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2023年2月25日(日本時間26日)、アイルランド・ダブリンの3Arena Dublinにて『Bellator 291』が開催され、メインイベントの「Bellator世界ウェルター級王座統一戦」で、ウクライナの正規王者ヤーソラフ・アモソフと、暫定王者ローガン・ストーリー(米国)が対戦。
2020年11月の『Bellator252』以来の再戦は、5Rにわたる熱戦に。NCAAディビジョン1で4度のオールアメリカンに輝いたレスリングエリートのストーリーのテイクダウンをアモソフが完封。上下左右に散りばめた打撃と逆にテイクダウンを奪うパーフェクトゲームで、フルマークの判定3-0(50-45×3)で勝利し、王座を統一した。
ロシアのウクライナ侵攻のなか、母国にとどまり防衛活動を行ってきたアモソフは、王座統一戦に向かったきっかけを、破壊された自宅の地下からBellatorのベルトを見つけ出したときに友人たちからかけられた言葉にあったという。
「『ヤロスラフ、君はこのベルトを防衛しに行かなくちゃいけない』と言われた。長い時間、考えたよ。行くべきか、行かざるべきか。でも多くの人が『行くべきだ』と。だから、僕は行く」
しかし、1年8カ月ぶりの競技復帰でどれだけアモソフがコンディションを戻せているか、疑問符がつけられた5Rの王座戦で、見事なカムバックを見せた正規王者の勝利には、同じくBellatorでミドル級のベルトを巻く同門のジョニー・エブレン(米国)のサポートがあったことが、試合前後のコメントで明らかになっている。
スポーツとして「戦う」ことと、命を守るために「戦う」ことは、全然違う(エブレン)
メインイベント直前に、アイルランド大会のケージサイドでインタビューを受けたエブレンは、大一番に向かうアメリカントップチームの盟友アモソフに向けて、次のような言葉を語っていた。
「ここ(ダブリン)には、(コーナーに入るでもなく)ただただウクライナの友人を応援するためだけに来たんだ。彼はジムでの練習で、自分を押し上げ、影響を与えてくれる存在なんだ。彼は国を守り、家族を守ってきた。それはもし自分もその状況なら同じことをしていただろうと思うけれど、毎日の練習で自分をインスパイアしてくれている彼のこの旅路の一員でありたくて、ここに来たんだよ。彼の歩んできた道のりの中の登場人物として、ここにいる、そして彼を応援するんだ。ただそれだけだ」と、フロリダから異国に駆け付けた理由を語る。
Middleweight champion @JohnnyEblen showing love and respect to teammate @YaroslavAmosov.
— BellatorMMA (@BellatorMMA) February 25, 2023
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続けて、インタビュアーからアモソフが置かれた状況を聞かれたエブレンは、目頭を押さえて落涙。
「……文字通り、何の意味もないことだ。(彼の祖国では)子どもたちや、女性たち、一般市民が死んでいっているんだ。スポーツとして“戦う”ことと、命を守るために“戦う”ことは、全然違う、それは同じじゃないからだ。彼とのトレーニングは本当にアメイジングで、彼は本当に自分を次のレベルへと押し上げてくれる存在で、だからこそ自分は今、世界チャンピオンなんだ。
彼がジムに戻ってきて、最初にトレーニング再開した日のことを覚えているよ。彼は僕に『会いたかったよ』って言ったんだ。俺も『うん、俺も会いたかったよ』って返した。このウクライナの兄弟ほどに自分を上へと導いてくれた存在というのはいなくて、こうして彼が元のような日常の中で、いや、実際のところ決して普通になんて戻っていないんだけれど、とにかく一緒にトレーニングできる状況になって、彼がこうして今晩ここで、自分の国を代表して戦うということがとても嬉しい。
(アモソフへ)とにかく自分の力を出し切って、試合を楽しんで、そして相手をやっつけてくれ。君は世界一だし、世界一であることをここで見せるんだ、さあ、やるんだ!」と、後押ししていた。
試合は、前述した通り、アモソフが驚くべきMMAの強さや巧さ、勇気を見せて完勝。そこには高校・大学とレスリングを学んだエブレンの協力を含む、アメリカントップチームのサポートの成果が表れていた。