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【UFC】王者アレックス・ペレイラが自身のルーツ・パタソ族にチャンピオンベルトを持ち帰る「自分がどこから来たのかを思い出せば、行きたいところに行けるはず」

2023/01/10 12:01
 現UFC世界ミドル級王者のアレックス・ペレイラが、母国ブラジルのパタソ族を訪れ、11月にイスラエル・アデサニヤをTKOで下して獲得したチャンピオンベルトを部族に持ち帰った。  キックボクシング時代にGLORY OF HEROSでアデサニヤに2度勝利しているペレイラは、2015年10月にアデサニヤを追うようにMMAに転向。デビュー戦でリアネイキドチョークで絞められ、苦い一本負けを喫した後、MMA6連勝。UFC3連勝で王者アデサニヤへの挑戦権を得た。 (C)Zuffa LLC/UFC  その前日計量で、ペレイラはパタソ族の羽根飾りとペイントを顔に施し、登場。先住民であるパタソ族を代表してチャンピオンシップに臨む決意を示している。  入場時にはブラジルのバンド・セパルトゥラがブラジル先住民と共演した「Roots」を意味する『イツサリ』でウォークアウトし、入場口で相手に矢を放つ儀式を行い、オクタゴンに向かった。  試合は、1R終了間際にアデサニヤの右ストレートと左フックでぐらつき、グラウンドで劣勢になる場面もあったものの、最終5Rにペレイラが左フックを効かせ、追撃のラッシュで逆転のTKO勝ち、35歳でUFC世界ミドル級のベルトを腰に巻いた。 [nextpage] 貧民街で生まれ、アルコールに溺れた。人生に何の期待も持っていなかった (C)GLORY  サンパウロ州サンベルナルド・ド・カンポのファベイラ(貧民街)出身のペレイラは、20代前半までアルコール依存症だったことをファブリシオ・ヴェウドムのポッドキャストで明かしている。 「僕は貧民街で育ったから、自分の人生に何の期待も持っていなかった。タイヤ屋に務めながら“いつかバイクを買えるんじゃないか”といつも考えていたし、可能だとも思っていた。“でも、クルマはどうだろう?”と疑っている。“家を持つ? まさか”それは僕にとって現実離れしすぎていた。  その頃、僕は本当に迷っていて、16歳くらいまで1日に1リットル近く飲んでいた。一種の儀式をしていて、朝からカシャーサ(サトウキビから作られるブラジルの蒸留酒)を3杯飲むんだ。午前10時、11時、そして正午にもう1杯……ビールが好きだったけど、お金が無かった。給与として現金より酒をもらうこともあったが、あの場所で働くライフスタイルだった。僕は何も知らなかったんだ。  最近まで、このことを語るのが怖いというか、恥ずかしいというか。でも、今は、それを語る必要性を感じている。だって、どれだけの人がアルコールや薬物の問題で苦しんでいることか。当人だけでなく、その家族も。だから今日、人々は自分がどこで救われるかを知る機会があると思っている。スポーツで。キックボクシングでも、MMAでも、サッカーでも、何でもいいんだ」  多くの先住民族にとって問題となっているアルコール依存症だが、ペレイラも「止めようと思っても止められず、4回目の挑戦でようやく立ち去ることができた」という。アルコール依存症を改善するために大きく役に立ったのが、格闘技のトレーニングだった。  21歳のとき、初めてキックボクシングのジムに足を踏み入れた。それは彼の人生を変える決断だった。 「酒を止めなければ目標を達成できないと悟ったんだ。その時、決心して酒を止めた。それ以来、アルコールは一滴も飲んでいない」  ペレイラは、今でも他人が飲んでいるのを見ると飲みたい衝動に駆られることを認める。しかし、自分は1杯や2杯では止められないことを知っているので、近づかないようにしている。「僕はコントロールできている。中途半端なトレーニングをするためにジムへ行くことはない。ジムに行くなら、一生懸命トレーニングするんだ」 [nextpage] 「ポー・アタン」は現地の言葉で「石の手」を意味する (C)Zuffa LLC/UFC  ペレイラが育った地域では、先住民の伝統や遺産はあまり話題には上がらなかった。しかし、彼が初めてキックボクシングのジムに入会したとき、そこは偶然にもブラジル人選手で構成されたチームだった。そこで彼は、自身のルーツと、アイデンティティに初めて向き合うことになった。 「僕は100%生粋のブラジル人だ。ヨーロッパ系ブラジル人でも、アフリカ系ブラジル人でもない。僕の両親は、他の誰よりも早くブラジルに住んでいた先住民の出身なんです」(GLORY公式より)  ペレイラの父親はブラジル北部の出身で、発展した工業地帯である南部に比べて人口がまばらだった。仕事と生活を求めてサンパウロに移り住み、そこでペレイラの母親と出会った。アレックスは3番目の子供だった。  GLORYと契約時には、MMAルールで年に2回出場することが許されていた。それはメジャープロモーションではまだ戦えないことを意味していた。5年ぶりのMMAキャンプに向かうとき、米国でグローバー・テイシェイラとの出会いがあった。Jungle Fight3連勝から、UFC登竜門のLFAで左フックで1R KO勝ち。2021年11月、初めてオクタゴンに立った。 (C)Zuffa LLC/UFC  イスラエル・アデサニヤを下した左の拳。その左手の甲には小石のタトゥーが掘れらている。彼のニックネーム「ポー・アタン」(Po Atan)とは現地の言葉で“石の手”を意味する。  兄の背中を追い、実妹のアリーネ・ペレイラもキックボクサーとして活躍し、GLORYに参戦。2021年にはスーパーバンタム級王者ティファニー・バン・ゾーストに挑戦し判定負けしたが、2022年11月にはLFAフライ級でMMAデビューを果たしている。  格闘技によりペレイラ家の人生を切り拓き、今回、両親の、そして自身のルーツであるパタソ族に帰還したアレックスに、パタソ族のコミュニティはSNSで、「困難を乗り越えて勝利を収めたことに感謝し、幸せを感じるとき、それは常に神に感謝する多くの理由を与えてくれます。私たちを代表するこの戦士をいつも私たちの居留地に迎えることは、なんと光栄なことでしょう。この神聖な場所にいつでもようこそ」と歓迎。  ペレイラは「自分がどこから来たのか、それを思い出せば、行きたいところに行けるはずです。欲しいものを手に入れるために、自分がどこから来たかを思い出してください」と記している。
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