階級を越えた王者対決に臨むイスラム・マカチェフとアレクサンダー・ヴォルカノフスキー/Getty Images
2023年2月11日(日本時間12日)豪州・西オーストラリア州パースのパース・アリーナにて『UFC 284: Makhachev vs. Volkanovski』が行われる。
メインイベントは、UFC世界ライト級王者イスラム・マカチェフ(ロシア)が、現UFC世界フェザー級王者のアレクサンダー・ヴォルカノフスキー(豪州)を迎えうつライト級王座初防衛戦。
階級を越えたUFC現役王者対決であり、パウンド・フォー・パウンド・ランキング1位のヴォルカノフスキーと2位のマカチェフによる真の最強決定戦でもある。
この大一番の見どころをWOWOW『UFC-究極格闘技-』解説者としても知られる“世界のTK”髙阪剛に語ってもらった。
PFP1位と2位の階級を越えた現役王者対決
――ライト級王者マカチェフとフェザー級王者ヴォルカノフスキーの頂上対決がついに実現します。
「これはまた“えらいこっちゃ”ですね。今、最も負ける姿が想像できない2人が戦うわけですから」
――ヴォルカノフスキーはここまで12戦全勝で約10年間負けなし。マカチェフも7年間負けなしの11連勝中ですからね。
「両者ともに自分の強い部分をしっかり理解した上で勝ち星を重ね、勝ち方を知り尽くした2人の戦いと言えると思うので、これはお互いにとって手強いですよ」
――ただ、1階級下のヴォルカノフスキーがこの試合に出てくるのがすごいですよね。ライト級のトップランカーでも今のマカチェフとすぐにやるのは、躊躇するぐらいじゃないですか。
「だからライト級のコンテンダーたちは“よくぞ手を上げてくれた”と思っているかもしれない」
──“どうぞ、どうぞ”みたいな(笑)。
「ヴォルカノフスキーだったら、勝つにしろ勝てないにしろ、何かしらマカチェフの穴なり、攻略の糸口を引き出せるんじゃないか、という感覚をみんなが持ってるんじゃないかなと思いますね」
――そんな攻略法をまだ見出されていない両者の戦いですが、試合のポイントはどの辺になると思いますか?
「あえて大雑把にタイプを分けるとヴォルカノフスキーは打撃がとにかく強くて、マカチェフは組んでテイクダウン、そしてグラウンドがめっぽう強いタイプですよね。ただ、マカチェフのほうは、KOするためというより“組むための打撃”を磨いてきて、その戦い方が試合を重ねるごとに固まってきたんだと思うんですよ」
――パンチを振ってそのまま組み付いてテイクダウンして、そこから得意の寝技に持ち込む戦い方ですね。
「マカチェフが7年半前に一度だけ負けた時(2015年10月、アドリアーノ・マルティンス戦)っていうのは、明らかに倒しにいく打撃を打ちにいって大振りになってしまったことで、逆に相手のパンチをもらってKOされてしまったんです。その反省から、“組むための打撃”に特化して、打撃のプレッシャーをかけて組んでいくということを、突き詰めていった感があるんです。
ところが、前回タイトルを獲得したシャールズ・オリヴェイラ戦では、右フックでダウンを奪って、そこからグラウンドで一気に肩固めを極めて勝ってるんですよね。自分はあの打撃の映像を何回も繰り返し観たんですけど、すごく肩の力が抜けていてしっかり倒す打撃になってたんですよ」
――これまでの“組むための打撃”とは違っていた、と。
「ということは、組むための打撃を突き詰めた結果、倒す打撃も身につけてしまったというのが、今のマカチェフなんじゃないかと思うんです」
――なるほど。盟友ハビブ・ヌルマゴメドフもそんな感じでしたよね。打撃でプレッシャーをかけていくのはもちろん、あのコナー・マクレガーをノックダウンさせたり。
「だからヌルマゴメドフという前例というか大きな存在があったから、マカチェフも迷うことなく自分の進むべき道を突き進んで、その結果、組むための打撃でありながら、倒せる打撃を倒せる打撃も身につけた。そしてオリヴェイラを打撃で倒したあとは、対応する暇をまったく与えず一気に極めにいってるので、今は“誰が相手でも自分の戦いを貫けば勝てる”という自信を得ている状態じゃないかと思いますね」