開になると語っていた金太郎だが、石司の右の打撃の圧力か、連敗のプレッシャーか、前に出ることは出来ず。
試合前に「危機感は井上直樹戦、元谷友貴戦、堀口(恭司)戦、全部にあります。崖っぷちというのは全部あります。でも、今は自分の勝負に集中しています。堀口戦と同じ、あまり変わらない練習環境でやってきました。自分にとって凄い経験になったと思っています。自分はまだ強くなっている最中だと思っていて、だいぶ出来上がりだしたと自分では思っているので、そこを試合で見せられるようにしたいです。思い描いている自分にはまだなっていませんが、強くなっているとは思っているのでしっかりやります。前回は50%くらいだったので、理想とするスタイルを試合で見せたいと思っているんですけれど、自分の中では100%を出したいと思っています」と、今回こそ自分の理想通りの戦いをしたいと語っていた望みは、果たせなかった。
石司「最後プランに無かったけど組みに行きました」
試合後、石司は慎重な試合運びについて問われ、「結構『組みに行った方がいいんじゃないか』って言われていたんですけど、僕は今回打撃だけで圧倒してやろうと正直思っていたところがあったので、打撃戦だけで3Rまで行って最後圧倒したいと思ったのですけど──1、2R、まあ向こうはもともとカウンター狙いだと思うのですけど、予想以上に打ってこなかったので、もっと消耗戦になったほうが、差をつけられたと思うのですけど──そういう展開にあんまりできなかったので、自分も相手のペースに合わせてちょっと見すぎてしまったので、最後きっちり差をつけないとジャッジがちょっと危ないかな、分からないかなと思ったので、最後プランに無かったのですけど組みに行きました」と、振り返った。
金太郎「全部、自分次第だったので自分が悪い」
一方の金太郎は、「結果は2-1で判定負けでしたが完敗です。今の自分を抜け出す為にこれからどうするかしっかり考えて行動します」と、ファンに報告。
試合後の会見でも、「もう言い訳なく自分が弱かったです」と完敗を認めた。そして、敗因を「自分次第」と、自身の中にあると語った。
「相手の攻撃を見て、左の打撃を当てていこうという作戦で、カウンターの取り合いになるとは思ったのですが、自分から攻めていく作戦だったんですけど……なかなか実行できなかったですね」と、「待ち」になったことを語り、その「実行できなかった」理由を、「石司選手の攻撃というか、すごい強い選手というのは分かっていたので、それは想定内というか……攻めは全部、自分次第だったので、自分が悪いです」と、気持ちの問題だとした。
金太郎陣営は、「昔当たり前にできてた前に出ることができなくなっている」と明かす。
ポイントゲームになったときに、被弾覚悟で踏み込むことはリスクがある。そして“やることが多い”MMAを知れば知るほど、その怖さは増える。玉砕覚悟で攻めることが「勇気」とはならないのが、格闘技だ。
互いのスタイルを研究するなか、喧嘩四つの構えで、すべきことは両者、理解はしていても、それを実行する技術と精神が問われる石司と金太郎の試合だった。
勝者も試合後、「RIZINファンは自分のことを知らなくてもDEEPのことは知っているので、自分が負けたら何をしても『DEEPのチャンピオンが負けた』と言われるので、それは責任あると思っていたので、自分が意識していてもいなくても責任を果たさなくてはいけないという自覚はあった」と、プレッシャーのなかにあったことを吐露。
それでも白星を掴んだことで、「上の選手、RIZINトップ選手は全員意識しているので、今度王座決定戦に出る4人の選手たち(5月6日の『RIZIN.42』で朝倉海vs.元谷友貴、井上直樹vs.フアン・アーチュレッタ)は当然意識しています。他にも何人か実力ある選手いると思うので、そのあたりの選手たちとこれから戦って、一個一個、勝ち上がっていきたいと思います」と、群雄割拠のバンタム級戦線を勝ち上がって行く決意を示した。
そして4連敗を喫した敗者は、試合後、「やっぱり応援してくれてる人とかに、最近勝ってる姿を見せられていないので、自分の近い人にやっぱり協力してくれている人に見せられていないから、そこがめっちゃ悔しいですね。“思い通りにいかんな”と思っていて。それは全部自分次第なので、言い訳なく、みんなを喜ばしたい気持ちはあるんで。簡単に“またやります”とは言えないですけど、信じてくれる人のためにも、やらないとなって思っています」と、逡巡もあるなか、復活を期している。
試合後の両者の一問一答全文は以下の通りだ。
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石司晃一「3R打撃だけで圧倒してやろうと思っていたけど──」
━━試合後の率直な感想をお聞かせください。
「何とか勝てたのは嬉しいんですけど、ちょっと1、2R、様子見すぎてしまって、ちょっと手数が少ない展開になってしまって。結局ジャッジも分かれちゃったので。かなり反省点は多いですが、ギリギリ勝ったというのは何とか、最低限やるべきことはクリアしたかなっていうくらいですね」
━━慎重な試合の進め方だったと思います。もともとのプランは?
「結構『組みに行った方がいいんじゃないか』って言われていたんですけど、僕は今回打撃だけで圧倒してやろうと正直思っていたところがあったので、打撃戦だけで3Rまで行って最後圧倒したいと思ったのですけど──1、2R、まあ向こうはもともとカウンター狙いだと思うのですけど、予想以上に打ってこなかったので、もっと消耗戦になったほうが、差をつけられたと思うのですけど──そういう展開にあんまりできなかったので、自分も相手のペースに合わせてちょっと見すぎてしまったので、最後きっちり差をつけないとジャッジがちょっと危ないかな、分からないかなと思ったので、最後プランに無かったのですけど組みに行きました」
━━対戦を終えて、金太郎選手はイメージと違う部分もありましたか。
「パンチも蹴りも1発が重いし、実力ある選手だなと思いました。バックから逃げるとかチョークのディフェンスも、自分が組みも得意なのは分かっているので、しっかり対策してきたのかなって感じがあったので。うーん、そうですね。で、最後、ちょっとあのチョーク浅かったので、ちょっと取りきれなかったところで、ラスト10秒くらいで、向こうちょっと動かしながら下から仕掛けようかなというのがあったんですけど、ちょっといい形を取れなくて終わっちゃったんで、そのあたりも反省ですね」
━━初参戦のRIZINの舞台はどのような印象でしたか。
「ああ、もう最高に気持ちいいです。今まで自分がやっていた舞台とは演出とか会場の雰囲気とか全然違うので、いやもうすごい素晴らしいイベントだと思いました。あとはやっぱり、入場式の時から自分への声援は無かったのですけど、金太郎選手が入ってきた時の大歓声ですごいアウェーだなとは感じました。試合中も、ガードの上からでも向こうのパンチとか当たると大歓声だったので、これはちょっとジャッジの印象にまで出るかなというくらい、ちょっとあの……そういうのを感じました」
━━今回勝利しました。今後の展望・目標を教えてください。
「そうですね……一個ずつ勝って……、もともと大舞台に行って名を上げるとかのために来たんじゃないので。競技としてトップを目指すというのがあるので、RIZINでも当然一個ずつ勝ち上がってチャンピオンに、と目指して入ってきたので、今回の内容だと全然まだまだ甘いですけど、でも、今自分も病気とか克服して調子取り戻してまた伸びてきてるので、これから強くなっていけると思います。次、徐々に、まだ実力ある選手何人もいるので、そういう選手たちと戦って、勝ち上がっていって、一番トップ目指したいなと思います」
━━最後のグラウンドの展開がポイントになったと思いますが、あれがなかった場合、判定は……。
「“危なかったな”と思っていました。なので3Rはプランを変更して組みに行きました。あのまま打撃をやっていたら“これちょっと、今までの向こうのお客さんの沸き方も考えると危ないかな”と。で、もっとお互いに手数を出して消耗戦に持ち込んだほうが自分は良かったのですけど、1、2Rそういう展開に出来なかったので“相手は予想以上に疲れてないな”と。なので、もともと組みに行く気はなかったんですけど、“これはちょっと行くしかないな”という感じで、明確に組んでポジショニングという形になりました」
━━そういうプランも用意していた?
「あんまり考えてはなかったです。ただ、万が一の時というか……は、そういう武器も出そうかなと。本当は、今回は、3R打撃だけで最後圧倒してやろうと思っていました。向こうが得意なところですけど、そこでやっぱ差を見せるっていうか、インパクトをより残して勝つことができたと思うので、RIZINファンの人とかみんな自分のこと知らないと思うので、最初に勝つのはもちろんですけど、しっかりアピールできる形で勝ちたいなと考えていたので。そうですね、当初はもう打撃だけでやってやろうと思っていました」
━━そういう、大会場で地元の選手に大歓声というのもRIZINならでは?
「そうですね、DEEP等だとアウェーでもそこまで、1000人とかなのでそこまでないのですけど、これだけ大観衆だとやっぱり海外で試合しているみたいなすごい感じがしました、やっぱり。戦いには関係ないんですけど、やっぱりもっとしっかりKO・一本取れれば問題ないので、自分が実力もっとつけないといけないなというところですね」
━━DEEPの選手がRIZINで活躍し、牛久(絢太郎)選手もチャンピオンになりましたし、7月にバンタム級のタイトルマッチも行われます。
「当然意識しています。上の選手、RIZINトップ選手は全員意識しているので、今度王座決定戦に出る4人の選手たち(5月6日の『RIZIN.42』で朝倉海vs.元谷友貴、井上直樹vs.フアン・アーチュレッタ)は当然意識しています。他にも何人か実力ある選手いると思うので、そのあたりの選手たちとこれから戦って、勝ち上がっていきたいと思います」
━━3R終わった後に笑顔で手を振っていたのは、勝利を確信していたからですか。
「1Rそこまで差が無いと思ったので、トータルマストだったらさすがに3Rきっちり取ったらこれは取っただろうと思ったのですけど。でもそれでもちょっと甘かったですね、ジャッジが割れたのを見ると」
━━判定が割れた時はどう思いましたか。
「いやあ、ちょっとスプリットで嫌な経験を結構しているので。タイトルマッチを落としたりもしているので、“やばいな”と思いました、正直。スプリットはゲンが悪いというか、スプリットになると負ける、という感じがしたので。何とかギリギリです」
━━試合に臨むにあたりDEEPのベルトを保持していることは意識しましたか。
「そうですね、自分で意識していてもしていなくても、みんなRIZINファンは自分のことを知らなくてもDEEPのことは知っているので、自分が負けたら何をしても『DEEPのチャンピオンが負けた』と言われるので、それは責任あると思っていたので、自分が意識していてもいなくても責任を果たさなくてはいけないという自覚はあったので、だから(勝利は)最低限です。佐伯(繁・DEEP代表)さんもちょっと首捻ってるかと思うので、今日は本当に最低限勝ったっていうだけですね」
━━試合前のインタビューで、減量で「自炊をする」ということで、ホテルに炊飯器とお米を持ってきたとのことでしたが、さすがに勝ったら何か大阪で美味しいものを?
「食べに行きます。まだ決まっていないんですよ、それが。前になんばに行った時に大阪王将がいっぱいあったので、僕はそういうので良かったのですけど、泊まっているホテルの周りにそういうのがないので、何食べるか分からないのですが、誰かに連れて行ってもらいます」
━━たこ焼き、串カツも美味しいかと。
「ああ、はい。じゃあ串カツに行きます」
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金太郎「ホンマに自分がやりたいと思うならまたやるし、もう無理やと思うなら──」
━━試合後の率直な感想をお聞かせいただけますか。
「もう言い訳なく自分が弱かったです、ハイ」
━━判定の結果を聞いた後に「うん、うん」と少し頷いているようでした。納得の判定でしたか。
「そうですね、もう完全に負けてました」
━━2R目、左のパンチやキック、カウンターが当たっていた印象です。そういうものを当てていくプランだったかなど、詳細を教えていただけますか。
「相手の攻撃を見て、左の蹴りを当てていこうという作戦と、あと左ストレートや左のオーバーハンドを当てていくという、カウンターの取り合いになると思ったので、そこですね。作戦としては自分から攻めていく作戦だったんですけど……なかなか実行できなかったですね」
━━「なかなか実行できなかった」のは相手のプレッシャーなり、金太郎選手に圧力をかけてきていたからでしょうか。
「石司選手の攻撃というか、すごい強い選手というのは分かっていたので、想定内というか、全部自分次第というか。攻めは自分次第だったので、自分が悪いです」
━━試合前のインタビューでは大阪の仲間やファンの期待に応えたいということでした。オープニングセレモニーなど、金太郎選手のコール時は大きな声援がありました。今そう言ったファンの方たちに伝えたい言葉はありますか。
「やっぱり応援してくれてる人とか、最近勝ってる姿を見せられていないので、自分の近い人にやっぱり協力してくれている人に見せられていないから、そこがめっちゃ悔しいですね。“思い通りにいかんな”と思っていて。それは全部自分次第なので、言い訳なく、みんなを喜ばしたい気持ちはあるんで。簡単に“またやります”とは言えないですけど、信じてくれる人のためにも、やらないとなって思っています」
━━試合を終えたばかりですが、今後の目標や展望を教えてください。
「すごい危機を感じていたので今回、自分がこの試合をやると決めた時点で、すごいプレッシャーというか、自分に“そろそろやらないとアカン”という気持ちがあったので。でもここで結果を出せなかったから、自分が結果を出すっていう気持ちはあったので、こうなることを考えてなかったんですけど、やっぱりホンマに自分がやりたいと思うならまたやるし、もう無理やと思うなら、もうやめるし。そこはちょっと、ゆっくり考えようかと思ってます」
━━試合前のインタビューで「石司選手の蹴りはそんなに意識していない」とのことでしたが、実際試合ではミドルを結構蹴られていました。やってみて、いかがでしたか?
「いや、えっと石司選手の蹴りは僕を効かせる蹴りではなかったので、リズムを取るための蹴りやと思っていて、効かされる蹴りは1回もなかったので、想定内でした」
━━想定してきた中で、やりにくかった部分は?
「やりにくさ、やりにくい相手だとも思ってたし、どのくらいのレベルかも研究してきたんで分かってたんですけど、全部今回は自分次第やなっていう感じです」
━━反省点を治すには今、どうするべきだと思っていますか?
「そうですね……反省点というか……なんて言ったらいいんだろうな……気持ちだけじゃどうしようもないんで、身体をしっかり整えて、万全な状態で準備することかなって思ってます」